一方、敵国の偵察隊が森に侵入
森の奥、空気が張り詰める。
ヴァルザード帝国精鋭・偵察部隊。
先頭を行くのは、歴戦の兵である偵察隊長グラム。
「この森を抜ければ王都は近い。油断するな」
剣に手を添え、低い声で部下たちに告げる。
部下の一人が小声で囁く。
「は、はい! ですが……
敵国の地形は厳しいと聞きますが、この森は普通に見えますね」
隊長は眉を寄せた。
足元の土をひとにぎりし、匂いまで確認する。
「……妙に湿って――」
その瞬間だった。
ズザァアアアアアッッ!!!
「うおおおおおっ!?!?!?」
部隊全員が、足を取られるように一気に前へ吸い込まれ、
泥と水を混ぜ合わせた“謎の急斜面”を転がり落ちていく。
隊長は目をひんむき、必死で体勢を立て直そうとするが──
「ま、待て!? 何だこのぬめりは!!?
油……じゃない、これは……スライムの粘液!?」
視界の端で、風船スライムの“給水口”が
ぷるぷる震えながら水を吐き出していた。
どう見てもそれは、
ウォータースライドの給水装置でしかない。
兵士A「隊長っ!す、滑りますっ!!」
兵士B「止まらねえええええ!!」
泥水スプラッシュが宙に舞い、
鎧はぐっしょり、顔は泥だらけ。
最後には全員が池の手前まで
豪快に転がり落ちて並んだ。
隊長(心の叫び)
「何だここは!?
罠か!?いや……罠にしては……楽しげすぎる……!」
湿った森に、悲鳴とも笑いともつかぬ声が木霊した。




