陛下の依頼 〜護衛と誘いと〜
大変お待たせ致しました! 本日は第304話を投稿します!
-304-
慌ただしかったクロノの一件から、凡そ1ヶ月が経った。
この1ヶ月の間、俺はどうしていたのかと言うと、「魔王の庭」の第十二階層の生産設備──古代魔族が言う所の『工廠』の予備施設に、王都冒険者ギルド本部と王城魔導研究機関の職員達を何回かに渡って、分隊『混沌』と共に調査の為に案内していたりする。
王都ギルド本部職員達は勿論の事だが、何故に王城魔導研究機関の職員達も案内していたかと言うと、それは偏にこの『工廠』が魔法生命体製造に特化していたからに他ならない。何せ今の俺達ヒトは、漸くヒトに近い動きをする自動人形を創り出せる技術しかないからだ。
特にエリンクス国王陛下直属の王城魔導研究機関からすると、この『工廠』の調査で単純にホムンクルス製造が出来る様になるだけでなく、オートマトンの製造技術をも格段に向上させられる可能性が大きいからだ。
正直な話、この調査行については俺は門外漢だが、こちらにはコーゼストと言う「歩く非常識」……もとい、その道の専門家が居るからな、正に「蛇の道は蛇が知る」と言う奴だ。まぁエリンクス陛下も十中八九ソレを狙っての、子飼いの王城魔導研究機関の投入なんだろうけどな。
とまぁ、ハーヴィー騎士団の恒例の早朝鍛錬以外にそんな事をしていたある日、俺とコーゼストはエリンクス陛下から王都ノルベールにある王城ブリシト城まで、いきなり呼び出されたのであった。
コーゼストは兎も角として、何故に俺が?
~~~~~~~~~~
呼び出しを受けた翌日、早速転移魔導機を使い、俺とコーゼストは王城へと登城した。城内ではいつもの様にサリヴァン侍従長に先導され、長い廊下と幾つもの階段を通ること暫し、当然の如く玉座の間へと通された。本当ならトランスポーターで一気に、玉座の間まで行ける気になれば行けるのだが、そこはまぁ様式美である。
いつもの様に通された玉座の間の一段高い壇の豪奢な玉座には、エリンクス陛下がお座りになられ、その向かって右隣の玉座にはマティルダ王妃が、向かって左隣のこれまた豪奢な椅子にはジュリアス王太子が、更にその左隣にはステラシェリー王女が座られていた。ここに国王陛下一家が勢揃いである。
「エリンクス国王陛下、ウィルフレド・フォン・ハーヴィー並びにコーゼスト、召喚に応じて罷り越しました」
そう言うと臣下の礼と共に、深く頭を垂れて畏まる俺とコーゼスト。これもまた様式美だな。
「うむ、大義である。ハーヴィー卿とコーゼスト卿も楽にしてくれたまえ」
エリンクス陛下の言葉に礼を解いて顔を上げる俺達。国王陛下は俺が顔を向けると格好を崩しながら一言。
「呼び出したのは他でもない。今日はウィルとコーゼスト殿に頼みたい事があってな」
「……それは話の内容によりけりですが」
陛下の言葉に少し警戒心を強める俺。厄介事じゃなければ良いんだけどな…… 。
「うむ、実はな──」
そう前置きしてから、陛下は俺とコーゼストに用件を話し始めたのであった。
~~~~~~~~~~
エリンクス陛下の話によると──何でもここ何年か前から、世界評議会の参加国の持ち回りで年に1回、各国互いの親睦を深める為に大舞踏会が行われているそうな。それでもって今回はその大舞踏会が、北の大国アースティオ連邦で執り行われる事になったのだそうだ。まぁ俺はまだ世界評議会の構成員になってから日が浅いので、そんな事をしていたとは知らなかったのだが。
「──それで此度は私と王妃の代理として、ジュリアスとステラシェリーの両名を行かせる事にしたのだよ。ジュリアスは兎も角、ステラにとっても良い経験となるだろうと思ってな。そこでウィルよ、お前とお前の氏族には、2人の護衛役を務めてもらおうと思って、こうしてわざわざ来てもらったのだ」
そう言って長い話を締め括る陛下。まぁそう言う事なら、此方としても別に構わないが…… 。
「……そう言う事なら普通は近衛騎士団の誰かを付ければ良い話じゃないのか? 何故俺達なんだ?」
ふと、心に湧いた疑問を陛下に向かってぶつける俺。この際、口調が完全に素なのは勘弁して欲しい。
「うむ、ウィルの疑問はもっともだな。実はな──」
そこまで言うと急に声を潜める陛下。
「──実は? 何だ?」
それに釣られて俺も思わず小声になる。
「うむ、今回の開催国のアースティオ連邦のバーナード大統領が、是非とも「英雄」のお前やコーゼスト殿の冒険譚を直に聞かせて欲しいそうなのだ」
陛下の台詞に、俺は全力で床に突っ伏すところだった。
~~~~~~~~~~
「まぁ、バーナード大統領も私に似て冒険譚がお好きだからな。それ等も含めてどうか頼まれてはくれまいか?」
俺のそんな状況を知ってか知らずか、そこまで言うと俺に向かって、軽くではあるが頭を下げるエリンクス陛下。仮にも一国の王に頭を下げられているにも関わらず、それでもこの話を受けなかったら俺の男が廃る。俺はデカい溜め息をひとつ吐くと
「はぁ……わかった、分かりました。ジュリアス王太子とステラシェリー王女の護衛役、確かに引き受けさせて貰うとするよ」
と了承の意思を口にする。俺の横ではコーゼストが物凄いジト目で見てくるが、断然華麗に無視する。
「おお! そうかそうか! 引き受けてくれるか!? これは重畳であるな!」
俺の返事を聞いて喜びの言葉を言い表す陛下。
「ハーヴィー卿、コーゼスト卿。本当に有難う。心からお礼申し上げますわ」
その傍ではマティルダ王妃が、やはり感謝の言葉を口にし
「ウィル、そしてコーゼスト卿も本当に有難う! 良く引き受けてくれたな!」
「ウィル様!コーゼスト様! 護衛役をお受けくださり本当にありがとうございますッ!」
ジュリアスとステラシェリー王女の2人からも、感謝の言葉が投げ掛けられる。それが何かこそばゆい感じに思えて
「そ、それで? その大舞踏会はいつ開催されるんだ?」
無理矢理話題を切り替える俺。すると陛下からは
「うむ、丁度今日から20日後だな」
開催日時について、そう答えが返ってきたのであった。
~~~~~~~~~~
とりあえず此方の方も色々と準備があるので、一旦ブリシト城を辞して屋敷へと戻った俺とコーゼスト。帰宅して直ぐにハーヴィー騎士団のエリナ達は勿論の事、今「魔王の庭」に潜っているチーム『秩序』のアン達やチーム『戦乙女』のジゼル達には、遠方対話機で直ちに参集する様に呼び掛けた。
明けて翌日、屋敷の大広間には参集に応じたエリナ達と、クラン『神聖な黒騎士団』のメンバーが一同に会していた。こうして見るとウチのクランもかなりの大所帯なんだなぁ、と改めて実感したりする。
「お父さん、お父さんのクランって本当にヒトが多いんだね……」
「ああ、そうだな……マーユの言う通りだ」
俺の傍にいる愛娘のマーユの台詞に、そう答えざるを得ない俺。
因みに今この大広間に居るメンバーはと言うと、ハーヴィー騎士団からはエリナとベルタとユーニスとフェリピナとマルヴィナ、チーム『秩序』からはアンとレオナとルアンジェとスサナとルネリートとアリストフとエアハルト、チーム『戦乙女』からはジゼルとクロエとミアとフェデリカとマリオン、そして俺とマーユとコーゼストとクロノと、俺の従魔’Sのファウストとデュークとスクルドとヤトとセレネとニュクスとイーヴァインとなる。ヒトだけでも18人にホムンクルスが2人にオートマトンが1人に従魔達7体と、結構な大人数である。
更に因みに、ファウストとデュークとスクルドの3体は、短身モードで顕現している。そうでもせんと、大広間に入り切らないからなぁ。
~~~~~~~~~~
「あーっと、皆んな聞いてくれ」
久しぶりに一同に会して賑々しいメンバー全員の前で、そう声を張り上げる俺。同時に全員の視線が俺に集まる。そんな視線が集まる中
「えっとな、話はテレ・チャットでざっと話した通り、ジュリアス王太子とステラシェリー王女を護衛しながら、アースティオ連邦で行われる大舞踏会に参加すると言う内容なんだが……ここに居るメンバーから選抜して特別チームを編成する事にするとして、皆んなの意見を聞かせてくれないか?」
俺は思っていた事を包み隠さず、皆んなに問い掛ける。こればかりは俺の独断で決める訳にはいかないからな。
「はいっ」
俺がそんな風に考えていると、徐ろにアンが手を挙げた。
「アン、どうぞ」
挙手をするアンに手を向けて発言を促す。
「ウィルとしては誰を連れて行くか、貴方なりの考えがあるのかしら?」
「ん? そうだなぁ……先ず俺とコーゼストは外せないとして……後はアンとエリナとレオナ、かなぁ? 何せ3人は俺の奥さんだしな」
そこまで言って、ふと今名前をあげたアン達3人に目をやると、3人が3人ともほんのり頬を赤らめていたりする。お願いだからそんなに照れないでくれないか? こう言うのもアレだが、言った本人もかなり恥ずいんだからな!
「またマスターの天然色事師発言が炸裂しましたね」
俺の傍で、そうボソッと呟くコーゼスト。
何だよ、その天然色事師発言って!? 人聞き悪い事言うなよな?!
~~~~~~~~~~
「えへん! と、兎に角だ! 今言ったメンバーは外せないとして、あとは誰を連れて行けば良いのかな?」
話があらぬ方向へ向かいそうだったので、無理矢理話の矛先を元に戻す俺。他のメンバーからの生暖かい視線は、断然華麗に無視する。
「えっ、はっ?! えと、そ、そうね! 殿下達お2人の身辺警護には、私とエリナとレオナと……あとはうちのチームからルアンジェと回復要員として常時回復が使えるアリストフ、それとチーム『戦乙女』からジゼルとクロエと……マリオンかしら? ジゼル達は経験を積むと言う意味で良いと思うの。エリナ、レオナ、どうかしら?」
俺の言葉に再起動したアンさんが、慌て気味に自身の考えを口にすると、今度はエリナとレオナの2人に話を振る。この際、話し方が若干しどろもどろなのはご愛嬌である。
「え!? あっ、ええっと、そ、そうね。それなら経験を積ませると言う意味で、私は騎士団からユーニスを連れて行くわ。本当ならベルタも連れていきたいけど……彼女には騎士団長代理を務めてもらおうと思っているの」
「あ、えと、あたしも特に無いかな。アンやエリナの言う通りで良いと思うよ」
アンに話を振られたエリナとレオナも、やはり若干しどろもどろになりながらも、何とかそう答えを返す。アンやエリナ、そしてレオナの意見に、他のメンバーからも特に異論は無いようで、皆一様に頷いていたりする。
どうやら割とあっさり決まりそうで何よりである。
~~~~~~~~~~
「ええっと、それでウィル? やはり貴方のチーム『混沌』のメンバーも全員連れて行くのかしら?」
俺が事の成り行きに1人納得していると、徐ろにそう尋ねて来るのはアンさん。
「ああ、そうなるな。と言うか、ジュリアスからは「是非とも連れて来てくれないか」と言われているしな」
アンの問いに、そう苦笑いを浮かべながら頷く俺。俺の答えに「ああ、そうよね」と、納得するアンと他のメンバー達。その辺は流石、エリンクス陛下の血筋の面目躍如である。
「それとな、実はステラシェリー王女殿下からも頼まれている事があって……マーユも連れて行こうと思っているんだ」
「えっ!? 私も連れていってくれるの、お父さん?!」
俺の更なる発言に、今まで大人しく話を聞いていたマーユが俄に色めき立つ。一方でアン達は「やっぱりね」と、割とあっさりとした反応だったりする。
まぁそれはそれとして。
「ああ、だからマーユにはステラシェリー王女殿下の『おもてなし役』を頼むよ」
「わぁーい! だからお父さん、大好きッ!!」
笑顔で答える俺に抱き着いて、花も綻ぶ様な笑顔を浮かべるマーユ。うんうん、やはり俺達の愛娘は可愛いなぁ。
「はぁ……全く何を親馬鹿しているんですか? 我がマスターは」
俺とマーユの会話を聞いて、これまた物凄いジト目を向けてくるコーゼスト。いいじゃんか! 可愛いは「正義」だゾ?!
兎にも角にもこうして殿下達2人の護衛役総勢13名+αが、今ここに決定したのであった。
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




