遊びの規模拡大
校庭の大樹の上に作られた“秘密基地”には、夕暮れの光が差し込み、橙色に染まっていた。
濡れた服を乾かしながら、お菓子の隠し箱を囲むクラスメイトたちの表情は、皆どこか誇らしげだ。
「今日の水風船、めっちゃ当たった!またやろうよ!」
「マリアンヌ様、紙飛行機の魔法のコツ教えてください!」
「この基地ももっと広げようぜ!」
自然と輪が広がり、誰もが笑顔になっていく。
教師たちの「危険!」「降りなさい!」という叫びは、もはや風景の一部のように流れていた。
木の下では、教師と修繕職人たちが頭を抱えている。
職人「……校庭の芝、ぜんぶ張り替えですね」
教師「水路の再整備も必要です……はぁ……」
そのため息を背に、秘密基地の上では全く別の世界が広がっていた。
マリアンヌは大樹の枝に腰を下ろし、明るく笑った。
「ふふっ、今日はみんな、すっごく楽しそうだったね!」
風が髪を揺らし、彼女は未来を見据えるように空を見上げる。
——その視線の先には、まだ学園に入ってきていない“仲間たち”。
魔物研究者のリコ、野生児ミロ、そして気弱な風精霊。
彼らがいずれこの学園の騒動に巻き込まれるとは、誰もまだ知らない。
「明日はもっと面白いことしようっと♪」
その無邪気な宣言が、夕焼け空に吸い込まれる。
そして学園は——いや、王都全体は——
彼女の「遊び心」が起こす、さらなる大騒動へと歩み始めていた。




