魔王の庭 〜久々の再び〜
本日は第五十六話及び、五十七話を連続投稿します!
先ずは第六階層から探索再開となります。
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「アン、ルアンジェ、準備いいか?」
思いがけない羞恥に晒された翌日、ドゥイリオの店から整備された武具を受け取り、更に明けて翌日「魔王の庭」に来たのだ。勿論ルアンジェを伴って、である。
「大丈夫です」
「私も」
2人からの返事を聞いて俺は、管理端末に嵌め込まれた水晶に手を触れる。
『こちら、迷宮「魔王の庭」管理システム端末です。所属と名前、及び階級を告げてください。尚、同伴者が居る場合はこの場で登録をお願いします』
いつも通りの管理端末からの無機質な問い掛けも久しぶりに聞くな── 。
「Aクラス冒険者パーティー、パーティー名『黒の軌跡』頭領、ウィルフレド・ハーヴィ。今日はパーティー新メンバーの登録を希望する」
『──*────新規登録に切り替えました。
名前と階級をお願いします』
ルアンジェが俺に替わり端末の前に出て申告する。
「ルアンジェ。Aクラス」
『では認識札をお願いします』
端末に促され水晶に認識札を翳すルアンジェ。
『────*──*──認識札の情報の確認──名前:ルアンジェ、確認しました。階級:Aクラス、確認しました。管理システムへの登録完了しました。──*──パーティーメンバー登録終了確認しました。現在、第六階層までの転移陣が使用可能です。転移陣を使用しますか?』
ルアンジェと入れ替わった俺が答える。
「使います」
『使用要請受領しました──転移陣機構起動。転移陣に入ってください────転移対象確認──座標確認。第六階層の転移陣に送ります』
足元の転移陣が起動して、俺達は光に包まれた──やれやれ、やっと再探索出来る………… 。
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第六階層の待機所にある転移陣に無事転移してきた。待機所を出る前に各々装備を確認する。因みにファウストとデュークは最初から顕現済みである。
「良し……先頭はファウスト、前衛は俺とルアンジェ、アンは後衛、デュークは殿を頼む。行くぞ」
俺達は待機所の扉を開けると、第六階層の通路に進み出た。
「さて……とコーゼスト、どうだ?」
『──走査開始します。──・────・・──・────走査完了。200メルト四方に魔物及びヒトの反応はありません』
……まぁそんなに直ぐに魔物に当たるとは思わないが。
「兎に角、先に進むぞ」
俺達は辺りに注意を払いながら迷宮を進んでいった。
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結果として、奥に進むに従って魔物に遭遇する確率は跳ね上がるのだがその通りになり、特に第六階層は巨猪人と鬼族と多く遭遇した。
オークもオーガも最低でも順位はBはあり下手をするとA+の個体に当たる事もあり、そんなのが共に6、7匹の集団で現れるのだ。流石にそれだけの集団を続けて相手にするには、普通骨が折れるのだが──── 。
「ブフゥゥゥゥゥ!」
現在そのオークの集団と絶賛戦闘中なのである!
大振りに振り回される錆び付いた広刃剣を掻い潜り俺はオーク・戦士の懐に飛び込むと、その胴体を粗末な革鎧ごと長剣で深く切り裂いた! 斬撃は間違い無く心臓を捕え、オークの身体はビクリと痙攣するとそのままドサリと崩れた!
油断無く脇を見やると、もう1匹のオーク・ウォリアーがルアンジェの鎌剣で両太腿を深く切り裂かれ、膝を付く所だった。その後ろに音も無く回り込むと、自分の腰ほどもあるオークの首筋に2振りの鎌剣を充てがい、力任せに刃を閉じ合わせて首を跳ねるルアンジェ。なんつー膂力だ!
また血塗れになったルアンジェを見て、今度は替えの服とかは多めに買い込んでおいた方が良さそうだな……等と頭の片隅にチラリと考えたのは秘密である。
その後ろではアンの『風精加護』付きの矢を立て続けに、額と両腕両脚と胸に叩き込まれたオーク・ウォリアーが声を上げる間も無く倒れ伏し、アンを護る様にしていたデュークはデュークで、襲って来たオーク・ウォリアーを巨大な金属槍で串刺しにしていた! やはりと言うか何と言うか…… 一応心配はしているのだが、これを見ると杞憂に過ぎないのだと実感する。
「ヴァオォォォン!」
前の方から聞こえる咆哮に顔を向けると、ファウストの爪による斬撃を両手斧で受け止めたオーク・騎士の姿が目に飛び込んで来た! ファウストの爪を止めるとは大した奴である。
ファウストは飛び退いて一旦距離を取ると、両前脚を交差するみたいに振り抜き爪撃破を繰り出した! 放たれた爪撃破はオーク・ナイトに届く直前で重なり合い交差したまま到達すると、それを受け止めようとして突き出された両手斧の柄のみならず革鎧ともども、オーク・ナイトを細切れに寸断し血飛沫と共にただの肉片に変えたのだった!
その脇には頭を噛み砕かれ、物言わぬ骸に化しているオーク・ウォリアーが転がっている。本当にファウストもえげつないな!
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俺はオーク達が光の粒子になって消えるのを確認すると、戦闘態勢から構えをゆっくり解きフゥと大きく息を吐いた。
『お見事です』
コーゼストから短く賞賛される。今回コーゼストには走査のみで完全に裏方に徹して貰っている。ルアンジェに素の迷宮の雰囲気を感じて欲しいからである──まぁ自動人形だけど……大切な仲間だからな。
『それにしても──格48順位B+のオーク・ウォリアー5体と、格50、順位Aのオーク・ナイトでも苦戦しなくなりましたね』
……何だか物凄く聞き捨てならない事を聞いた気がするんだが? 格48の順位B+のオーク・ウォリアーと格50の順位Aのオーク・ナイトだって?!?
「…………そういやコーゼスト。おまえ何でそんなに大切な事を、戦闘が始まる前に言わなかったんだ?」
『今回私が命令されているのは飽くまで走査のみなので』
──いやいや、そこは詳しく教えろよ!!
思わず頭を押さえる俺の元にはアンと、アンに清浄魔法を掛けて貰い血塗れから解放されたルアンジェが近付いてくる。ん? ルアンジェ?
「…………なぁ、コーゼスト」
『────』
「お前、 " 拗ねてる " だろう?」
『────思考領域の中に、何やら "澱み" を感知しましたので、それに従ってありのまま行動を実行に移しただけなのですが……成程これが " 拗ねる " と言う事なのですね』
それを聞いた俺はガックリと肩を落とすと、ジト目で左腕のコーゼストを見ながら「……拗ねるなよ」と、思わず突っ込まずにはいられなかった。
『申し訳ありませんでした』
しれっと謝罪の言葉を言うコーゼストだが……お前、絶対反省してないだろ?!
俺はぶつくさ言いながら剣を鞘に収めて、ふと疑問に思った事をコーゼストに確認してみた。
「そういやコーゼスト、今の俺達の格は幾つぐらいなんだ?」
『はい。現在マスターは格60、アンは格56、ルアンジェは自動人形なので戦闘能力からの推定になりますが──格62はあるかと。ファウストは格64、デュークは格66になります』
…………いつの間にか俺は格が60になっていた。当然アンも上がっているが驚きなのはルアンジェである。確かにヒトではなく自動人形なので正確には示せないとは思うが……それでも格62相当とは………… 。道理で強い訳である。
「コーゼスト、この階層の魔物の平均的な格と順位ってどれ位なんだ?」
『今まで観測した情報から推測される平均値は凡そ45から48ぐらいかと。順位はB+が多そうです。稀にAランクも居ますが、全般的に遭遇率は低いです』
間髪入れずに答えるコーゼスト──偉い変わり身の速さであるが、何にせよ機嫌が直ったみたいで何よりだ。
「それじゃ、引き続き魔物の格と順位には注意しておいてくれ。あと何か異常があったら頼む。頼りにしているからな」
『お任せ下さい、マイマスター』
俺が少し持ち上げるみたいに言うと、やたら張り切る素振りを見せるコーゼスト──何ともわかり易い奴である。
俺はコーゼストに悟られない様に小さく溜め息を付くと、アンとルアンジェの方に向き直り「それじゃあ先に進むか……」と告げて、またファウストを先頭に隊列を組み迷宮の奥に向かい歩き始めた。
何だか、コーゼストが益々ヒトっぽくなって来たな……と頭の片隅で考えながら──── 。
いよいよ本編通りに(?)迷宮探索を再開したウィル達一行ですが、ウィル以外のメンバーは皆んなチート級です!
まぁウィルも順調にレベルが上がってますけどね!
それにしてもとうとう「拗ねる」事を覚えたコーゼスト先生、益々人間臭くなってきました!
*巨猪人…………豚面の亜人系魔物。体高2メルト程。知性はそこそこ有り、集団での行動をとる。持っている技能により戦士・魔法士・騎士と言う上級職に分化する場合がある。
いつもお読みいただきありがとうございます。




