もともと存在した“真面目な遊び文化”の紹介
王都アステリアは、古来より“遊び”に深い誇りを持つ国だった。
といっても、それは子供の無邪気な遊びではなく――
大人たちが知識と魔力を磨き合う、格式高い「文化としての遊び」である。
■競技魔法──研ぎ澄まされた魔力の芸術
年に一度の王国競技魔法大会。
観客席には貴族や学者が並び、選手たちは全身全霊で魔力を制御する。
氷を糸のように細く操る者。
炎を花びらのように散らす者。
魔力の“精度”そのものを競う、王国最高峰の知的スポーツだった。
審判長
「氷流操作、精度誤差〇・〇二。歴代上位です!」
観客
「おお……!」
魔法は暴力ではない。
ここでは美であり、技術であり、誇りだった。
■歴史謎解き都市ゲーム──街全体が舞台
王都中に散らばる古文書の断片、魔導碑、碑文。
それらを読み解き、歴史の真実へと辿り着く頭脳競技。
老学者
「これを見給え。碑文の“欠けた一文字”を読み取るのが今年の鍵だ」
若い魔導史家
「つまり、南区の石畳が……!」
参加者は街を走り、図書館へ駆け込み、また街へ戻る。
王都全体が巨大な謎の舞台となり、
知識の深さと探究心が勝敗を決めるのだ。
■ガーデン・チェス──優雅なる頭脳バトル
王城の東庭園――そこには幾何学模様の迷路庭園と、
実物大のチェス盤が融合した“ガーデン・チェス場”がある。
プレイヤーは高台から指示を出し、
駒役の人々が庭園の通路を走って陣形を組む。
騎士役
「了解! E5へ突撃します!」
司令官
「待て、それでは敵のビショップが……!」
駒が倒されると、柔らかい魔法弾が当たり、軽く尻もちをつく。
優雅だがスリリング。
これもまた王国が誇る上質な遊戯だった。
■書庫迷宮の知能探索──知性の試練
王立大図書館の地下深く、
“書庫迷宮”と呼ばれる魔導仕掛けの迷宮が広がっている。
壁が動き、本棚が語り、
誤答を告げれば本そのものが飛んでくる。
参加者
「待て! この魔法円の式……“正解の扉”はこっちだ!」
仲間
「すごい! 記憶力で迷宮の構造を把握したのか!」
脱出できれば、知恵の証として名誉が得られる。
これは知能・判断力・魔法知識が問われる王国伝統の試練だった。
■どれも高貴で、格式ある文化だった……が。
王国の“遊び”とは、
本来こうした教養と技術を磨くための上品なもの。
大人たちは、自国の遊び文化を
“世界に誇る芸術”
と信じて疑わなかった。
……だったのだが。
この伝統が、
後に一人の少女によって、
想像もしなかった方向へと融合し、加速していくことになる。
その名は――
もちろん、マリアンヌである。




