王太子ルネの心の変化(核心)
ざわめいていた会場が、ルネ王太子の立ち上がりを合図に、すっと静まった。
彼はゆっくりと周囲を見渡す。教師たち、職人たち、そして生徒たち。誰もが、先ほどまで「断罪の場」であるはずのここで笑っていた。
ルネ(心の声)
「……確かに、彼女は秩序を乱してきた。
毎日のように問題を起こし、王宮の誰もが振り回された。
だが、それ以上に……
彼女ほど人を笑顔にする者を、私は見たことがない」
静かな視線が、マリアンヌへ向けられる。
マリアンヌはきょとんとした顔で、まるで「自分がなぜここに呼ばれたのか」を忘れたように首を傾げていた。
ルネ
「マリアンヌ。
君の自由さは、確かに王国に混乱をもたらす」
会場が息をのむ。
だが、次の言葉が空気を一変させた。
ルネ
「……だが同時に、この国に、誰も持ちえなかった“活気”と“希望”を与えている」
どよめきが広がる。
マリアンヌ
「え? あの……それって、褒めてるの?」
ルネは、思わず笑みをこぼした。
これまで公の場で見せたことのない、柔らかい微笑。
ルネ
「私は……君を罰する気はない」
マリアンヌ
「え? なんで?」
ほんとうに不思議そうに目を丸くするマリアンヌに、
彼は小さく肩をすくめ、照れをごまかすように苦く笑った。
ルネ
「……君だから、だよ」
その瞬間、会場の空気にかすかな甘さが漂った。
混乱の断罪劇は、いつの間にか恋の幕開けへと姿を変えていた。




