林檎と一角獣と梟と
本日は第九十二話を投稿します!
昼食を食べるのにエリナ達『白の一角獣』を銀の林檎亭に案内したウィル。和み系の話に……なりません(笑)
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「いらっしゃいませー!」
『白の一角獣』の面々を『銀の林檎亭』に昼飯を共にする為に連れて来たら、店先でエプロンを身に着けた女の子が出迎えてくれた──誰だ?
「お泊まりでしょうかー?!」
「あ、いや、俺達はここに泊まっている客なんだが……」
屈託の無い笑顔で接客する女の子に少ししどろもどろになる俺。すると店の中から「リズ、どうかしたの?」とイグリットが出てきて
「あらっ! ウィルさんお帰りなさい! お早いんですね!」
俺の顔を見ると女の子同様、笑顔で出迎えてくれた。
「あぁイグリット、ただいま。ところでこの子は?」
俺はイグリットの傍らに立つ女の子の事を尋ねると
「はい、この子が私達の娘でリズって言うんです! リズ、この方が昨日話したウィルフレドさんよ」
「あ、はいっ! お名前はお母さんからきいています! お母さんとお父さんの娘のリズっていいますっ!」
そう言って頭をぺこりと下げるリズちゃん。確かに髪の色とかはイグリットと同じ褐色であるが、本当に元気な女の子だな…… 。
「そうか、よろしくなリズちゃん」
「リズちゃん、よろしくね」
「よろしく」
俺とアンとルアンジェが交互にリズちゃんに挨拶をすると「よろしくお願いしますっ!」と更に元気な返事をするリズちゃん。すると俺の後ろからコーゼストがひょこっと顔を出して
『珍しいですね。マスターが子供に泣かれないのは。初めてリズ様、私はコーゼスト。よろしくお願いします』
リズちゃんに挨拶をするとリズちゃんは目をパチクリさせて「ああ〜! ようせいさんだ〜〜!」と俄然気分が高揚になる。そしてコーゼストに向かい小さな指を差し出し「よろしくお願いしますっ!」とこれまた元気な挨拶をする。その指に自らの小さな手を絡めながら「はい、よろしくお願いします」とコーゼスト。見ているこっちが思わず和む風景である。
「ところでウィルさん……後ろの方々は?」
イグリットが俺に小声で尋ねて来る。
「ああ、今回一緒に叙爵する冒険者パーティーの──」
そう言って紹介しようと後ろを振り向くと、そこには『白の一角獣』以外に何故か『月明かりの梟』の侏儒達が気不味そうな顔で立っていた。
何故アンタ達まで付いてきた?!?
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兎にも角にも皆んなで『銀の林檎亭』に入る。
『白の一角獣』は当然として、何故『月明かりの梟』のメンバーが俺達に付いて来たのか問うと「美味いメシにありつけそうだった」からだそうだ。何でも今日王都に来たばかりで右も左も分からない所に、俺がエリナ達を案内して連れ出すのを見て「美味いメシの匂い」がしたそうで……そのまま後ろからぞろぞろと付いて来たらしい。
とりあえずオリヴァー達に断ると「お客様をたくさんお連れになられた」と逆に感謝された。食事のみの客でも売り上げは重要らしい。
皆んながぞろぞろと食堂のテーブル席に着くのを見計らってから、一言断りヤト達を顕現させる。
ミニサイズのヘルハウンドとゴーレムは兎も角、目の前にラミアが現れた時にはエリナ達と侏儒達に緊張が走ったが、ヤトは俺の従魔だと事前に話してあったので混乱する事は無かった。
まぁヤトの姿を見てリズちゃんが思いっきり固まっていたが。
程なくして皆んなのテーブルにそれぞれ料理が配膳されて行く。するとエリナが思いついたみたいに
「折角だからウィルから何か皆んなに一言よろしくね♡」
と、まさかの無茶振りをされた。ここは固辞しようと思ったのだがコーゼストに
『いい加減、コミュ障を克服しないと駄目だと思いますが』
と痛い所を突かれ、仕方なく挨拶をする事にする。あーッ、心臓に悪い!
「あーっと、こうした席での挨拶とかは初めてで何を言えば良いのか分からないんだが……兎に角こうして知り合えた事に感謝したいと思う。以上だ」
エリナ達やアン達から拍手され、冷や汗をかきながら俺が自分の席に座ると食事が始まった。
始まると同時にステーキの追加注文をするヤトは放っておいて、お互いの戦歴や冒険者になった切っ掛けなど他愛のない話をしながら食事を楽しんだ。
まぁ、たまにはこうしたのも良い……かもな。
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「ところで……さっきから気になっていたんだけど、ウィルの剣って少し変わっているわね」
山鹿のシチューを頬張りながらエリナが聞いて来た。
「ん、セイバーか?」
腰に帯びた刀剣に手を掛けて確認すると
「そう、それ! 刀剣って言うのね!? ねぇ、見せてもらっても良いかしら?」
エリナが目をキラキラさせながら頼み込んで来たので、少し苦笑いを浮かべながら剣帯から刀剣を鞘ごと外しエリナに手渡す。
受け取ったエリナは「抜いて見ても?」と言ってきたので頷いて許可をすると、鞘からゆっくり抜いて刀剣を燭の灯りに翳してじっくり観察をする。
「何これ、緋色の……刃?」
燭の灯りを反射して輝く刀剣の刃を見てエリナが呟く。
「一体何なの? この刃の材質……? こんな紅い金属なんてあったっけ??」
刀剣を翳したまま首を捻るエリナ。
「もしかして……緋緋色金ですか?!」
フェリピナが何やら思い至ったみたいに声を張り上げる──流石は魔法士、知識が深い。だがその声に反応したのは──
「「「「何ィ〜!? 緋緋色金だァ〜?!?」」」」
案の定『月明かりの梟』の侏儒4人組だった。
自分達が着いていたテーブル席から一斉に立ち上がると、物凄い勢いでエリナが手に持つ刀剣の所まで来るとしげしげと眺め、「おぉ……こいつは本当に緋緋色金だ……」と同じ台詞を口にする4人組。ドワーフの面目躍如である。
「おい、ウィルフレド! こいつは誰に拵えてもらったんだ?!?」
リーダーのドワーフの戦士が勢い込んで聞いて来るが、そんなに唾を飛ばさないで欲しいものである。そして馴れ馴れしくないか?
「ラーナルー市に居る半侏儒の武具職人なんだが? ガドフリー武具店のドゥイリオってんだが……」
「「「「なにぃ!? そんな半端者がか?!?」」」」
俺の言葉にまたもや全員の言葉が重なる『月明かりの梟』の面々。
何故そんなに驚くのか不思議なので訊ねてみると、そもそもドワーフの中ではヒトと侏儒の混血である半侏儒は快く思われていないのだそうだ。
そうした存在のドゥイリオが緋緋色金の武具を拵えたのに、ある意味衝撃を受けたらしい。
「う〜む、これ程の腕を持つ職人が野に埋もれていたとはな!」
刀剣を捏ねくり回す様に眺めながらリーダーのドワーフが唸る。こりゃあ、緋緋色金をまだ持っている事を言ったら付き纏われる事は確実だ!
『舌は禍の根とも言いますしね』
コーゼストが耳元で誰にも聞こえない様に呟く。
奇遇だな、俺もそう思った!
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ドワーフ達と話していた間、すっかり除け者扱いだったエリナ達『白の一角獣』の面々だったがコーゼストとフェリピナが緋緋色金の事を説明していてくれたみたいで、こちらは瞳をキラキラさせて俺を見ていた。まぁドワーフ達みたいに質問攻めにされる事は無かった分だけマシだったが…… 。
それとアンの魔導小火砲に関してもアンとコーゼストが掻い摘んで説明したみたいで俺が聞かれる事は無かった。
そんな事をしていたらいつの間にか食事も終わり、いつの間にか始まっていた食宴もお開きになった。
「さて……と、それじゃあ私達は泊まる宿屋を探さないといけないから」
そう言って席を立つエリナとメンバー達。聞けば彼女達も今朝早くに王都に来たばかりで、宿も決まってなかったのだそうだ。
「それなら──」
俺はテーブルを片付けているイグリットに声を掛ける。
「イグリット、まだ空いている部屋はあるのかい?」
「はい、今ならまだ何部屋か大部屋が空いていますよ!」
「……だそうだ。どうする?」
イグリットの返事を受け、エリナ達の方に向き直り問い掛けてみると
「えっ?! 本当に空いているなら有難いけど……いいの?」
一瞬嬉しそうにしたが、次の瞬間少し気不味そうに聞いて来るエリナ。恐らくは俺への遠慮だろうが…… 。
「別に構わないさ。何と言っても銀の林檎亭の食事は美味しいしな。味は今食べたからわかるだろ? 何より待遇が良い」
俺が何の気負いも無く答えると、エリナがパァーっと明るい顔をして
「ありがとうウィル! それじゃあ女将さん、5人お世話になりますのでよろしく!」
イグリットに宿泊する旨を伝える。
「あ、ありがとうございますっ! 早速宿帳を持ってきますのでご記入お願いします!リズ、お父さんに言って宿帳を持ってきて!」
「はーい!」
エリナの言葉を受けてイグリットが嬉しそうに返事を返し、リズちゃんにお手伝いを頼みリズちゃんが元気良くオリヴァーの所に駆けていった。
『まぁ、たまにはこうした大人数との触れ合いも宜しいかと。マスターのコミュ障を治す良い機会でもありますしね』
「うるせーぞ、コーゼスト! ほっときやがれ!!」
一連の流れを受けてコーゼストが納得したみたいに宣い、それに突っ込む俺を見てエリナ達はドッと笑いに包まれアンは苦笑いを浮かべている。全くなんつー言い草だ!
俺がブツブツ言っていたら『月明かりの梟』のドワーフ達が不意に
「「「「よし! 儂らもココに泊まるぞ!」」」」
とまたもや綺麗に台詞が重なったのである!
──ちょっと待て!? アンタ達もかよ?!?
『白の一角獣』はともかく『月明かりの梟』まで付いて来ました! 何とも賑々しい食事風景になってしまいましたね。
*舌は禍の根…………口は災いの元
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