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王太子の困惑と興味
あの日、裏庭でマリアンヌの無邪気な大暴れを目の当たりにした王太子ルネは、その後も心にざわめきを感じ続けていた。
庭での泥団子、木登り、水鉄砲――どれも騎士団や侍女たちにとっては災厄そのものだ。
しかし、ルネは次第に気づき始めていた。
(……不思議だ。確かに迷惑だが……彼女の周りはいつも楽しそうだ)
泥だらけで笑い転げるマリアンヌの顔、スライムやゴーレムと戯れる姿――
すべてが生き生きとして、王城の重苦しい空気とは無縁の世界だった。
ルネは気づく。
これは単なる“悪役令嬢の破壊活動”ではない。
マリアンヌは、前の人生で遊べなかった分を、ここで全力で取り返しているのだ――と。
心のどこかで、ルネは微かに興味を抱く。
この“予測不能で無邪気な少女”と、もっと世界を共有してみたい――そんな芽生えが、静かに芽吹いた瞬間だった。
マリアンヌの周囲には笑顔と混乱が渦巻く。
そして、その中心で遊ぶ小さな令嬢の存在は、王太子の心にも確かに影響を及ぼし始めていた。




