敵国の猛将たち、状況を確認しに来る
ヴァルザード帝国が誇る“三獣将軍”――
“断罪の虎”ラグナ、
“冷血の鷹”フェルミナ、
“戦狂の熊”グラド。
数多の戦場を荒らし、敵国に恐れられる猛将たちである。
「……偵察隊が戻らん。」
低く唸る声をあげたのは、熊のような体躯を持つグラドだ。
「また無茶な突撃でもしたのか。愚か者どもめ。」
鋭い目つきのフェルミナが鼻で笑う。
「ならば、確かめに行くまでだ。」
ラグナが剣を肩に担ぎ、森へ視線を向けた。
「突入するぞ!」
三人の将軍が揃って森へ踏み込む。
周囲は静かで、鳥の声すら聞こえない。
しかし、その奥には――あまりに衝撃的な光景が広がっていた。
「……お、おい……あれを見ろ……」
グラドが指差した先。
そこには泥まみれで、魂がぬけたように座り込む偵察隊がいた。
目は虚ろ、体はぐったり、まるで幽体離脱の真っ最中である。
「……敵に敗れたのか?」
フェルミナが警戒を強めながら近づく。
隊長はガクッと首を折るようにこちらを向き、震える唇で言った。
「い……いえ……」
「た、倒されたのでは……ありません……」
「では何だ?」
ラグナが眉をひそめる。
「……あ、遊ばされ……」
「水……滑り台が……その……」
「丸石……ゴーレムが……拍手を……」
三将軍「…………は???」
ラグナは一瞬、自分の耳を疑った。
フェルミナは理解を放棄した顔をした。
グラドにいたっては「滑り台?」と口に出してしまうほど混乱している。
「お前たち……本当に、ここで何をされたんだ……?」
ラグナが問う。
しかし偵察隊は震えるだけで、もう何も説明できなかった。
三獣将軍の脳裏には、共通の疑問が浮かんでいた。
(この森……本当に敵国の領土か?)
(……我々が知る“戦場”と違いすぎる……)
(滑り台で壊滅って何なんだ……?)
そして、彼らの悪夢はまだ始まったばかりだった。




