魔物研究者見習いリコの登場
裏庭の秘密基地から少し離れた空き地。マリアンヌは風船スライムの上で軽やかにジャンプし、宙を飛び移って遊んでいた。
ふわふわと浮かぶスライムの上で、風を切るたびに笑い声が響く。
「わああ、ここまで飛べるなんて!」
その様子を、茂みの向こうからじっと観察する影。
「……これは……非常に貴重なデータ……でも危険すぎる!」
少女のリコは、手に持った観察ノートをぎゅっと握りしめた。小型の魔法測定器が光を発し、風船スライムの膨張や跳躍のデータを記録している。
リコは理性的に周囲を見渡す。
「ちょっと……! スライムに飛び乗るなんて、危険すぎます! 周囲の騎士団も巻き込まれて……」
しかし次の瞬間、スライムが跳ねるたびにマリアンヌの動きや魔力の流れが測定器に反応し、リコの興奮は止まらない。
ノートを取りながらも、目は輝き、手は動きを追う。
「これは……想像以上のデータ……! 魔物の反応速度、浮遊力、弾力……すべて計測可能……!」
理性と好奇心がせめぎ合う中、リコは知らず知らずのうちにマリアンヌの“遊び”に巻き込まれていた。
飛び跳ねるスライム、笑い転げる令嬢、翻弄される騎士団。
「……観察のため、仕方ない……!」
リコは小声で独り言を呟き、測定器とノートを手に、思わずマリアンヌたちの空中アスレチックに近づくのだった。




