The eleventh level① 〜前哨、泥と人形と〜
大変お待たせ致しました! 本日は第277話を投稿します!
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「使用可能の感覚端末を全起動。生命感知センサー、魔力波センサー積極化。熱感知センサー覚醒。『星を見る者』情報処理──第十一階層の情報を取得しました。これより地図作成を開始。ならびに最短ルートを策定──策定完了しました。彼処です」
ラーナルー市にある迷宮「魔王の庭」第十一階層の通路に響き渡るコーゼストの声。この階層に到着して早々に彼女にこの第十一階層階層の地図作成をして貰ったのだ。第十階層と同様に、ここでも彼女──コーゼストが大活躍である。
「良し……それじゃあ進むとしようか。コーゼスト、ファウスト、魔物の反応があったら教えてくれよ?」
コーゼストが指し示す方向に通路を進む事にした俺達分隊『混沌』。勿論コーゼストとファウストには早期警戒を頼んで、である。
「それは当然、お任せ下さい」
「「ワンワンワンッ!」」
俺の言葉に胸を張って答えるコーゼストと、任せろと言わんばかりに尻尾をぶん回すファウスト。そんな様子を見ながら俺は、いつも通りの隊列を全員に指示する。
より具体的に言うと先頭は俺とファウストとデュークで固め、その次にはヤトとコーゼストを配置し、最後尾はセレネとニュクスと言うフォーメーションである。まぁコーゼストにはこの第十一階層を道案内してもらわないといけないし、今の戦力では妥当な配置だと思う。
兎に角フォーメーションも決まり、第十一階層の奥へと歩を進める俺達。
先ずは最初の避難所が当面の目標である。
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「そう言えばニュクス」
第十一階層の通路を進みながら、後ろにいるニュクスに声を掛ける俺。
「はい、何でしょうか主様?」
「この前この第十一階層にやって来た時に、此処に出現する魔物の事を話そうとしてヤト達に止められていただろう? それを教えてくれないか?」
俺の呼び掛けに答えたニュクスに、俺はそう端的に質問を重ねる。
「えーっ?! それを聞いちゃうの、御主人様ァ?!」
「そうですわ御主人様。それを聞いたらつまらないじゃないですか?」
同じく俺の背後から聞こえて来るのはヤトとセレネの不服そうな声。だが今居るメンバーの中で唯一この階層を踏破した経験があるのはニュクスだけである。ならばその是非は兎も角、事前に情報を収集する意味合いを込めて尋ねても何ら問題は無いだろう。
「そうですね。『敵を知るには先ず味方から』とも言いますし、事前に手に入れられる情報はとても貴重です」
コーゼストは俺の判断に賛成らしく同調を示す。
「くふっ、そうですわね。そう言う事でしたらお話致しますわ」
ニュクスの言葉に足を止める俺達。するとニュクスは
「この階層に居るのは主に無生物系統の魔物ですわね。具体的には泥人形、岩人形、黒鉄人形。あとは動く鎧に出来損ないの自動人形ですわ」
コーゼストもかくや、一気呵成に話す。その話し振りからしても、如何にニュクスの知能が高いか分かろうと言うモノである。
その辺はやはり女郎蜘蛛ならではなのだろう──たぶん!
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通路の奥から迫り来る複数の泥塊! 泥塊は俺達の目前まで来ると急にせり上がり、体高2メルト前後のヒトに近しい姿を形取る! どうやらこれが先程ニュクスの話に出たマッドゴーレムらしい。しかし…… 。
「何とも歪で不気味なもんだな、マッドゴーレムって言うのは」
前方から無言で徐々に迫って来るマッドゴーレムを見てそう呟く俺。
「まぁそうですね。マッドゴーレム自体、ゴーレムの中でも最低級のゴーレムです。その体を構成する素材はその辺にあるありふれた土ですからね。強いて言えば、不格好でも簡単に大量に創り出す事が可能と言う点が強みでしょうか?」
俺の呟きに律儀に答えるのはご存知コーゼスト。なかなか辛辣な評価だが、事実目の前のマッドゴーレムは、胴が太く脚は短く腕は長いずんぐりした形状で、とても強そうには見えないのだ。
「このマッドゴーレム3体は、軒並み格は63、順位はB+。技能は再生を保有。油断していると足元を掬われますよ?」
そんな俺にコーゼストからの注意喚起である。勿論油断も侮りもしないが。
俺はそう思考を切り替えると、ゆっくり接近して来るマッドゴーレム達を迎え撃つべく、左腰に帯びた『天照』と右腰の『神威』の2本をを抜き放ち身構える。ファウストやデュークも身構え、ヤト達魔物娘’Sもいつでも魔法を放てる様にやはり身構えていたりする。
「来るぞッ!」
俺の短い檄と共に目前の敵との間に遂に戦端が開かれる。
よぉし、ひとつ派手に暴れるとするか!
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先頭を行く俺に向かって振り下ろされるマッドゴーレムの腕! それを『天照』で受け止め、そのまま斬り落とす俺! だがしかし、斬り落とした傍から泥塊が集まり、失った腕を瞬く間に再生させるマッドゴーレム! 横に目をやると、ファウストが噛み砕きデュークが握り潰したマッドゴーレムの腕も、同様に再生しているのが見える!
「「「雷撃槍!」」」
続けて援護の雷撃槍がヤト達からマッドゴーレム目掛け放たれたが、やはり命中し破壊された箇所に泥塊が集まり、瞬く間に損傷箇所が修復再生されて行く! やはり再生のスキルは厄介だな!
「コーゼスト! 此奴らの弱点ってやっぱり真核か?!」
マッドゴーレムとの戦闘を続けながら、そうコーゼストに問う俺。
「その通りです。今相手をしているマッドゴーレムの場合は、身体の中心部分に真核がある筈です」
問われたコーゼストは、端的に答えを返す。そうしている間もマッドゴーレムとは戦闘を継続中である。まぁただ単にその太い腕で殴って来るだけなので、攻撃は非常に単調且つ非常に避けやすいのだが、鬱陶しい事この上ない。
「皆んな! 聞いての通りだ! 奴等の身体の中心を狙えッ!」
俺はそう指示を出すと、1体のマッドゴーレムの身体の中心目掛け『天照』を突き立てる! 同時にファウストの爪撃破やデュークの金属槍、そしてヤト達の雷撃槍がマッドゴーレムの身体の中心部分に炸裂する!
一連の攻撃を受けたマッドゴーレムは、その身を泥へと帰するのであった。
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「ふぅ、何とかなったな……」
『天照』に付いた泥を払い落としながら、そう声を漏らす俺。傍らではそろそろと戦闘態勢を解いて行くファウスト達。
「お疲れ様でした」
そんな俺達にコーゼストからは短い労いの言葉が投げ掛けられる。因みにニュクスからこの階層に出現する魔物の種類を聞いたコーゼストは、生命感知センサーと熱感知センサーを止め、新たに動体センサーを目覚めさせていたりする。
「おう、ありがとなコーゼスト。それにしても……」
コーゼストの労いの言葉に答えながら、マッドゴーレムが遺したモノに目をやり、そっと溜め息を吐く俺。そこにはいつもの魔核は無く、代わりに泥と壊れた真核が遺されていた。まぁ俺達の攻撃をモロに受けたのだ、壊れていて当然だが……何と言うかゴーレム系の魔物は格上げ以外にあまり旨味が無いな。
「この壊れた真核はかなり低級の魔水晶で出来ていますが、冒険者ギルドでそれなりに買い取ってもらえるかと思いますよ?」
俺がそんな事を考えているとコーゼストから真逆の指摘が入る。どうでもいいがお前は本当に勝手にヒトの思考を覗き見るのはヤメレ。
だがコーゼストの言う通り、例え低級でも魔水晶なら欠片でもそれなりに価値ある物だからな。出来るだけ拾っておくに越した事はない。
俺はコーゼストに指示を出し、無限収納の特殊機能である指定転送機能を起動させて、床に遺されている壊れた真核を欠片も含めて全て回収するのだった。
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「「ガルルルルゥゥゥ」」
「マスターウィル、この通路の200メルト先に魔物の反応が複数あります。動体センサーと魔力波センサーの反応と『星を見る者』の観測だと、目標は自動人形だと思われます。数は7体、レベルは軒並み66相当、ランクはAと推測。スキルは保有していません」
マッドゴーレムとの戦闘から暫く通路を進むと、ファウストの警戒の唸り声と同時にコーゼストから警告が発せられる。と言うかファウストも生物無生物関係無く魔物に反応するから、もしかしてコーゼストみたいに魔力波を感知しているのかも知れないな。
そんな事を思いつつ、隊列を整えて慎重に通路を先へと進む俺達。少しして通路の魔導照明の仄暗い灯りの中、ヒトの形をした細い影が向こうから近付いて来るのが見える。
目を凝らして良く見るとソレは、枯れ木で組まれた出来損ないの案山子の様な、酷く痩せっぽちの木製の身体を持つ、自動人形と言うよりは玩具の操り人形に見えた。それ等がカクカクした動きで此方へと向かって来ているのだ──しかも無言で。
「これは──ニュクスが出来損ないと言ったのも頷けるな」
その姿を見てそう感想を口にする俺。
「先程も言いましたが、そんな事を言っていると足元を掬われますよ?」
「分かっているよ」
コーゼストの注意喚起をいなしながら、左腰から『天照』を鞘から抜き放ち構える俺。それに合わせて身構えるファウスト達。そうして遂にオートマトンとの戦端が開かれたのであった。
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華奢な両腕を短い槍の様に繰り出してくるオートマトン! 接近している時とは打って変わり、かなりの俊敏さを見せるオートマトンに少し驚きながらも、それを避け、或いは『天照』で受け流す俺!
まぁいざとなればコーゼストの物理結界があるのだが、それは飽くまで最終手段であり、それに頼りっきりになるのは成る可く避けたい。
しかし、このオートマトンも本当に不気味だな! ここまで一言も声を発しないのが余計に不気味さに拍車をかけている。
そんな事を思いつつ、繰り出された槍のような腕を、今度は『天照』で肘辺りで斬り飛ばす! だが相手はオートマトン、次はその華奢な脚を鋭く交互に繰り出してくる! 突き出された片脚をまたもや『天照』で斬り飛ばす俺!
痛みと言うモノを感じない分、オートマトンと言うのは厄介な相手だ。両腕や片脚を失っても尚、此方に襲いかかろうと身動ぎするオートマトンが哀れに思える。ふと辺りに目をやれば、ファウスト達もそれぞれ相対したオートマトンを文字通り行動不能にしていた。
「コーゼスト、やはりこのオートマトンも真核が弱点なのか?」
相手を動けなくしてコーゼストに端的に尋ねる俺。
「そうですよ。このオートマトンの場合は胸のほぼ中央のやや左寄りに真核があります」
俺の問いにそう答えを返すコーゼスト。真核の位置さえ判ればあとは対処し易い。俺は『天照』を動けないオートマトンの胸に次々に突き立てる!
胸を突かれたオートマトンは糸の切れた操り人形みたいに動きを止めたのである。
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「ふぅ……」
7体のオートマトンとの戦闘を終え、短く息を吐く俺。倒したオートマトンはコーゼストが現在絶賛検分中である。しかしこのオートマトンと言い、その前のマッドゴーレムと言い、倒してもいつもみたいに光の粒子にならないが、何か理由があるのだろうか? まぁそうした事も含めてコーゼストが検分しているんだがな。
「ふむ……成程、判りました」
彼女はそう声を発するとやおら立ち上がる。
「何が判ったんだコーゼスト?」
そんな彼女に質問を投げ掛ける俺。するとコーゼストは
「マッドゴーレムやオートマトンが光の粒子に還らない理由がですよ。このオートマトンの構造はかなり簡略化されていて、マッドゴーレム同様簡単に大量生産が出来るのが強みみたいです。そもそも真核を始めとする素材が安価で大量生産向けですから、回収して再利用するつもりは無さそうですね。恐らくはこの階層にはこれ等を大量に産み出す生産設備があるのでしょう──現在『星を見る者』で確認中──・──生産設備と思しき場所を複数箇所特定しました」
そう詳細に報告して来る。だがちょっと待て。
「何だってそんなモンがこの階層にあるんだ?」
至極真っ当な疑問をコーゼストにぶつける俺。
「これは推測ですが──この階層を下層を護る防衛ラインとしていたのではないかと思います。量産品の実験を兼ねて」
それに対するコーゼストの回答は此方が驚くべき物であった。
マジかよ、おい!?
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




