表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
怒涛の再調査と新たなる事実編!
311/330

Re.twelve level③ ~器の覚醒、そして新しき名~

大変お待たせ致しました! 本日は第294話を投稿します!

 -294-


「魔王の庭」第十二階層最奥部の生産設備(プラント)──古代魔族(アンデモン)の言う所の『工廠(こうしょう)』の予備施設、そこの更に最奥に有る調整槽(アジャストメント・タンク)のひとつがコーゼストの操作により500年もの昔から目覚めた。


 調整槽(アジャストメント・タンク)内にある謎の液体が見る間に排水されて行き、その中に浮かんでいた「魔王の器」がタンクの床に足をつけて、遂には二本足で立ち上がる。やがて完全に排水されると、半透明の硝子(ガラス)の様な柱──云わばタンクの外壁部分が音もなく開いて、タンク内部の機械から身体のあちこちに繋がっていた(コード)(チューブ)が、次々と外れて行き、「魔王」がゆっくりとタンクの外へと歩み出て来た。「魔王」は最後まで口元を覆っていた面頰(マスク)のチューブ部分に手を掛け、これまたゆっくりとした動作でマスクを引き剥がすと、これまた(うつ)ろな視線で辺りを見回している。


「魔王」の見た目は腰まである黒髪に黒い瞳で年齢は16、7歳か? まぁ飽くまでも見た目年齢なので確定は出来ないが…… 。


「……なぁイーヴァイン。彼は「魔王」で間違いないのか?」


 俺は直ぐ(そば)呆然(ぼうぜん)としている暗黒霊騎士のイーヴァインにそう尋ねる。


「はっ!? う、うむ、た、確かにあのお顔立ちは「王」の物じゃが……」


 俺の声に目を覚ましたか、何とかそれだけを口にするイーヴァイン。そうこうしている間に「魔王」の視線が俺を捉えた。そして


「I ask you, are you my master?」


 言葉の意味は分からないが、俺にそう話し掛けてきたのである。


~~~~~~~~~~


「あれは古代神代(じんだい)言語ですね──魔王殿、古代大陸語に変換(コンバート)して下さい」


 その時それまで黙っていたコーゼストが、俺と魔王に対してそう言葉を掛けてくる。すると


「This is rude────あ、あーっ、これで良いかな?」


 途端に馴染みのある言葉遣いになる魔王。その辺はやはり魔法生命体(ホムンクルス)らしい。


「あーっ、コホン。では改めて問おう、(なんじ)が私の主人(マスター)なのか?」


 仕切り直して俺に向かってそう尋ねてくる魔王。そんな所はやたら普通のヒトっぽい。まぁホムンクルスなんだが! 俺が1人で頭の中でボケツッコミをしていると


「マスター。ボケてないでちゃんと答えてあげて下さい」


 凄まじいジト目を向けながら、的確な突っ込みを入れてくるコーゼスト先生。何か色々と申し訳ない。


「んん! た、確かに俺があんたのマスターだが……」


 魔王に対してそう答えを返す俺。すると魔王は


「そうか、それでは私こと『Demon.Lord(デモンロード)666(トリプルシックス)』の所有権をマスターに移譲しよう」


 殊更(ことさら)嬉しそうにそう言い切るのだった。だがちょっと待て、魔王の所有権だって?!


「マスター。魔王はマスターとの「血の(コンストラクト)契約(・オブ・ブラッド)」により、マスターを正式な所有者(オーナー)と認めたのですよ。(あきら)めて下さい」


 唖然(あぜん)とする俺に向かって、そう言い放つコーゼスト。あまりの出来事に目が点になる俺。俺の目の前には誇らしげに胸を張る全裸の魔王の姿があった。


 そらまあ、確かに「血の(コンストラクト)契約(・オブ・ブラッド)」はしたけど……まさか魔王を()()する事になるとは思いもよらなんだ──はァ。


~~~~~~~~~~


 何はともあれ、この生産設備(プラント)──工廠の予備施設の調査は未だ途中なのだ。なので改めてヤト様魔物娘’Sに引き続き施設の調査を指示する俺。ファウストとデュークにも再度部屋の出入口での周辺警戒に就いてもらったのは、言うまでもない。


 なので必然的に俺の傍にはコーゼストとイーヴァイン、そして目覚めたばかりの魔王が居る事になる。とりあえずいつまでも魔王を全裸で居させる訳にも行かず、コーゼストの無限収納(インベントリ)から俺の服を出して着させる事にした。多少だぶついているが、まぁ許容範囲だろう。


 兎に角場所を魔王が眠っていた調整槽(アジャストメント・タンク)から、管理機構(システム)の有る小部屋へと戻り、調査を続ける俺とコーゼストとイーヴァイン。その様子を興味深そうに見ている魔王に、俺は質問をぶつけてみる事にした。


「なぁ魔王」


「ん? 何かな? マスターよ」


「俺の相棒の話だと、あんたには勇者に討たれる前の生前の記憶があるんだろ?」


「そうだな……記憶と言うか、知識としては有るな」


「そもそも何で世界征服なんかしようとしたんだ?」


 魔王はふむ……と短く考えると


「それは……この既知世界を統一して、神に挑む為だったのだよ。(こころざし)は道半ばで頓挫(とんざ)してしまったが……」


 そう言って寂しそうに力無く笑う魔王。聞けば魔王は当時の神の過度なヒトへの干渉に不満があり、それ等を正す行動として世界征服を目指したらしいのだ。


 まぁ当事者が言う話だし、それで間違いないのだろう。やり方は此方(こちら)も過激でアレだが。


~~~~~~~~~~


 俺と魔王の話はまだ続いていたりする。


「なぁ、あんたは「魔王」の「器」なんだろ? 聞いた話だとあんたの中には「魔王」の「魂」が入っていないらしいが……本命の魔王の「魂」は何処に行ったんだ? それに「魂」が無い割には、普通に活動出来ているのは何故なんだ?」


「確かに私は「(プシュケー)」の「器」ではあるが、生命活動を維持する為に「魔王」の人格を模した、云わば「疑似人格」が生前の記憶と共に入力(インストール)されているからだな。本当の私の「魂」が何処に行ったのかは、私自身よく分からないのが実情だ」


 俺の問い掛けにこれまた丁寧に答える魔王。と言うか、魔王の「魂」は本当に何処に行ったのか? まぁ今目の前に居るこの魔王の「器」は、特にその辺の事は気にしていないみたいだし、特段不自由はしてないみたいだから……良い、のか? 俺が1人で悶々としていると


「お、王よ、(わし)の事は覚えているかの?」


 それまで黙って俺と魔王の会話を聞いていたイーヴァインが、やや遠慮しがちに魔王に向かってそう尋ねて来た。


「ふむ……汝はイーヴァイン・ナイトリー騎士団長であろう? 久方振りだな──とは言え、今の私は「魔王」であって「魔王」では無い存在だ。(ゆえ)にそこまで(かしこ)まる必要は無いぞ?」


 イーヴァインの問いにそう答えると、また寂しそうに笑う魔王。その様子に


「王よ……」


 そう言って次の言葉に詰まるイーヴァイン。


 そこにはえも言われぬ寂しさが垣間見えたのであった。


~~~~~~~~~~


「それはそうと、マスターよ」


 そんなイーヴァインの様子を気に留めることも無く、

 俺に向かって言葉を発する魔王。


「ん? 何だ?」


「私が死んでから一体どの位の年月が経過したのだ?」


(およ)そ500年経過していますね」


 俺に代わってそう答えるのはコーゼスト。すると魔王はそのコーゼストの顔を見て


「ふむぅ……失礼だが汝はどこの誰なのかな?」


 至極真っ当な疑問をコーゼストにぶつける。


「私の名は『共生の腕輪(コーゼスト)』、と言えば理解出来ますか?」


「なにっ、 共生の腕輪(コーゼスト)だと?! それならば私を目覚めさせたのは汝なのか?!」


「確かに機械の操作はしましたが、貴方の覚醒を認めたのは間違いなくマスターのご意志です」


 コーゼストの名を聞いて驚く魔王に対し、しれっとしているコーゼスト。実に対照的である。


「……まぁ積もる話は多々あるが、それは後ほどゆっくりとすれば良い話であるしな。それにしても500年か……時の流れとはかくも残酷な物なのだな……」


 そう言ってまたもや寂しそうな笑みを浮かべる魔王。


「貴方が覚醒するまでに500年もの年月を要したのと同じ様に、私も目覚めるまで紆余曲折がありましたからね……」


 片やコーゼストもそんな魔王に対して同情をしているかの様だ。イーヴァインは相変わらず無言を貫いている。


 今此処(ここ)には500年前に古代魔族(アンデモン)によって造られたモノ達が、沈黙と共に一堂に会していたのである。その沈黙を破ったのはやはり魔王。


「マスターよ、こんな時だからこそ頼みがある」


~~~~~~~~~~


「……それは頼みの内容によりけりだが」


 そう言って魔王の次の言葉を待つ俺。真逆世界征服を手伝えとか言わないよな?


「そんなに身構えないで欲しいな、マスター」


 魔王はそんな俺の様子に苦笑いを浮かべながら、次の言葉を口にする。


「何、簡単な事だ。私に名を与えてはもらえまいか?」


「名前だって? あんたには「魔王」としての名があるんじゃないのか?」


 突然の申し出に驚いて、思わずそう問い(ただ)してしまう俺。すると魔王は


「うむ、確かにな。(かつ)ての私には「シュヴァルト」と言う名があったが、それは既に死んだ者の名だ。新しき生には、是非ともマスターから新しき名を授けて欲しいのだよ」


 と、やたら期待を込めた視線を向けてくる。確かに魔王の言う事にも一理あるが……名前かぁ…………名前ねぇ…… 。魔王の期待に応えるべく、頭をフル回転させて、少ない語彙力(ボキャブラリー)を総動員する俺。そうして唸ること(しば)


「……なぁ、コーゼスト」


「何ですか?」


「魔王の生前の名前の「シュヴァルト」って何か意味があるのか?」


「はい。「シュヴァルト」は古代語で「黒」を意味していますね」


 あまりにも思い付かなかったので、思わずコーゼストにそう尋ねると、真逆の答えが返ってきた。しかし「黒」か……黒、クロねぇ…… 。


「……良し、決めた」


「ん? どんな名か決まったのか? マスターよ?」


 俺の(つぶや)きに反応して尋ねてくる魔王。俺は出来うる限りの笑顔で一言告げる。


「あんたの新しい名前は「クロノ」だ」


~~~~~~~~~~


「クロノ……クロノか。うむ、実に良き名だ! 感謝するぞ、マスターッ!」


 口の中で俺の付けた名前を二度繰り返して言うと、今度は満面の笑みを浮かべて感謝の言葉を口にする「魔王」改め「クロノ」。(こと)(ほか)、気に入ってもらえたみたいで何よりである。


「それじゃあ改めて宜しく頼むな、クロノ」


「うむ! 此方(こちら)こそ改めて宜しく頼むぞ、マスターよ!」


 蓬髪(ほうはつ)の合間から見える黒い瞳を輝かせながら、差し出した俺の右手をしっかり握り締めて、俺と固い握手を交わすクロノ。


「あーっとな、俺の呼び方はマスターで固定なのかい?」


 そんなクロノと握手をしながら、そう言って苦く笑う俺。


「ん? 何だ、マスターはマスターであろう? それとも別の呼び方が良いのかな?」


 俺の言葉に、やや不満そうな声色でそう問うクロノ。だがその表情からは悪感情は感じられない。


「そうだなぁ……俺にはウィルフレドと言う親から貰った名前があるから、ウィルで良いよ」


「ふむ、心得たマスターよ。では今後はマスターでは無く「ウィル殿」と呼ばせてもらうとしよう」


「ああ、そうしてくれると助かる」


 そう言って再度握手を交わしながら、どちらともなく笑い合う俺とクロノ。正直に言うと幾らホムンクルスとは言え、仮にも「魔王」だった存在なので少し、いやかなり警戒していたのだが、こうして実際に話すとかなり気さくな好青年と感じているのは、俺のここだけの秘密だったりする。


~~~~~~~~~~


「マスター、そろそろ宜しいでしょうか?」


 俺とクロノが話し終えたのを見計らって、そう声を掛けて来たのはコーゼスト。


「ん? 何だコーゼスト?」


「はい、この生産設備(プラント)の予備施設の管理機構(システム)を利用した調査は全て終了しました。魔王──クロノとホムンクルスの生産情報(データ)以外、特筆すべき物はありませんでしたね」


「そうか……それじゃあこの辺で終わりにしようか」


 コーゼストの台詞にそう答えると、俺は念話でファウスト達従魔(フォロー)’Sを呼び寄せる。程なくして、ファウスト達が俺達の居る部屋へと戻って来た。


御主人様(マスター)ァ、これで終わり?」


 従魔(フォロー)’Sを代表してヤトがそう尋ねてくる。


「ああ、そうだぞ。ホムンクルス以外、特に目ぼしいモノは見つからなかったからな」


「そっかァ、そうよねぇ……分かったわ! 今日の所はこれくらいにしてあげる!」


 俺の台詞に何を思ったか、いきなり豊満な胸を張ってそんな台詞を(のたま)うヤトさん。どーでもいいが、別にキミの許可は求めていないんだが?


「よ、よしッ! それじゃあ皆んな、そろそろ地上に戻ろうか?!」


 思わずツッコミたくなる所をグッと堪えて、俺はそう口にする。俺の言葉に色めき立つファウスト達従魔(フォロー)’Sとクロノ。そんな皆んなを横目に、生産設備(プラント)のある部屋の片隅に仮の転移陣(ポータル)を設置する俺。


 兎にも角にもこうして第十二階層の調査を終えて、俺達は全員無事に地上へと帰還するのであった。


 そういやファウスト達にクロノの事を説明するの忘れていたが──まぁ後で良いだろうな、うん!



ここまでお読みいただき有難うございました!


次回は2週間後になります!


それではお楽しみに!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=818401577&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ