誕生日晩餐会と新しき従魔と
大変お待たせ致しました! 本日は第257話を投稿します!
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「魔王の庭」第十二階層から帰還した翌日──今日は俺の27歳の誕生日晩餐会である。
今日のパーティーの出席者の大多数は、コーゼストの転移魔導機をフル活用して集まってもらっていたりする。具体的には直臣のエーフネ準男爵にエリック・ローズ男爵夫妻、エトムント・ツァーベル男爵夫妻にロバート・ナッシュ子爵夫妻にクリフォード・ギムソン子爵夫妻、それとネヴァヤ・ファーザム伯爵とクザーツ商会会頭のホルスト・クザーツ氏。
身内だとルベルさんとフォルテュナ義父さんとディフィリア義母さん夫妻、ダン義父さんとエマ義母さん夫妻、ベルンハルト義父さんとイゾルダ義母さん夫妻、ザイラとあとアドルフィーネである。
ネイサン義父さんとマノラ義母さん夫妻とアルノルド義兄さん、ヒギンズ子爵──ギルマス夫妻とラファエルとノーリーン、ドゥイリオ夫妻は俺と同じラーナルー市なので、此方から馬車を手配して屋敷に来てもらったし、マイヤーズ子爵夫妻は又隣なので当然徒歩で、である。
「全く……私の転移魔導機は乗合馬車じゃないんですが……」
珍しくそう愚痴を零すコーゼスト。
「まぁそうボヤくな。あとで何か埋め合わせはしてやるからさ。主に精神的にだがな」
「……言質は取りましたからね。忘れたら承知しませんよ?」
俺の慰めにジト目でそう返してくるコーゼスト。これは忘れたらあとが怖い奴だな、うん。
それはさておき、そろそろお偉いヒト達を出迎える準備をしないとな。
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屋敷の玄関ホールの床に浮かび上がる魔法陣。その魔法陣が一際輝き、輝きが薄れるとそこには──
「出迎えご苦労、ウィル。本日は家族共々楽しみにしているぞ」
「あらあら貴方ったら。ハーヴィー卿、今宵は私も楽しませていただきますわね」
「ウィル、久しいな。先ずは誕生日おめでとう。息災で何よりだ」
「ウィル様! この度はお誕生日おめでとうございます! 良ければまた冒険譚をお聞かせくださいませ!」
──オールディス王国国王エリンクス陛下、マティルダ王妃殿下、ジュリアス王太子殿下、そしてステラシェリー王女殿下の4人が魔道具『エイジス』で転移して来たのだ。
「エリンクス陛下、マティルダ王妃殿下、ジュリアス王太子殿下、ステラシェリー王女殿下、ようこそ当屋敷にお出て下さりました。今宵は私の誕生日パーティーに御足労願い、本当にありがとうございます」
そう言いながらエリンクス陛下一家に恭しく礼を執る俺。陛下からは率直な言葉遣いを許可されているが、そこはまぁ様式美である。まぁそれはそれとして── 。
俺は陛下達と一緒に転移して来たメンバーを見て目眩を覚えた。貴森精霊のエウトネラ長老やメペメリア帝国のギヨーム皇帝やアースティオ連邦のバーナード大統領、ミロス公国のエルキュール大公にトルテア自由都市のヤスメイン盟主と言った世界評議会の御歴々が一緒に転移して来たのだ!
確かにオルガが声を掛けるとは言っていたが、真逆本当に来るとは…… 。
皆んなして暇なのか?
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「やあハーヴィー卿、先日は色々と世話になったね。今日はお邪魔させてもらうよ」
「ほほう、此処がハーヴィー卿の屋敷か。私の避暑地にある別荘と同じような感じだな」
「そうですなぁ、私の私邸とも雰囲気が似ていますなァ。暮らし易そうではあります」
「これはハーヴィー卿、本日は屋敷にお招き頂きありがとうございます。素敵な御屋敷ですね」
「成程……街の中央に迷宮があるのか。うむ、実に興味深い」
以上エウトネラ長老、ギヨーム皇帝、バーナード大統領、エルキュール大公、ヤスメイン盟主、銘々の台詞である。本当に皆んなして暇なのか? 大切な事だから2回言わせてもらったが。
俺は思わずジト目を彼等に向けていると、エウトネラ長老以下5人から「今宵の晩餐会は期待しているぞ」と言う言葉が聞かれた。その言葉にエリンクス陛下一家もウンウンと盛んに頷いている。余程娯楽に飢えていたらしいが、一応今日は俺の誕生日なんだぞ?
「まぁまぁウィル。皆んな普段は国政等の重責を担っておられるんだから、偶の息抜きぐらい許してあげなよ」
あまりにも自由過ぎる御歴々に俺が不満顔をしていると、苦笑を浮かべながら俺にそう宣うのはオルガ。
「まぁ気持ちは分からんでもないが……」
オルガの言葉につい苦く笑って答える俺。目の前ではそれぞれに歓談しながら、大広間へとシモン達使用人に案内されて行く陛下一家や世界評議会の面々の姿が。
その姿に俺はそっと溜め息を漏らすのであった。
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やがて完全に日が沈むと大燭台や魔導照明が灯され、屋敷内を昼間の様に明るく照らす。その明るいホールで、俺は賓客の前で挨拶に臨んでいた。
「皆様、ようこそお出でくださりました。今夜は私の誕生日の御祝いのパーティーを是非楽しんで行ってください」
もはや定型文となった挨拶の口上を述べる俺。こう言うのもまぁ様式美である。俺の口上が終わると上座の円卓に座るエリンクス陛下から
「ウィルよ、今宵はお前が主役なのだ。そこまで堅苦しくしなくても良いぞ? その方がウィルも楽であろう?」
と言う意見が出される。そらまぁ確かにそうしてもらえれば楽は楽なんだが。すると続けてエリンクス陛下から
「エウトネラ殿、御歴々も。今宵は互いに胸襟を開くと言う事でどうであろうか?」
エウトネラ長老以下、世界評議会の面々にそう提案が為される。
「ふむ、それは良いですね」
「うむ、折角の慶事だ。それが宜しいな」
「異議無し」
「無論私も異議はありません」
「同じく異議無し」
エリンクス陛下の提案に賛成の意を示すエウトネラ長老以下世界評議会の面々。正直そう言ってもらえると此方としては非常に助かる。俺はひとつ咳払いをすると
「えへん。それでは改めて──今日は皆んな楽しんで行って欲しい──乾杯ッ!」
そう音頭をとって銀杯に満たされた葡萄酒を呷る。
『『『『『乾杯ッ!』』』』』
それに続いてパーティーの列席者達もコップの飲み物を口にし、パーティーが始まったのである。
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「兄様ッ!」
パーティーが始まって真っ先に俺の元にやって来たのは他でもない、我が愚妹アドルフィーネであった。来て早々俺に抱き着くのはいつもの事である。
「この度は27歳のお誕生日おめでとう御座います! 心より御祝い申し上げますわッ!」
身体を離すと花が綻ぶ様な笑顔で、俺にそう祝辞を述べてくるアドルフィーネ。
「あ、ああ、有難うなアドル」
あくまでもマイペースなアドルフィーネに、苦く笑いながらそう返す俺。傍らにはアン達奥様’Sとマーユ、そしてルストラ師匠が一緒に居り
『『『『アドルフィーネ様、有難うございます』』』』
「アドルお姉ちゃん、ありがとうございますッ!」
「アドル、有難うッ!」
と全員でアドルフィーネに向けて謝辞を返している。但し奥様’Sの顔が引き攣っているが。それに対して優雅にお辞儀を執り、「此方こそ有難うございます」とアン達に返礼をするアドルフィーネ。ここだけ見るとまるで貴族の見本の様だが、見た目に騙されてはいけない。
「兄様、私も今年で24歳になりますの」
急に自分の年齢の話をし始めるアドルフィーネ。そういや確かアドルフィーネの誕生日は俺より3ヶ月ほど後だったな。
「そういやそうか──よし、今度お前の誕生日の時は俺が今日のお返しに御祝いしてやるからな」
「はいっ兄様♡その時はこの左手の薬指に指輪を贈って下さいまし♡」
相変わらずの兄恋慕でブレないアドルフィーネであった。いや、むしろ以前より悪化している気がしないでもない。
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そんなこんなもあったが、賓客や身内等の列席者の皆んなからも「誕生日おめでとう」との祝辞を頂き
『『『『ウィル、改めてお誕生日おめでとうッ!』』』』
「お父さんッ! お誕生日おめでとうございますッ!」
「ウィル、27歳の誕生日おめでとう!」
「ああ、皆んな有難う」
そして最後にはアン達奥様’Sとマーユそして師匠からも祝福の言葉を贈ってもらい、少し、いやかなり照れ臭く感じる俺。そして更に
「「ワンワンッ!」」
「ヴ……マスターおめでとうございます」
「……(コクコク)」
「御主人様! えっと、た、誕生日? って言うの、よくわかんないけどおめでとう!」
「ヤトったら……誕生日と言うのはそのヒトが生まれた日の事を言うのよ。あ、御主人様、誕生日おめでとうですわ♡」
「マスターウィル、お誕生日おめでとう御座います。マスターにとって幸多き1年になることを心よりお祈りしています」
ファウスト、デューク、スクルド、ヤト、セレネの従魔’Sとコーゼストからも真逆の祝福の言葉が贈られてきた。
「お、おう、お前達も有難うな」
本当に真逆の祝福に若干面食らったが、気持ちは有り難く受け取る事にした俺。此奴らも今まで良くやってくれているからな。そんな感慨に耽っているとコーゼストから追撃の一言が?!
「それでですねマスター、女郎蜘蛛の調整が漸く終了しました。何時でも顕現出来ますが──どうします?」
タイミング良過ぎませんか、コーゼストさんや?
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「お前さぁ……何かタイミング計ってないか?」
しれっとしているコーゼストにジト目で問い掛ける俺。
「いいえ、単なる偶然ですが……それが何か?」
片やコーゼストは何処吹く風である。俺は色々諦めて
「あーっと皆んな、そのままで良いから聞いてくれ」
そう列席者達に向けて声を張り上げる。俺の声に一斉に列席者達の視線が此方に集まる。俺は皆んなに「魔王の庭」第十二階層で従魔にしたアラクネを、今から顕現させる旨を話し伝えると
「ほう? ウィルの新しい従魔か! それは是非とも拝見したい物だな!」
エリンクス陛下一家はもとより、世界評議会の御歴々や、果ては俺の直臣や身内達まで、俺の言葉を聞いて俄然興味津々である。その様子に俺は苦く笑いながら皆んなに場所を空けてもらい
「良し、コーゼスト。顕現させてくれ」
コーゼストにそう簡潔に指示を出す。
「了解──虚数変換、顕現化します」
俺の指示にコーゼストが答え、同時に目の前の床に光が生まれ、みるみるアラクネの姿を形取る。そして──
「んんッ、はぁ、くふっ、窮屈でしたわ」
アラクネのミロスラーヴァが遂にその姿を現す。4対8本の節足を持つ黒光りする蜘蛛の身体、その上顎の上に載るのは濃い黒を湛えた黒髪の短髪の見目麗しい女性の半身。そしてその美貌に不釣り合いな4対8個の黒一色の眼には部屋の光を照らしている。
誰かがその異質な姿に思わず息を飲む音が聞こえた気がした。
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ミロスラーヴァは伸びをすると、俺と目が合い、嬉しげに
「くふふっ、主様、見っーけッ♡」
そう言うが早い、あっという間に俺の傍に来て、あっという間に俺の頭をその豊満な胸に掻き抱く。この辺はヤトやセレネで経験済なので、いつもの事だと半ば諦めていたりする。但し俺の奥様’Sは殺気立っているが。
「ちょっと新入り! ナニ御主人様に羨ましい事してんのよ!? 私だって遠慮してるのに!!」
「そうですわ! 私だって御主人様の言い付けを守って我慢しているのに!!」
訂正、ヤトとセレネも殺気立っていたりする。しかしミロスラーヴァは
「くふっ、そんなのは早い者勝ちですわ♡」
と訳の分からない理論を振りかざしつつ、一向に俺を解放しようとしない。
「わぷっ?! ミ、ミロスラーヴァ!? おま、い、いい加減にしろよな!」
なのでついキツい口調でミロスラーヴァに言うと、漸く拘束を解いてくれた。
「くふふ、ごめんなさいね主様。つい昂ってしまって」
「ぷはぁッ……ったく、お前らに付き合っていたら俺の身が持たんわ!!」
全く悪びれた様子のないミロスラーヴァに、俺はつい声を荒らげる。俺が解放されたと同時に奥様’Sとヤト達の殺気が霧散するのを背中で感じる。
「ではマスター。改めてミロスラーヴァに名を与えてあげて下さい」
そんな微妙な空気の中、自由闊達なコーゼストからの言葉。本当にお前は空気を読めって。
「……ったく、しょうがないな」
そうボヤきながら俺は、予め考えていた名を言葉にする。
「お前の名前は「ニュクス」だ」
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




