制圧と終局?
大変お待たせ致しました! 本日は第246話を投稿します!
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ちょっとした紆余曲折を経て、ツェツィーリア共和国の議会府にコーゼストの転移魔導機でハーヴィー騎士団と共に乗り込んだ俺達! 当座の脅威である元老院直属の近衛騎士隊70名を制圧し終えたのを見届けると
「エリナ! 皆んな! あとは任せたぞッ!」
そう一声掛けて強硬派の居る保管庫の外扉に手を掛ける俺!
「ええっ! ここは任しておいてッ! 貴方は早く中の奴等を!」
俺の声に力強くそう答えるのは騎士団長のエリナ! 他の団員達は制圧した近衛騎士隊の武装解除をしていたりする。エリナの台詞にひとつ頷くと、俺はファウスト達を現実体で顕現する!
「「ヴァンヴァンッ!」」
「ヴ……マスター、ご命令を」
「御主人様の一の下僕、ヤト参上! いよいよ出番ねッ!」
「同じく御主人様の一の下僕、セレネ見参。漸く出番ですわね」
顕現したファウスト達が銘々に声を上げる。やる気に満ちていて大変宜しいが、ファウストとヤトは声を小さくしような。
「保管庫内に居る強硬派の何人かは手にアンの『リュシフェル』に似た物を持っています。恐らくはリーゼロッテさんの仰っていた鉄筒砲かと思われます。先にファウスト達を室内に突入させる事を推奨します」
『使徒』で室内を観察していたコーゼストが、俺にそう進言して来る。と言うか、映像表示機が無くても『使徒』を操作出来るんだな。
俺はそんな事を思いつつ、ファウスト達4体に先行して突入するのを命じるのだった。
勿論、中に居る奴等の不殺を厳命して、である。
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「御主人様、私に任せてッ!」
そう言うが早い、保管庫の外扉を開けると中に勢い勇んで単身突入して行くのはヤト。
「あっ、もうヤトったら……御主人様、後は私達にお任せを。ファウスト、デューク、行きましょう」
一言そう言うとファウストとデュークを伴って、あとに続くのはセレネ。程なくして保管庫内部からは「ま、魔物だッ!」とか「な、何で魔物がここにッ?!」とか「騎士隊は何をやっているのだッ?!」とか混乱の声と共に、立て続けに爆発音が鳴り響く!
だがそれ等の喧騒も不意に静まり返ると、中からはヤトの「御主人様ァ、入って来ても良いわよォ」と俺を呼ぶ声が。その声にコーゼストの方を見やると、彼女はひとつ大きく首肯する。どうやらヤト達は上手く中の奴等を制圧したらしい。
それでも念の為、俺とリーゼさんにはコーゼストに物理結界を掛けてもらい、保管庫内へと足を踏み入れる事に。外扉と内扉の二重の扉を潜って中に入ると
「あっ、御主人様ァ! 見てみて! ちゃんと言い付け通りでしょ?!」
その蛇身で数人を纏めて締め上げながら、やたら自慢気な顔をしたヤトと
「御主人様ッ、此方も全て片付きましたわ」
残り数人をファウストとデュークと共に押さえ付けながら、此方に笑みを向けて来るセレネの姿があった。よく見ると何人かは怪我をしているみたいだが、まぁ大した事は無さそうなので断然華麗に無視する事にしたのは言うまでもない。
こう言うのを自業自得って言うんだな、うん!
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「くっ、ハーヴィー卿かッ?! 貴様魔物調教師だったのか?! こんな魔物を嗾けるとは! この卑怯者め!」
俺が1人で納得していると、セレネに押さえ付けられていたダヴィート代表が口惜しげにそんな台詞を口にする。何言ってんだ、こいつ? 俺は溜め息ひとつ吐くと床に組み伏せられているダヴィート代表に向かって
「あのなぁ……お前が世界評議会で行った一連の出来事を省みてみろ。お前は世界評議会の面々の前でオールディス王国に対して宣戦布告をかましたよな? しかもリーゼさんを捕らえて、見せしめとして軟禁しているベルンハルト元首夫妻共々、公開処刑すると言い放っただろが。俺達はそれを阻止するのと同時に、戦争の首謀者を捕縛する為に遣わされた外郭部隊って訳だ。コイツが世界評議会で言っていた「軍事的強制措置」って奴さ」
と言い放つ。俺の言葉に禿げ上がった広い額を真っ赤にして「き、貴様ァーーーッ!」と激昂するダヴィート代表。何かしようと盛んに藻掻いている様だが
「あら、何をやっているのかしらァ?」
それに気付いたセレネが、後ろ手に締め上げた両腕を更にきつく締め上げる。するとゴキッと言う嫌な音と共に
「ぎぃやぁぁぁーーーーーッ!!」
絶叫を上げるダヴィート代表。どうやらセレネが腕を締め上げ過ぎた事により、両肩の関節が外れたみたいである。だがそれこそ自業自得だ。
あまりの痛みに涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしているダヴィート代表の様子に、俺はやたら冷めた視線を向けるのであった。
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ヒィヒィと呻いているダヴィート代表を一瞥しつつ、改めて保管庫内部に目を向ける俺。そこにはコーゼストが『使徒』で見せてくれた1000体の巨大ゴーレムが。こう見ると中々に壮観な眺めである。体高は約3メルト程か? その辺はうちのデュークと同じぐらいだが、体格はデュークや『黄昏の城』で獲得したゴーレムよりもずんぐりとしており、パッと見て鈍重な印象を受ける。
「これは……明らかに古代魔導文明とも古代魔族とも系統が違いますね。どちらかと言うと現在ヒトが使役しているゴーレムに似通っている所が何箇所か見受けられます。ゴーレム自体の出来は及第点ですが、200年前にこれ程の物を造れる技術と莫大な資源を持っていたとは侮れませんね」
一緒にゴーレムを見ていたコーゼストからはそんな感想が漏れ聞こえて来る。と言うか、俺にはその違いが全くサッパリ分からんのだが?
そう思いつつ足元に転がる『リュシフェル』擬きをひとつ拾い上げる俺。確かに見た目は『リュシフェル』そっくりである。これが鉄筒砲か。
「ふむ、やはり大砲と同じく先込め式でしたか。これですと連射は不可能ですね。まぁ大量に有ればその辺もカバー出来るんですけどね。それでもファウスト達には全くの無力でしたが」
コーゼストの鉄筒砲に対する評価はかなり辛口である。そらまぁファウスト達は格78オーバー、順位Sの魔物だし、そもそもこうしたのは対人用であって対魔物用では無いだろうに。
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兎にも角にも、こうして無事にダヴィート達強硬派を捕縛した俺達。ヤト達が捕らえていた強硬派の連中は、後から保管庫内に入ってきたエリナ達ハーヴィー騎士団に引き渡した。その際、怪我をしている何人かには軽く治癒魔法を掛けてやったのは言うまでもない。
まぁそれはそれとして、俺にはまだやらなければならない事がある。それは軟禁されているリーゼさんの両親、つまりはベルンハルト元首夫妻を解放する事である。
「さてと、リーゼさん。君の両親が軟禁されている君の屋敷まで案内してくれないか?」
「あっ、はい! 分かりましたッ!」
俺の言葉に即座に反応するリーゼさん。聞けば彼女の自邸はこの議会府の直ぐ傍にあるとの事だった。なので一旦地上階まで上がり、議会府正門から外に出る俺達。
「彼処の方ですッ!」
先に立って道案内しようとするリーゼさんを押し留め、俺の傍で行き先を指示してもらう。
いきなり現れた双頭魔犬や剛鉄岩人形、半人半蛇や女王蛾亜人に議会府正門近くに居たヒト達が軽く混乱を起こすが、当然華麗に無視する。
そうして駆ける事3分、本当に議会府の直ぐ傍にあった大きな邸宅に到着した。邸宅前には2人の騎士が居たが、リーゼさんの顔を見るとすぐさま門を開けて中へと入れさせてくれた。まぁただ単にうちのファウスト達を見て戦意を喪失したのだろうが。
「お父様ッ! お母様ッ! リーゼロッテですッ!」
玄関に響くリーゼさんの声に、屋敷の中が俄に喧騒に包まれた。
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「り、リーゼだとッ?!」
屋敷の奥からそう言う声が響くと同時に、バタバタとしたヒトの足音が玄関に近付いて来るのが聞こえる。
やがて奥から姿を現したのは褐色の髪をオールバックにした紫水晶の瞳を持つ男性と、尻まである長い金髪を垂髪にした蒼玉の瞳の女性。恐らく彼等がリーゼさんの両親──ベルンハルト元首夫妻だな。2人ともリーゼさんの姿を認めると
「「リーゼ、良くぞ無事で!」」
そう一言叫ぶと此方に駆け寄って来る。リーゼさんも
「お父様もッ! お母様もッ! 良く御無事でッ!」
と叫ぶと同時に俺の傍から両親の元に駆けて行く。そして玄関の中ほどで、ひしと抱き合う3人。感動の親子の再会である。そうして抱き合い、互いの無事を確認し終えると
「ところでリーゼ、そこに居る彼等は一体何者なのだ? それに何故魔物がこんな所に……」
リーゼさんにそう不安気に尋ねてくるのは、父親であるベルンハルト元首。特にファウスト達従魔の姿を見て警戒しているみたいである。そんな父親らにリーゼさんは満面の笑みを浮かべながら
「はい、お父様お母様! 彼等は私を助けてくださった方々ですッ! 先ずあの方は──」
そう言って俺の方に手を向ける。
「オールディス王国のウィルフレド・フォン・ハーヴィー辺境伯閣下です! そしてその後ろに控えるのは、コーゼストさんとハーヴィー辺境伯閣下の従魔の方々ですッ!」
「「な、何だとッ(何ですって)?!」」
ベルンハルト元首夫妻の声が綺麗に重なった。
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驚くベルンハルト元首夫妻に俺は改めてリーゼさんとの経緯、そして今こうしてこの場に世界評議会からの依頼で外郭部隊としてやって来ている事、ダヴィート達強硬派は既に排除した事を話して聞かせた。
勿論ファウスト達従魔の紹介はもとより、コーゼストが自動人形の身体を持つ有知性魔道具だと言う事も併せて説明したのは言うまでもない。
「「真逆その様な事になっていたとは……」」
怒涛の展開に驚きを隠せないベルンハルト元首夫妻。然もありなん。
「改めてハーヴィー辺境伯卿には感謝を。私がツェツィーリア共和国元首ベルンハルト・ド・アーベルだ」
「リーゼロッテが本当にお世話になりました。私はベルンハルトが妻のイゾルダ・ド・アーベルです」
「丁寧な挨拶痛み入る。俺が先程リーゼロッテさんに紹介してもらったウィルフレド・フォン・ハーヴィーだ。オールディス王国から辺境伯なんて爵位を賜っているが、冒険者の方が本職なんでね、無作法なのは勘弁して欲しい」
そうしてお互いに自己紹介をし終えると、しっかり握手を交わす俺とベルンハルト夫妻。
こうして不穏な噂に端を発した一連の騒動も、何とか大事にならずに終幕を迎える事になったのである。さてと、あとは捕縛した強硬派の連中を世界評議会まで連行すれば、俺の仕事も終わりだな。やれやれ、やっと肩の荷が降りるな…… 。
だが俺はこの時、自分がこの騒動にすっかり巻き込まれている事に気付かなかったのである。
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ベルンハルト元首夫妻を無事解放した俺は、再び議会府地下へと舞い戻った。コーゼストの転移魔導機でダヴィート達強硬派を世界評議会まで連行する為である。因みにリーゼさんはやっと再会出来た両親と、現在親子水入らずで色々と話し込んでいる最中だ。
武装解除した騎士隊70名は、後からやって来たあちらの陸軍兵達に引き渡し、俺はエリナ達ハーヴィー騎士団をラーナルー市へと帰還させた。
「それじゃあ向こうで貴方の帰りを待っているわね」
別れ際のエリナの台詞がこれである。そんなエリナに苦笑いを浮かべると改めて転移魔導機で、捕縛した強硬派15名を世界評議会が執り行われているブリシト城まで連行する事に。
足元に展開した魔法陣が眩しく輝いたかと思った次の瞬間、ブリシト城の会議室に転移して来た俺とコーゼスト、そしてダヴィート達強硬派の面々15名。
「おお、ハーヴィー卿! 御苦労様だった!」
帰還した俺達にそう声を掛けるのは世界評議会議長である貴森精霊のエウトネラ長老。エリンクス国王陛下やギヨーム皇帝陛下らからも「良くやった!」とか「大活躍だったな!」と、様々な賛辞の言葉が投げ掛けられて少し尻がむず痒い。
兎も角世界評議会の手にダヴィート達を引き渡して、俺への依頼も無事達成と言う事になるな。俺がそう思っていると
「オホン、実はハーヴィー卿には大事な話があるのだが……」
咳払いと共にそう切り出して来るエウトネラ長老。
オイ、チョットマテ。まだ何かあるのかよ?!
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は2週間後になりますのでご注意下さい!
それではお楽しみに!!




