誕生日前奏曲 〜バタバタそしてトラブル〜
大変お待たせ致しました! 本日は第250話を投稿します! 今回より新章スタートです!
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「そう言えばウィル、貴方そろそろ誕生日が近いんじゃない?」
ツェツィーリアでの騒動から3ヶ月程経ったある日、たまたまラーナルーの屋敷に居たルストラ師匠からそんな台詞を言われた俺。俺もたまたま迷宮『魔王の庭』から帰って来ていて、たまたま屋敷で顔を合わせた時の話がコレである。
「あーっ、そういやそうなの……か?」
この3年余りは色々とあり過ぎたもんで、しっかり自分の誕生日の事が頭から抜けていた。
「えっ?! お父さんのお誕生日ッ!? いつなの!?」
師匠と俺の会話に真っ先に反応したのは愛娘のマーユ。目をやたらキラキラさせている。それだけでなくアン達も何やら色めき立っていたりする。
「うーんとな、確か……今日から2週間後……だなぁ」
マーユの問い掛けに指折り数えて思い出しながら答える俺。
「それでウィルは今度の誕生日で幾つになるんですか?!」
ここでまた、たまたまツェツィーリアから屋敷に戻って来ていたリーゼがやたら食い気味に聞いてくる。そういや、今日はたまたま休日である。
「ん? 確か今度の誕生日で27歳になるんだが……と言っても、もうこの歳になると自分の誕生日で一喜一憂する事も無いからなァ」
だが俺の言葉に真っ先に反応を返してきたのはまたもやマーユ。
「お父さん! そんな事言っちゃダメ! お父さんが生まれた日は私にとっては、とぉっても大切な日なんだよ! ね! お母さん達もそう思うでしょ?!」
マーユの言葉に一様に頷くアン達奥様’S。こうしてなし崩し的に俺の誕生日パーティーが開催される運びとなったのである。
マジですか?!
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「そうなると……コレは大々的に御祝いしないといけないねぇ」
ここでやはり休日で屋敷に戻って来ていたオルガから不穏な発言が飛び出した。何やら凄く楽しそうなのは気の所為か?
「……何だよ、大々的にって?」
その台詞に少し身構えながらオルガに訊ねる俺。何か猛烈に嫌な予感がするんだが?
「それは勿論! エリンクス国王陛下やジュリアス殿下にも出席していただかないとね♡あ、世界評議会のお歴々にも出席を打診してみないと♡」
「うぉい! ちょっと待てーーーッ!! 何か随分と大事になって来たなッ!?」
「それは当然だよ。なんと言っても旦那様はこの国の辺境伯なんだし、それになんと言っても西方大陸の各国では栄誉伯に叙されているんだからね♡」
そう然も当然かの様に爽やかな笑顔で言い切るオルガ。その隣ではアン達奥様’Sがウンウンと盛んに頷いていたりする──と言うか君らはさっきからそれだけだな?!
「まぁまぁウィル。貴方も曲がりなりにも王侯貴族の一員なんですから、こうした事は避けては通れない道なのだと諦めなさいな」
オルガやアン達の言動や態度に1人憤悶としていると、苦笑いを浮かべたルストラ師匠に後ろから肩を叩かれながらやんわりと諭される俺。
それは辺境伯を賜ってから一応覚悟はしていたが……何となく理不尽に感じるのは俺だけだろうか?
うむぅ…… 。
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話が段々と大事になって来たが、先ずは身内からと言う訳で、遠方対話機でオーリーフ島のマディとジータにも俺の誕生日の事を連絡した。
アン達やオルガ同様に彼女らも「それなら盛大にお祝いしないと」と言う意見で一致していた。無論誕生日に合わせてオーリーフから転移魔導機で駆け付ける事も約束して。
そして次に来るのはパーティー会場の件である。俺としては俺の屋敷で身内だけで簡単なパーティーが催されれば良いかな、と言うぐらいにしか考えていなかったので、国王陛下やジュリアスなんかに出席してもらうのは完全にイレギュラーである。
まぁ何度か晩餐会を催した時に国王陛下らには好評だったので、屋敷でも大丈夫だろうとは……思う。
それと並行して主だったヒト達への招待状の発送は、我が家の完璧家令シモンとオルガに一任しておいた。まぁオルガは世界評議会の面々にも出席を打診するとか言っていたが、果たして何人来る事やら見当もつかない。
オルガに頼んだのはそうしたお偉方の事云々もだが、冒険者ギルドの連絡網を最大限に利用してもらい、招待状を各人に迅速かつ確実に手渡す為でもある。勿論エリンクス国王陛下にはその日のうちに、俺の手から直接手渡しさせて頂いたのは言うまでもない。
「ふむ、ウィルの誕生日か。それならば何を置いても出席させてもらおうか。ジュリアスは勿論の事、マティルダやステラシェリーも同席させて貰うとしよう」
俺から招待状を受け取ると笑顔でそんな事を宣うエリンクス陛下。
これは確実に出席者が増える予感がする……!
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「と言う事で2週間後に俺の誕生日パーティーがあるんだが……」
「……その話は今朝ルピィから聞かされたが……本当にやるんだな」
次の日にはコーゼストと共にラーナルーの冒険者ギルドに顔を出して、ギルマスにやはり招待状を手渡ししたのだが、その時のギルマスの台詞がコレである。
「俺としては身内だけで簡単に済まそうと思ったんだがなぁ……」
「まぁ無理だろうなァ。今のお前はこの国の辺境伯閣下なんだし、他の国からも栄誉伯とやらに叙されているんだからな。幾らお前がそうしたくても周りが放っておかないさ」
思わずボヤく俺の台詞に半ば呆れ気味な顔をして答えるギルマス。
「この様な晩餐会に招待してくださるとは光栄の至りですぞ、辺境伯閣下」
そして急にニヤリと笑うと椅子から立ち上がり、恭しく礼を執るギルマス。
「おいおい、こんな時に嫌味かよ?」
そんなギルマスに不機嫌な言葉を投げ掛ける俺。だがギルマスは呵々と笑うと
「はははははっ、まぁアレだ! それだけウィルも今や押しも押されぬ有名人になったと言う事だ! お前だってこうなる事は覚悟していたんじゃないのか!?」
そう言って俺の肩をバシバシ叩いて来る。
「痛ッ!? 痛いって! そらまぁ覚悟はしてたが……やっぱり地味に堪えるンだよなぁ……」
そんなギルマスにガックリと肩を落として見せる俺。わかってはいたが、こんな事になるとは思いもしなんだ──はァ、鬱だ…… 。
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兎にも角にもギルマスに招待状を手渡しし、その足で次の所に向かう俺。因みにうちの屋敷の又隣に居を構えるエヴァン・フォン・マイヤーズ子爵にも招待状は既に手渡ししてあったりする。
そんな俺が何処を訪ねたかと言うと──
「と言う訳で2週間後に俺の誕生日なんだが……」
「……貴様はいつも唐突であるな」
そう、腐れ縁の偏屈魔法士ラファエル・アディソンの屋敷である。この男、前回のリーゼとの結婚式は元より前々回のアン達との結婚式にも顔を出さなかったのだ。ちゃんと招待状を送ったにも関わらず、にだ。
「私はそもそもその様な祝い事には全然興味は無いのであるよ。そんなモノに出ている間に色々と研究をしていた方が合理的であるしな」
俺が何故顔を出さなかったのか、とラファエルを問い質すと返ってきた返事がコレである。
「だからお前は偏屈だと言われるんだ」
「む? その言われようは些か心外なのであるよ」
売り言葉に買い言葉、お互いに棘のある言葉の応酬になりかけたが
「旦那様、ウィルフレド様の仰っている言葉が真実であると、いい加減にお認めになさって下さいまし」
ご存知ラファエルの天敵である侍女のノーリーンが、その背から揺らめく闘気を立ち昇らせながらラファエルにツッコミを入れる。
「う、うむ。そ、そうであるな。済まなかったなウィル」
そのツッコミを受けて、慌てて俺に頭を下げて謝罪を口にするラファエル。
いつも思うんだが、お前は本当にノーリーンに全戦全敗だな!
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ラファエルの屋敷でラファエルとノーリーンの安定のやり取りを見た後(笑)、俺が次に向かうのは西区の北端だ。ご存知ガドフリー武具店の店主、半侏儒のドゥイリオと奥さんのグードゥラの所である。
実は彼等夫婦も俺の2回の結婚式には顔を出していない。まぁただ単に「店を休みにする訳にはいかないからな」との理由であるが。それにドゥイリオがそうした貴族を始めとしたお偉方に会う事を嫌った事も理由にはあるのだ。
そんな事を思いつつ、いつも通り建付けの悪い店の扉を軋ませながら開けると、扉の内側にあるノッカーを叩いて来客を告げる。すると程なくして
「……いらっしゃい……って、何だウィルじゃねえか」
珍しく来店客を迎える挨拶をしながら奥から顔を出すドゥイリオ。
「珍しいな。ドゥイリオが応対の挨拶をするなんて」
「いや何、グードゥラに言われてなぁ…… 。「アンタはもっと愛想良くしなきゃダメだ」ってな……」
俺の言葉にバツの悪そうな顔で話すドゥイリオ。
「それで? 今日は一体何の用だ?」
「あ、ああ、今日はな──」
どうしたと問うドゥイリオに来訪の用件を話して聞かせる俺。2週間後に俺の誕生日パーティーが催される事、そのパーティーにドゥイリオ夫妻に参加して欲しい事、全て。
「──とまぁ、そう言う事なんだが……参加してもらえないか?」
俺の誘いを聴いて難しい顔をするドゥイリオ。やはり一筋縄にはいかない、か?
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「ウィルには悪いが……俺はそう言うパーティーやら晩餐会やらには出ないって決めているんだ」
やおら顎の髭を撫で付けながら、そうはっきりと口にするドゥイリオ。予想通りに断って来たドゥイリオに対して
「……理由を聞いても良いか?」
少し意地になって食い下がる俺。
「む、それはな……」
「大した理由じゃないんだよ!」
ドゥイリオが何かを言いかけた所で、彼の背後からグードゥラが口を挟みながら顔を出す。
「うちの人と来たら「貴族のパーティーなんざ礼儀や仕来りが大変で、折角の美味い酒が不味くなる」なんて言っているのさ!」
「おいッ! グードゥラ! それは──ッ!」
続くグードゥラの言葉を慌てて遮ろうとするドゥイリオ。だがグードゥラはドゥイリオに人差し指を突き立てるとズバリ指摘して来る。
「いいや! 今日は言わせてもらうよドゥイリオ! アンタ、ついさっきウィルさんが折角誘ってくれているのを断っただろ?! 酒なんざいつ何処で呑んだって酒は酒さ! アンタ、自分がめんどくさいのを酒の所為にするんじゃないよ!」
「ぐッ?!」
グードゥラの指摘に声を詰まらせるドゥイリオ。だがグードゥラの言葉はまだ続く。
「はぁ……全くアンタと言う人は…… 。たまにはアタシをそう言うパーティーに連れて行ってもバチは当たらないのにさ、何いい歳して照れているんだか……」
「ッッ! 分かったわかった! 俺の負けだ! ウィル!さっきのパーティーな、参加させてもらうからよ!」
グードゥラの言葉に結局折れる形となったドゥイリオ。
もしかするとドゥイリオも家庭内序列は俺同様低いのかも知れん。
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そんなこんなをして1週間が過ぎた。その間、俺は何をしていたかと言うと、先ずパーティーの招待状を手渡し出来る範囲のヒトへと配って歩いていたりする。皆んなが皆んな、声を揃えて「是非とも出席させていただきます」との事だった。たかが俺の誕生日なんだぞ?! そこまで力を入れないで欲しいんだが!?
「差し出がましいようですが、ウィルさんはもう少し御自分の御立場を理解しておいた方が宜しいかと思いますよ」
クザーツ商会のホルスト会頭に招待状を手渡した時に言われた台詞がコレである。しかも苦笑い付きで。
「全く……我がマスターは。良いですか? マスターはオールディス王国の辺境伯で西の5カ国からは栄誉伯に叙され、しかも冒険者ギルドからは『英雄』の認定を受けているんですよ? ホルスト会頭ではありませんが、自身がそう言う立場にあるといい加減に理解して下さいね?」
終いにはコーゼストから立場云々についてお小言をもらう始末。そんなに俺が悪いのか?
だが俺の誕生日まであと3日となったある日、不意に俺の遠方対話機から呼び出し音が鳴った。
釦を押して遠方対話機に出る俺。
「ウィルだ」
『ウィルさん! ハルトですッ!』
呼び出ししてきた相手は現在クロエやミア達と共に「魔王の庭」に潜っているエアハルトだった。確か明日辺りに帰って来る予定の筈なんだが?
「どうしたハルト? 何かあったのか?」
『ジゼルとフェデリカが強制降下の罠で下の階層に落ちましたッ!』
ご存知トラブルが向こうからやって来たのである。
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になります!
それではお楽しみに!!




