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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
半人半蛇の強敵編!
56/330

戦闘訓練 〜馬鹿が笑顔でやって来た〜(☆イラスト有り)

本日、第五十二話を投稿します!

何事にも訓練鍛錬は大事ですが、やり過ぎると弊害が………… 。

 -52-


 ヒュン──


 2振りの鎌剣(ハルパー)(きら)めきを残しながら振り下ろされる!


 ガガキーーン!


 それをカイトシールドと長剣(ロングソード)交差(クロス)させて受け止める俺! 一方のルアンジェは表情を変えないで押し込んで来る! 俺は両腕を押し拡げ、ルアンジェを身体ごと(はじ)き返した! 如何(いかん)せん体重差では俺の方が有利だな!

 だが弾かれたルアンジェは、空中で3回ほど宙返りをすると体勢を立て直して(かろ)やかに着地し、すぐさま姿勢を低くして駆け出した! そのルアンジェに2本の矢を同時に(つが)えて狙いを定めるアン!


『──制圧矢(フレシュディ・コントロル)


 流れるが(ごと)く、2本の矢を一斉に放つ!

 アンが放った矢はルアンジェを(とら)えた──かと思った瞬間、()()姿()()()()()ルアンジェに難なく回避される! まるで幻の様にルアンジェが()()()()()()()()()に見える。あまりにも素早い足捌き(ステップ)で、()()が見えているのだとはコーゼストの談ではあるが── 。


 俺達の隣りではファウストとデュークが戦闘と言う名の(じゃ)れ合いをしている。ここは冒険者ギルドの裏にある修練場、俺達は手持ち無沙汰(ぶさた)なのと腕を(なま)らせない為に、ここで戦闘訓練をしている最中なのだ。それにしても──周りの冒険者達の視線が集まっているみたいなのは何だ?


「ウィル──余所見(よそみ)しない」


 そんな声が背後から聞こえたと思えば、同時に背筋に冷たいモノが走る! 瞬間的に前に飛び退きながら振り返ると、鎌剣(ハルパー)を振るっているルアンジェの姿があった──いつの間に?! そっちに気を取られていると、視界の隅にアンが何本かの矢を放つのが見えた!


 ──うぉい?! 2人とも俺狙いかよ?!


 俺は無理やり体勢を立て直すと、先ず向かって来た矢を左のカイトシールドを振り下ろし()()()()()()()! 『制圧矢(フレシュディ・コントロル)』は、そのまま受けると腕が(シールド)ごと弾かれるからな。それを見て何人かの冒険者から「あんな体勢で良く……」と言う声が聞こえた。


 俺はその場で身体を半身(はんみ)ひねると、ルアンジェの追撃に向かって空裂斬(アギト)を放った! 瞬時に鎌剣(ハルパー)を交差させて空裂斬(アギト)の斬撃を受けると、思いっきり後ろに吹き飛ばされるルアンジェ──しまった、やり過ぎたか?!

 だがルアンジェは後ろに向かって宙返りを何度か打つと、またもや鮮やかに着地した。周りからは「おぉ……」と言うどよめきが上がった。

どうでも言いがあんたらは訓練しなくて良いのか?


「──ッ、アン、ルアンジェ、ここまでにしよう!」


 俺は次の矢を(つが)えようとしていたアンと、鎌剣(ハルパー)を構えて突っ込んでこようとしていたルアンジェ双方に声を掛ける。2人とも俺の声を聞くと、そろそろと戦闘態勢を解いてくれたが──どんだけ集中していたんだ?


『そう言うマスターこそ、以前より真剣味がありましたね』


 念話で軽口を言うコーゼスト。全く──俺は何時(いつ)でも真面目だゾ? そんな事を思っていたら周りの冒険者達から一斉に「おぉ──!!」と歓声が上がった。なんだなんだ?!


「皆、君達へ賛辞を贈っているんだ」


 不意に背後から声を掛けられ振り向くと、蒼い重甲冑(フルプレート)を着込んだ男が立っていた。右腰にはロングソード、右腕には(シールド)装備で金髪の中々の美男(びなん)である。歳の頃は俺と同じか3歳ぐらい年下か──?

挿絵(By みてみん)

「かく言う俺もついつい見惚(みほ)れていたがな!」


 そう言って呵呵(かか)と笑う美男。なかなか絵になる男である。周りの冒険者が「おい、あれは……」と言う声が聞こえるが、恐らくそれなりに有名人なんだろうな、この男。


「んで、それだけで話し掛けてきた訳じゃないんだろ?」


 ただ感想を伝える為だけに話し掛けて来る訳が無いしな………… 。


「うん、実は一度手合わせして貰いたくて声を掛けた!」


 実に真っ直ぐな言い様だな! 裏も打算も無く実に────


『馬鹿正直ですね』


 コーゼストさんや……そう言うのは本人に聞かれない様に気を付けろよ………… 。


「そうか……で、俺達の誰とだ?」


「うん? 勿論3人一緒で構わないぞ!」


 ──やっぱり馬鹿決定か?


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 訓練場の中央で対峙する俺達と美男。周りには訓練を放り出して見物に冒険者達が集まって来たが──どうしてこうなった?!


「……いつの間にか見世物扱いだな」


「その様だな、すまん!」


 そう言いながらまた呵呵と笑う美男。正直少し暑苦しい気がしないでも無い。


「そういやあんた、名はなんと言う?」


「うん? あぁ、名前か──オルトだな」


 ──何が「だな」なんだ?! まぁ良い。


「俺はウィル。彼女はアン、あの子はルアンジェだ」


「うむ、ウィルとアンとルアンジェだな? 良く覚えたぞ! 改めて(よろ)しく頼む!」


 そう言いながら頭を下げるオルト。本当に真っ直ぐな奴だな………… 。


「……では行くぞ」

「よし、来い!!」


『本当に良いんでしょうか……』

『同感』

『……こいつの気の済む様にさせよう。行くぞ!』


 オルトと会話しながらアン達と念話で話している俺。(ちな)みにルアンジェもコーゼストの念話の連絡網(ネットワーク)に繋がる事が出来る様になったので意思の疎通(そつう)はバッチリである。


『それじゃあ、()ず私が行く』


 ルアンジェが念話でひとこと言うと、オルト目掛けて駆け出した! うちの天使様は先鋒(きりこみ)がお好きらしい。


「おっ? 先ずはルアンジェからか!」


 オルトはロングソードを左手で(シース)から抜き放つと、右腕の(シールド)を前に構える! ルアンジェは()()()()()()()()姿勢を低く取り、訓練場の地面を這うかの(ごと)く突っ込んで行く! そしてオルトの目前で急に踏み込みを変えると、オルトの左側に回り込み右の鎌剣(ハルパー)を抜き放った!


 当然オルトも左のロングソードを反撃(カウンター)で突き出すが、ルアンジェが鎌剣(ハルパー)の向きを変えオルトのロングソードがルアンジェの鎌剣(ハルパー)湾曲(わんきょく)した刃に(はさ)み込まれた形になった!

 そのままもぎ取られると思った次の瞬間、オルトは(いさぎよ)くロングソードから手を離すと体勢を立て直して右腕の(シールド)でルアンジェを押し込んだ!

 だが(シールド)が当たる直前、ルアンジェは(シールド)に脚を当て後ろに飛び退いた! その隙に手放したロングソードを素早く拾い上げ、ルアンジェに追撃を仕掛けるオルト! だがルアンジェは更に後ろに飛び退き回避する!


 ──この男、かなり強い!


 俺はこの男──オルトの評価をグンと上げた。オルトはルアンジェを深追いせず、俺とアンに向かって来た! 判断も的確だな──!


「アン!」


 俺はひと声吠えるとオルトを迎え撃つべく、空裂斬(アギト)を放つと同時に駆け出す! 更にタイミングを合わせる様に、アンが()()()()()()()同時に放った!

 先に放った空裂斬(アギト)が目前に迫ると、ロングソードを真っ直ぐ縦に振り下ろすオルト! (ごう)! と言う音と共に振り下ろされた剣圧は、空裂斬(アギト)の斬撃波とぶつかり合い空裂斬(アギト)が霧散する! 続けて飛んできた3本の矢は(シールド)を使わず、ロングソードの鋭い剣捌(けんさば)きであっという間に叩き落とした──なんて奴だ!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 剣戟の間合いに達した俺は、上段からの斬り下しを仕掛ける! オルトはそれを(シールド)で防ぐと、俺のガラ空きの右脇を狙ってロングソードで横薙ぎに斬りこんで来る──だが俺だって左利き対策ぐらい考えている! オルトの斬撃を肘当て(クーター)を使った()()()への肘打ちで下へと叩き落とす! そうしながら一旦(ロングソード)を引き、オルトの左肩を狙い突きを繰り出す俺! 短距離ながらの貫甲(アーマー・ピアシング)だ! だが剣先が当たる寸前、上半身を(ひね)り突きを(かわ)すオルト! そしてそのまま下から斬り上げてきた!


「くっ?!」


 俺は(ロングソード)を握る右手と腕に力を込めて、オルトの斬り上げを受け止めた! 一旦お互いに引くと、今度は正面から切り結び(ガード)付近で()り合う形になった!


「なかなかやるな、ウィル!」


「あんたも相当だな、オルト!」


 オルトの獰猛(どうもう)な笑みにつられて俺も顔に笑みが浮かぶ!


『マスター、楽しそうですね』


 コーゼストが念話でそう言って来るが、俺は戦闘狂(バトルジャンキー)じゃないからな!?


 アンもルアンジェも俺達2人の気迫に呑まれて動けずにいたが「そこの2人、止めなさい!」と高く()んだ声が訓練場いっぱいに響き渡った。

 声がした方に意識を向けると、アンと見まごうばかりの美女が腕を組んで立っていた。アンと違うのは金髪であり、背も高そうである。何より胸が……大きい。そして()()()()()()()──森精霊(エルフ)か?


 エルフの女性は呆れた声色でオルトに向かい声を掛ける。


「オルティース・トリスタン。貴方また()()()()()()?」


 !? オルティース・トリスタンだって?!


 俺は剣を交えた先に居るオルト改めてオルティース・トリスタンと、エルフの女性を交互に見詰めて固まったのだった。



結局、変なのに絡まれたウィル達でした。

アンもですが……ルアンジェもチートです(汗)でも無自覚でもあります(笑)

弊害とはいきなり勝負を挑まれる…… 。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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