嵐を呼ぶ昇級試験 (後編)
本日は第七十三話を投稿します!
今回は前話からの続きになります。昇級試験と言う名の『デュミナス』との戦いもいよいよ佳境です!
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先に飛ばした空裂斬の斬撃波を追い掛ける! オルティースに斬撃波が当たる瞬間、それに合わせる様に長剣の斬撃を重ねた! 前回空裂斬はオルティースの剣撃に掻き消されてしまったので、咄嗟の思い付きで実行した攻撃なのだが──思いのほか上手く重なった斬撃が綺麗に命中した!
「ぐっ? くぅ!」
だがオルティースは斬撃が当たる瞬間、盾を構え耐え凌ぐ! 流石に勢いまでは受け流せなかったらしく後ろに大きく押し込まれるが、咄嗟とは言え大した反応速度である。
「〜〜くぅっ! 今のは効いた〜!!」
前屈みの姿勢から身体を起こし、慌てた様な、そして何処か楽しそうな声色で叫ぶオルティース。良く見ると俺の斬撃を受けた盾は、かなりの威力を受けたみたいで大きな✕印の傷が深く付いているのが見えた。
オルティースもそれを確認すると「こいつは使い物にならんな」とひと言呟くと盾を投げ捨てた!
「今のは危なかった! だが次は受けなければ良いだけの事だ!」
何とも潔い判断だ! そして何時の間にか盾を持っていた手には剣がもう1本握られていたのだ! どうやら盾に隠されていたみたいである。そしてその顔に更に獰猛さを滾らせながら
「俺に2本抜かせたのはお前で3人目だ、ウィル!」
と心底嬉しそうに叫ぶ──と言うかこいつ、本当は二剣流だったのか?! そして3人目とか……前の2人が物凄く気になる!
『マスター、また現実逃避ですか』
コーゼストが呆れ気味に念話で突っ込んで来た。なんかすんません………… 。
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俺とオルティースが剣を交えていた時、アンとベルナデットの魔法の応酬も苛烈を極めていた。
アンは文字通り城壁と化したデュークを盾にする事により向こうからの攻撃を防いでおり、片やベルナデットはゼラフィーネの張る魔法障壁でアンの魔法攻撃を防いでいた。
アンがベルナデットに対し魔法攻撃での牽制を仕掛けてくれたので、俺の方は助かったのだが状況は些かアンが不利であった。そんな最中、不意に向こうから放たれた火炎槍が空中で爆散した!
「お待たせ!」
後ろから陽気な声が聞こえアンが振り向くと、片手を翳した姿のヤトがそこに居たのである。どうやら先程のはヤトが『竜咆衝撃波』をぶつけたのだろう。
「ヤト!」
「御主人様から頼まれたわ! 護りは任せて、涅森精霊!」
ヤトはそう言うと、アンとデュークの目前に強固な魔法障壁を張る!
「ありがとう! 助かったわ!」
「任せなさいっての!」
大きく安堵の溜め息を付くアンとは対照的にドヤ顔をするヤト。それを見てアンは苦笑いをしながら
「ヤト、そう言う時は「どういたしまして」って答えれば良いのよ」
と受け答えの言葉遣いを教える。
「へぇー?! それじゃあ、どういたしまして!」
ヤトはヤトで覚えたての言葉で、早速受け答えをする──と言うか、覚えた言葉をオウムの様に繰り返すのはヤトの癖なのか性格なのか…… 。
そんな思わず和みそうになる空気とは真逆に、魔法障壁にはベルナデットの魔法攻撃が幾度となく当たっては弾け飛んでいた。
「──何を余裕見せているのかしら!」
ヤトの参戦で風向きが変わった事に苛ついたベルナデットは、アンとヤトのやり取りが癪に障ったらしく急激に魔力を高める──そして
「『The crimson flame blazes into the enemy──真紅の豪炎よ 槍となりて敵を穿て』真紅豪炎槍!」
その目前に大人の脚ほど有る橙色に燃え盛る炎槍が5本出現する! そしてそれ等は全て紅い波動を纏っていた!
「ちょ?! ちょっと、ベルナデットさん?!」
ゼラフィーネがその紅い波動を纏った炎槍を見て慌てた様な声を上げるが──
「射抜け!」
5つの軌跡を残して打ち出される真紅豪炎槍!
『竜咆衝撃波!』
だがその炎槍もヤトにより無造作に堕とされる!
「ふん。そんな炎の槍、私の『竜咆衝撃波』の前には敵じゃないわ!」
またもやドヤ顔を見せつけるヤト。伊達にSランクだった訳では無いのは確かである──と言うかそのドヤ顔は止めた方がいい。
一方のベルナデットは真紅豪炎槍が止められた事に動揺すると同時に
「…………成程、油断ならないと言う訳ですね」
と冷静さを取り戻したらしく、無理な追撃はせずに次の手を模索しているみたいであった。
しかし先に次の一手を打ったのは、ヤトに護られたアンであった! 両手を上に翳すと濃密な魔力がアンに纏わりつく!
「『Heavy thunder penetrated my enemy──激しい雷よ 我が敵を貫け』雷霆三叉戟!」
そう詠唱し終えるとアンの頭上に雷光で出来た巨大な三叉槍が出現する! それに手を添える様な形を取るアン──そして
「届け────!!」
掛け声と共に勢い良く投擲する! 打ち出された三叉槍はゼラフィーネの魔法障壁に到達すると激しい雷鳴と雷光を撒き散らしながら食い込んでいき、障壁内側に幾重もの稲妻を起こした!
「──ぐぅ!?」
「キャッ?!」
ベルナデットとゼラフィーネは稲妻に打たれ悶絶すると、その場にへなへなと座り込んだ! どうやら感電したみたいである。続けて『雷霆三叉戟』を生み出そうとしているアンにベルナデットとゼラフィーネは「こ、降参します……」と弱々しい声を上げる。
「ベルナデットとゼラフィーネは戦闘続行不可能だね。アン、ヤト、君達の勝ちだ」
グラマスのその台詞に構えを解き、大きく息を吐くとその場にへたり込むアン。結構ギリギリだったみたいである。
「やったわね、アン!」
ヤトが満足げな表情でアンに声を掛けると、アンは疲れた顔で笑顔を見せる。
「……ありがとうヤト。お陰で助かったわ……って、ヤト?! いま私の事アンって?!?」
ヤトの思いがけない台詞に思わず聞き直すアン。言ったヤトはヤトで、アンの言葉に「え〜っと、うん? うん、言ったわね」とキョトンとして答える。
どうやら自然に出た台詞でヤトは意識してなかったらしい。何にせよアンとヤトの距離が縮まったみたいで何よりである。
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アンとヤト、ベルナデットとゼラフィーネそれぞれの組での戦闘に決着が着いた頃、俺はオルティースと鍔を競り合わせていた! アン達の状況はコーゼストが実況してくれていたので掴んではいたが、こっちもこっちで手の離せない状況だった!
それにしてもこのままでは埒が明かない──! オルティースの二剣を剣とカイトシールドで押し返しながら、後ろに飛び退き距離をとる!
同じ事をオルティースも考えていたらしく、距離を置きざま体勢を立て直して突っ込んで来る! 二剣を縦と横のほぼ同時に振るうオルティース! あまりの剣速で剣が消える?! 咄嗟に剣を立て、カイトシールドを頭上に向け斬撃を受け止めた!
「ほう! 俺の蒼剣十字斬を受け止めやがった!!」
オルティースが呵呵と嬉しそうに叫ぶ! しかしなんと言う重い一撃だ! もう一撃喰らったら不味いな! 仕方ない、アレをやるか……こちらも出し惜しみ無しだ!
一旦剣を引き距離を取ろうとするオルティース。再度先程の蒼剣十字斬とやらを仕掛けて来るみたいである──が、今度は俺の番だ!
俺は迅風増強を発動させ距離を取ろうとするオルティースを追撃する!
「な、ナニ?!」
焦るオルティースに対し左手のカイトシールドを──仕込み槍を突き出す! オルティースは両手の剣を交差させて槍を受け止める! だが槍と剣が触れた瞬間、オルティースは物凄い衝撃を受け後ろに吹き飛ばされた!
「ぐ?! グオォォォォーーー!!」
そのまま体勢を立て直せず後ろにもんどり打つ様に飛ばされ、地面に数度叩きつけられるオルティース!
やがて仰向けの状態でピタリと転がるのが止まり、ピクリとも動かないオルティースの元にゾラ・エルダが駆け寄ると何やら色々と確認すると、手をこちらに向け
「オルティース・トリスタン、戦闘続行不可能! 勝者ウィルフレド・ハーヴィー!」
声高らかに宣言する! その宣言を聞いて俺は周りの状況を即座に確認すると、丁度ルアンジェがバルドの背後から鎌剣で首筋を挟んでいた。バルドは短剣から手を離し「……俺の負けだな」と両手を上げている。どうやらあちらも決着が付いたみたいである。
「──決まったね。『デュミナス』全員戦闘続行不可能! 勝者『黒の軌跡』! よって『黒の軌跡』のSクラスへの昇級を認めるものとする!」
セルギウス殿の力強い宣言が訓練場に響き、俺はそろそろと戦闘体勢を解いたのであった。
遂に決着が着きました!
まぁ案の定と言うか、ここでウィル達が負けるフラグは立ってませんでしたしね…… 。
それにしても魔物との戦いと違い、人間同士の戦闘シーンは難しい…… 。
*真紅豪炎槍…………ベルナデットが使う炎属性の極大魔法。橙色の巨大な炎槍に破壊衝動の紅い波動が纏われている。目標に到達すると高温で爆裂する。(本来の威力では)
*雷霆三叉戟…………アンが使う風属性上位極大魔法。雷撃で形成された三叉戟を目標に投擲する。到達すると内部に深く食い込み、電撃を撒き散らし目標を粉砕する。(本来の威力では)
*蒼剣十字斬…………オルティースの使う武技。二剣で上からと横からの高速斬撃を同時に目標に打ち込み、文字通り十字に切り裂く。
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