教師陣の意外な味方宣言
大広間は、魔物たちの乱入でカオスの極みに達していた。
しかし司会役の教師が無理やり咳払いをし、
「では……関係者からの証言を……」と進行を戻そうとする。
その最初の証人に指名された教師Aが、一歩前へ。
教師A
「……正直に申し上げます。
授業は……毎回、混乱しておりました」
ヒロイン・エリス
(そう! そうよ! これが断罪の第一歩!!
ほら見なさいマリアンヌ、ついに終わりよ!!)
エリスは勝利を確信し、ほくそ笑む。
だが。
教師Aは続けた。
教師A
「……しかし、あんなに“笑って学ぶ”生徒たちを見るのは、
私の教員生活で初めてのことでした」
場内
「「「……え?」」」
エリス
(いやちょっと待って? そこじゃない。続けなくていいから!?)
教師Aは、少し照れながら言葉を重ねた。
教師A
「紙飛行機魔法のときなど……
生徒全員の目が、驚くほど輝いておりました。
“魔法ってこんなに面白いんだ”と、皆が気づいていたのです」
クラスメイトたちの間に、感動のどよめきが広がる。
続いて、教師Bが真顔で手を挙げた。
教師B
「……水風船合戦は、危険でした。
間違いなく、危険でした」
エリス
(そうそう、その調子! そのまま厳しく——)
教師B
「……ですが。
……楽しかった、です」
会場
「……」
教師B(照れ気味に小声で)
「……特に、最後に校庭の中央で行われた“総当たり戦”……。
生徒も教師も関係なく、あれほど一体感のある授業は他に……」
教師C
「私も発言したく……。
実はあの後、クラス全体の魔法反応速度が上がっておりまして……。
データを取ったところ、明らかに上達の傾向が……」
教師陣
「「「あれは……効果があったのです……」」」
エリス
(なんで!? 何これ!? 私が知ってる“断罪イベント”と流れが違う!!
みんな本来は“マリアンヌ様は悪い!”って言うターンでしょ!?)
王太子ルネは、複雑そうに微笑んだ。
ルネ
「……彼女は確かに型破りだが、
その型破りが、周囲に良い影響を与えている……か」
マリアンヌは、のほほんとした顔で言う。
マリアンヌ
「えへへ、みんなで遊べば楽しいよね〜♪」
教師陣
(……否定できない……)
エリスの心の中の『断罪ルート台本』は、
ここで完全に崩れ去った。




