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マリアンヌが魔物たちと遊ぶたび、城下の風景は少しずつ変化していった。
風船スライムに飛び乗り、つる草ウルフで街中を駆け抜け、丸石ゴーレムに落書き――。
花壇の花はなぎ倒され、小屋の扉は軋み、彫像の顔には泥の跡がつく。
騎士や侍女は慌てふためきながらも、マリアンヌの無邪気さに完全に振り回されていた。
あちこちから聞こえるため息が一言。
「また修繕費が……!」
マリアンヌはその声に耳を傾けず、むしろ楽しそうに笑う。
「もっと面白くなる方法はないかな?」
魔物たちもマリアンヌの魔力でハイテンションに。
風船スライムは高く浮かび、つる草ウルフは全速力で走り回り、丸石ゴーレムはゆらゆら揺れる。
その様子を見守る大人たちは、城の修繕頻度が確実に増えていくことを予感していた。
そして森の奥や広場の片隅では、次章で活躍する野生児の少年ミロ、魔物研究者の見習いリコ、気弱な風精霊――彼らと出会うための伏線が静かに芽吹いている。
小さな嵐のような一日が終わろうとしても、マリアンヌの遊びはまだ始まったばかりだった。




