王城の修繕会議
王城の会議室には、王、王妃、騎士団長、修繕職人長が一堂に会していた。
議題は――もちろん、マリアンヌによる“日常的王城破壊事件”である。
「まず、中庭西側の彫像が破壊されまして……水魔法の直撃で真っ二つに……」
修繕職人長は震える手で資料を差し出す。
「地下封印扉の位置が、わずか三ミリずれておりました……」
騎士団長は苦虫を噛み潰した顔で報告。
「木の上の足場、あれお嬢様の手製でして……」
別の職人が小声で補足。
「泥団子、硬度が石並みに……投擲の威力は訓練用盾を粉砕」
「大樹の枝折れ、これで三本目……」
次々に報告される被害の数々に、参加者たちの声は次第に小さくなる。
言葉に詰まり、肩を落とす者もいる。
一方、王妃は眉をひそめながらも、どこか楽しげに微笑んでいた。
「まぁ……これも、お嬢様の“個性”ってことで……ふふふ」
王は涙を浮かべ、椅子にへたり込む。
静まり返った会議室で、ただ資料の紙がかすかに震える音だけが響いた。
だが誰も知らない――この“小さな悪役令嬢の破壊活動”は、まだまだ序章にすぎないことを。




