断罪イベント、完全崩壊
断罪の場は、もはや断罪の面影すら失っていた。
ヒロインは顔を真っ青にしながら、必死に場を立て直そうと声を張り上げる。
ヒロイン
「ま、待って!そんな……あり得ない!
本来はここで、“絶縁”とか“婚約破棄”とか言うところじゃ……!!
これ、そういうイベントだから!!」
しかし、その叫びを打ち消すように、ルネがさらりと口を開く。
ルネ
「婚約? 続けてもいいが……君が嫌なら、別に」
あまりにも自然な言い方だった。
マリアンヌはというと、頬をかきながら気の抜けた声で返す。
マリアンヌ
「うーん、別にどっちでも。
遊べればそれでいいし」
その瞬間。
ルネは胸を押さえ、ふっと顔を赤くした。
ルネ(心の声)
「(だめだ……可愛い……!!)」
会場中が色めき立つ。
観客席
「きゃー!!」
「なんか二人、すごく良い雰囲気じゃない!?」
「悪役令嬢なのに……いや、悪役令嬢だからこその破壊力……!」
空気が完全に恋愛イベントへ切り替わる中、
残された唯一の常識人――ヒロインだけが震える声で叫んだ。
ヒロイン
「ち、違う……こんなの……こんなの聞いてない……!」
ついには、力が抜けたようにその場にがくりと膝をつく。
ヒロイン
「私の……断罪ルート……どこ……?」
本来の物語は、音もなく崩れ去った。
悪役令嬢は断罪されるどころか、王太子ルネとの甘い雰囲気を独占し、
ヒロインはその中心で、ただ呆然と立ち尽くすしかないのだった。




