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学園入学・初日
学園の正門をくぐった瞬間、マリアンヌの瞳はキラキラと輝いた。制服の襟を整えられ、髪をきちんと結わえられても、彼女の興味は礼儀作法や教室の座席ではなく、校舎や校庭に広がる「遊びの可能性」に釘付けだった。
隣の席に座る女子生徒は、すでに噂で聞かされていた「悪役令嬢」の印象通り、上品で静かな子を期待している様子だった。教師も黒板の前で背筋を伸ばし、「今日からよろしくね」と声をかける。
しかし、マリアンヌはそれをすべて無視した。目は窓の外の大樹、校庭の噴水、そして走り回れそうな小道に向けられている。「ここ……登れるかな……」「あの噴水、面白くできそう!」小さな声で独り言をつぶやきながら、彼女はすでに心の中で遊びのプランを組み立てていた。
教師も女子生徒も、今この瞬間、教室の中で何が始まるのかをまだ知らない――マリアンヌにとって学園は、正式な教育の場ではなく、これから攻略する「遊び場」にほかならなかった。




