決着! 〜剛鉄の盾と剣と神鉄のカタナ〜
大変お待たせ致しました! 本日は第288話を投稿します!
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「かぁーーーっ! 今のは効いたのう!」
俺の渾身の「雷精断斬」を真正面から受けても、平然としている暗黒霊騎士のイーヴァイン! 全く、なんて奴だ! 雷精断斬はイーヴァインの大盾ガルガンチュアの表面に、微かな傷を付けただけである。
「全く、ふざけた強度だな?! そのガルガンチュアは!」
その様子に思わず悪態をつく俺。イーヴァイン本人もだが、あの大盾も頑丈過ぎる! 一方でイーヴァインはと言うと、手に持つ大盾に残る雷精断斬の痕を見て
「しっかし、驚いたのう! 真逆あの勇者と同じく、斬撃を飛ばして来るとは! しかも雷撃を纏うとは恐れ入った!」
殊更愉しげに、そしてやたら興奮したかの様に早口でまくし立てている。どうでもいいが、話し方が率直になっていないか?
だがまぁイーヴァインは500年前にかつての勇者と剣を交えていたんだ、当然の事ながら空裂斬も間近で目撃していても何ら不思議では無いか。何せ空裂斬と言う名は、かつての勇者の技の名だとは、アンさんの弁だからな。
「しかし、コチラの方が威力が断然違うのう! 儂が喰らったのとは桁違いに強いわいッ!」
……訂正、しっかりその身で空裂斬を体験済だった。
「だが儂もこの身になってから500年余り、儂なりに鍛錬を重ねて、似たような斬撃波を出せるようになったんじゃわい!」
ッ!? 更に訂正!イーヴァインも空裂斬を放てるらしい!
「これが儂なりの斬撃波、その名も「絶空斬」じゃッ!」
イーヴァインはそう吠えると、巨剣を最上段から一気に振り下ろした!
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イーヴァインが勢いよく振り下ろしたドラゴンファングから、空裂斬と同等の斬撃波が生まれ、一直線に俺に向かって飛んで来る!
「物理結界展開──最大へ」
それと同時に部屋に響き渡るのはコーゼストの声! 彼女が物理結界を俺の周囲に展開してくれたのだ!
イーヴァインの斬撃波は束の間の距離を飛び、コーゼストが張ってくれた物理結界に激突する! 瞬間、周囲に耳障りな激しい音を撒き散らしながら、斬撃波は物理結界に止められたかと思えた刹那、強固な筈のコーゼストの物理結界が斬り裂かれる!
「ッ?! 冗談じゃねえぞ!」
俺はそう叫ぶと『天照』と『神威』を体の前面で交差させて、斬撃波を受け止める! 嫌な軋み音を上げながらも、二振りの神鉄製の刀は斬撃波を耐えた! どうやらコーゼストの物理結界が、斬撃波の勢いをかなり減衰してくれたみたいである。
「ッッ!! あ、あっぶねえ!!」
「ほほう?! 今のは物理結界か?! 命拾いをしたな、ウィルフレド!」
思わず素でそう声に出す俺に、そんな台詞を投げ掛けてくるのは目の前のイーヴァイン。しかし奴の言う通り、今のは危なかった……!
「マスターウィル。私の走査ではイーヴァインは順位A+でしたが、その技の力量と装備はSランクに匹敵するかと思われます」
そんな状況下でもひたすら冷静な物言いのコーゼスト。そう言う事はもっと早く言えよなぁ!?
俺は思わず頭の中でコーゼストにそう突っ込みを入れていた。
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「ほらほら! 続けて行くぞい!」
そう言うと再び巨剣を振りかぶるイーヴァイン! またあんなのを喰らったら、今度こそひとたまりもない! あの「絶空斬」に対抗する為には──此方も!! と、咄嗟の思い付きをそのまま実行に移す俺!
イーヴァインが再度「絶空斬」を放つのと同時に、俺も全力の空裂斬を横薙ぎに放つ! それぞれ宙を飛ぶ2つの斬撃波は、俺とイーヴァインのほぼ中央付近で激突する! 同質同威力の斬撃波同士が激突するとどうなるか? 答えは──
「な、何じゃと!?」
目の前で起きた現象に驚きの声を上げるイーヴァイン。そう──中央付近でぶつかり合った互いの斬撃波が、そのまま互いを打ち消し合い、霧散したのである! 嘗てヤトがアンの魔法攻撃をことごとく、『竜咆衝撃波』で迎撃したのと同じ理屈だ。本当に咄嗟の思い付きだったが上手く行って良かった…… !
「ふ、ふははははは! 中々やりよるのう、ウィルフレドよ!」
自慢の絶空斬を止められたにも関わらず、更に嬉しそうな声色で話すイーヴァイン! 幾ら何でも戦闘狂過ぎないか?! そこは普通、悔しがる所だろ?! 俺がまたもや頭の中で突っ込んでいると
「──極大豪炎槌!」
俺の後方からヤトの言霊が聞こえて、同時に物凄い破壊音と衝撃波が此方に伝わってくる!
「マスター、ヤトがイーヴァインの軍団を殲滅しました」
後ろを振り向く余裕の無い俺に代わり、コーゼストがヤト達の状況を報告してくれる。
ならば! 俺も負けていられないな!
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「何と!? 儂の軍団がこうもあっさりと倒されるとはッ?!」
ヤト達に差し向けていた動く鎧の軍団が、ヤトにあっさりと殲滅されたのを目撃し、驚きの声を上げるイーヴァイン。余程自信があったらしい。
そうこうしている間にファウストを始めとする従魔達が、俺の傍に戻ってきた。
「「ヴァンヴァンヴァンッ!!」」
「ヴ、マスター。ただイマ戻りましタ」
「御主人様、お待たせッ! 向こうはきっちりやっつけて来たわよ!」
「あん、もうヤトったら! 抜け駆けは許さないんだから! 御主人様、あのリビングアーマー達は全て鉄屑にして来ましたわ♡」
「くふふ、先輩方。妾の糸操術のお陰であのリビングアーマー達を殲滅出来た事をお忘れなく。主様、ただ今戻りましたわ」
……相変わらず中々に姦しいが、俺にとっては頼りになる大切な仲間達が再び戻って来てくれた事に、素直に感謝したい。
「それで? 御主人様の方はどうなっているの? 真逆苦戦してるの?」
「ぐっ?!」
「あっ! こら! ヤト! そう言う事は言っちゃダメよ!」
一部訂正、ヤトさんが容赦ない。だがしかし、コイツらが傍に居るだけで、こんなに頼もしい事は無いのも確かだ。
「ちょっと待て。多少は苦戦していたが、これからが本番だぞ?」
とりあえずヤトの台詞に反論する俺。
「ほほう、ウィルフレドよ。この儂に勝つ算段があると言うのじゃな?」
俺の言葉にそう反応を返すイーヴァイン。俺は右手の『天照』を奴に向けて一言言い放つ!
「その通りだ! 見せてやるよイーヴァイン!」
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そう言うが早い、俺は金剛力を発動させ身体能力を強化する! そして!
「行くぞッ! イーヴァイン!!」
そう一声吠えると、迅風増強も発動させて、奴との距離を取る為に後退する!
「何じゃ?! この期に及んで逃げに徹する気か?! ウィルフレド!」
そう言うと俺に向かって突っ込んで来るイーヴァイン! だが俺だってただ単に逃げ回る為に距離を取っている訳では無い!
「そんな訳あるか! 荒ぶる雷よ!」
俺の言霊に再び二振りの刀身に沿って発生する雷と火花! そしてそのまま突っ込んで来るイーヴァイン目掛け、雷撃を纏った『天照』と『神威』の二刀による突きを敢行する!
「ぬぅん!」
瞬間的に何かを悟ったのか、またもや超反応で大盾を真正面に構えるイーヴァイン! 次の瞬間、耳障りな金属音を立てて大盾に激突する『天照』と『神威』! 僅かではあるが確かに二刀とも大盾に突き刺さった! そして俺はそのまま次の武技を発動させる!
「皇竜砕牙ッ!」
更に! その上に武技を発動!
「衝破二重ッ!!」
そうである。俺は皇竜砕牙・衝破の重ね掛けをしたのだ! 2つの武技を発動させた次の瞬間、大盾の内側──つまりイーヴァイン本体を凄まじい衝撃波が襲う!
「ぬぉぉぉーーーッ!?」
そう叫び声を上げると同時に、イーヴァインの巨体が後方に吹き飛ばされる! よし! コレで十分に距離が稼げたな!
俺は『天照』と『神威』を交差させながら、全力全開の雷精断斬を奴目掛け放った!
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「くっ?!ぬ! ま、まだじゃあ!!」
後方に吹き飛ばされながらも巨剣を振り下ろし、絶空斬を俺の雷精断斬の斬撃波に向けて放つイーヴァイン!
だがしかし! 不完全な体勢で繰り出した絶空斬の斬撃波では、俺の全開の雷精断斬の斬撃波の相手にはなり得ない! 無情にも俺の斬撃波に掻き消される奴の斬撃波!
「ッッ!? 何じゃと?!」
その様子に慌てた素振りのイーヴァイン! よろけつつも床に着地すると、体勢を立て直して再度左手の大盾を真正面に構える! だがそれこそ俺が待ち望んでいた瞬間である!
「ウオオオオオオオオオオーーーーーッ!!」
俺はそう吠えると迅風増強を発動させながら、思い切り床を蹴って、自身の放った雷精断斬の斬撃波を追いかける様に、イーヴァイン目掛けて突っ込んで行く! 勿論『天照』と『神威』には雷撃を纏わせたまま、である!
束の間の距離を飛んだ雷撃の斬撃波がイーヴァインが構える大盾に到達するのと同時に、斬撃波とクロスする様に振るわれる二振りの刀による斬撃! そうである、これは「天狼牙」である!
次の瞬間、室内に響き渡る硬い金属同士がぶつかり合う甲高い音!
「ぐっ?! ぬ、ぬオォォォォーーーッ!!」
未だかつて無いほどの衝撃に唸り声をあげて耐えるイーヴァイン! だがそうしている間にも、俺の二振りの刀が奴が構える大盾に深く喰い込んで行く! そして遂には!
「うおおおおおォォォォォーーーッ!!!」
鋭い気合の声と共に俺の斬撃が、頑丈な大盾を両断したのである!
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「な、何と!!? 儂のガルガンチュアが?!?」
目の前で起きた出来事に驚愕の声を上げるイーヴァイン! 雷精断斬の斬撃波と、俺の直接の斬撃がガルガンチュアを持っていた奴の左腕をも破壊して行く! そして遂にはイーヴァインの左腕を肩口まで粉砕したのである!
「ぐぬぬぅ! おのれ! ウィルフレドォォォ!」
そう呪詛の言葉を口にしながら、残された右手に持つ巨剣で斬り掛かってくるイーヴァイン! しかし迅風増強の恩恵で、その斬撃を余裕を持って躱す俺! 俺が居た場所の床を虚しく穿ち突き刺さる巨剣!
「くッ?!」
そのまま激高するかと思われた次の瞬間、何と巨剣から右手を離すと、自分の兜の顔面部分を思い切り叩いたのだ! おいおい!?
「くっ!! く、ククククク、ワハ、ワァーハッハッハ! 」
そして徐ろに高笑いをするイーヴァイン。何だ何だ?!
「ハハハッ、儂とした事がどうやら傲っていたらしいのう!」
先程までの怒気を収めて、冷静になるイーヴァイン。
「自慢のガルガンチュアだったが……些か頼り過ぎたかのう」
そう言いながら床に突き刺さった巨剣を右手で持つと、対峙する俺の方に剣の切っ先を向けて
「すまんな、ウィルフレドよ。この爺の我儘じゃが、最後の勝負に付き合ってはくれまいか?」
酷く落ち着き払った声でそう言ってくるイーヴァイン。
「良いだろう。その勝負、受けて立つ」
俺はそう言うと手に持つ刀を鞘に納めるのであった。
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巨剣を右手一本で静かに最上段に構えるイーヴァインと、納刀した右腰の『神威』の鞘と鍔に右手を添えながら、左手ですぐさま抜ける様に構え、右足を下げたやや前屈みの姿勢をとる俺。
どちらともなしに、相手に向かってジリジリと距離を詰める、と、互いの間合いに互いが入った瞬間!
「ぬぅんッ!!!」
「ハッ!!」
頭上から物凄い勢いで巨剣を振り下ろすイーヴァインと、目にも留まらぬ速さで右腰の『神威』を鞘から抜き放ち、イーヴァインの直ぐ横を駆け抜ける俺!
巨剣が床を割る音と、硬いモノが断ち切られる音、双方が室内に木霊し、そして──静寂が訪れた。
その静寂を破ったのはイーヴァイン。
「儂の……負けだ、な……」
そう一言言うと、その星銀製の重甲冑の胴体が左脇腹から右肩に断ち切られ、ずり落ちて行く! 静かな室内に響き渡る金属音!
「フゥ……」
一方の俺は大きく息を吐くと、ゆっくり残心を解く。
「見事じゃった、ウィルフレドよ。儂の完敗じゃ……」
背後の床からイーヴァインの清々しい声が聞こえる。
「……儂の……最後の相手が……お前の様な強者で良かったぞ……」
段々とその声がか細くなって行く。
「さらば……じゃ、ウィル……フレドよ」
更にか細くなるイーヴァインの声。その声を聞いた俺は
「──コーゼスト!」
我知らずそう叫んでいた。すると俺の頼りになる相棒は
「──Confirmation of submission(服従化確認)」
全く抑揚の無い声を室内に木霊させていたのである。
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




