Re.twelve level② 〜古の覚醒〜
大変お待たせ致しました! 本日は第293話を投稿します!
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従来の目的地である「魔王の庭」第十二階層最奥部の生産設備──古代魔族の言う所の『工廠』の予備施設に到達した、俺達分隊『混沌』の面々。
事前のコーゼストによる探査でこの部屋には、かなり強力な探知妨害の結界が張られている事が判明している。そこまで強力な結界で一体全体何を隠しているのか? 興味は尽きないが、今は兎も角この部屋の内部を地道に調査して行く事に注力するとしよう。
俺とコーゼストは規則的に立ち並ぶ柱群の1つに近付いて、調べ始める事にした。
「……これってやっぱりアレだよな」
「そうですね。間違い無くこれは調整槽ですね」
半透明の硝子の様な柱に魔導提燈を近付けて内側を覗き込むと、内部には何かの液体が満々と湛えられ、更に何かの線やら管やら機械が確認出来た。コレは第八階層の生産設備に有った調整槽と同じ物なのが推察出来る。但し中には調整された魔物の姿は認められなかったが。
「ココが第八階層の生産設備と同じなら、この部屋の何処かに管理機構がある筈だよな……」
「恐らくは。それさえ見つかれば、此処の調査が一気に捗るんですけどね」
『御主人様、急いでコチラに来てくださらないかしら? 怪しい小部屋を見つけましたの』
俺とコーゼストが調整槽を覗き込みながらそんな話をしていると、セレネから念話でそう緊急の連絡が?! その声に部屋の中を見渡すと、右奥の方で手を振るセレネの姿が目に飛び込んできた。
どうやら彼女は件の管理機構を見つけたみたいである。
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結果から言うとセレネが見つけた小部屋は、やはり管理機構であった。小部屋の中央に添え付けられた水晶地図板追跡盤みたいな表示板が、仄かに明滅をしており、この管理機構自体がまだ生きている事を証明している。
「ねぇ御主人様? もしかしなくても私、重要なモノは発見したのかしら?」
発見者のセレネはと言うと、何やら期待を込めた眼差しでコチラを見ていたりする。なので
「ああ、そうだぞセレネ。大発見だ。何しろこれで、ここの調査が一気に捗るんだからな」
そう言って彼女の頭に手をやり、その業績を称える俺。
「うふふっ、やったぁ♡御主人様に褒められたわァ♡」
俺の言葉に、諸手を挙げて喜びを体で示すセレネ。そしてそのまま俺に抱きついて来る──ヲイヲイ。そんな彼女を慌てて引き剥がす俺。気持ちはわからんでもないが、今はそんな事をしている暇はないからな。
「ふぅ……よしコーゼスト、あとは頼む」
兎にも角にも稼働状態である事を確認すると、コーゼストに短く指示を出す俺。
「お任せ下さい」
コーゼストの方も心得たもので、俺の指示に短く返事をすると、ディスプレイの左脇にある水晶を左手で触れる。同時に彼女の頭上に浮かび上がる幾つもの魔法陣!
「──**──*──管理機構と接続完了。情報の読取開始──*────*──***──ここ生産設備の予備施設の稼働状況、全て掌握しました」
頭上のサークルが消えると同時に、彼女は事も無げにそう言うのだった。
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「相変わらず早いな、おい」
相も変わらぬコーゼストの出鱈目加減に舌を巻く俺。
「早い分に越した事は無いでしょう?」
「そりゃまぁ、そうなんだが……」
俺の台詞に不満を露わにするコーゼスト。とは言いつつも、決して俺に対して悪感情を抱いている訳では無く、これは飽くまでも彼女なりの態度のひとつである。
「それで? 此処では一体何をやっていたんだ?」
俺もそれを知っているので敢えて無視して、コーゼストに改めて質問を投げ掛ける。
「ちょっと待って下さい──**──*──***──分かりました。この生産設備では人造魔物の調整では無く、魔法生命体の製造と調整をしていたみたいです」
片やコーゼストはと言うと、特に気にする様子もなく、俺の質問に対して淡々と答えを返す──だがちょっと待て、今何か物凄く不穏な文言を口にしなかったか?
「何っ!? 魔法生命体だって?! それは本当なのか?!」
「──**──はい、間違いありません。ホムンクルスの製造プログラム及び生産リストが、此処の管理機構の中央処理装置に残されています」
驚いて再度確認する俺にこれまた淡々と返答するコーゼスト。その答えに色々と痛むこめかみを揉みながら
「それで? そのホムンクルスは今も存在する……のか?」
辛うじてそれだけを、何とか声に出して問い掛ける俺。
「はい。今も現存しているのが1体ありますね」
彼女の答えに益々アタマが痛くなってきた気がしないでもない。
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「それは一体何のホムンクルスなんだ?」
まぁ場所が場所だけに大体察しは付いているが、それでも一応コーゼストに確認を入れる俺。
「──**──メインフレームにはただ「D.Lー666」とだけ記載されているのみで、細かい仕様についてはデータが高度に暗号化されていて、解析には少しばかり時間を要します」
俺の問い掛けにそう答えを返すコーゼスト。これはある意味で珍しいモノが見れたな。
こと古代魔族や古代魔導文明、そして魔物に対して造詣が深く、此方の質問に文字通り打てば響くみたいに答えを示すコーゼストが、少しとはいえ解析に時間が掛かると言うのだ。恐らくは此処に張られている強固な探知妨害の結界と、何か関係があるのか? コーゼストの言葉に俺の興味は其方に向けられた。なので
「それって、どの位時間が掛かるんだ?」
そんな台詞が俺の口から紡がれる。
「そうですね──凡そ10分ぐらいかと」
それに対して彼女の答えは実に単純明快であった。
「分かった。それぐらいの時間なら大丈夫だから、解析してみてくれないか?」
「分かりました。それでは10分程お時間をいただきますね」
そう言うが早い、再び頭上に幾つものサークルを展開し、暗号化されていると言うホムンクルスの仕様についての情報の解析に取り掛かるコーゼスト。それを見て俺は、部屋の四方に散っているファウスト達従魔’Sを念話で此方に呼び寄せるのであった。
さてさて、どんな結果が出る事やら…… 。
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程なくしてヤトやニュクス、そしてイーヴァインの面々が、セレネの発見した管理機構の部屋に集まってきた。
「あーあ、セレネに先を越されちゃったかぁ」
集まって来て開口一番、心底残念そうに宣うのはヤト。
「うふふふふッ、御主人様に沢山褒められちゃったわァ♡」
「ぐぬぬ……本当は私が褒めてもらうつもりだったのにぃ!」
ヤトの台詞を聞いたセレネが、ヤトを煽るかのように言葉を紡ぎ、それにヤトが「ぐぬぬ」と悔しそうに返す構図──お前達は一体何をやっているんだ?
「くふふ、ヤトやセレネの事は放っておいて主様。何やらとんでもない何かが隠されているみたいですわね?」
「ニュクス殿が言う通りじゃな。主殿、念話で言っておったそのホムンクルスとやらは、一体全体何なのかのう?」
そんなヤトとセレネの掛け合いを尻目に、ニュクスとイーヴァインは保管されているホムンクルスの話題を口にする。こう見るとヤトよりセレネ、セレネよりニュクスやイーヴァインの方が理知的に見えるんだが──俺の偏見か?
そうこうしている間に、目まぐるしく循環していたコーゼストの頭上のサークルが不意に消えて、彼女がゆっくりと目を開ける。
「おっ? どうやら解析が終わったみたいだな?」
その様子にそうコーゼストに声を掛ける俺。
「はい、解析完了致しました。この工廠に保管されているホムンクルスとは──500年前に勇者に倒された魔王の複製体です」
彼女の口から超々爆裂魔法級の衝撃発言が紡がれた。
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「なッ?!」
場所が場所だけに古代魔族を原型にしたホムンクルスかと思っていたが、ある意味想像の斜め上に行くコーゼストの衝撃発言に言葉を失う俺。
「こ、コーゼスト殿! それは真か?! ほ、本当に此処に「王」の御身があるのか?!」
そしてもう1人、イーヴァインがコーゼストに向かって、文字通り食って掛かる。それはそうだろう、500年前とは言え嘗て自身が仕えていた「王」が、こんな場所に居るとは信じられないのだろうからな。
その一方でヤトやセレネ、ニュクスの魔物娘’Sは「魔王ですって」と、割と淡白な反応を見せている。
「マスターもイーヴァインも落ち着いて下さい。確かに私は魔王だと言いましたが、此処の管理機構のメインフレームに有る情報によると、完璧な複製体は出来なかったみたいで、些か質の落ちた劣化複製を素体としたホムンクルスみたいです。しかも此処に有るホムンクルスには魔王の「魂」が入力されていません。本当に唯の「器」です。まぁ魔王としての生前の記憶と基礎制御術式はインストールされているみたいですが」
そんな慌てふためく俺とイーヴァインに対して、対照的に淡々と詳しい説明をするコーゼスト。その言葉に少し冷静さを取り戻す俺とイーヴァイン。
「はァ……それじゃあその魔王の「器」とやらは何処に有るんだ?」
「はい、此方の方にありますね。案内します」
そう言うが早い、案内に立つコーゼスト。
いよいよ件の魔王とご対面である。
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案内で先頭に立つコーゼストに連れられ、生産設備の最奥に来た俺達。まるで壁の様に林立する柱群のほぼ中央に有るひとつが、仄かな光を発しており、その中には何かヒトの様なシルエットが確認出来る。
「近付いて良く見て下さい」
コーゼストにそう言われ、魔導提燈を近付けて内側を覗き込む俺。内部にはやはり液体が満たされており、その液体の中にヒトが浮かんでいた。歳の頃は少年から青年に差し掛かったぐらいか? そんなヒトが体のあちこちにコードやらチューブを沢山付けられて、謎の液体の中に浮かんでいる様は何とも異様であり
「これが「魔王」か……」
思わずそんな台詞が独り言のように、口を衝いて出てしまう。直ぐ傍ではファウスト達も興味津々に調整槽を覗き込んでいたりする。
「正確には「器」ですけどね」
俺の呟きにも律儀に答えるコーゼスト。
「これは……生きているのか?」
「「魔王」の心拍及び脈拍及び血圧等の生命兆候確認──間違いなく「生きて」いますよ。尤ももう少ししたら「死にます」けどね」
「ちょっと待て! 何でそうなる?!」
再びのコーゼストの衝撃発言に声を荒らげる俺。
「それは此処の管理機構に施されていた封印を解除したからです。それに連動して「魔王」の生命維持装置停止の計時機
が起動しました。目覚めさせられなかったら、このまま死んだ方がマシと言う事かと」
俺の突っ込みに淡々と答えを返すコーゼスト。
本当に古代魔導文明も古代魔族も「加減」と言う事を知らんのか?!
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「……で、あとどのくらい時間が残っているんだ?」
再度痛んで来たこめかみを揉みながら、コーゼストにそう尋ねる俺。
「そうですね──凡そ7分ぐらいかと」
俺の問いにこれまた淡々と答えるコーゼスト。それを聞いて、また盛大にデカい溜め息を吐く俺。
「主殿……」
俺の様子にこれまた不安気な様子のイーヴァイン。俺としては何となく向こうの手のひらの上で転がされている気がして釈然としないのだが、例えホムンクルスであろうと「魔王」であろうと、助けられる「命」を目の前にしてむざむざ死なせると言う選択肢は、最初から俺の中には存在していないのだ。なので
「……どうすれば良い?」
コーゼストにそう端的に問い掛ける。すると彼女は
「この魔王の「器」を助けるには、正式な符号と「血の契約」の2つが必要不可欠です。パスワードは私が既に解析済ですので、マスターには「血の契約」をお願いします」
これまた淡々と答えを示す。
「分かった。で、何処に俺の血を登録すれば良いんだ?」
「それでしたら此方の操作盤にお願いします」
コーゼストの指示した通りに、俺は左の親指の先を左腰に下げた『神威』で浅く切ると、指先に滲んだ血を調整槽のコンソールに押し付ける。
「これで良いか?」
「はい、それで結構です。それではパスワードを打ち込みます──『我考える、故に我あり』──タイマー機能停止。システム起動。生命兆候、「魔王」の覚醒を確認」
調整槽の中で「魔王」がゆっくりと目を開けるのだった。
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




