魔核と魔水晶と宝箱と
大変お待たせ致しました! 本日は第278話を投稿します!
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「魔王の庭」第十一階層、此処はニュクスの話だと無生物系統の魔物──より具体的にはゴーレムや自動人形の類が出現するとの話であり、実際に二度ほど泥人形とオートマトンと戦闘もした。
だがこの階層の魔物は倒してもいつも通りに光の粒子になって消えないのだ。その謎を読み解いたのはご存知コーゼスト。彼女の話だとこれ等は安価で大量生産出来るので、素材を回収する前提では無いらしい。だがちょっと待て。
「するとなにか? 今まで倒した魔物の身体が光の粒子になって消えていたのは……」
「はい。マスターの想像通り、この迷宮の迷宮核が新たな魔物を産み出す為に必要な素材を回収していた行為だったのです。これはこのダンジョンのみならず他のダンジョンでも同じです」
俺の問いに事も無げにそう答えるコーゼスト。そう言えば「混沌の庭園」でもそんな話をしていたな。
「だがコーゼスト、素材と言うなら何で倒した魔物の身体だけ回収して、魔核は残されるんだ?」
「それは、魔核は魔物の体内に自然発生する物だからですね。そもそも魔物のコアは魔力の澱みが切っ掛けで生まれる物です。因みに魔水晶も発生原理は同義で、魔物の体内で生まれた物がコア、地中で生まれたのがクリスタルと呼ばれています。更に言うとヒトの体内ではコアは生まれない事になっています。昔古代魔族でそう言う研究が成されていたので間違いありません」
俺の更なる問い掛けに彼女は衝撃的な事実を口にする。
な、何だって?!
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期せずしてコアとクリスタルの出自の秘密を知る事になり、軽くパニックになる俺。
「ちょ、ちょっと待て。すると何か? 俺達が違う物としているコアとクリスタルは、実は同じ物だと言う事なのか?」
「はい、そう言う事になりますね。まぁコアとクリスタルだとその結晶の純度や大きさにかなり差がありますから、全くの別物と思われても仕方ないかと」
色々と痛むこめかみを揉みながら確認する俺と、しれっと答えるコーゼスト。彼女の話によると──魔物のコアは結晶の純度と大きさにかなりバラツキがあり、一方のクリスタルは地中で時間を掛けて結晶が成長して行くので、その純度と大きさはかなりのモノがあるらしい。まぁそれはそれとして
「お前、今の今まで何でその話をしなかったんだよ?」
「それは当然、聞かれませんでしたからね」
ジト目で抗議の声を上げる俺に、またもやしれっと答えを返すコーゼスト。そういやコイツはこんな奴だったな! その事実に益々頭痛が激しくなる気がしなくも無い。
「へぇ!? それじゃあ私の体の中にもコアがあるのね!」
片やそう言いながら、自身の身体をキョロキョロと眺めているヤト。セレネやニュクスも自分の身体をまじまじと見つめていたりする。
「……何だかラファエルの奴が聞いたら、狂喜乱舞しそうな話だよなぁ」
俺はこの場に居ない腐れ縁の魔法士の顔を、頭の中で思い浮かべながら思わず苦笑いするのであった。
いや、割と本気で!
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第十一階層の通路での話はまだ続いている。本来ならこんな事をしている場合ではないのだが、ファウストやコーゼストも別段警戒していないし、まぁ大丈夫だろう。
「なぁコーゼスト。ダンジョンコアが新たな魔物を産み出すんだよな? それってこのダンジョンの何処かに魔物を産み出す専用の生産設備があるって事なのか?」
この際だから、今まで当たり前に思っていたダンジョンの謎をコーゼストに訊ねる俺。
「そうですよ。この「魔王の庭」に限らず他のダンジョンにもマスターの言うプラントは存在します。その位置はどのダンジョンでも秘匿されていますね。「魔王の庭」然り、「混沌の庭園」然り、「精霊の鏡」然り、「深淵の森」然り」
「それなら産み出した魔物はどうやって各階層にバラまかれているんだ?」
「それは簡易的な転移陣の様な機構で、各階層に送り出しているからです。まぁポータルと違うのは送り出しのみの一方通行で、素材の回収は分子単位で行われていると言う事ぐらいですね」
俺の立て続けの質問にも淀みなくスラスラ答えるコーゼスト。因みに分子とは物質の性質を失わない範囲で、物質を分割しうる最小単位だそうな。
「はぁ……そうするとダンジョンは「生き物」だと言う話はあながち間違ってない訳か……」
「まぁそうですね。ダンジョンコアを頭脳とした「生物」に例えても問題ないかと」
コーゼストの話を聞いて驚きを通り越して呆れ返る俺。片や当のコーゼストは実に淡々としている。
まぁその辺の深い話はラファエルなんかの魔法士や学者や神官の連中に丸投げだな! どちらにしても俺の手に余る話だ!
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とりあえず先に進むべく、再び歩を進める俺達分隊『混沌』。
「そう言えばコーゼスト。お前は確かこの階層は『量産品の実験を兼ねた防衛ラインだ』と言っていたよな? それってどう言う事なんだ?」
歩きながら俺はコーゼストに今ひとつ質問をぶつける。
「多分に私の推測の域を出ませんが……この階層ではゴーレムやオートマトンを安価に大量生産して云わば「物量作戦」を遂行する実験をしていたのではないかと思います。目的は勿論当時最大の難敵であった「勇者」に向けてかと思われます。勇者と言えどヒトです。その体力や精神力、魔力は無尽蔵ではありませんからね。事実ゴーレムやオートマトン等の人造の魔物を大量生産して勇者にぶつける計画は存在していたと、私の記憶領域に記録されています。また第十二階層の生産設備の予備施設を、当時の古代魔族は重要視していたみたいなので、それ等を鑑みての推測になります」
俺の問いに立て板に水の口調で、自身の推測を話すコーゼスト。偶に忘れそうになるが此奴はこんな奴でもあったな!
「するとこの先もずっとこんな感じでゴーレムやオートマトンを相手にせにゃならんと言う事か……」
「あとまだ遭遇していないのは岩人形に黒鉄人形。あとは動く鎧ですね。其方の方は実際戦闘してみない事には何とも言えませんが、マッドゴーレムやオートマトンと同じだと思われます」
俺のボヤきにも似た呟きに律儀に答えるコーゼスト先生。
何れにしても鬱である──はァ。
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そんなおしゃべりをしながら第十一階層を奥へと進んで行く俺達。あれから更に数度マッドゴーレムやオートマトンと戦闘を繰り広げていた。そしてそろそろこの階層最初の避難所に差し掛かろうかと言う時──
「「グゥルル──ヴァオォォォォォォォォォォォォォーーーン!」」
通路の隅々まで響き渡るファウストの破滅の咆哮! それをもろに受けて瞬く間にその泥の体を崩して行くマッドゴーレム6体の群れ! その群れの奥にはストーンゴーレムが!? そうである、俺達はマッドゴーレムにストーンゴーレムが混じる群れと絶賛戦闘中なのであった。
そのストーンゴーレムの体も、双頭魔犬のファウストの威力が単純に倍加した破滅の咆哮をもろに受けて、その身に無数の罅が走り、見る間に崩れていく!
『相変わらず無茶苦茶な威力だな、ファウストの破滅の咆哮は……』
その様子に俺は思わずそう呟かざるを得ない──念話で。
『マスターウィル。そんな感想はどうでもいいので次の指示をお願いします』
俺の念話にこれまた念話で律儀に答えを返すコーゼスト。実はファウストの破滅の咆哮があまりにもデカい音なので、会話は全て念話にしていたりする。
『分かっているよ! 皆んな、露出した真核だけ破壊しろっ!』
コーゼストの突っ込みを軽くいなしながら、待機していたデューク達に指示を出しつつ『天照』を振るう俺と、同時に一斉に攻撃を開始するデューク達とコーゼスト。
こうしてあっという間にゴーレムの群れは殲滅されたのである。
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「ふぅ……やれやれだな」
全てのゴーレムの真核を破壊して、ひとつ大きく息を吐く俺。
マッドゴーレムはその泥塊は相変わらずそのまま放置されているが、ストーンゴーレムの体を構成していた岩石の破片も全て放置されていた。これはつまりコーゼストの仮説の裏付けになる訳であり、そのコーゼスト本人はと言うと無限収納の特殊機能である指定転送機能を起動させて、破壊した真核をその破片ごと回収していたりする。
「どうやら私の推測が正しかったみたいですね」
回収をしながらも、そう満面のドヤ顔で宣うコーゼスト先生。どうでもいいがそのドヤ顔はヤメレ。俺はわざとらしい咳払いをひとつすると
「えへん! まぁその、なんだ。後はアイアンゴーレムとリビングアーマーも実際に倒してみない事には何とも言えないけどな」
得意満面のコーゼストに軽く注意を喚起する。古今東西、そう言ってろくな目にあってない奴は沢山いるからな。何事も最後まで気を抜かないのが一番である。
「分かっていますよ。少し言ってみただけです」
俺に言われても当の本人は何処吹く風、大して気にしていないみたいである。その辺はやはりコーゼストはヒトではなく、オートマトンであり有知性魔道具なんだな、と思う。ただし自分の仮説が立証された事を自慢したいとか、その辺はやたらヒトっぽいけどな。
「さてと……避難所に行ってみるか……」
そんな事をしつつ俺達は、当面の目的地である避難所へと向かうのであった。
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兎にも角にも最初の避難所へと到着した。部屋の内部は予めコーゼストの『星を見る者』で確認済である。
「良し、それじゃあ開けるぞ……」
独り言の様に呟きながら部屋の扉に手を掛けてゆっくり押す俺。少し軋みを上げながら内側に開いて行く部屋のドア。部屋の内部は当然無人で、仄暗い魔導照明の灯りの中、部屋の奥には一抱えの大きさがある宝箱がポツンと置かれていた。それはとりもなおさずこの階層に誰も足を踏み入れていない証拠でもある。
「あっ、宝箱がある! ねぇ御主人様! 開けてみましょうよ!」
ここで一緒に部屋に入ったヤトが宝箱に気が付き、俺に開けてくれとせがんでくる。
「そうですわね。私も中が見て見たいですわ、御主人様」
「くふっ、主様。妾も中身に興味がありますわ」
……訂正、セレネやニュクスも宝箱の中身に興味津々らしい。
「まぁ待て待て」
俺は苦笑を浮かべながらヤト達にそう言うと、改めて宝箱に向き直る。因みに罠の類はコーゼスト先生から報告されていないが、それでも一応慎重に確認する。
「本当にマスターは臆病な性格ですよね」
「人聞きの悪い事を言うな。そこは慎重派だと言えよ」
コーゼストのツッコミを再び軽くいなしながら、宝箱を慎重に調べて行く俺。一通り調べてもやはり罠は確認されず、ホッと息を吐く間もなく、続けて宝箱の開錠作業へと移る。
さてさて、何が出てくるのか。この瞬間が一番ワクワクするな、うん!
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俺は宝箱に鍵が掛かっているか確認すると、案の定施錠されていた。大体こう言う時は中に何かしら入っている場合が多いのだ。
そこで俺は超振動短剣を背中の無限収納ザックから取り出すと、刃を鍵穴に当てて超振動短剣本体に魔力を流す。キーンと言う甲高い音と共に赤白く発光する刃が、鍵穴を熱したナイフで牛酪を切るかの様に切り開ける。
「随分乱暴ですね。これでもしトラップが仕掛けられていたらどうするんです?」
そんな中、俺のやり方を見ていたコーゼストから真逆の諫言である。
「もしそうならもっと慎重に開けるさ。それにこの宝箱にトラップがあったら、事前にお前が教えてくれる筈だからな。その辺はお前の事を信頼しているから、こんな開け方をするんだよ」
コーゼストの言葉にそう返す俺。すると彼女は
「そう言う事でしたら、私からは特にありませんね」
割とあっさり自分の意見を引っ込める。何となく彼女が嬉しそうに感じるのは気の所為では無い筈だ。
「そんな事より早く宝箱の中を見ましょうよ!」
おっと?! うちのヤトさんから真逆の催促である。セレネやニュクスも盛んに頷いていたりする。
「わかったわかった」
俺は本日三度目の苦笑を浮かべながら、宝箱に手を掛けて蓋を開けると、ヤト達魔物娘’Sと一緒に中を覗き込む。その中には──
「──宝石箱と水晶地図板と……これは鞄、か?」
宝石箱以外、割と見慣れた品物が入っていたのである。
「ちょっと見せて下さい」
コーゼストが入っていたアイテムを手に取ると分析を始める。
これって一体?
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




