閑話 〈3〉紅霞(ヘイジィ)
本日は閑話を投稿します。
今回は紅霞側からの話になります。
閑話〈3〉
「バネッサ! 抑えて!」
「あいよ!」
私の護りの隙を付いてコボルトが2匹、抜けようとしている! 私はすぐさま戦士のバネッサに指示を飛ばす。バネッサの長剣は1匹のコボルトは仕留めたけど、もう1匹はそれを掻い潜り私達に「強化魔法『大地加護』」を掛けているジェマに向かう!
だけど近付く前にフィリスの弓で額を射抜かれていた──ジェマの前にはスサナが2本の短剣を構え護りを固めていたけど、コボルトが射抜かれると「にゃ~」と力を抜いて短剣を下げた。私の前には5匹のコボルトの死骸が横たわっている。
私はアシュレイ──アシュレイ・ファーザム。冒険者パーティー『紅霞』のリーダーであり、伝説のSクラス冒険者「『看破』のネヴァヤ」の妹だ─── 。
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「リーダー、魔核は集め終わったよぉ~」
スサナがちょこまかと動き回ってコボルト達の解体を済ませ、取り出した魔核を皮袋に纏めてくれていた。本当に猫みたいな子……… 。
「ありがとう」
私は集めた魔核の入った皮袋を受け取りながら礼を言うと「どういたしましてぇ~」と、にへら~としながら返事が返って来る。
「いや~、この位の数の魔物ならもう遅れは取らないみたいだよな~」
バネッサがロングソードを鞘に収めながら笑顔で近付いて来る。その後ろから弓を畳みながらフィリスが「だよね~」と同意を口にし、ジェマは「まだ油断大敵だと思いますよ」と眼鏡をくいっと掛け直す──何時もの光景が目の前に見えて私は思わず吹き出した。
「ん? どしたの、リーダー」
「ううん、何でもない」
不思議な顔をしてバネッサが聞いて来たけど、何とか誤魔化す事が出来た。バネッサは私より1つ年下の19歳で、子供の頃から何時も一緒に行動してきた幼馴染だ。
私は両親を知らない──私の姉、ネヴァヤ・ファーザムに育てられたと言っても良い。姉さんとは25歳もの年の差が有るので親子の様に思われるが間違い無く私の姉である。
幼い頃は近所のおかみさん達が面倒を見てくれて、姉さんは数ヶ月に十何日しか家にはいなかったが──良く面倒をみてくれる優しい私の唯一の肉親だった。そしてそんな姉さんの冒険譚を枕言葉に聞かされ育った私は、姉さんと同じ冒険者を目指す様になり、幼馴染のバネッサ共々、子供の頃から一生懸命に鍛錬してきたのだ。
そして私は17歳になり──姉さんが冒険者を辞めギルマスを務めるシグヌム市冒険者ギルドに、Eクラス冒険者としてバネッサと一緒に登録した。姉さんは反対はせず、ただ困った顔をしていたのを覚えている。
その後バネッサとコンビを組み依頼をひたすら熟し、冒険者クラスがDに上がった頃に思い切ってパーティー結成をした。その時にメンバー募集に集ってくれたのがジェマとフィリスの2人だった。
その頃から私が盾役として大盾と短槍で相手を抑え込み、戦士のバネッサが前で弓士のフィリスが後ろから相手を倒し、魔法士のジェマは補助支援魔法で支援、と言う様式が形作られた。
私達のパーティー名『紅霞』だけど、私とバネッサがお互いの絆を強調する為に左腕に巻いた紅い染布から名付けた名前で、今はメンバー全員の左腕に巻かれていて、しかもより上物の「木綿」を染め上げた私達『紅霞』の象徴だ。Sクラスに昇級したらより華やかな「絹」で染め上げたいのは私の密かな企みなんだけど──── 。
メンバー唯一の半獣人スサナは、『紅霞』がCクラスに上がった時に加入してきた皆んなの妹分だ。何でもずっと西の方から渡って来たらしいけど── 。猫耳と尻尾とクルクル表情が変わる大きな瞳以外、何ら私達と変わらず正に私達の玩具的存在だ。その獣人特有の身のこなしと、斥候の技能の高さは私達『紅霞』と言うパーティーにより一層厚みを持たせる事になった。
そんなこんなもあり、私にとって『紅霞』は私に出来た新しい家族であり、一緒に夢を叶える大切な仲間達なのだ── 。
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私がそんな想いを巡らせているとバネッサが思い出した様に
「そう言えばさ、10日前にネヴァヤ様から手紙来てたけど……何だったのさ?」
本当にこの子は、大雑把に見えてしっかりしているわね………… 。
「うん、これね」
私は腰袋から姉さんから送られて来た手紙を出して見せる。もう何回、何十回と読み直したのでクタクタではあるけど──バネッサは手紙を受け取り読み始める。
「えっと……なになに、『アシュレイ、元気? ちゃんと食べてるの───』」
「…………そこは読まないで」
アハハ……と誤魔化すバネッサ──もう!
「わかっているよ~、ふむふむ……………なになに……………おっ? 『あなた達にうってつけの依頼があるんだけど』だって?!」
「そういうこと」
私は皆んなに、姉さんから未踏破の迷宮の調査と言う依頼を受けるかどうか、手紙に書かれていたのを話した。何でも隣国のツェツィーリア共和国に新しい迷宮が見つかり、向こうのギルドから応援要請があったのだそうだ。
共和国も一刻も早くこの迷宮の危険なのか安全なのかを見定め、金儲けをしたいのだろうとは、姉さんが手紙に書いていた。私達としては手っ取り早く自分達の名を売る事が出来れば良いんだけど…………
「でね。手紙に書いてあったのは『今回はCクラス以上のパーティーを数組選ぶので今のうちにどう?』と書かれていたのよ。んで、皆んなの意見を聞きたいの──私達も参加するかどうか」
そう言うと真っ先にバネッサが
「あたしは受けたいな。今日の戦闘でもあたし達は十分戦えると思う。それに新しい迷宮だよ? 上手く行けばあたし達『紅霞』の名前が売れるかも知れないしね」
と元気良く答えてくれて、それを聞いたフィリスも頷いている。私は冗談めかして
「そうそう、この迷宮を真っ先に攻略したパーティーには『迷宮の命名』が出来るんだって姉さんの手紙に書いてあったよ」
と話すとバネッサとフィリスが顔をこちらに向けて「本当に?!」と聞いて来た。実際書いてあったのだから嘘ではありません。ジェマが何か言おうとしたが、先にスサナが
「あたしはそう言うのがどうのこうのより、やっぱり皆んなで大きな仕事して1つでもクラスを上げるのが一番大切だと思いますぅ~」
と、又にへら~と笑顔で話していた。ジェマは眼鏡を掛け直す仕草をしながら「スサナに先に言われてしまいました」と肩を竦めた。本当にこの子達は………… 。
「なら決まり! 私達『紅霞』はこの依頼を受けよう!」
私がそう宣言すると4人が一斉に拍手を返す。そうなると急いで街まで帰って、ギルドの支店から速達便で返事を送らないと! お金は掛かるけど………… 。
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そんなこんなで姉さんに「やらせて欲しい」と返事を送ってからは慌ただしかった。迷宮探索の為の準備とかが主だったけど………一番の問題だった食糧はジェマが使える収納庫魔法に詰められるだけ詰め込んだ。それ以外の荷物は必要な物以外なるべく減らし皆んなで持つ様にした。
ほど無くして姉さんから連絡があり、私達が選ばれた事と共に、一緒に行動するパーティーの情報が教えられた。未だやれる事は限られているけど──頑張ろう!
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でも結局──第四階層到達早々で、出現する魔物への対応を間違え──バネッサとジェマが茸人の毒に当てられ動けなくなり──何とか倒し切って奥の部屋まで退避して──そうしたら蟻の魔物の様な人──蟻亜人とか言うのに助けられ、彼等の住む街に連れて行かれ──あまりの状況の変わり様に、皆んな考えが追い付けないまま何日か経ち──今、目の前に鈍色の軽鎧を着込んだ目付きの鋭い戦士が──
「あんた達が『紅霞』か──?」
───!?
「もしかして捜索隊?! そう! 私達は『紅霞』! 私はリーダーのアシュレイ・ファーザム!」
ようやく私達は助けられたのだ───── 。
救出対象である紅霞から見る話で纏めてみました!
特に紅霞は今後共、ウィル達にちょこちょこ絡みますので(予定です)。
まァどうして遭難したか、と言う話を描きたかっただけなんですけどね(笑)
*収納庫魔法……今は廃れた時空魔法の一種。魔法士のみならず魔力と素質が有れば習得出来る場合がある。収納出来る質量は魔力の大きさに比例する。
感想等御座いましたらお願いします。また評価等お願いします。




