小さな晩餐会にて① 〜いつも通りにバタバタ〜
大変お待たせ致しました! 本日は第306話を投稿します!
-306-
「ジュリアス殿下、並びにステラシェリー殿下の来訪を祝し、併せて皆んなの健勝、そして活躍を祈念して──乾杯!」
『『『『『乾杯ッ!』』』』』
俺が乾杯の音頭を取り、ジュリアスとステラは硝子杯の、他の皆んなは銀杯の葡萄酒に口を付ける。勿論マーユを始めとする子供達のコップの中身はワインなどではなく甘橙の果実水だ。
ここはラーナルー市に在る俺の屋敷、その中に設えられた晩餐室である。いつもは大人数な集まりが多くて、滅多に使われていなかった晩餐室だが、今回は漸く日の目を見る事になった。因みに晩餐室の定員は30名であり、今回の様な中規模な晩餐会にはお誂え向きだったりする。
ジュリアス達2人を歓迎する為に急遽行われる事になった今夜の晩餐会だが、出席者は先ずは主賓であるジュリアスとステラ、この俺とコーゼストとマーユ、アンとエリナとルピィとレオナとオルガの奥様'S、ユーニスとルアンジェとアリストフとジゼルとクロエとマリオンとクロノ、そしてディオへネス・ヒギンズ伯爵一家とエヴァン・フォン・マイヤーズ伯爵一家とヤト達魔物娘'Sとイーヴァインと言う面子である。
特にギルマスの所のイザナ夫人は兎も角、その娘のマリベル、そしてエヴァンの所の息子のラッツェル君とは、何気に初顔合わせだったりする。因みにマリベルは今年14歳、ラッツェル君は13歳だそうな。
是非ともステラやマーユと仲良くして欲しいものだ。
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「それにしても……本当に旦那様達には驚かされてばかりだねぇ」
乾杯の音頭の直後に、そう宣うのは俺の傍にいたオルガ。彼女の所には昨日エリンクス国王陛下から直に、今回のジュリアス達の護衛の件について連絡が来たそうな。それだけでも十分に驚いたのだが、連絡があった翌日にジュリアス達が俺の屋敷を来訪していた事に二度吃驚したらしい。
「しかし……そんなに吃驚する事かね?」
「それは時と場合によりけりだけど、ねぇ? 真逆陛下が私より先に旦那様に声を掛けるとは思わなかったし、真逆両殿下が昨日の今日で旦那様の屋敷にご来訪されているとは思わなかったからね」
そう言って苦く笑うオルガ。その並びではアン達も苦笑している。何でもオルガ自身も件の大舞踏会には、元より参加するつもりだったので、近々俺にその事を話して、俺を自分の配偶者として大舞踏会に連れて行くつもりだったらしい。まぁそう言う事なら、俺も拒むつもりは毛頭ないから一向に構わないんだが……って、ちょっと待てよ?
「……もしかしなくても、オルガより先にリーゼから誘われたかも知れない訳だよな?」
「そうだねぇ、その可能性もゼロではないね」
そう言うと苦笑を深めるオルガと、その答えに愕然となる俺。言われてみれば確かに、オルガもリーゼも世界評議会のメンバーなんだから、そう言う話があっても何ら不思議では無いんだよなぁ。
幾ら昨日今日とバタバタしていたとは言え、すっかりその事を失念していた俺なのであった。
これも奥様が沢山いる弊害なのかね?
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とりあえずリーゼには後で連絡するとして、今はジュリアス達をおもてなしする事に注力しなくては、と気持ちを切り替える俺。何せ今夜のパーティーは俺が主催者なんだからな。そんな事をつらつら考えながらもジュリアス達に声を掛ける。
「ジュリアスにステラ、2人とも楽しんでくれているかい?」
「うん? ああ、美味しい料理とワインを存分に楽しませて貰っているよ。なぁステラ?」
「ええ、お兄様の言う通りですわ。ウィル兄様のお屋敷の料理人の方は大した腕前ですわ。王城の宮廷料理人並か、それ以上の腕前ですわね」
俺の言葉にそれぞれ料理を食べる手を止めて、我が家の料理人を絶賛してくれるジュリアス達。これはアレだな、一段落ついた所でジアンナ達を紹介する様だな……等と思いつつ
「それは良かったよ。まぁ何はともあれだ、存分に楽しんでいってくれ。何せ2人はお客さんなんだからな」
2人にはそう声を掛ける。すると「それは勿論」と見事なまでに声が重奏する2人。流石は兄妹、息はピッタリである。
「良し、それじゃあマーユ。お父さんは他のヒトの所を回ってくるから、ジュリアス達のおもてなしは頼んだぞ?」
そんな会話の後、俺は直ぐ横に座るマーユにそう声を掛ける。
「はぁい! お父さん! 任せてッ!」
マーユはマーユで小さな体にやる気を漲らせながら、元気良く返答をして来る。それを微笑ましく思いながら、ジュリアス達に断りを入れて、俺とコーゼストは席を立つのであった。
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席を立った俺とコーゼストは、先ずは直ぐ傍に座るアン達奥様'Sの所へと向かい、共に今夜のパーティーの客人への挨拶回りをしたい旨を伝えた。その結果、アンとオルガはマーユと共にジュリアス達の饗応役を買って出てくれて、エリナとルピィとレオナの3人が俺に同行してくれる事になったのである。
まぁ、それはそれとして。
アン達奥様'Sに声を掛けた俺は、その足でギルマスとエヴァンの所へと向かった。気が付けば、いつの間にか俺達の背後には執事のディナールが、それこそ影のようにしっかりと付き従っていたりする。相変わらず気配遮断が上手なディナールに、密かな戦慄を覚えつつも、エリナ達共々ギルマス達に声を掛ける。
「こんばんはギルマス、エヴァンも。今夜は楽しんでくれているかい?」
「ん? おお、ウィルか? まぁそれなりには楽しませてもらっているよ」
「こんばんは、ウィル殿。はい、楽しませていただいておりますよ」
俺の問いにそう答えると、不意に俺に向かって臣下の礼を執りながら
「「今宵は格別の御配慮痛み入ります、辺境伯閣下」」
などと物凄く爽やかな笑顔で口上を述べて来る2人。
「……2人にそんな風に言われると、俺の尻がムズムズして逆に落ち着かないんだが?」
そんなギルマスとエヴァンに対して、何とも言えない顔でそう答えざるを得ない俺。
はァ……アンタら、俺がこうしたの苦手なの分かってやっているだろう?
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「まぁそれはそれとしてだな、ウィル達には改めてうちの娘を紹介しておこうか」
「そうですな。それでしたら私の息子も紹介させていただきたく思います」
俺のそんな葛藤など華麗に無視しながら、話を進めるのはギルマスとエヴァン。スルーするにも限度と言うものがあるんだが? 俺がギルマス達に思わずジト目を向けていると
「こんばんは! 辺境伯閣下におかれましてはご機嫌麗しく、私がディオへネスの娘のマリベルと申します!」
「へ、辺境伯閣下、お初にお目にかかります。ぼ……わ、私がエヴァン・フォン・マイヤーズの息子の、名前をラッツェルと申します」
褐色の総髪の小さな淑女と、少し長めの金髪を垂髪にしたやはり小さな紳士が、それぞれにお辞儀と臣下の礼を執りながら挨拶をして来た。
「これはこれは、丁寧な挨拶を有難う。俺が辺境伯のウィルフレド・フォン・ハーヴィーだ。2人のお父さん達には色々とお世話になっているよ。辺境伯なんて言っているが、冒険者が本職なんでね。2人もどうか気軽に接してくれると有難い」
挨拶して来たマリベルとラッツェル君に対して、ジト目から一転、できる限りの笑顔でそう答える俺。子供にジト目顔を見せるのは、教育上宜しくないからな。
「「わかりました、ではウィル様とお呼びさせていただきます」」
俺の言葉を受けて、そう答えを返してくるマリベルとラッツェル君の2人。
本当は様付けも遠慮したいんだが、この辺が妥協点だろうと、ひとつ頷く俺であった。
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「それじゃあ……ギルマス達もエヴァン達も、時間までゆっくり楽しんでいってくれ」
その後、二言三言ギルマス達と言葉を交わした俺が、そう言って席を離れようとした所で
「すいません、ウィル様! ウィル様の従魔さん達と是非お話させてくださいませんか?!」
その様に宣うのはマリベル。
「あっ、ぼ、僕も会ってみたいです」
マリベルに続いてラッツェル君もそう口にする。
「それは一向に構わないが……ギルマス、エヴァン、2人を連れて行ってもいいかな?」
「ああ、折角の機会だからな。構わんぞウィル」
「私も一向に構いませんよ。寧ろこちらからお願いさせていただきます」
ギルマスとエヴァンは快く了承し、イザナ夫人とイヴリン夫人も笑顔で頷いている。それならばまぁ良いか…… 。
「よしッ、それじゃあ2人とも俺達と一緒に行こうか?」
「「は、はいっ! よろしくお願いしますッ!」」
俺の言葉に淡褐色の瞳を、文字通りキラキラさせて返事をするマリベルとラッツェル君。その様子に何とも言えない顔で、何とも言えない笑みを浮かべるのはエリナ以下の俺の奥様達。
「どうやら子供にとって、ヤト達魔物と言う存在は意外と人気があるみたいですね」
そこで呟く様に宣うのは、今の今まで無言を貫いていたコーゼスト先生。唐突過ぎるのも程があるぞ?
だがまぁ、言い方はアレだが実に言い得て妙だなと、燥ぐマリベル達を見ながら、そう思う俺なのだった。
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兎にも角にもマリベルとラッツェル君を加えた俺達は、ギルマス達の所から晩餐室の奥を陣取るヤト達魔物娘'Sとイーヴァインの所にやって来た。
「もぐもぐッ、あっ、 御主人様! エリナ達やコーゼストもいらっしゃいッ!」
皿に山盛りの血塗牛の炙り肉を頬張っていたヤトが、先ず俺達に気が付くとそう声を上げる。どーでもいいけど、ちゃんと咀嚼して食べろよ?
「もうヤトったら……食べるか喋るかどちらかにしなさいな。御主人様、エリナさん達にコーゼストもいらっしゃいませ」
そんなヤトを諭す様に声を掛けてから、此方に向かって挨拶をするのはセレネ。そー言っている割にはセレネさん、君も蜜桃を手に持ったままだったりするよね?
「くふっ、ヤトもセレネも仕方ありませんね。ようこそ主様、エリナさん達にコーゼスト殿も。其方の小さなお客様は初めてですわね? 妾は女郎蜘蛛の、名をニュクスと申しますの。以後良しなに」
「これはこれは主殿。奥方殿達やコーゼスト殿と一緒に挨拶回りかの? それと其方のお子達とは初めてじゃな? 儂は暗黒霊騎士のイーヴァインと言う者じゃ。ひとつ宜しく頼む」
片やニュクスとイーヴァインは、マリベル達の姿を認めると、銘々に2人に向かって自己紹介をする。こうして見るとヤトよりもセレネ、セレネよりもニュクスやイーヴァインの方が、より知性的に見えるんだが──偏見か?
兎に角こうした個々の対応の違いを見るにつけ、それぞれに個性があるなと、改めて思う俺なのであった。
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「えっと、アナタがマリベルで貴方がラッツェルね! 私が半人半蛇のヤトよ! 改めてヨロシクねッ!」
「マリベルちゃんとラッツェル君と言うのですね? 私は女王蛾亜人のセレネと言いますわ。改めて宜しくお願いいたしますね」
とりあえずヤトとセレネの食事の手を一旦止めさせて、改めてマリベルとラッツェル君に自己紹介をさせた俺。勿論ヤト達にはマリベル達の事は、ちゃんと手を向けて紹介しておいたのは言うまでもない。
2人ともラッツェル君の事は兎も角、マリベルの事を「ギルマスの娘」と紹介したら「あのギルマスの娘ねぇ」と、やたら意味深な発言をしていたのが気に掛かるが、深く考えたら負けの様な気がするので、これまた華麗にスルーする事にした。
「ふわぁぁぁ、本当にラミアにモスクイーンにアラクネにリビングアーマーなんですね! お父さんに聞いていた通り!! 皆さん、よろしくお願いしますッ!」
「えっと、ヤトさんにセレネさんにニュクスさんにイーヴァインさんですね。皆さん今後ともよろしくお願いします!」
俺がそんな事を思っていると、興奮した面持ちでヤト達と挨拶を交わす、マリベルとラッツェル君の2人。何と言うか、うちの従魔達は子供の扱いに長けてるな…… 。
「これもマーユちゃん効果なんでしょうね」
その様子にそう口にするのは、ご存知コーゼスト。
やはりマーユの可愛さは種族の垣根を越えて、認められるモノらしいな! こんな事言ったら、また誰かさんに親馬鹿と言われそうだが!
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




