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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
西の混沌 〜蟻の王国と過去の遺跡と〜編!
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救済者と殺戮者

本日、第四十九話を投稿します!

今回は一方的な殺戮が行われます。一部グロいシーンがあるのでご注意ください。

 -49-


 眉月(クレセント)が闇に(きら)めく。


 その煌めきは掲げられた虚空(こくう)から真っ直ぐと落ち、ゴブリンを真っ二つに切り裂いた。声を上げる間もなく崩れ落ちるゴブリンの(むくろ)を一瞥する事無く、煌めく眉月(クレセント)は次の獲物を求めて闇を流れる。それはまるで───


『何ですか、その殺伐とした詩的(ポエミー)な感想は』


「いや、まぁ、そうなんだが……」


 コーゼスト先生の呆れ気味な突っ込みに返す言葉が無い俺。目の前では目にも止まらぬ素早さで鎌剣(ハルパー)()()()()振るいながら、ゴブリン達の死骸を量産しているルアンジェが居た。何故こんな事になっているかと言うと……………… 。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ルアンジェの装備も買い揃え『蒼眼の(ブルーアイズ・)新月(ニュームーン)』でひと息つきながら、今後の事をアンとルアンジェを交えて話し合ったのだが、コーゼストとアンから訓練を兼ねた実戦経験が一番良いと言う意見が出て、ルアンジェも了承したので翌日ギルドに(おもむ)き、ラーナルー市近郊の村での魔物の討伐依頼を見つけてきたと言う次第である。


 まぁコーゼストが言うのはわかるのだが、アンがそんな事を言うとは意外だった。


 ツェツィーリア共和国に向かったのとは反対方向にあるその村は、ノトスと言う村と言うより聚落(しゅうらく)に近い寒村であった。その村の近くにある森にゴブリンが住み着いたらしく、依頼金は決して高く無かったがその討伐依頼を受けたのだった。


 ルアンジェの訓練を兼ねる為とは言え迷宮(ダンジョン)に潜った方が手っ取り早いと思いがちだが、これにはちゃんとした理由があるのだ。


 まず、迷宮(ダンジョン)内に出現するゴブリン系の魔物は総じて(レベル)が高く、また進化した個体が多いのだ。


 それならソレで手っ取り早くレベル上げが出来そうだが、決定的に違うのは出現する数なのである。迷宮(ダンジョン)ではどんなに多くても10数匹程だが、外では個体群(コロニー)を作る事があり、そうなると数も最低でも50匹から数百匹の大集団まで有りうるのだ。効率から言っても利点(メリット)が高い。戦闘訓練として数を(こな)すなら、迷宮(ダンジョン)よりも広野の魔物が一番である。


 まぁぶっちゃけると、手っ取り早くルアンジェの経験値(エクスペリエンス)稼ぎする為である。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 東方面に向かう商人の馬車に便乗して、ノトス村に向かった。大体1日半の行程で到着した村は、50軒ほどの家が立ち並ぶ長閑(のどか)な雰囲気を(かも)し出していた。村人を見つけ村長の事を尋ねるとわざわざ案内してくれた。


「おぉ、あなた方が依頼を受けてくだすった冒険者様で」


 案内された家から出てきたのは、70歳ぐらいの爺さんだった。


「あんたが村長か?」


「はい、ロレルと言います」


 ロレルは深々と頭を下げる。


「俺はウィル、彼女はアン、この子はルアンジェだ」


「宜しくお願いします」


「……よろしく」


 アンとルアンジェが挨拶をすると「こちらこそよろしくお願いします」とまたもや深々と頭を下げるロレル。正直言って堂々巡りである。


「早速で悪いんだが村長、状況を教えてくれないか?」


「はい、実は…………」


 ロレルの言う事には──最初は畑が荒らされた事が発端だったそうだ。その内に村では貴重な家畜の山羊や鶏が盗まれて、村人総出で辺りを調べると、ノトス村から徒歩で北に半日行った所にある森にゴブリンの群れが棲み着いているのがわかり、そうこうしている内に村人にゴブリンに襲われた者が出て、村人全員でなけなしの金を出し合いギルドに討伐依頼を出したのだそうだ。


「こんな(さび)れた村とはいえ、わし達はここから離れられません。何とぞよろしくお願いします」


 いつの間にか集まってきた村人達とロレルが、またもや頭を下げる。思った以上に事態は深刻なのだろう。


「もう大丈夫ですよ! 私達に任せてください! 迷惑なゴブリン達は必ず退治しますから! ね、ウィル?」


 アンが村人達を元気付けるかの様に、両手を握り締めて胸の前で小さくポーズを取る。どうでも良いけど、あまり安請け合いはしないで欲しいものである。


「──兎に角、そのゴブリン達の根城(ねじろ)には明日の朝に向かう事にする。今夜は俺とアンとルアンジェで交代で不寝番(ふしんばん)に立つ。それで良いか?」


 俺は頭を()きながら、ロレルとアンに確認を入れる。アンは日の傾き具合を見て「そ、そうですね!」と言い、村長であるロレルは「それで結構です」と今日何回目かの頭を下げた。


「それでしたら今夜は空き家にお泊まりくだされ」


 ロレルはそう言うと村の隅の家屋に俺達を案内してくれた。さて、アンとルアンジェとで不寝番の順番でも決めるか……………… 。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 明けて翌朝、ひと晩ルアンジェとアンと俺でそれぞれ交代で不寝番をしたが、幸か不幸かゴブリンが村に来る事は無かった。まぁ来ないに越したことはないんだが…… 。


 手早く朝食を済ませて、準備を整えているとロレルが1人の村人と共に訪ねてきた。ゴブリンの根城の森までの案内役らしい。朝陽が(はる)か彼方の山脈から顔を出すと同じくして村を出発し、約半日行程で目的の森に到着した。


 着いて直ぐにデュークを()び出して、案内してくれた村人に配下(サポーター)ゴーレムを召喚して護衛として付けてから、俺達は森の奥に進んでいった──目の前に突如現れたゴーレムに村人は目をひん剥いていたが。


 因みに今回はファウストにはギリギリまで待機して貰っている。ファウストぐらい高位の獣系魔物は、ゴブリンがその存在を敏感に感じとって逃げてしまう可能性があるからだとは、コーゼスト先生の談である。


 どちらにしてもただ闇雲にゴブリン達の根城を捜し回っても効率が悪いので、今回もアンに森の精霊達にゴブリンの居場所を聞き出して貰うと、精霊達も(いきどお)っておりすぐさま場所が特定出来た。森の北西側に存在する()()()である。そう言えば村長から「以前は森の中に村があった」と言う話を聞いていたな。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 音を立てない様に注意しながら急ぎ移動すると、そこには村落跡の廃屋に棲み着いたゴブリンの個体群(コロニー)があった。コーゼストの探査で大体70匹ぐらいの個体群(コロニー)か? さて──── 。


『これからどうします?』


 コーゼストが珍しく()()()()()()()()()で聞いて来る。

 森の木々に身を(ひそ)めながら注意深くゴブリン達と村落跡を観察する。森の中じゃ無かったら、手っ取り早くゴブリン達が集まっている廃屋に火を放つんだが……どうしたもんだか。


 あれこれと考えていたらルアンジェが(そば)に来て


「私が行く。ウィルとアンは私が取り(こぼ)したのをお願い」


 と、ひとこと言ってきた。しかしなぁ…………


「元々は私が経験を積む為の行為なのだから、何も問題無いはず──違うの?」


『マスター、ここはルアンジェに任せてみては如何(いかが)です?』


 ルアンジェの至極真っ当な意見をコーゼストが支持する。まァ、あまり過保護でも駄目……か。


「……よし、ルアンジェに任せる。ルアンジェ、手早くな。時間を掛ければ掛ける程ゴブリン達に逃げる機会(チャンス)を与える事になる」


「分かった──それじゃあ、行く」


 そう答えるが早い、ルアンジェの姿がフッと消える! 次の一瞬、ルアンジェの姿は森から出て村落跡に向かっていた!

 姿勢を思い切り低くして、地面の上を()う様に駆けるルアンジェ──手にはいつの間にか抜かれた鎌剣(ハルパー)がしっかり握られていた。


 入口付近に歩哨(ほしょう)役をしていた2匹のゴブリンが、凄まじい勢いで突っ込んでくるルアンジェに気付き、奇声を上げながら錆びた槍で返り討ちにしようとして逆に首をはねられ絶命した!


 そのまま村落跡に突入したルアンジェは速度を落とす事無く、途中で出会うゴブリンを斬り伏せながらゴブリン達が集まる大きな廃屋に突っ込んでいった!


 俺とアンはと言うとルアンジェの後を追う様に駆け出し、ルアンジェが廃屋に突入した時には村落跡に到着、すぐさまファウストとデュークを喚び出しながら廃屋に向かい、入口付近を確保する。アンとファウスト達には外で窓等から出ようとするゴブリンを任せた。


 中からはゴブリンの喚声(かんせい)と奇声が入り混じって聞こえ、奥から何匹かの打ち漏らしが錆びた剣を振りかざして現れたが全て返り討ちにした!


 そのまま俺も廃屋の奥に進むと大広間と思しき空間では、ルアンジェの一方的な屠殺が行われていた。無表情で只管(ひたすら)鎌剣(ハルパー)を振るうルアンジェ──そして冒頭部に戻るのだが…………俺、要らないんじゃね?


『マスター、奥に()()大きな反応があります』


 不意にコーゼストが警告を告げる──不味い!

 俺はカイトシールドを握り締めると大広間の奥──ルアンジェの背後に向かって駆け出した!

 次の瞬間、一際大きな影がルアンジェに向かって飛び出して来た! が、俺がカイトシールドで剣戟けんげきを受け止めた!


『──・───どうやらゴブリンジェネラルですね。レベルは40、順位ランクはB+、技能スキル指揮コマンドを保有』


 コーゼストが素早く相手の能力を教えてくれる。お前は何時(いつ)もブレないな?!


 そんな事を考えながらも俺はそのまま、ゴブリンジェネラルをシールドバッシュ(よろ)しく押し返した。体勢を大きく崩して足踏みをするゴブリンジェネラルの背後に、いつの間にかルアンジェが回り込んでいて錆びたロングソードを持つ手を切り落とした! 痛みから吠えるゴブリンジェネラルの胸に俺はカイトシールドの仕込み槍を打ち込んだ!

 断末魔の咆哮を上げるゴブリンジェネラルの首筋に()()()鎌剣ハルパーが左右から当てられ、ガードを引っ掛け合うと()()()()()()()()、その首を跳ね飛ばした!


 哀れゴブリンジェネラルの頭と胴体は永遠に別れたのである。そのむくろの傍らに血の(したた)鎌剣ハルパーを振るい血糊をぬぐう血塗れのルアンジェが一人(たたず)んでいたのだった。


「──これで最後?」


『はい、ゴブリンの反応は皆無。廃屋の外に出たのはアン達が倒したみたいですし』


「そう──ウィル、終わったよ」


 そうコーゼストに確認しながら薄く微笑むルアンジェ──突入してから僅か15分足らずの早業に俺は舌を巻いた。


 ────どうやら月の天使は殺戮者(スローター)だったみたいである。ルアンジェの白い肌に紅い血の花が咲き誇っていた。



ルアンジェの腕試しの筈が……殺戮ショーになってしまいました。それにしても鎌剣(ハルパー)の使い方がえげつない…… 。

今までパーティの中での素早さのトップはアンでしたが、ルアンジェは断トツです! まぁ自動人形(オートマトン)ですしね。


お読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] ウィルがバトルシーンでは今後霞みそうですね(笑)
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