マリアンヌ、文化の壁を軽々と突破する
王城の中庭。
かつては静かな魔力調整や瞑想の場だったその場所を、
今日は妙な熱気が渦巻いていた。
中心に立つのは――いつものように満面の笑みのマリアンヌ。
マリアンヌ
「ねえねえ!競技魔法ってさ……
要は、魔力でドッジボールすればいいよね?」
魔術師たち
「………………は?」
彼らは一瞬、王国の伝統を守る者として、
当然ながら否定すべきか悩んだ。
しかし。
若手魔術師A
「い、いや……よくはないのだが……」
(いや、待て……魔力制御の訓練になるのでは?)
老魔術師B
「安全措置を施せば……可能では……?」
(むしろ新しい競技としてアリなのでは?)
研究肌の魔術師C
「……やってみるか?」
なぜか三人とも乗り気だった。
むしろ誰よりもワクワクしていた。
マリアンヌ
「やった!!みんなボール持って!!」
■魔法ドッジボール、開幕
魔術師たちが用意した“魔力ボール”は、
当たっても軽くぽよんと弾む安全設計。
だが――
炎が尾を引く炎球、
切れ味を抑えた風刃ボール、
水滴が散る水弾、
眩しい光を放つ光球。
「これ、本当に安全なの……?」と誰もが疑いながらも、
迫力は本物だった。
ルネ
「ま、待て! 光属性ボールの出力下げろ!目が死ぬ!」
審判役を引き受けて、既に半泣き。
若手魔術師
「いくぞマリアンヌちゃん!《フレイムスロー》!!」
どごぉん!!
炎球が一直線に飛ぶ――が、マリアンヌは軽やかに回避。
マリアンヌ
「わーっ!すごい!!次わたしの番!!」
《ウォータースプラッシュ・サーブ!!》
バシャアアアッ!!
水球がぶっ飛び、魔術師たちがまとめて濡れ鼠に。
観客(生徒や町人)
「きゃーー!!」「すげぇ!!」
「魔法ってこんなに動けるのか!?」「もう一球だ!」
中庭は、もはや上品な競技魔法とは別物だった。
だが誰も気づかない――
皆が夢中で、楽しくて、笑っていた。
魔術師団の団長
「……これほど魔力制御を楽しそうに学ぶ光景、初めて見たな」
ルネ
「嬉しいような……複雑なような……だが、悪くない……」
こうして、王国伝統の“真面目な遊び文化”は、
マリアンヌの発想によって
予想もしなかった方向に進化を始める。
その第一歩が――
魔法ドッジボール大会の誕生だった。




