会議は踊りまくる(その一) 〜トラブルよ、こんにちは〜
大変お待たせ致しました! 本日は第242話を投稿します!
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「真逆この場にツェツィーリアのベルンハルト元首の息女が居るとはな」
オールディス王国ブリシト城の会議室で開催された臨時の世界評議会。その会議の場にリーゼさんが居た事により、世界評議会の代表者達に動揺が走った。先の台詞はアースティオ連邦のバーナード大統領の台詞である。
「エリンクス王、これは一体どう言う事なのか、きちんと説明して貰おうか?」
「無論ちゃんと説明させて頂く。先ずはこうなった経緯だが……」
貴森精霊のエウトネラ長老の鋭い声に臆する事無く答えるエリンクス国王陛下。
ベルンハルト元首が突如元老院の手で失脚させられた事、その直前にリーゼさんが父親から国鍵を託された事、元老院の強硬派が国鍵を狙っている事、リーゼさん自身は追手の手を逃れる為に迷宮『混沌の庭園』に身を潜めた事、そしてツェツィーリアの議会府の地下の保管庫に1000体もの巨大戦闘ゴーレムが眠っている事、強硬派の真の目的は国鍵でそのゴーレム軍団を手中に収める為では無いかと言う事、等々、リーゼさんから聞いたままをその場に集まった代表者達に話して聞かせる。
「……以上の事でハーヴィー辺境伯がリーゼロッテ媛を保護し、現在に至ると言う訳だ」
「そんな事が水面下で進んでいたなんて……」
全てを説明し終えたエリンクス陛下が話を締め、それに思わず大きな溜め息と共にそんな言葉を漏らすのはミロス公国のエルキュール大公。他のメンバーも言葉にならない様であった。
然もありなん。
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「しかし1000体もの巨大ゴーレム軍団、か……俄には信じ難いな」
話を聞き終えて暫し、何とかそう口にするのはトルテア自由都市のヤスメイン盟主。
「確かに俄には信じ難い話であろう。だが其れを「真実」と納得出来る物を彼等が私に見せてくれたのだ。そして今日また貴殿貴女らにも彼等が「真実」を見せてくれるだろう」
ヤスメイン盟主の言葉に対し、自信ありげに俺とコーゼストに手を向けながら答えるエリンクス陛下。皆んなの視線が俺とコーゼストに集まる。俺は恭しく臣下の礼を執るとエリンクス陛下の説明を引き継ぐ。
「それでは皆さんに是非見ていただきたい物があります──コーゼスト」
俺の声に無限収納から映像表示機を取り出して床に設置するコーゼスト。
「これは映像表示機と言いまして──」
突然の出来事に驚く面々を尻目に、映像表示機と『使徒』、そして『スターゲイザー』に関して簡潔に説明を行うコーゼスト。その説明に更に驚愕を顔に貼り付ける代表の面々。
「そんな魔道具がこの世にあると言うのか……」
信じられないと言う面持ちでそう呟くのは、メペメリア帝国のギヨーム皇帝。
「論より証拠、実際に見てもらった方が早いでしょう。今からこの会議室を『使徒』で上空から撮影します──Rー04起動、撮影開始」
一方コーゼストは只管マイペースで映像表示機を操作し、この会議室の映像を映像表示機の上の空中に映し出す。
「「「「「おおっ!」」」」」
各国の代表者の声が綺麗に重なった。
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「さて、この魔道具の有用性はお解り頂けたと思います」
俺の言葉に黙って頷く代表者の面々。ついさっきまで、映像表示機の立体映像に自身の姿が映し出されて、誰もが興奮状態で大騒ぎだったりする。
「それではこの『スターゲイザー』で件のツェツィーリアの議会府地下を見てみましょう──『使徒』G-09、撮影開始。対象:ツェツィーリア共和国首都シィスムルにある議会府地下」
コーゼストの言葉に瞬時に映像が切り替わる。そこに映し出されたのは──整然と整列している無数のゴーレム達の姿。その映像にまたもや誰かが息を呑む音が聞こえた。
「こ、これがツェツィーリアの地下奥に……」
「なんと言う事だ……」
バーナード大統領とギヨーム皇帝の声が静まり返った会議室に響き渡る。
「皆さん、それこそが私が議会府地下奥の保管庫で見た光景そのものです」
それまで黙っていたリーゼさんが驚く面々にそう声を掛ける。その声には悲壮感と焦燥感が感じられる。
「──・・──1列50体が20列、間違いなく1000体のゴーレムが保管されています」
片やコーゼストとはと言うと、飽くまで淡々と自分に与えられた仕事を熟している。
「これがツェツィーリアの「真実」か……」
「もしもこれ等ゴーレム軍団を強硬派が手中に収めれば、事は単にオールディスとツェツィーリアだけの話では済まなくなりかねん……」
事ここに至って世界評議会の面々も、その危険性に気付き始めていたのである。
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「確かにこれは由々しき事態ですな」
ヤスメイン盟主がそう口にすると、バーナード大統領やギヨーム皇帝やエルキュール大公が大きく頷いて肯定する。
「エリンクス王が我等世界評議会に参集を掛けた意味が良く解った。これは確かにオールディスだけの問題では無いな。下手をすると西方大陸全体の危機になりかねん」
参加者全員を代表してエウトネラ長老がそう言葉を発する。
「御理解頂けた様で何よりだ、エウトネラ長老」
同意を得られて安心したかの様なエリンクス陛下。あとから聞いた話だと、エウトネラ長老は世界評議会の議長を務めているのだそうだ。成程、それで彼の同意を得られて安心したのか。
「するとこの後どうするか、ですね」
「うむ、ここはやはりツェツィーリアの代表を招聘して、戦争の意思があるか確かめるのが宜しいかと」
「いやいや、其れでは逆に彼等に口実を与える事になりかねん」
「いや、それなら──」
「いやいや、それよりも──」
等々云々かんぬんと、幾つのも意見が喧々囂々、侃侃諤諤と交わされる。
「そもそもの話、リーゼロッテ媛の身柄が此方にあるのだ。其れを生かさぬ手は無い」
「ですな。その事実を彼等強硬派は知らずにいる事が我等の強みなのですからな」
「ならば彼等にその事実を教えずに、世界評議会に強硬派の代表を招聘して、此度の事を糾弾するのが最上かと」
そうして徐々にではあるが、この議論も纏まりつつあったのである。
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そうして意見を交わす事暫し──
「──さてそろそろ意見も出尽くした事でもあるし、世界評議会としての総意を決めたいと思うのだが」
会議室に響き渡るエウトネラ長老の声。その一声でシンと静まり返る代表者の面々。
「そう……ですな。各々方そろそろ宜しいか?」
「うむ、異議なし」
「儂も異議なしだな」
「私も賛成です」
「私も同じく」
「異議なし」
そして異口同音に同意を唱えるエリンクス陛下以下の面々。それにひとつ頷くと
「それでは、先ずツェツィーリア共和国への対応だが……」
世界評議会議長のエウトネラ長老が全員の出した意見を取り纏めると──
1、世界評議会としてツェツィーリア共和国の強硬派と呼ばれる者を至急招聘し、ツェツィーリア国内で政変があったか問い質す。無論その正当な理由と経緯も含めて。
2、また飽くまで「噂」として漏れ聞こえて来る「穏健派」議員の粛清の有無の確認と、其れが事実であった場合、ツェツィーリアへ世界評議会からの正式な抗議表明。
3、これも「噂」の域を出ないがツェツィーリア共和国のオールディス王国への開戦の意思の確認。これもまた事実であった場合、ツェツィーリア共和国側の正当な開戦理由を問い質すと同時に世界評議会からの厳重抗議。
──以上の3つを指針とする事となった。またその際にリーゼさんが世界評議会側に居る事をツェツィーリアに気取られぬ様に、細心の注意を払う事もあわせて取り決められたのである。
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「何とも曖昧な議決だな……」
一連のやり取りを傍から見ていた俺の口をついて出るのは辛辣な台詞。口調が素なのは勘弁して欲しい。
「うむ、ハーヴィー卿の言いたい事は分からなくもないが、これが今の世界評議会の限界でもあるのだ。何せ「世界」に対しての「権限」はそれなりに有るが、それに伴う「力」が圧倒的に無いのだ。そもそも世界評議会の前身は、昔の魔族の侵攻によりヒト族と森精霊族が滅亡の危機に瀕した後、ヒト族の王族とエルフ族の長老達が話し合いを持った事に端を発する。それ故に「権力」よりも「権限」に重きを置いているのだ」
そう苦々しく言うのは議長のエウトネラ長老。
「それはアンから聞いて知っている。だが再びこの世界への脅威が芽を吹くのを事前に防ぐのが目的なら、それ相応の対応すべき「力」は持つべきだと思うが……」
「うむむむ……其れを言われると返す言葉が無いな」
続けての俺の意見に二の句が告げないエウトネラ長老。他の世界評議会メンバー達も沈黙している。それに構わず今度はコーゼストが発言する。
「他者を支配する「権力」ではなく、理不尽な「暴力」に対応する「力」は持つべきだと私は思います。一番良い例が冒険者ギルドですね。彼等の組織は世界各国に有りますが、他国に媚びず尚且つ中立性を保っている武力組織です。これは「権力」は無くても魔物と言う「暴力」に抗う為の「力」です。その辺はこの世界評議会と似ていませんか? ヒトを護るべき「力」は決して「暴力」とは言えません。あとは使うヒト次第です」
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「やれやれ、コーゼスト殿にそう言われては、ねぇ……」
そう言うと肩を竦める仕草をするオルガ。そして
「エウトネラ長老、ギヨーム皇帝陛下、エリンクス陛下、バーナード大統領陛下、エルキュール大公陛下、そしてヤスメイン盟主陛下、これは痛い所を突かれましたね」
と苦笑いを浮かべながら世界評議会メンバー達に声を掛ける。
「うむむ、だがなコーゼスト卿。今現状では我等世界評議会は兵力を保有出来ずにいる。各国からそれぞれ兵力を集める事は可能だが、それ等が目に見える形となるには時間が足りないと言うのが問題なのだ」
議長のエウトネラ長老は苦虫を噛み潰したような渋面を見せる。其れは今の世界評議会の限界を知るからこその表情である。
「では即戦力さえあればツェツィーリアへの対応も違ってくるのですね?」
それに対するコーゼストの問いは極めて単純明快だ。
「其れは当然だな。我等にツェツィーリアを押さえ込むだけの兵力が有れば、対応もまた違ってくるのは自明の理」
エウトネラ長老からそう言葉を受け取ると、コーゼストはニッコリと笑みを浮かべて
「それでしたら私に心当たりが有ります」
迷い無くはっきりとそう言い切る。何だか嫌な予感しかしないんだが? するとコーゼストは俺の方に手を向けて
「我がマスターであるハーヴィー辺境伯閣下保有の従魔達ですよ。今回は彼等に活躍してもらうのです」
満面の笑みでそう言い切るのであった。
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「うぉい?! ちょっと待てーーーッ!」
コーゼストの台詞に会議室に居る全員の視線が俺に集まる中、抗議の声を上げる俺。
「何ですかマスター?」
俺の抗議に何が不服だと言わんばかりにコーゼストが答える。
「幾ら何でも奴等には荷が重過ぎないか?!」
「それぞれ格78オーバー、順位Sの双頭魔犬に剛鉄岩人形に半人半蛇に女王蛾亜人、この4体だけでも国をひとつ滅ぼす事は可能かと」
しれっと怖い事を口走るコーゼスト。怖いな、おい!?
「いやいや、国を滅ぼす気は毛頭ないから!」
思わずそう叫ぶ俺だが、周りの受け取り方は違っていた。
「た、確かにそれだけの魔物を使役しているのならば「国落とし」も可能だろう」
そう呟くのはギヨーム皇帝陛下──うぉい!
「だが本当にそれだけの魔物を使役しているのか?」
「それに関しては私が保証しますぞ。私は実際にその4体の魔物と会った事があるからな」
更に疑問を呈するバーナード大統領に対して、ちょっと自慢気に胸を張るエリンクス陛下。そんな事で威張らないで頂きたい。それにリーゼさんも! そんな所で盛んに頷かない!
結局その後、俺は世界評議会の面々にファウスト達従魔を顕現して見せる事になったのである。勿論エウトネラ長老以下の世界評議会の面々はあまりの驚きに固まっていたが。
重ねて言うが俺には国を滅ぼす気は毛頭ないからな! 大事な事だから2回言わせて貰った!
そしてコーゼスト! あとでしっかり話し合おうな!
ここまでお読みいただき有難うございました!
次回は3週間後になります!
お楽しみに!!




