黒き鋼の新しき従魔
大変お待たせ致しました! 本日は第290話を投稿します!
-290-
ラーナルー市冒険者ギルドの修練場に出現した身長2メルトの重甲冑の騎士。
そのフルプレートは黒鋼色に鈍く輝いていた──だがちょっと待て。確かイーヴァインは全身星銀の青みがかった銀色じゃなかったか?!
「な、なぁ、コーゼスト。俺の目がおかしくなったのか? 目の前のイーヴァインのフルプレートの色味が違って見えるんだが?」
「はい、そうですね。どうやらマスターと共生化をした事により、その体が星銀から剛鉄へと変化した様です」
驚く俺の疑問に、しれっと答えを返すコーゼスト。そういやデュークの時も、コーゼストが共生化した後で蒼玉から金剛石に変わったっけ。
そんな事を思っていると、目の前のイーヴァインが完全に覚醒したらしく「こ、ここは?」と辺りを見回している。そして俺の存在に気が付くと
「おおっ! 主殿では無いかッ!?」
そうデカい声と共に、フルプレートの体をガシャガシャ鳴らしながら駆け寄って来た。そして俺の手をガッシリ取ると、ブンブンと握手をして来る──ちょ、ま、待て! 腕が持って行かれる!
「いやぁ、コーゼスト殿から色々と聞いていたが共生化と言うのは大したもんだのう!」
何やらやたらテンション高めのイーヴァインが、やたらデカい声でそう俺に声を掛けて来る。
「あーっと、イーヴァイン? ちょっと1回落ち着こうか?」
ガクガク体が揺さぶられながらも、何とかそれだけを言葉にする俺。
お前の馬鹿力で、そんなに激しく握手されたら、こっちの身が持たん!
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「いやぁ、すまんすまん!」
俺の言葉に漸く落ち着きを取り戻したイーヴァインが、自身の兜の後頭部に手を当てながらそう宣う。やれやれ、酷い目に遭った…… 。
「それではマスターウィル。彼に名前を付けてあげてください」
俺とイーヴァインの一連の流れを傍観していたコーゼストから、いつもの如くの台詞が。本当にお前は周りの空気を読めって…… 。
「おおっ! そうじゃのう! 其れもコーゼスト殿から聞いておったので、つい興奮してもうたわい!」
コーゼストの一言にまた途端にテンションが上がるイーヴァイン。そんなに興奮せんでも良いのでは?
「えへん! あーっと、その前にだ……お前自身は前の名前に未練とか無いのか?」
そこで俺は至極当然な事を敢えてイーヴァインに訊ねてみる。するとイーヴァインからは
「ん? そうじゃのう……未練があるかと聞かれれば、有る……のだろうな。何せ儂がこんな魔物になる前からずっと名乗ってきた名前だからのう。詰まるところ「イーヴァイン」と言う名は、この儂が生きていた証と同じだからのう。新しい名も嬉しくはあるが、無くすことに寂しさも感じるのも、また事実じゃ」
寂しそうな、本当に寂しそうな感じの言葉が紡がれる。それを聞いて色々と考えていた俺の腹は決まった。
「そうか……それならお前の名前は決まったな」
「ん? どんな名かのう? 強そうな名だと良いのじゃが……」
俺は目の前の重甲冑に新しい名前を告げる。
「お前の名前は──「イーヴァイン」だ」
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「あ、主殿? その名は儂の元々の名じゃが……使っていても良いのかの?」
明らかに狼狽えるイーヴァインに向けて
「この名はアンタが生きていた証なんだろう? ならば大切にしないとな。それに良い名じゃないか、「イーヴァイン」と言う名は」
俺はニヤリと笑ってハッキリとそう言い切る。
「そうか……そうじゃのう…… 。主殿、その温情かたじけない。儂の第三の生はこれから主殿に捧げようぞ」
俺の言葉にイーヴァインは姿勢を正すと、腰を折り頭を下げる。
「では共生化個体名をイーヴァインで記憶しておきますね」
俺とイーヴァインのやり取りを傍で聞いていたコーゼストからは、そんな台詞が。相変わらずお前は鷹揚だな?!
「う、ウィルよ、も、もう大丈夫なのか?」
俺がコーゼストにそんな感想を抱いていると、ギルマスからそう声が掛かる──そういや観客の事をしっかり忘れていた。
「ああ、大丈夫だぞギルマス。皆んなも。改めて紹介しよう、新しく俺の従魔になったイーヴァインだ。イーヴァイン、此処に居るヒト達は俺の大切なヒト達だからな。先ず今声を掛けて来たのは、俺の所属する冒険者ギルドのギルマスだ」
「お、おう、俺が此処の統括責任者のディオへネス・ヒギンズだ。イーヴァイン、宜しく頼む」
「これは丁寧な挨拶痛み入る。儂が新しく主殿の下僕になったイーヴァインじゃ」
俺の紹介にお互いの手を握り合うギルマスとイーヴァイン。
これはコレで中々に絵になる構図である。
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なんのかんのとあったが、新しく従魔になったイーヴァインにギルマスに続き、オルガとマーユを紹介する俺。
「イーヴァイン、彼女はオルガ・ロラ・セルギウス。この国オールディス王国の冒険者ギルドの最高統括責任者 で侯爵閣下だ。そして俺の妻の1人でもある。失礼の無い様にな」
「むむっ、オルガ殿と言うのか? その虹色の瞳……真逆古代魔導文明人なのかの?」
オルガを一目見るなり、ズバリ彼女の正体を言い当てるイーヴァイン。一方のオルガは
「やぁ、話には聞いていたけど、こうして会うのは初めてだね。お察しの通り、私は古代魔導文明人さ。恐らく最後の生き残りのね」
そう言うとイーヴァインに向けて右手を差し出す。オルガの手を取ってしっかり握手をするイーヴァイン。そして
「これは丁寧な挨拶痛み入るぞい。これからもどうか宜しくお願いする、オルガ殿」
穏やかな口調でそう挨拶を交わす。
「そしてこの子が俺の愛娘のマーユだ。彼女は魚人族のお姫様なんだ」
オルガとの挨拶を終えたイーヴァインに、今度はマーユを紹介する。
「えっと、私はマーユって言うの! イーヴァインのおじいちゃん、よろしくお願いしますっ!」
そう言ってイーヴァインにペコリと頭を下げるマーユ。
「おうおう、マーユちゃんと言うのかの? 何とも可愛らしいのう」
紅い双眸を細めて、如何にも好々爺然とするイーヴァイン。ここでもやはりマーユの可愛さが、認められた瞬間である。
流石は俺の愛娘だなッ!
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「親バカなのも良いですが、宜しいでしょうか?」
俺が1人でそんな風に感慨にふけっていると、ご存知場の空気を読まないコーゼストから発言が? と言うか、親バカ言うのはヤメレ。
「何だよ? 改まって?」
俺は抗議の意味合いも込めて、コーゼストに少しジト目で言葉を返す。
「はい。先ずイーヴァインの格ですが79から82へと上昇、順位はA+からSに上昇しました。技能は同族召喚と指揮と変わらず。新たに物真似師と言う能力を保有しています。因みにマスターウィルのレベルは87、私はレベル82相当、ファウストとデュークのレベルも82、ヤトとセレネのレベルは84、ニュクスはレベル85へと上昇しています」
だがそんな俺の視線など何処吹く風、飽くまでも淡々と報告を口にするコーゼスト。本当にマイペースな奴である。それと、今の文言にまた聞き慣れない台詞が挟まっていた気がするんだが?
「何だよ、その物真似師って言うアビリティは?」
「これは相対する相手の武技を、一度見ただけで自身の物に出来るアビリティですね。イーヴァインは嘗ての勇者のアーツである空裂斬を、見様見真似で習得した事が起因していると思われます」
俺の更なる質問にも丁寧に答えを返すコーゼスト。
「それはまた随分と便利かつ、考えようによっては随分と狡いアビリティだな?!」
それを聞いた俺は、素直な感想を口にするのだった。
これ、次に俺がイーヴァインと戦ったら、勝てないんじゃないのか??
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「御主人様ァ、私達の紹介はァ?」
俺がそう悶々と頭を悩ませていると、ヤトから真逆の請求が入った。ヤトの台詞にセレネやニュクスもウンウンと首を縦に振っている。これを見ると、やはり従魔内序列はヤトさんが一番上らしい。
「勿論、今から紹介するぞ? イーヴァイン、そこに居るのはお前と同じ俺の従魔達だ。其方から双頭魔犬のファウスト、剛鉄岩人形のデューク、半人半蛇のヤト、女王蛾亜人のセレネ、女郎蜘蛛のニュクスだ。あとは今此処には居ないが蒼玉岩人形のスクルドも居るな。これから仲良くやっていってくれ。ファウスト達もな、イーヴァインと仲良くして行くんだぞ?」
そんな事を思いつつ、イーヴァインとファウスト達双方にそれぞれ手を向けて、相互に紹介する俺。
「「ヴァンヴァンヴァン!!」」
「ヴ……私はデューク、よヨロくお願いすル」
「私が御主人様の一の下僕のラミアのヤトよ! 新入り、よろしくねッ!」
「はァ……全くヤトったら。イーヴァイン、私こそが御主人様の一の下僕のモスクイーンのセレネよ。よろしくお願いするわね♡」
「くふふッ、ヤトもセレネも仕方ないですわね。イーヴァイン殿、妾は主様の忠実なる下僕のアラクネのニュクスですわ。以後良しなに」
俺の言葉に口々に自らを紹介する従魔’S。
「これはこれは、先輩方。儂が新しく主殿の下僕になった暗黒霊騎士のイーヴァインじゃ。ひとつ宜しくお願いする」
それを受けてファウスト達に穏やかに言葉を返すイーヴァイン。
その辺は流石、年の功だけあるな。
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「はいっ、これでイーヴァインの従魔申請は受諾されましたっ! それじゃあアナタ、此方をイーヴァインの腕に着けてね!」
そう言ってルピィから手渡される従魔の証明である腕輪──もちろんイーヴァインのである。
あの後すぐに冒険者ギルドの屋舎に入り、総合受付帳場でイーヴァインの従魔登録をしたのだ。勿論事前にルピィにはイーヴァインの事は話しておいたので、手続きは非常にスムーズであった。まぁルピィ本人はイーヴァインの威容に目を白黒させていたが。
「おおっ、これはかたじけないのう、奥方殿」
一方でイーヴァインはイーヴァインで、そう言いながらルピィに頭を下げる。彼には俺にオルガ以外に合わせて8人もの嫁さんがいる事は説明済だ。勿論ルピィもその1人だと言う事も含めて、である。
「あらまぁ♡これからも主人の事を宜しくお願いね、イーヴァインさん♡」
イーヴァインの「奥方殿」と言う台詞を聞いて、そんな言葉を口にするルピィさん。その顔は満更でもなさそうだ。その証拠に顔がニヨニヨとしている。
「しっかし、主殿は嘗ての魔王殿に匹敵するかも知れんのう」
俺がルピィにそんな事を思っていると、徐ろにそんな台詞を宣うのはイーヴァイン。恐らくは嫁さんの多さが共通していると言いたいんだろうが、お願いだから魔王なんかと比べないで欲しいものである。
何せ俺は極々ありふれた、何処にでも居る普通のヒトなんだからな!
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兎にも角にもこうして、晴れて名実ともに俺の従魔の一員になったイーヴァインだが、従魔の腕輪はヤト達魔物娘’Sと同様に左腕に装着した。どうやらうちの従魔の間では、従魔の腕輪を左腕に嵌めるのが流行りらしい。
「ほうほう、コレで儂も主殿の正式な下僕となった訳じゃな!」
自身の左腕に嵌まる腕輪をしげしげと見て、ご満悦な様子のイーヴァイン。何がそんなに嬉しいんだか…… 。
「あーっと、兎に角だ、これからは存分に頼らせてもらうからな? 頼むぞイーヴァイン」
「ああ、これからは儂が主殿の盾となろうぞ!」
俺の言葉に胸をドンと叩いて、そう言葉にするイーヴァイン。それはソレで何とも頼もしいのだが…… 。
「そういや今更だけど──その主殿って?」
顕現してからずっと疑問に感じていた事を、改めて問い質す俺。
「ん? それは勿論、ウィルフレド殿は儂の主人になったのだから当然であろう? 本当は「王」と呼びたいくらいじゃが──ウィルフレド殿は、そんな呼ばれ方は望まんじゃろう? だから「主殿」なのじゃが……何か不味いかの?」
俺の問いにそう訥々と答えを返すイーヴァイン。まぁ確かに、「王」なんて呼ばれたら悶死しそうではある。
しかしヤトがマスターで、セレネがダーリンで、ニュクスが主様で、今度は主殿と来たもんだ。
俺の呼び方ひとつ取っても、従魔1体1体個性があるな──等と、そんな他愛のない事を思いながら俺は、オルガやマーユ、そしてコーゼストや従魔’Sと共に屋敷への帰路につくのであった。
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




