北の大統領は自由闊達?
大変お待たせ致しました! 本日は第311話を投稿します!
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ジュリアス王太子殿下──ジュリアスとステラシェリー王女殿下──ステラ、そして2人の身辺警護を兼ねた俺達氏族『神聖な黒騎士団』の特別分隊の一行は、どうにか無事に目的地であるアースティオ連邦の首都レヴェナントへと到着した。
入都の際、衛兵と恒例(?)のちょっとしたすったもんだもあったが、今はこうして竜車でレヴェナントの大通りを、大統領府が置かれている宮殿を目指して通り抜けている最中だ。街ゆくヒト達からは当然の如くドラゴンキャリーに驚嘆の眼差しを向けられるが、当然断然華麗に無視する様にカイルに指示を出す。
「済まないな、ウィル。父上がドラゴンキャリーでの送迎を頼まなければ、こんなに目立つ事も無かったのに……」
ドラゴンキャリーの客車の中、隣りに座るジュリアスが、俺に対して申し訳なさそうな顔で、軽く頭を下げながらそう口にする。
「ん? ああ、それは別に構わないさ。エリンクス陛下もジュリアス達の事が心配で、この様にしたんだろうしな」
そんなジュリアスに、何の事は無いと笑顔を返す俺。まぁなんのかんの言っても、陛下も人の親と言う事だな──些か度が過ぎている気がしないでもないが。
「その辺はマスターウィルと大同小異ですね、エリンクス陛下も」
「良し、コーゼスト。あとでじっくり話し合うとするか」
俺とジュリアスの会話に茶々を入れるコーゼストに、思わず気色ばむ俺。
そんな俺達を乗せたドラゴンキャリーは、一路宮殿を目指すのであった。
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そうしてドラゴンキャリーでゆっくりと、馬で言う所の常歩でメインストリートを駆ける事15分ほどで、俺達一行は大統領府が置かれている宮殿に到着した。
「はぁ……こう来たか」
今の台詞は宮殿に到着した時の俺の第一声である。オールディス王国のブリシト城とはまた異なる建築様式の、巨大な白亜の宮殿が目の前に堂々と聳えていた。どちらかと言うとメペメリア帝国帝都エカーハルにある皇城メネルドに建築様式が近いか? 流石はこの西方大陸の南北の雄と言えば、メペメリア帝国とアースティオ連邦だけの事はあり、皇城や宮殿ひとつ取っても迫力が違うな、と変な所を感心する俺。
その白亜の宮殿の前では、早馬の連絡を受けてバーナード・オルグレン大統領とその家族、そして幾人かの職員が俺達を出迎える為に並んで待っていた。その列の前でゆっくりと止まるドラゴンキャリー。
程なくしてキャリッジの乗降口の扉が開くと、先ずジュリアスが、次いでステラが、その次に俺が、そのまた次にリーゼとオルガが、そしてその後にアン以下の特別分隊のメンバーとファウスト以下の従魔達がキャリッジから降り立つ。
「ジュリアス王太子殿下、ステラシェリー王女殿下、リーゼロッテ元首閣下、セルギウス卿、そしてハーヴィー卿とその一行よ、ようこそ我がアースティオ連邦の首都レヴェナントへ。私達は貴公らを歓迎する」
両手を広げながら、その様な歓迎の台詞を代表して口にするのはバーナード大統領。
その辺は流石、主催国の代表だけの事はある。
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宮殿の入口で立ち話をするのも何だと言う事で、白亜の宮殿の中に招き入れられる俺達一行。やがて俺達は大統領補佐官の案内で大広間へと通された。補佐官に促されて大広間の長卓の席に皆んなが腰を下ろすと
「改めてジュリアス王太子殿下、ステラシェリー王女殿下、リーゼロッテ元首閣下、セルギウス卿、そしてハーヴィー卿とクランの方々よ。よくぞ参られた」
にこやかな顔で開口一番そう宣うのはバーナード大統領。
「そちらこそ、この度はお招き頂き有難う御座います、バーナード大統領閣下」
大統領の歓迎の台詞に俺達一行を代表してジュリアスが答えを返す。そのジュリアスの言葉に満足気に深く頷く大統領。そのままステラを初めとした俺達(従魔は除く)に手を向けて、大統領に順に紹介して行くジュリアス。そして最後にカイルまで紹介し終えると、今度は大統領から傍に座る家族の紹介が成される。
「丁寧な挨拶痛み入る。私の方からも紹介しておこう。先ずは私の妻のマリシャルティアと娘のリオノーラ、そして息子のエリオットだ」
「妻のマリシャルティア・オルグレンですわ。皆様、どうか宜しく御願い致しますわ」
「私が娘のリオノーラ・オルグレンです。宜しく御願い致します」
「そしてぼ……私が息子のエリオット・オルグレンです。よろしくお願いします」
紹介を受け、マリシャルティア夫人とリオノーラ嬢はお辞儀で、エリオット君は優雅な会釈で俺達に挨拶をするのであった。
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そうこうしてる間にもバーナード大統領の手は、マリシャルティア夫人ら家族からその隣へと向けられる。
「そしてそこの彼は首席補佐官のヴァルター・バスラーで、その隣の彼女は次席補佐官のカチェリーナ・ホールズワース」
「今大統領から紹介に与りました、ヴァルター・バスラーです。皆さん宜しく御願い致します」
「同じく大統領から紹介に与りました、カチェリーナ・ホールズワースです。皆様宜しく御願い致しますわ」
「それと国防省のヴァミリネン・ユニアック長官と幕僚長のマーベリック・ゾルガー将軍だ」
「ヴァミリネン・ユニアックです。ジュリアス殿下とその一行の方々、どうか宜しく御願い致します」
「マーベリック・ゾルガーである。各々方どうか宜しく御願いする。特にハーヴィー卿、貴殿の活躍は聞き及んでいる。宜しく頼む」
大統領の紹介を受けて、此方に向けて礼を執る側近の4人。彼等もまた良く出来た御仁達の様だ。
「さて、それではお互いの紹介も終わった事でもあるし、大舞踏会までゆっくりと寛いでくれたまえ──時にハーヴィー卿よ、疲れている所申し訳ないが、頼まれてはくれないか?」
俺がそんな感心をしていると、話し掛けて来るのはバーナード大統領。
「何です? 頼みって?」
「うむ、どうか我等を貴公のドラゴンキャリーに乗せてはくれないだろうか? 是非とも宜しく御願いしたい」
続く大統領の台詞に、俺は思いっきりテーブルに突っ伏す所だった。
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「うむ! これは中々乗り心地の良い物だな!」
「そうですわね! あなた!」
あの後結局バーナード大統領に根負けして、ドラゴンキャリーに乗せる羽目になった。先の台詞は実際に走行するドラゴンキャリーに乗ったバーナード大統領とマリシャルティア夫人の第一声である。大統領の息女であるリオノーラ嬢と息子のエリオット君は、頬を紅潮させて車窓を流れる景色に黙って目をやっていたりする。
「「「おお……」」」
キャリーのキャリッジに同乗しているヴァルター補佐官やカチェリーナ次席補佐官やヴァミリネン長官も、ただ声少なに、やはり車窓を流れる景色に目を奪われており
「ふむ、このキャリッジで何人の人員が一度に運べるのかね? それに走行時の揺れも少ないが、何か秘密があるのかね?」
マーベリック将軍は軍人らしく、単純にドラゴンキャリーの性能が気になるようだ。
「人員は定員で20人です。揺れが少ないのは、板発条式と呼ばれる懸架緩衝装置と言う機構が組み込まれているからですね」
そんなマーベリック将軍の質問にスラスラと答えるのは、ご存知コーゼスト先生。バーナード大統領以下の他のメンバーからの色々な質問にも、これまた淀みなく答えを返すコーゼスト。俺は全くの門外漢だし、この際、専門的な説明はコーゼストに全て丸投げする事にした。
これはコーゼストやキャリーの御者を務めるカイルの特別手当を増やさねばなるまい。
特にコーゼストは精神的に。
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バーナード大統領達を乗せたドラゴンキャリーは、それから凡そ30分に渡って宮殿周辺の道路を何周か周回する事になった。大統領一家や補佐官達は十二分に堪能したらしく、誰もがホクホク顔でドラゴンキャリーを下車して行った。
「ふぅ……カイルもコーゼストもお疲れさん。本当に疲れたよなぁ」
全員が下りるのを見届けて、安堵の溜め息と共に2人に労いの言葉を投げ掛ける俺。
「いえ、ウィルさんもお疲れ様でした」
「しかし、マスターの「疲れた」は本当に疲れた部類に入るのでしょうか?」
俺の言葉に少し疲れ気味に答えを返すカイルと、カイルとは対照的にしれっと毒を吐くコーゼスト。
「良しッ、コーゼスト。さっきの件も含めて、一度じっくりと話し合おうか?」
そんなコーゼストの台詞に再び気色ばむ俺。
「それはそうと、今日この後は夕食ですよね? やはり歓迎会になるのでしょうか?」
気色ばむ俺を華麗に無視して、しれっと話題をすり替えるコーゼスト。スルーするにも程があるんだが?
「……多分な。何せ俺達は他の国の面子よりも早く来たみたいだからな」
コーゼストにジト目を向けながら、端的に彼女の疑問に答える俺。実際の話、俺達は大舞踏会の2日前にこの国にやって来たのだ。各国の王城や宮殿等には専用の転移陣が設置されているから、恐らく他の国は大舞踏会の前日か当日にアースティオ連邦を来訪する腹積もりだと思われる。
まぁそれ自体悪い事では無いんだが……とかく政と言うのは面倒だな。
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「ジュリアス王太子殿下とステラシェリー王女殿下、並びにリーゼロッテ元首閣下とセルギウス卿、そしてハーヴィー卿の来訪を祝し、併せて全員の健勝、そして活躍を祈念して──乾杯!」
『『『『『乾杯ッ!』』』』』
バーナード大統領はそう音頭を取ると、硝子杯の葡萄酒を飲み干す。それを見てジュリアスとステラとリーゼ、そしてオルガと俺もグラスに入った、他のメンバーは銀杯に入ったワインにやはり口を付ける。マーユは当然の事ながら林檎の果実水だ。
ここはレヴェナントに建つ白亜の宮殿──アルリニア宮の中に設えられた晩餐室である。そこでは大統領主催の歓迎会が執り行われており、俺達は熱烈歓迎を受けていた。主賓はジュリアスとステラ、そしてリーゼとオルガは当然の事なのだが、俺もまさか頭数に入っているとは思わず、吃驚したのはここだけの話だ。
『何を当然の事を……仮にもマスターはオールディス王国の辺境伯ですよ? しかもこのアースティオ連邦では栄誉伯に叙されているんですから、この対応も当然かと』
密かに驚く俺の思考を読んだのか、やや呆れ気味に念話でそう宣うのはコーゼスト。同じく念話の連絡網で繋がっているアン達クランのメンバーも、俺とコーゼストの念話を聞いて「そうだそうだ」と言わんばかりの顔で、俺の方に視線を向けて来る。そんな顔されても……本人に自覚が無いんだから、仕方がないだろが!
全くやれやれだぜ……はァ。
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「ハーヴィー卿、皆も楽しんでくれているかね?」
歓迎会も盛り上がってきたところで、ジュリアス達との歓談を終えたらしく、バーナード大統領がマリシャルティア夫人ら家族を伴いながら俺達の座る席にやって来た。
「これは大統領閣下。ええ、おかげさまで皆んな存分に楽しんでいますよ」
そう言いながら軽く大統領に会釈する俺やアン達。コーゼストが珍しいモノを見た顔をしているが、無視だ無視。
「それは重畳。それでハーヴィー卿、楽しんでいる所を済まないが、またひとつ頼まれてはくれまいか?」
俺の返事を聞いて深く頷くと、その様に頼み事をしてくる大統領。
「……それは内容によりけりですが」
その様子に何となく嫌な予感がして、自然と身構える俺。すると大統領は
「何、難しい話では無い。卿やクランの皆の冒険譚の数々を、私や妻や子供達に話して聞かせて欲しいのだ」
物凄い爽やかな笑顔で、且つ少年の様な眼差しで、その様に宣う。そのすぐ傍に居るマリシャルティア夫人やリオノーラ嬢やエリオット君なんかも、大統領同様に瞳をキラキラと輝かせて盛んに頷いていたりする。
そう言えば「そう言う話」も込みで、エリンクス国王陛下から「依頼」されていたな、と改めて思い起こす俺。
「そう言う話でしたら……」
俺は若干の苦笑いと共に大統領一家に、今日までの冒険譚を話して聞かせるのであった。
全く……エリンクス陛下と言い、ギヨーム皇帝陛下と言い、お偉方は皆んなして冒険譚に飢えているのか?!
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




