竜との契約、魔の功罪
大変お待たせ致しました! 本日は第271話を投稿します!
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俺がエリンクス国王陛下から下賜されたラーナルー市の屋敷の増築工事も無事終了した。勿論陛下には屋敷の増築工事の許可を得て、である。
陛下は陛下で増築の許可を貰いに行ったら、これまた清々しいほど爽やかな笑顔で即決してくれたが……きっとうちの屋敷を自分達の別荘か何かだと思っているんじゃないか? まぁ今後の事も考えて特に主客房とそれに付帯する客房を、それぞれ10部屋と一番大増築したのだが……まぁ仕方がない、偉いヒト優先だ。
またそれに伴い一階の大広間や晩餐室、応接室や大浴場も今までよりも広くなり、使い勝手が良くなったのである。当然の事ながら二階の主寝室や夫人の寝室なんかも、俺やアン達奥様8人の意見を取り入れて使い易く誂えてもらった。
特に俺の主寝室には特大特注のベッドが置かれたのは言うまでもない。これで奥様8人+短身サイズのファウストやデューク、ヤトやスクルド、セレネやニュクスと同時に寝ても窮屈にならなくて済む。コチラもそんな事はそうしょっちゅうある訳でもないが「備えあれば憂いなし」である。
兎に角こうして俺達の暮らす屋敷も新たな姿となり、また同時に使用人ギルドから新たな使用人達も10数人やって来た。そして俺が雇い入れたカイル青年も併せて、うちの屋敷の新体制が整ったのであった。
尤もカイル青年を含めた新しい使用人達に、俺の従魔達を紹介したらカイル青年以外皆一様に固まってしまった。
然もありなん。
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それは兎も角として、建て増しされた屋敷の裏手に新たに建てられた厩舎の、馬房ならぬ竜房にてカイル青年と地竜のグウェル(ヤト命名)の初顔合わせが行われた。関係者としては俺とコーゼストとアンとカイル青年は勿論だが、何故かマーユとヤトまでが一緒に付いて来た。
「カイル、これが君に世話を頼みたい地竜のグウェルだ」
竜房の柵の中にいるグウェルに手を向けてカイル青年──カイルに紹介する俺。
「随分大きな亜竜ですね。それにとても大人しそうです」
グウェルを実際目の当たりにしたカイルは、グウェルに手を伸ばしその身体を優しく撫でる。撫でられたグウェルは「グゥルルルーーッ」とこれまた気持ち良さげな声を上げている。
「まぁな。コイツは図体の割に大人しいし、何より扱い易いからな」
「そうよ! グウェルはとっても良い子なのよ! だからちゃんと世話をよろしくね!」
「カイルお兄ちゃん! グウェルはヤトお姉ちゃんの言う通り、とぉっても優しくて良い子なの! だからお世話してあげてね!」
俺とカイルの会話に割って入ってきて一頻り捲し立てるヤトさんと、それに同調するマーユ。どうでもいいがキミらはグウェルの母親か? 2人に思わず頭の中でツッコミを入れてしまう俺。アンも苦笑いを浮かべている。
「大丈夫ですよヤトさん、マーユちゃん。この子は僕がしっかり世話させてもらいますからね」
そんな2人に笑顔でそうしっかり答えるカイル。
ある意味一番ヒトが出来ているのはカイルかもしれん。
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「それでウィルさん、僕は早速グウェルと従魔契約を結ぼうと思うんですが……宜しいですか?」
俺がそんな事を思っているとは露知らず、カイルから真逆の進言である。重ねて言うが本当にヒトが出来ているな、カイルは。
「ああ良いぞ、早速やってみせてくれ。俺としても本職の魔物調教師が従魔契約をどの様に行うか、純粋に興味があるからな」
カイルの言葉に笑顔でそう答える俺。俺の場合は100%コーゼスト先生の力による物だからな、カイルみたいなプロの魔物調教師のやり方を是非とも見てみたい、と言うのは間違いなく本心からである。
「分かりました。それでは……」
そう言うとグウェルに向かって右手を突き出し、そっと目を閉じるカイル。同時にカイルとグウェルの足元に魔法陣が展開する! サークルが仄かに明滅する中、言霊を紡ぐカイル。
『我、汝との契約を求む。我が名と汝の名において絆を結ばん──契約』
カイルがそう言うと、彼とグウェルの足元のサークルが一際輝きを放ち、その輝きが収まるとカイルの右掌とグウェルの額にそれぞれ同じ紋様が浮かび上がる。その様子にカイルは「ふぅ」と短く息を吐いて
「──はい、これで契約完了です」
と此方に笑みを向けてそう話す。今のが従魔契約の魔法か──俺が一頻り感心していると
「ふむ、今の魔法とその紋様は古代魔族の系統ですね」
それまで黙っていたコーゼストが、いきなり爆裂魔法級の衝撃発言をかましたのであった。
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「「「えっ!?」」」
コーゼストの発言に驚きの声を綺麗にハモらせる俺とアンとカイル。マーユとヤトは何の事だか分からずキョトンとしている。
「契約魔法が古代魔族の系統って…どう言う事なんだ、コーゼスト?」
コーゼストの発言の意味を問い質す俺。
「はい、契約のサークルを構成する魔法文字は間違いなく古代魔族が使うモノでしたし、浮かび上がった紋様もまた古代魔族が『従属』で使用していたモノです。つまり現代に伝わっている契約魔法は元々古代魔族の使用していた『従属』の可能性が高いかと思われます」
一方問われたコーゼストは淀みなくスラスラと答えを示す。そういやコーゼストは元々古代魔族に産み出された有知性魔道具だっけな。偶に忘れそうになるが。
「カイル、君は契約魔法を何処で覚えたんだ?」
そんな事はおくびにも出さず、今度は未だに固まっているカイルを問い質す俺。
「は、はいッ! 僕は故郷の冒険者ギルドで冒険者登録した際に適正検査で職業が魔物調教師と決まった時に、ギルドが保管していた魔導書で、ですね」
俺の声に再起動したカイルが、契約魔法を習得した際の話を掻い摘んで教えてくれた。その辺はギルドの適正検査で自分に契約魔法の適正があると、初めて知ったヒトへの普通の対応であるらしい。
「……と言うと、その魔導書が──」
「はい、古代魔族系統の魔導書の可能性が高いかと」
俺の独り言にも似た呟きに明確に答えるコーゼスト。まぁだからと言って特に問題は無いんだが…… 。
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「その魔導書ならうちのギルドでも保管しているぞ」
カイルとグウェルとの契約も無事に済み、その足でラーナルー市冒険者ギルドのギルマスに魔導書の事を尋ねたら、帰ってきた台詞がコレである。
「それを見せてもらう事は可能か、ギルマス?」
「ああ、それは別に構わんぞ? と言うか、ギルドの図書室で普通に閲覧出来るようになっているんだが……勿論ギルドからの持ち出しは禁止だがな」
そう笑顔で宣うギルマスの言葉を受け、早速全員でギルドの図書室へと向かう。図書室に入ると司書をしている職員に声を掛けて、件の魔導書を持ってきてもらう。司書の職員はうちのヤトさんを見て吃驚していたが、そこは軽く無視したのは言うまでもない。
兎に角持ってきてもらった魔導書にコーゼストがひと通り目を通すと一言
「──これは、間違いありませんね。多少術式の表記が変化していますが、コレには古代魔族が使用していた『従属』の魔法術式が書き記されています」
そう断言する。そこで魔導書を持ってきてくれた司書の職員にこの魔導書について尋ねてみると、これを含む各冒険者ギルドに保管されている魔導書は全て写本で、原本は既に遺失しているとの事だった。
まぁ現在使用されている魔道具のうち、大体6割は元々古代魔族が創り出した物らしいし、古代魔導文明のと仕様がかなり酷似している部分も多いのも事実らしいから、魔導書レベルでの事実誤認も仕方ないのかもしれないな。
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「そんな事があったんだね……」
その日の夜、転移魔導機で屋敷に帰って来たオルガに、今日あった出来事を話して聞かせた時の彼女の第一声がコレである。
「私もギルドで使用する魔導書にまで気を配ってなかったからなぁ……」
「でも今までそれで何か問題があった訳じゃないんだろ? それなら気付けないのも仕方ないさ」
「そうですよ。そもそも古代魔導文明と古代魔族の術式の差異は僅かなものなんですからね」
魔導書の件を話したら軽く落ち込むオルガを慰める俺とコーゼスト。何をそんなに落ち込む事があるんだ? その事をオルガに尋ねると
「うん……まぁ……ね。ウィルやコーゼスト殿が思っている以上に古代魔導文明と古代魔族の仲違いは根深いものなのさ」
そう言って苦い笑みを浮かべる。本当に思った以上に2つの種族の不仲は深刻なようだ。元々は同じ種族なのにな…… 。
「そ、そう言えばオルガやアンやエリナやフェリピナやミアは、どうやって魔法を覚えたんだ?」
話が重苦しくなりそうだったので、アン達にも話を振って無理矢理話題を変える俺。
「うん? ああ、えっと私の場合はね──」
俺の質問に答えてくれるアンやエリナ達。聞けばアンは森精霊の里で両親や他の大人のエルフから、オルガもやはり自分の両親からで、エリナは適正検査の後ギルドの魔導書で、フェリピナやミアはそれぞれ師事した魔法士の師匠から、だそうだ。その辺はやはり各人各様であるらしい。
まぁ当然と言えば当然だが。
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屋敷での俺達の話はまだ続いている。因みに今日は皆んな屋敷に集まっていたりする。
「ところでコーゼスト。お前に確認したい事があるんだが……」
「何ですか、マスター?」
「うん、お前はカイルが使う契約魔法を古代魔族の『従属』だと断言していたが、同じ系統の魔法ってあと何があるんだ?」
純粋な好奇心からコーゼストにそう尋ねる俺。彼女は「ふむ」とひとつ頷くと
「そうですね、弱い順から言うと先ず『契約』と言う契約魔法があって、次に強めなのが『従属』と言う従属魔法で、これが現代では契約魔法の『契約』となっていますね。そして最も強力なのは『隷属』と言う隷属魔法があります。これは主に奴隷に掛ける魔法ですね」
立て板に水の如く、途端に饒舌に語り始める。ただ『隷属』の名前が出た時、アンが顔を歪めたのを俺ははっきりと見た。恐らく過去に自身が隷属のサークレットで酷い目に会った事を思い出しているのだろう。
まぁアレがあったからこそ、今こうして結婚して一緒に暮らしているんだけどな──等と俺が1人で感慨に耽っていると
「それと──これは別件ですが、今現代に出回っている魔法のうち何割かは古代魔導文明のでは無く、古代魔族の魔法術式を使用していると思われます。まぁそれで実害がある訳でもありませんが」
ご存知空気を読まないコーゼストが、再度爆裂魔法級の衝撃発言をかましたのであった!
お陰でその場の空気が凍りついたんだが?
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コーゼストの空気を読まない発言にその場が凍りついたが、彼女の台詞に感じた疑問を率直に尋ねる俺。
「ちょっと待て。そんじゃあお前がヤトやセレネに前に教えた魔法の術式は何なんだ?」
「それは当然古代魔族のですが、それが何か?」
俺の問い掛けに何か問題があるのかと言わんばかりのコーゼスト。そういや此奴はこんな奴だったな! 今更だけど!
結局この件は、先に言い出したコーゼストが追々ラファエルと協力して、先ず冒険者ギルドと魔法士ギルドに保管されている魔導書を確認する事で何とか話がついた。コーゼストは面倒くさがっていたが、言い出しっぺのお前が責任を持って調査するのは当然の責務である。
「そうすると──コーゼストさんがファウスト達に使用している契約魔法は、先程挙げた3つの契約魔法の内のどれになるんですか?」
ひと通り話も終えた所でそう質問して来るのはリーゼロッテ。そういやさっきの話ではファウスト達の話は出てこなかったな。
「私が使用する高次元魂魄連結術式『比翼連理』は、先程列挙した3つのどれにも属さない、云わば第4の契約魔法と言うべきものになりますね」
リーゼロッテの質問にまたもや饒舌に答えるコーゼスト先生。本当にお前は自分の得意分野になると弁が立つな?!
コーゼストがオルガとアン達、果てはヤトやセレネやニュクスまでもを巻き込んで始まった魔法談義を傍目に見ながら、俺はココロの中で思わずツッコミを入れるのであった。
君ら本当に自由だな!?
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




