Re.interval 〜幕間再び〜
大変お待たせ致しました! 本日は第281話を投稿します!
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魔法士ギルドに魔導機器や収納庫魔法鞄や『保存』の魔法が付与された宝石箱と、コーゼストがそれ等の詳しい解析結果を文字通り書き込んだ『情報結晶』を持ち込んだ翌日、俺はコーゼストとアンとマーユ、そしてヤトとセレネとニュクスの魔物娘’Sと共に、ラーナルー市の第一層区画の東区にある市場にいつもの買い出しに来ていた。
コーゼストやマーユは兎も角、アンは単なる付き添いだったりする。
「御主人様ァ、今日も美味しい血塗牛の生肉を沢山仕入れてね! それでジアンナに美味しい炙り肉焼いてもらうんだから!」
「駄目よヤト! 御主人様、美味しいお肉も大切ですが、私は蜜桃を沢山買い込んで欲しいですわ♡」
「くふっ、今回妾はジアンナの兎の肉汁煮や野鶏の丸焼きを食べたく思いますわ、主様♡」
「前にも言ったが、キミら本当に自由だな……」
市場の食料品店の前で銘々にそう宣うヤト達魔物娘’Sと、思わずソレに突っ込みを入れる俺。
「お姉ちゃん達、本当に楽しそうだねッ!」
「ふふっ、本当にヤト達は相変わらずなんだから」
アンとマーユは、俺とヤト達の会話を聞いて笑っている。此方としてはとても笑える状況では無いんだが、今はそんな事を言っている場合ではない。
「まぁまぁ、これでヤト達のやる気が出るなら安いもんだ、と前にマスターご自身が仰っていたじゃないですか?」
思わず渋い顔をしていると、コーゼストから逆に諭されてしまった。
それは確かにそう言ったけど……はァ。
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何のかんのと言いながら、結構な量の食糧を買い込んで屋敷へと帰宅した俺達。単純に言っても前回の1.5倍はあるか? まぁそれでもコーゼストの無限収納にはまだまだ余裕がありそうだが。
兎に角帰宅した俺達は、我が屋敷の完璧家令のシモンの出迎えもそこそこに、そのまま屋敷の調理場へと向かった。調理場では屋敷の料理長のジアンナとあと2人の料理人が俺達を出迎えた。
「旦那様、この2人が雇い入れたコックのアイヴィンとミリアーナです」
「辺境伯様に於かれましてはお初にお目に掛かります。コックとして雇われたアイヴィンです」
「同じくミリアーナです。どうか宜しくお願い致します」
ジアンナが2人に手を向けて紹介をし、それを受けてアイヴィンとミリアーナの2人も俺に自己紹介をしてくれる。こうして見ると2人共に20代後半ぐらいか? アイヴィンは褐色の短髪で灰色の瞳、ミリアーナは栗毛の肩までぐらいの髪とやはりグレーの瞳の持ち主である。
「あーっと、俺がこの屋敷の主人のウィルフレドだ。そんなに畏まらなくても良いから、どうか楽にしてくれ」
そんなアイヴィンとミリアーナの2人にそう声を掛ける俺。こう言う時は「ああ、俺は貴族なんだな」と改めて実感する瞬間だ。自身が好むと好まざるとに関わらず、「貴族」と言う柵はどうしても付いて回るみたいである。
俺は俺に対して頭を下げるアイヴィンとミリアーナの様子を見るにつけ、そう実感せざるを得なかったのであった。
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「なになに? 御主人様ァ、新しいヒト?」
俺がアイヴィンとミリアーナの2人と挨拶を交わしていると、背後から顔を覗かせながら声を掛けてくるヤト。そういやヤト達もキチンと紹介しておかないとな。
「ああ、そうだぞヤト。セレネやニュクスも聞いてくれ。この2人は新しく屋敷のコックとして入ったアイヴィンとミリアーナだ。アイヴィン、ミリアーナ、彼女達は俺の従魔で此方から半人半蛇のヤトと、女王蛾亜人のセレネと、女郎蜘蛛のニュクスだ。仲良くしてやってくれ」
俺はアイヴィン達2人とヤト達魔物娘’Sにそれぞれ手を向けて紹介を行う。ヤト達魔物娘’Sを見てピキリと静止するアイヴィン達2人。おや? 事前にジアンナから聞いていなかったのか? そう思いジアンナの顔を見ると苦笑いをしていた。どうやら話はしていたが、実際に魔物を目の当たりにして吃驚したらしい。
「アイヴィンにミリアーナね! 私はラミアのヤトよ! これからヨロシクね!」
「アイヴィンさんにミリアーナさんですね? 私はモスクイーンのセレネですわ。これからどうか宜しくお願いいたしますね」
「くふ、アイヴィンさんにミリアーナさん、妾はアラクネのニュクスと申します。これからもどうぞ宜しくお願いいたします」
一方でヤト達魔物娘’Sは元気良く銘々自己紹介をアイヴィン達2人にしている。
そこには実に対照的な光景が拡がっていたのである。意外とヒトが出来ているのはヤト達魔物娘’Sかもしれんな、うん!
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「まぁ兎に角アレだ、彼女達も俺の立派な身内だからその様に接してくれると有難いんだが……」
このままだといつまで経っても埒が明かないので、アイヴィン達2人にそう声を掛ける俺。俺の声に2人とも再起動すると「はっ! はい! わ、分かりました!」と首を縦に振り同意を示す。
「2人とも、これで分かったでしょう? 旦那様は誰にでも分け隔てなく接するヒトだって」
そんなアイヴィン達2人に苦笑いを浮かべながら、そう諭すかの様に話し掛けるジアンナ。彼女のその声に「本当に……ジアンナさんが言う通りでしたね」と、これまた見事な斉唱を奏でるアイヴィン達2人。
何故ここまで声が揃うのか、疑問に感じていると
「旦那様、この2人は双子では無いですが兄妹なんですよ」
とジアンナが笑いながら教えてくれた。その話に、だからここまで息がピッタリと合っている訳か、と1人納得する俺。そう言われればなんとはなしに、この2人は似ているところがあるな。
「お父さん! アイヴィンさんもミリアーナさんも、とっても美味しい料理をたくさん作ってくれるんだよ!」
「マーユの言う通りね。貴方も昨夜の夕食や今朝の朝食は美味しかったでしょう?」
ここでマーユとアンからそんな発言が。どうやら2人とも、俺より一足先にアイヴィン達と顔合わせを済ませていたらしい。
まぁ言われてみれば昨夜や今朝の食事はいつもと変わらない美味さだったから、その腕前が確かなのは間違いないんだろうな。
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「──はい! 牙猪の牛酪揚焼、出来ましたッ!」
アイヴィンの威勢の良い声と共に、備え付けの魔導焜炉の揚焼鍋から出来たての牙猪の牛酪揚焼が木皿に移される。コートレットとは骨付き背肉をカットした肉に塩・コショウを振りかけ、小麦粉、卵黄、パン粉にまぶし、バターで両面を黄褐色にまで焼き上げたものなのだそうだ。何でもアイヴィンの得意料理らしい。
「御主人様ァ、美味しそうねぇ(ジュルリ)」
焼きたてのコートレットから目を離さずにそんな台詞を口にするヤト。どうでもいいが口から涎が垂れてるぞ?
「──はい! 此方は血塗牛の挽肉油焼きが焼き上がりましたよ!」
そんな事を言っていると今度はミリアーナが調理していた料理がフライパンから木皿に盛り付けられる。このハンバーグとは、挽き肉にみじん切りにした玉葱、パン粉、卵を良く練り混ぜてから楕円形に成形し、フライパンで焼き目を付けた後、蓋をして蒸し焼きにした物なのだそうだ。コチラはミリアーナの得意料理らしい。
「うわぁ……御主人様、ソレも美味しそうですわねぇ(ジュルリ)」
焼きたてのハンバーグにドミグラスソースをかけるのを見て、今度はセレネがやはり涎を垂らしながらそんな台詞を口にする。ニュクスは静かだな、と思って見やると、物凄く物欲しそうな顔で料理を眺めていたりする。これはキミ達の迷宮での食事だから、今はあげられんぞ?
俺はそんな3体の様子に、思わず苦笑いを浮かべるのだった。
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その後もジアンナを中心にアイヴィンとミリアーナはテキパキと料理を拵えてくれて、前回の1.5倍あった食材類はそれこそあっという間に全て美味しそうな料理へと変わっていったのであった──しかも前回よりもかなり短時間に、である。
何しろ途中でヤト達魔物娘’Sから「料理を食べさせろ」の猛烈なコールがあり、急遽仕方なく3人前のコートレットとハンバーグを追加で作ってもらったのにも関わらずだ。流石はジアンナが推した人材の事だけはあるな、と改めて感心をする俺。
「ブラッドブルのステーキ、焼き上がりッ!──旦那様、これでこの一覧表に書かれていた料理は全て出来上がりましたよッ」
前回同様事前に手渡したリストを見ながら、そう俺に報告してくれるジアンナ。アイヴィンやミリアーナも大仕事を終えて、ホッと一息ついているようである。
「ジアンナ、それにアイヴィンやミリアーナも御苦労様」
ひと仕事を終えた3人にそう労いの言葉を掛ける俺。
「いえ、ヤト達は本当に美味しい美味しいと言って食べてくれますからね。此方としても料理人冥利に尽きます」
俺の言葉に笑顔でそう返すのはジアンナ。
「御主人様! 私、今夜はさっき食べた料理をまた食べたいの!」
続けてヤトから真逆の要望が?! その台詞にセレネやニュクスも首を縦に振って同調を示す。
結局その日の夜はアイヴィンとミリアーナが作る、ファングボアのコートレットとブラッドブルのハンバーグ等と言った料理が食卓に並んだのであった。
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「ふぅ……」
賑やかな夕食の後、居間で寛ぐ俺。そんな俺の傍にはいつもの相棒では無く
「うふふッ、貴方お疲れ様♡」
今夜はアンさんが共に居たりする。勿論コーゼストには別部屋で待機してもらっているし、ヤト達魔物娘’Sもまたそれぞれに宛てがわれた自身の部屋に戻ってもらった。コーゼストは兎も角、ヤト達魔物娘’Sも今日は大人しく俺に従ってくれたのは有難い。
そんな訳で今リビングルームには俺とアンの2人きりなのだ。屋敷の侍女に頼んで蒸留酒の氷割りを硝子杯で2つ持ってきてもらい、アンさんと2人きりの酒宴と洒落込む事にした。
「「乾杯ッ」」
リビングルームの長椅子に並んで座るアンと、ウイスキーが満たされたグラスを軽く押し当て合い、それぞれのグラスに口を付けて良く冷えたウイスキーを一口流し込む。
「ふいィィーーーっ、美味いッ」
一口呑んだ所で思わず口を衝いて出る俺の気の抜けた声。その様子を見てクスリと笑うと
「貴方、その言い方だと些か年寄り臭く聞こえるわよ?」
そんな風に宣うアン──そんな事言われても出るものなんだから仕方ない。1人釈然としないまま暫く2人きりで酒を飲み交わしていると
「ねぇア・ナ・タ♡今夜は私の番なんだけど……良いかしら?」
そう言って俺に撓垂れ掛かって来るアン。確かに同衾は輪番制だが今夜の相手はアンさんらしい。俺は彼女の唇に自分の唇を重ねて肯定を示すと、寝室へと彼女を誘うのであった。
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そして真夜中、俺とアンの姿は俺の寝室のベッドの上にあった──勿論お互いに裸である。
細長く伸びる手脚に思いのほか形の良い乳房、腰まである白い長い髪に丁子色の肌の持ち主であるアンは、やはり涅森精霊だけの事はあり、その美貌は他の奥様達と比べても頭ひとつ抜きん出ている──他の奥様達にはとても怖くて言えないが。
兎に角今はそんな超絶美人のアンと濃密な睦事をしたばかりの後である。ベッドに横たわる俺の胸に顔を埋めて、淡褐色の肌を上気させながら
「はぅん……はァ、今日も素敵だったわ、ウィル♡」
まるで譫言の様に繰り返し呟くアン。俺は俺で彼女の白い髪を優しく撫でながら「そうか……」とだけ言葉を返す。そうして甘える事暫し、俺の胸に顔を埋めていたアンが
「ふぅ……幸せな時間って本当にあっという間に経っちゃうのね……」
そう言いながら顔を上げて、翠玉の瞳を少し潤ませながら見つめて来る。その仕草が何だかアンを子供みたいに見せて、思わず笑みが零れる俺。
「ははっ、まぁそう言うなよ。こんな時間が偶にだからこそ、今を「幸せ」だと感じられるんだと俺は思うぞ?」
「それは! そう、だけど……やっぱり他の人の事が何となく妬けちゃうのよ……」
俺の台詞に今度はちょっと膨れっ面で言葉を返して来るアン。そんな彼女を抱き寄せると、その額に優しくキスをする俺。それはソレで可愛らしく感じるが、お願いだからあまり他の奥様達に嫉妬しないでいて欲しいモノである。
割と、いや、かなり切実に!
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




