The eleventh level② 〜考察はやはり程々に〜
大変お待たせ致しました! 本日は第286話を投稿します!
-286-
『──現在第十一階層までの転移陣が使用可能です。使用しますか?』
大広間に響き渡る管理端末の無機質な声。
此処は迷宮「魔王の庭」の始まりの大広間。ドゥイリオからセレネとニュクスの特注の防具を受け取った翌々日、俺達分隊『混沌』は第十一階層途中からの再探索をする為に、ここ「魔王の庭」に早朝からやって来ていた。
システムターミナルの水晶に手を置いた俺が、その無機質な声に答える。
「使います」
『使用要請受領しました──ポータルに入ってください』
システムターミナルからそう案内されて、俺とコーゼストそしてファウストを始めとする従魔達が、床に描かれたポータルの中に進み入る。
『転移陣機構起動。転移対象確認──座標確認。第十一階層のポータルに送ります』
その声と同時に足元の転移陣が輝き、俺達の身体は光に包まれ、次の一瞬、目の前の光が薄れて視界が鮮明になると、俺達は「魔王の庭」第十一階層の仮の避難所へと転移していた。
「良し……コーゼスト、頼む」
俺の指示を受けて、頭上に複雑な文様の魔法陣を複数展開させたコーゼストは
「はい──使用可能の感覚端末を全起動。動体センサー、魔力波センサー積極化。『星を見る者』情報処理。現在位置確認。作成した第十一階層の地図を展開。最短ルートを策定完了。此方です」
そう言って自ら先頭に立ち、道案内を始める。
流石は『既知世界最高の魔道具』と豪語するだけの事はあるな。安心して任せられる。
~~~~~~~~~~
「「グルルルルルゥゥ」」
「マスターウィル、進行方向160メルト先に魔物の反応が複数。各センサーの反応と『星を見る者』の観測だと、目標は黒鉄人形と岩人形の混成群ですね。数はアイアンゴーレムが1体とストーンゴーレム6体です。格はアイアンゴーレムが71相当、ストーンゴーレムは軒並み68相当。順位はアイアンゴーレムがA+、ストーンゴーレムがA。技能はアイアンゴーレムが剛力を保有、ストーンゴーレム達はスキル無しです」
第十一階層を歩き始めてから少しして、ご存知ファウストの警戒の唸り声と同時にコーゼストから警告が発せられる。ストーンゴーレムは兎も角、アイアンゴーレムはこの階層では初めて遭遇する魔物である。それでもまぁ俺とコーゼストとファウストは、アイアンゴーレムと「魔王の庭」第五階層の守護者部屋で戦った経験はあるが。
「良し……皆んな戦闘準備だ。隊列はいつも通りで行くぞ」
コーゼストの台詞を聞いて、そう短く指示を発する俺。
「「ヴァンヴァンッ!」」
「ヴ……マスター、了解でス」
「分かったわ! 私に任せておいて、御主人様!」
「もうヤトったら……そんな事言って足元を掬われても知らないから…… 。御主人様、ヤトよりもこのセレネにお任せ下さいね♡」
「くふ、主様。ヤトやセレネだけでなく、妾も居る事をお忘れなきよう」
俺の指示を聞いて、途端に色めき立つファウストを始めとする俺の従魔達。
いやはや、お前達は本当に揃いも揃って戦闘狂だな?!
~~~~~~~~~~
「「グゥルル──ヴァオォォォォォォォォォォーーーン!」」
第十一階層の通路に響き渡るファウストの破滅の咆哮! 文字通りの破滅の咆哮を浴びせかけられて、見る間にその身体を崩して行くアイアンゴーレムとストーンゴーレム達! 破滅の咆哮のあまりの破壊力に、堅牢なダンジョンの壁や床にも無数の罅割れが走る! これでもファウストはかなり加減をして破滅の咆哮を放っているのだが、それでもその威力は半端ないな!? 俺がそんな事を考えていると
『物思いにふけっているところ申し訳ありませんが、次の指示をお願いしますね? マスターウィル?』
俺の後ろに控えているコーゼストから、真逆のツッコミが入る──無論念話で。
『よし! ファウストは破滅の咆哮を止めろ! あとは他のメンバーと共に露出したゴーレムの真核を破壊しろッ!』
コーゼストのツッコミを華麗に無視して、やはり念話で全員に指示を与えると同時に、アイアンゴーレムのマスターコアを手に持つ『天照』で串刺しにする俺! 次いでファウストの爪撃破が、デュークの金属槍が、ヤトの薙刀が、セレネの鋼鉄鉤爪が、ニュクスの戦鎌が、コーゼストの雷撃槍の魔法が、マスターコアを破壊して行く!
とその時、アイアンゴーレムの破壊され鉄の瓦礫と化した体と割れたマスターコアが、泥人形や自動人形やストーンゴーレムの時とは違い、いつもの通りに光の粒子になって消えて行く。
チョットマテ、この階層のゴーレムは大量生産品で再利用しないんじゃなかったのか!?
~~~~~~~~~~
「おいおい、コーゼスト! これはどう言う事だ?!」
光の粒子になって消えて行くアイアンゴーレムを前に、我知らずコーゼストに詰め寄る俺。
「ふむ……これは多分に私の推測になりますが、幾ら大量生産品とは言ってもアイアンゴーレムを構成する鉄やマスターコアの魔水晶は、中級の品質なので再利用の為に回収したのでは? 恐らくはこの辺が回収するしないの境界線だと思われます」
対するコーゼストは慌てること無く、実に淡々と自身の推測を口にする。まぁ多分それが事実なんだろうけど……
「……それにしたって、選り好みが激しいな?!」
まるで何処かの誰かを見ているかの様だな!? 口に出して言わんけど!
「……何ですか? その妙に含みのある物言いは?」
俺の台詞を聞いて、ジト目を向けてくるコーゼスト。
「いや何、誰かさんみたいだなぁ、と思っただけだが?」
そんなコーゼストに対して、しれっと惚ける俺。
「ほほう……マスターは私に喧嘩を売っているんですね?」
「 誰もお前の事だとは一言も言ってないが?」
コーゼストの尖り声に、俺は更にすっとぼける。俺の台詞と態度にコーゼストは
「マスターはそう言いますが、ここに居るメンバーの中でそれに該当する者は私しかいないんですが?」
そう言ってジト目を深める。
「……と言う事はお前も自分で自覚はあったんだな?」
その圧に負けずに俺がそう言って睨み返すと、今度は思いっきり視線を逸らされた。やはり自覚はあった様である──やれやれ。
~~~~~~~~~~
「それはそれとして──」
俺の視線から思いっきり目を逸らしながら、話題転換を図るコーゼスト。華麗に無視するにも程がある。
「──これでこの第十一階層で未だ遭遇していないのは、「動く鎧」だけになりましたね」
だがそんな事にはお構いなく、とっとと話を進めるのはコーゼスト先生。今度は俺が彼女にジト目を向ける番である。
「上手く話を逸らしやがったな……だがまぁそうだよなぁ、俺もずっと前に冒険者ギルドの魔物図鑑で読んだだけだから、リビングアーマーと実際に戦うのは今回初めてなんだよなぁ」
ジト目を向けながら、コーゼストの振った話題に乗る俺。彼女に文句をまだ言い足りないが、実際リビングアーマーとの戦闘は未経験なのもまた事実なのだからな。
「そんな貴方に朗報があります。私の記憶領域にはリビングアーマーについての情報があります。お聞きになりますか?」
「是非とも聞かせて下さい、コーゼスト先生!」
彼女の言葉にジト目を向けるのを止めて、俺は即座に頭を下げる。虫がいいと言うなかれ、事前に手に入れられるこうした情報はとても貴重なのだ。何せ目の前に居るコーゼストは、あらゆる魔物のデータを、 属性や弱点も含めて知り尽くしているからな──等と、俺が1人で納得していると
「その前に……先程からずっと無視されているファウスト達に何かありませんか?」
彼女から真逆の指摘である。そういやファウスト達がすっかり空気だった!
~~~~~~~~~~
「あーっと、皆んなスマン!」
コーゼストの指摘を受け、ファウスト達に頭を下げる俺。
「「ヴァンヴァン!」」
「大丈夫デす、マスター」
「うん、御主人様がコーゼストと話し込むのは、今に始まった事じゃないから大丈夫!」
「そうよねぇ、御主人様ったら何かあるとコーゼストと話してばかり。本当に妬けちゃうくらい」
「くふっ、ヤトもセレネもそんな事言っては駄目ですわ。何せコーゼストは妾達よりもずっと前から主様と一緒に居るのですからね。妬いてみても仕方ないですわ」
ファウストやデュークは兎も角、ヤトやセレネやニュクスからはそんな言葉が聞かれる。こうして魔物娘’Sの話を聞くにつけて、ヤトよりもセレネ、セレネよりもニュクスの方が理知的に感じるのは俺の偏見か?
そんな考えが頭をもたげるが、敢えて気にしない様にする俺。何となくだが、気にしたら負けのような気がしなくも無い。
「えへん! まぁ、その、なんだ! ヤト達も俺と一緒に、コーゼストからリビングアーマーについて情報を聞こうじゃないか?」
俺はわざとらしい咳払いをひとつすると、ヤト達に向かってそう言葉を掛ける。
「え〜っ、う〜ん、教えてくれるなら聞かせてもらうけど……」
「もうヤトったら……私はキチンと聞かせていただきますよ? 御主人様♡」
「くふふッ、妾も是非ともお聞かせ願いたいですわ」
俺の言葉にそれぞれに聞く姿勢をとるヤト達魔物娘’S。やれやれである。
~~~~~~~~~~
第十一階層の通路での話はまだ続いていた。
「私の記憶領域にあるリビングアーマーの情報ですが、先ずその成り立ちから記憶されています。普通にある重甲冑に低級霊や亡霊の霊体──魂が憑依したモノがリビングアーマーとなります。当然の事ながらその中身はがらんどうで、アーマーが有る状態では物理的ダメージは与えられますが、アーマーが破壊されると物理的ダメージは無効化されてしまいますね。そうなると唯一ダメージを与えられるのは、必然的に魔法攻撃のみとなります。唯一の弱点はアーマーの何処かに刻まれている魔法陣ですね。それを破壊されると霊体はアーマー本体に憑依していられなくなりますから。あとは霊体が憑依しているアーマーの素材の強弱が、そのままリビングアーマー自体の耐久力になります。鉄なら良いですが、星銀や緋緋色金や剛鉄だったりすると、苦戦を強いられるのは必至です」
俺やファウストやデューク、そしてヤト達魔物娘’Sに向けて、立て板に水の如く、蘊蓄を傾けるコーゼスト。今日も絶好調である。
「はァ……話を聞く限りだとかなりの難敵だな、リビングアーマーってのは」
コーゼストの話に、つい弱気な愚痴が口を衝いて出てしまう。
「まぁ実際はミスリルまでだと思いますよ? ヒヒイロカネやアダマンタイトはまず有り得ないかと」
一方でコーゼストは実に淡々としている。
「どちらにしても実際に戦ってみない事には分からない……か」
どちらにしても鬱なのには変わりない──はァ。
~~~~~~~~~~
兎にも角にもまずは先に進もう、と言う事になり「魔王の庭」第十一階層の通路を奥へと進む、俺達分隊『混沌』。
あれから何日か経ち、俺達は更に十数度、マッドゴーレムとストーンゴーレムの、或いはストーンゴーレムとアイアンゴーレムの混成群と戦闘を繰り広げていたが、第十一階層の奥に近付くに従って、確実に遭遇する魔物が強くなって来ている。コーゼストが言うには遭遇した魔物のレベルは平均で75程、ランクはどれもAからA+となっているとの事だった。
「……と言う事はつまり、第十一階層最奥部には……」
「はい。マスターウィルの想像通り、この第十一階層の最奥部、つまり第十二階層への下降口が在る部屋に、この階層の守護者が居ますね、確実に」
俺の独り言に近い呟きにそう答えるコーゼスト。彼女曰く、最奥部の部屋は『星を見る者』による観測が特殊な結界に妨害されていて、確認が出来ないらしい。何でも見通せる『星を見る者』を寄せ付けない結界の存在は、彼女が言う通り間違いなく守護者が居る証拠になる。これはもう嫌な予感しかしない。
「大丈夫よ、御主人様! どんな魔物でも私が倒すから!」
「ヤトったらそんな安請け合いしちゃって……ヤトだけでなく私も居ますから任せて下さいね、御主人様♡」
「くふ、ヤトやセレネだけでなく妾もおりますからどうかご安心を、主様♡」
俺とコーゼストの会話を聞いていた魔物娘’Sは、そう言って色めき立つ。
そんな事を言い合いながら、俺達は更に最奥部へと歩を進めるのであった。
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




