教師の怒りと生徒の歓声
校庭の水風船合戦が最高潮に達したころ——
ついに、学園の大人たちが動き出した。
「な、なんだこの惨状はぁぁ!!」
「授業の秩序が……教育が……うちの学園がぁぁ!!」
校長を先頭に、教師陣がずぶ濡れになるのも構わず校庭へ駆け込んでくる。
彼らは口々に「中止!」「停止!」「反省文100枚!」と叫んでいるが、その怒声が水しぶきと歓声に完全にかき消されていた。
マリアンヌはというと——
水風船を片手に、満面の笑みでひらひら手を振る。
「先生たちもやる? 冷たくて気持ちいいよ♪」
「やるかぁぁぁ!! いい加減にしなさい!!」
教師の怒鳴りは空回りし続け、近くの生徒が笑い声を上げる。
「マリアンヌ様、サイコー!!」
「もっと投げてー!」
「次、風属性と合わせ技やろう!」
生徒たちは心の底から楽しんでいる。
普段の退屈な授業では見られない、眩しいほどの活気があった。
一方で——
校長は濡れそぼったローブを握りしめ、震える声でつぶやく。
「……修繕費が……また……」
教師陣は頭を抱え、学生たちは笑い転げ、
マリアンヌはまったく反省の色を見せない。
「だって楽しいんだから、しょうがないよね♪」
こうして学園初日から、
“悪役令嬢マリアンヌ=学園の秩序破壊者(でも人気者)”という評価が、鮮烈に刻み込まれるのだった。




