未知の迷宮へ
本日、第三十四話投稿します!
久しぶりの迷宮回ですが──戦闘シーンはございません!
期待された方に謝罪します!(平伏)
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「ふむふむ、これがギルドの所有する転移陣であるか!」
ラファエルが頻りに感心する。あの後ホテル「翡翠石」に戻りネヴァヤ女史からの依頼の件を話すと、案の定繰り言を言われたがギルド所有の秘蔵の転移陣を使って一気にイオシフの迷宮まで行けると言うと、手のひら返しで「すぐさま行くのである」と詰め寄られた。
お前……人の生き死にが掛かっているの解っているのか?
とりあえずホテルの長期滞在を取消して、翌朝ギルドに皆んなで向かった。玄関ではネヴァヤ女史が待っていて、すぐさま俺達を転移陣のある部屋まで案内してくれた。ネヴァヤ女史はラファエルを見ると驚いた様子ではあったが……聞く機会を逸した。
そして今に至る─── 。
「あの……そろそろ転移陣を起動させたいのですが…………」
担当の職員がオロオロしながら転移陣を眺め回すラファエルに問い掛ける。俺達も転移魔法陣の中でやきもきしていると、ノーリーンがその後ろからつい……と近付き、ラファエルの襟首を掴んでひと言──
「……だ・ん・な・さ・ま~〜あれ程人様に迷惑を掛けない様にと言い聞かせた筈なのですが、もうお忘れなのでしょうか?」
と蔑む様な眼差しを向ける──とラファエルは萎縮し「ソ、ソウデアルナ……」とすごすごと職員を招き入れる。これでやっと向こうに行ける……やれやれ。
職員はラファエルと入れ替わると魔核を管理システムに配置して起動させる。
「はい──・・──・──では転移陣術式起動します。転移目標、イオシフの迷宮入り口」
転移陣が輝き俺達を光が包む。ネヴァヤ女史は俺の眼をじっと見詰めながら
「では、黒の軌跡の皆さん!ご武運を──!」
と頭を下げてくる。ギルマスがそんなに頭を下げるもんじゃない──と言おうとした俺の声は転移の光の中に溶けて消えた。
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「………… 。」
転移の光が薄れ視界が定まる様になってきた。やがて見えてきた人影が俺達に近付きながら
「ようこそ! まだ名もなきイオシフの迷宮へ」
と告げる──どうやら無事に着いたらしい。目が慣れて来ると近付いてきたのはここの担当者らしく、ネヴァヤ女史から渡された許可証を提示すると驚いた様子で書類を確認していた。
やがて遠方話の魔道具で確認し終えたみたいで
「──失礼しました。改めて黒の軌跡一行を歓迎します」
と笑顔で挨拶をされた。聞けば名をマシューと言う青年で、このイオシフの迷宮に設置されたギルドの臨時支部の責任者なのだそうだ。
「ネヴァヤ様から伺っていますが──例の件で宜しいのですよね?」
「そうだ。急かす様で悪いが宜しく頼む」
「いえ、構いませんよ。こちらです──」
俺達は転移陣の有る天幕から先に見える大天幕に案内された。
「──『紅霞』が不明者になって既に今日で4日目……もし無事なら食糧は1週間分持ち込んでいるとの話だったのでまだ持つとは思います。ですがもし誰かが、若しくは全員負傷していた場合は──その範疇ではありません。特に未知の迷宮での遭難は確実に生存率が低下する懸念が高いのです」
マシュー青年は辛そうな面持ちで現状を話す。
「……この迷宮の第三階層まで探索終了しているなら、近道用の転移陣は設置されているのか?」
俺は現状の最良の手を考えながら問い掛ける。
「は、ハイ! それは既に設置運用されていますが──宜しいのですか?」
マシュー青年が言っているのは第一から第三階層までの儲けを取らなくても良いのか、と言う事だが──勿論答えは是である。
「俺達がギルマスから頼まれたのは『紅霞』を見つけ出す事だ。先ずはそれを優先すべきだろうし……」
「他人の探した場所では旨味が少ないであるしな」
ラファエルが単眼鏡を掛け直しながら身も蓋もない言い方をする──そりゃまァ、そうだけど……言い方を考えて欲しいものである。
案の定、ラファエルはノーリーンに怒られている。
「……兎に角、俺達は近道を使って一気に第三階層まで行く事にする。問題はその後の足取りなのだが…………」
「彼女達が突入した扉は現在立ち入り禁止にしていますので、一時解放すれば問題無く追えるかと思います──但しその先どちらに進んだのかは勘になってしまいますが……」
まぁ、その先は俺の持つ斥候技能の技量次第だが──それに
『生命探査なら私の出番だと言う事ですね』
──コーゼスト先生、頼りにしてます。
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第三階層までマシュー青年と共に転移陣で移動した。そこにも天幕が張られ前線本部の様であった。俺達は封印のロープを潜りひとつの扉の前に立つ。
「──では封印解除します。お気をつけて!」
マシュー青年と職員達に見送られ──いよいよ迷宮突入である。扉の向こうには下り勾配の坑道跡が目の前に拡がる。傍らに備えられた魔導照明が照らし出す先は闇が深く横たわっていた。
俺は先にファウストとデュークを顕現させ、手早く準備を整える──と同時に、コーゼストに最大範囲での生命探査をさせた。ファウストは兎に角、デュークを体高を岩窟の高さに合わせて2メルトにする事にした。宛ら鈍い白銀の全身鎧を着込んだ騎士の様である。意外とこちらの融通が聞くのには驚いたが──── 。
それより驚いたのはノーリーンがいつの間にか装備を変えていた事である。何時もの侍女服の下に短袴を着込み、両腕には手甲が両脚には脛当てが装着されていた。あまりにも様になっているので聞いてみるとラファエルのアディソン家に侍女として仕える前は冒険者だったのだそうだ──しかも高位の。
「その昔、拳闘士を嗜んでおりました。『執行人』等とも呼ばれていた時も御座います──この装備も彼此3年振りですね。昔の勘が取り戻せれば良いのですが……」
──何となくだが、ノーリーンが只者では無い気はしていたのだが頼もしい限りである。こうなると益々使えないのはラファエルのみと言う事になる。精々ノーリーンとデュークに護って貰うとしよう。
俺とアンはお互いの装備を再確認し魔導提燈を準備して、その場に特殊な魔核を埋め込んだ。これから放たれる魔力波は水晶地図板に常に表示され位置特定に役立つ代物である。勿論これもギルド所有の秘蔵魔道具の1つで、ネヴァヤ女史から手渡された物なのだ。
「皆んな、準備は良いか?」
俺は忘れた事が無いか各々に確認する。当然自身のも見直す事を忘れない。どうやら大丈夫らしい。
「──良し。コーゼスト、周囲の結果はどうだ?」
『周囲200メルト四方の生命探査完了しました。生命反応は17、うち私達以外のヒトの反応はありません。続けて移動しながら迷宮の探査を継続。この先40メルト下った先で道が二手に別れている模様』
「とりあえずその分かれ道まで出る。隊列は先頭がファウストと俺、その後ろにアン、ラファエル、ノーリーンと後方はデュークで固める。行くぞ……!」
隊列を整え慎重に進んでいく。壁に埋め込んである魔導照明は疎らでしかも薄暗くあまり役に立たない状態だ。まぁ、元々坑道なのだから仕方ないと言えば仕方ないんだが……やがてコーゼストが指摘した通り坑道が右と左に別れている分岐に来た。
「ふむ……これは、どちらかが正解だと言う事かね」
『──再度 確認しました。左右共に進んだ先にヒトの生命反応はありません。魔物の反応は複数存在します』
俺は魔導提燈で、それぞれの道の足元や手の触れそうな岩肌を照らし出し目を凝らす。
これは────
「──こっちだ」
迷わず左側の道を選ぶ。下に薄ら積もった土埃が左側だけ何か通過した痕跡が残されていたのだ。又、壁にも明らかな引っ掻き傷が刻まれていたのを見つけ、ラファエル達に説明すると納得された。
『マスターの斥候技能は私の感覚端末よりも優秀なのですね』
コーゼストからも変な絶賛をされたのが引っ掛かるのだが……この際無視する事にした。
「それじゃあ……この先で魔物と接触する可能性が高いので隊列は俺とファウストが前面、その後ろにアン、ラファエルとノーリーンはやや距離を開けて付いてきてくれ。デュークは2人を護れ。この先に何か手掛かりが有るかも知れないので、何でも気付いたら教えてくれればいい……行くぞ」
俺達は更に慎重に、未知の迷宮の奥に進んで行った────── 。
いよいよ待望の(?)ダンジョン回であります!
ここに来て明かされるノーリーンの素性(笑)。ラファエルは役に立てるのか? それにしてもウィルの斥候能力が高い……
今回無かった戦闘は次回にチラッとありますので、暫しお待ちくださいませ。
とりあえずシリアスな展開が続きますので宜しく御願いします!
*遠方話の魔道具……所謂無線機です。スマホではありません。
*マシュー……シグヌム市冒険者ギルド職員。イオシフの迷宮に開設された仮支店の責任者で結構苦労人。
感想等御座いましたら御願いします。また評価も宜しく御願いします。




