王城に走る“遊び革命”の兆し
ヴァルザード帝国の突然の撤退は、瞬く間に王都中へ広まった。
理由は不明。だが、ただひとつ確かな噂だけが人々の間に定着する。
「森で……遊んでたらしいぞ」
最初は誰も信じなかった。だが――。
■王都のざわめき
市民A
「なあ聞いたか? 敵軍、森で遊ばされて撤退したって話」
市民B
「遊ばされて……? は? 戦争って何だ?」
市民C
「ていうか、その遊びを国全体でやったら……逆に最強なんじゃないか?」
市民D
「遊びで国が守れるなら、もっと予算つけるべきだろ!」
瞬く間に“遊び最強説”が市中に蔓延する。
■王城:評議会前
王太子ルネは、眉間を押さえて資料を見つめていた。
そこには斥候報告と、なぜか添付された“水滑り台のスケッチ”があった。
ルネ(内心)
(この国の軍の報告書に、水滑り台……?
いや、落ち着け、俺は真面目に国家運営を……)
しかし、脳裏に浮かぶのは昨日のマリアンヌの笑顔だ。
『ルネー!見て見て!あの丸石ゴーレム、すっごく転がるの!』
ルネ(内心)
(……あり得ない、と思いたい。
だが、敵国の三将軍を戦意喪失させたのは事実だ)
重臣A
「殿下、近頃、市民の間で“遊びが国力だ”との意見が出ております」
重臣B
「評議会でも、本日の議題に“遊びの活用”が追加されました」
ルネ
「……本気なのか?」
重臣A
「ええ。遊びこそが人心を安んじ、創造力を育て、結果として軍事的抑止力にも……」
ルネ
「いや待て、それは流石に極論では……」
重臣たちは口々に力説する。
「娯楽で士気が上がる」
「観光が増え経済が潤う」
「国民の魔力量の底上げにも」
そして最後に。
「何より、マリアンヌ様の実績がございますので」
ルネ
「実績……?」
重臣B
「敵国三将軍を、遊びで討ち取った“あの件”です」
ルネ
「討ち取ってはいない!遊ばせただけだ!!」
しかし、その叫びはむなしく議場へ消えていく。
■変わり始める世界
こうして――
王国評議会の正式議題に、
《遊びの可能性について》
という前代未聞のテーマが追加された。
王国はまだ知らない。
この小さな波紋が、
後に“遊び革命”と呼ばれる大潮流となり、
大人の遊び文化と、マリアンヌの規格外の発想が融合し――
王国を豊かにし、世界情勢すら動かしていくことを。
すべては、ひとりの少女の“遊びたい”から始まったのだった。




