魔物娘達の慣熟訓練 〜慣れは大切です〜
大変お待たせ致しました! 本日は第284話を投稿します!
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虚空に煌めく幾筋もの鋭い斬撃! 女王蛾亜人のセレネによる鋼鉄鉤爪での斬撃だ。
「くっ?!?」
その斬撃を両手に持つ二振りの刀で時には受け、時には流して捌く俺! 修練場に甲高い金属音が鳴り響く!
「流石! ふふっ、やりますわね御主人様!」
背中の白い翅を羽ばたかせながら宙を舞うセレネから、何処か嬉しそうな言葉が聞こえて来る。声のする方を見やれば、もう既にセレネの姿は無い。彼女は空中を縦横無尽に飛び回りながら、俺に対して一撃離脱を繰り返しているのだ。
「本当にッ! 空中から攻撃されるってえのは厄介だなッ!?」
その状況に思わず悪態をつく俺。現状俺の刀はセレネに届く事は無く、完全に防御に徹していたりする。
「うふふふ──ならば! これを捌けるかしら?!」
そう言いながら空高く舞い上がると一転、俺の頭上目掛け急降下して来るセレネ──オイオイ!?
「チッ、冗談じゃないぞ?!? 「金剛力」!」
俺は金剛力を発動させると迎え撃つ体勢を取る! 次の瞬間、修練場に金属同士が激しくぶつかり合う、轟音とも言える大きな音が鳴り響く!
俺はセレネのアイアンクローによる攻撃を頭上で右手の刀1本で受け止めると、左手の刀で無防備なセレネの胸元目掛けて、渾身の鋭い突きを繰り出していたのだ! 彼女の豊満な胸のギリギリ手前で止まる刀の切っ先!
「くっ?! ま、参りましたわ……」
その状況に降参を口にするセレネ。同時に俺達は周りの観客から大喝采を受けたのであった。
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「流石ねウィル! セレネも!」
拍手と共にそう称賛の言葉を口にするのはアン。此処は俺の屋敷の裏庭にある修練場、そこではセレネとニュクスの新たな力の慣熟訓練が行われており、アンさん以外だとエリナやレオナ、ルアンジェにスサナにルネリート、それとアリストフやエアハルトやコーゼスト、そして我が愛娘のマーユがギャラリーとして、俺とセレネの「模擬戦」を「見学」と称して「見物」していた。
「ふう……大丈夫だったかセレネ?」
アンの称賛に応える前に、今の今まで戦っていたセレネにそう声を掛ける俺。
「ええ、大丈夫ですわ。心配してくれて有難うございますね、御主人様♡」
俺の声にそう答えながら、いつの間にか抱きついているセレネ──意外としっかり、もといちゃっかりしている。
「ちょっとセレネ! アンタ何ちゃっかりと御主人様に抱きついているのよ!? 本当に羨ましいわね! 御主人様、次は私とやり合いましょう!!」
「……今回はヤトに激しく同意ですわね。セレネ、貴女は何をしているのですか?! 羨ましいですわね! それとヤト! 次に主様と一戦交えるのは妾ですわよ?!」
……訂正、あとヤトとニュクスもギャラリーとしてアン達と一緒に見ていました。それとヤトよ、今日はセレネとニュクスの慣熟訓練だから、キミと戦う予定は無いんだが?! あとニュクスよ、セレネとヤトに抗議するのは当たり前だが、本音がダダ漏れだゾ?!
そんな魔物娘達に俺はそっと溜め息を吐くのだった。
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ちょっとすったもんだは有ったが(笑)、小休止を挟んで今度はニュクスと刃を交える事になった。修練場で距離を空けて向き合う俺とニュクス。
「くふふっ、どうかひとつお手柔らかにお願い致しますわね、主様?」
戦鎌を両手で持ちながら、笑みを浮かべてそう宣うニュクス。
「ああ、それじゃあ早速始めるぞ!」
「はい!」
そう言うが早い、二振りの刀を左右の腕に構えながら、ニュクスへと突進する俺!
因みに俺の持つ刀は神鉄製では無く、ドゥイリオに特注で鍛刀してもらったダマスカス鋼製の物であり、更に言うと俺やセレネ、ニュクスの体にはアリストフに聖魔法『光の神壁』を掛けてもらっていたりする。これは飽くまでも「模擬戦」であって「殺し合い」では無いからな。
まぁそれでも俺の刀もセレネのアイアンクローもニュクスのウォーサイズも、刃は潰してはいないがな!
そんな事を頭の片隅で思いつつ、ニュクスの間合いからその内側に飛び込もうと突っ込んで行く俺! 迎え撃つニュクスは俺が彼女のウォーサイズの間合いに入った瞬間、俺の首目掛けてウォーサイズを草を刈るかの様に左から右へ振るってくる!
「おっと!?」
だが攻撃が来るだろうと読んでいた俺は咄嗟に、刀を左側で交差させてウォーサイズを受け流す! 耳障りな音と共に逸れて行くウォーサイズ!
「くふ、主様流石ですわね!」
そんな状況にセレネと同じく嬉しげに声を上げるニュクス。セレネもだがお前も大概戦闘狂だな?!
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重々しい風切り音をたてながら左から右、或いは右から左へと立て続けに振るわれるウォーサイズ! 嵐の様なウォーサイズの連続斬撃を、二振りの刀で受け或いは流して捌く俺! その度に修練場には重々しい金属音が鳴り響く!
「くふふッ、流石! なかなかやりますわね主様!」
一方のニュクスは本当に愉しげである。やはり彼女にも戦闘狂のきらいがあるな!
「ッ! ソイツはどうも!」
そう言いながらも、ニュクスのウォーサイズの挙動を読んで、間合いの内側に飛び込む俺! 同じ長柄の武器でもルストラ師匠の戦杖の方が、何倍も打ち込みの速度は鋭くそして一撃が重いからな! それから比べたらまだまだ隙がある。
だがしかし、ニュクスも俺の動きを読んでいたらしく、それまで横薙ぎに振るうだけだったウォーサイズの軌道を、急に下から上への縦方向へと変化させる! ウォーサイズの鋭い鎌刃による下からの斬り上げと、石突による突き上げが立て続けに俺に襲い掛かる! だが師匠の戦杖の攻撃に比べれば、それすらも唯の凡百の一つに過ぎない。
下から斬り上げられるウォーサイズの攻撃を手に持つ二振りの刀を用いり、超反応で捌き切ると今度は俺の間合いだ。セレネ同様にウォーサイズの攻撃を全て捌かれて、思わず目を見開くニュクスの右脇腹から左肩へ刀で斬り上げる! 右脇腹ギリギリで止まる切っ先!
「く?! 妾の負けですわね……」
一転、悔しげなニュクスの声が修練場に響いたのである。
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ニュクスとの勝負がついた瞬間、またもや周りで見ていたギャラリーから拍手大喝采である。
「凄かったわウィル! ニュクスも凄いじゃない!」
今度はエリナが俺とニュクスを誉めそやし、アンやレオナ達もエリナの言葉に盛んに頷いている。其れに今度は片手を上げる事で応えながら、さっきまで戦っていたニュクスに声を掛ける俺。
「ふぅ、大丈夫だったかニュクス?」
「はい、御心配痛み入りますわ主様♡」
俺の言葉にそう答えつつも、これまたちゃっかりと俺に抱きついているニュクス──ヲイヲイ。
「ちょっとニュクス! アンタも何ちゃっかりと御主人様に抱きついているのよ?!私だって抱きつきたいのに! 御主人様! 次こそは私の番よ!」
「そうよニュクス! 私に散々言っておいてそれはナニ?! 御主人様は皆んなのモノよ?!」
この状況を見て、再び抗議の声を上げるのはヤトとセレネ。だがセレネよ、キミが言っても説得力が無いんだが?! それとヤト、お前はそんなに俺と戦いたいのか!?
そんな事を思いながら周りに視線をやると、魔物娘達のやり取りにアン達が苦笑いを浮かべていたりする。どうかそんな所で笑って見てないで助けて欲しいものである。
「はァ……分かった分かった。そんじゃあ次はヤトとな」
俺はデカい溜め息をひとつ吐くと、ヤトに向かって一言告げる。
「やったぁ! 私も御主人様に抱きつこうっと!!」
俺の台詞に文字通り小躍りするヤト。どうでもいいが趣旨を間違えてませんか、ヤトさんや?
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ヤトの言動に一抹の不安を覚えながら、再度の小休止を挟んで最後にヤトと模擬戦をする事になった俺。修練場でお互いに距離を置いて対峙する俺とヤト。
「よォし! 今日こそは御主人様に勝つわよォーーーッ!」
薙刀を二度三度振り回して、1人気炎を揚げるヤト。
「よし、そんじゃあ準備は良いか、ヤト?」
「ええ! いつでも良いわよ!」
「それじゃあ──行くぞ!!」
そう言うが早い、ニュクスの時と同様に、ヤトの間合いの内側に飛び込むべく駈け出す俺! だが!
「させないわッ!」
ヤトによるグレイヴでの刺突の嵐が俺を襲う! それ等を二振りの刀で全て打ち払う俺! だがしかし、打ち払われたグレイヴは軌道を変え、今度は横薙ぎの斬撃の嵐へと瞬時に切り替わり、俺に再度襲い掛かる!
「うおっと!?」
それ等を刀で受け流し、或いは足捌きを駆使し避ける!
(確かにヤトの奴、かなり腕を上げたな)
その攻撃の切り替えの素早さに密かに舌を巻く俺。それでも斬撃の隙を掻い潜り、ヤトの懐に飛び込む! この距離なら俺の間合いである──が!?
ヤトは迷う事無くグレイヴの柄を捻ると、グレイヴを短槍と歩兵剣へと分割し、直ぐさま俺を迎撃して来た! どうやらヤトは俺の次の行動を読んでいたらしい。
ショートランスと左手の刀、そしてショートソードと右手の刀が、俺とヤトの真正面で甲高い金属音を立てて激突するさまに、知らず知らずのうちに俺は笑みを浮かべていたのであった。
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「流石にやるわね! それでこそ御主人様よ!」
「そう言うヤトこそ、なかなかやるじゃないか!」
短い言葉の応酬の後、互いに自身の獲物で押し合い、相手と一旦距離をとる俺達!
一拍置いて再度俺から攻撃を仕掛ける! 十分に距離を置いた所で、俺はヤト目掛けて左の刀で斬り上げの空裂斬を放つ! そして先に飛ばした空裂斬の斬撃波を追いかける様に、迅風増強を発動させつつヤトに向かい突っ込んで行く!
束の間の距離を飛んだ空裂斬がヤトに到達するのと同時に、斬撃波とクロスする様に振るわれる俺の刀による斬撃!
これは以前『デュミナス』のオルトと昇級試験で戦った時に、思い付きで使った技だ。あれから何度か密かに訓練して、思い付きの技は一応の完成を見た。これこそが俺が編み出した俺独自の技、その名も「天狼牙」である。
ヤトは俺の空裂斬を受け止めるべく左右の獲物を交差して構えていたが、「天狼牙」の斬撃の勢いはその防御を弾き上げて、彼女のがら空きの胴体を俺の前に晒す!
驚きに目を見開くヤトのボディ目掛けて、迷わず左の刀を横薙ぎに振るう! ヤトの右脇腹のギリギリで俺の刀の刃が止まる!
「フゥ……これでまた俺の勝ちだな、ヤト」
止めていた息を吐き出すと、ヤトに向けてそう勝利宣言をする俺。
「あーん、また負けたぁ! 今日こそは勝てると思ったのにぃーーーッ!!」
心底悔しそうな声を上げるヤト。だが俺の目から見ると、間違いなく彼女は腕を上げている。
油断すれば次は負けるかもしれないな、と俺は気を引き締めるのだった。
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「お父さんもヤトお姉ちゃんもすごぉい!!」
ヤトとの模擬戦に決着がつくと同時に、今度は愛娘のマーユからそんな感声が。マーユと一緒に固唾を呑んで模擬戦を観ていたアン達ギャラリーからも、三度の万雷の拍手が俺とヤトに向けて送られる。
「はァ、やれやれだぜ……有難うなマーユ。アン達も」
そんなアン達の感嘆の声に、今度こそちゃんと言葉で答える俺。その俺はどうなっているかと言うと、只今絶賛ヤトに背中から抱きつかれていたりする。ついさっきまで俺に負けた事で悔しがっていたのに、何とも変わり身が早いヤトである。
「ねぇ御主人様ァ、私との模擬戦はどうだったのかしら?」
「あっ、私も其れは気になりましたわ。私との模擬戦の感想も是非聞かせてくださいな、御主人様♡」
「くふっ、それでしたら妾も是非とも主様の御指南を賜りたいですわね。宜しくて? 主様♡」
抱きついているヤトが俺にそう尋ねたのを発端に、セレネやニュクスまでもが俺に自分との模擬戦の感想を尋ねてくる。と言うかキミらも変わり身が早いな?! その様子に思わず苦笑いしながらアン達の方を見やると、盛んに首を縦に振っているのが目に飛び込んできた──キミ達もかいな?!
「やれやれ……そんじゃあ先ずセレネだが──」
そんな魔物娘’Sや仲間達の様子に苦笑いを深めながら、俺は先ずセレネの模擬戦での良し悪しを語り始めた。
まぁ俺の柄じゃないが、偶にはこう言う事を話すのも良いのかもな、うん!
ここまでお読みいただき有難うございます!
2024年はこれが最後の投稿になります! 本年も1年有難うございました!
新年2025年は2週間後の1月12日が最初の投稿になりますので宜しくお願いいたします!
なお、正月三が日は「なぜか俺のヒザに」スピンオフ!が投稿されますので、其方もお楽しみ下さいませ!
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