ラストシーン
夕暮れの裏庭。泥だらけの小さな銀髪の令嬢――マリアンヌは、満面の笑みを浮かべて立っていた。
水たまりや倒れた植木、少し傾いた噴水の横で、騎士たちや侍女たちは呆れつつも、どこか微笑ましい目で彼女を見守る。
「次は何して遊ぼうかな! 明日は木のてっぺんまで登る!」
マリアンヌの言葉に、王太子ルネは思わず立ち止まる。
夕陽に照らされた彼女の無邪気な笑顔を前に、呆然としながらも、どこか楽しげな響きを感じていた。
「……そんなことを言う令嬢は、君くらいだよ」
マリアンヌはくるりと振り返り、にっこり笑った。
「でしょ♪」
その背後では、修繕職人が泣きそうな顔で、崩れた城壁や彫像を必死に直している。
騎士団も肩を落としつつ、どうやらこれが日常だと悟った様子だった。
――王城には今日も、小さな嵐が吹いていた。
だがその嵐の中心には、全力で遊ぶ小さな悪役令嬢と、それを見守る奇妙な日常の温かさがあった。
物語はここから始まる――
前世の後悔を取り戻す、無邪気で破天荒な冒険が。




