その号、天照につき 〜偏屈者達の狂宴〜
本日は第214話を投稿します!
今回は久々にあの人達が御出演なさります(笑)。覚えている人は居るでしょうか? それでは本編新章をどうぞ!
-214-
巡行の旅から帰ってきて1週間ほどのんびりしていた俺とアン達。オルガだけは「グラマスとしての仕事があるからね」と言って、ラーナルー市に戻って来た翌日には王都ノルベールへと帰って行った。
「仕事を終わらせたら直ぐにまた来るからね♡」
そう言って俺の頬に軽く口付けをして帰って行ったオルガ。なかなかに大胆である──但し頬をほんのりと赤らめていたが。そんなに恥ずかしいならするんじゃありませんって。
そんなこんなもあったが、今日は前々からの用事を済ませる為にラファエルの屋敷を訪れていた。用事とはズバリ! 『黄昏の城』で手に入れた魔道具類を見せる事である。曲がりなりにもラファエルは古代魔導文明研究者であり魔具製作者でもあるからな、この手の事を黙っていると俺の屋敷に押し掛けて来かねない。なので先手を打つ事にしたのだ。
「うむむむむ、これは凄いの一言であるなッ!」
そのラファエルだが、屋敷の裏庭にコーゼストの無限収納から出した2体のゴーレムを含む魔道具類100点の山の中を、あちこち見て回っていたりする。そんなにガツガツしなくても魔道具は無くならないから安心しろって。
「まぁ喜んでもらえた様で何よりだよ」
そんなラファエルの様子に苦笑混じりにそう答える俺。因みに今回の同行者はマーユとコーゼストだけだったりする。
「全く……旦那様は辺境伯様方を放っておいて何をしているのですか?」
そしてそんなラファエルにいつもの如くお小言を言うのは、ご存知無敵メイドのノーリーン。
「う、うむ、も、勿論忘れていないのであるよ、うん」
ノーリーンからの圧にしどろもどろになるラファエル。
前にも言ったが……お前がこの屋敷の主人なんじゃね?
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とりあえずそうした魔道具の事は俺よりもコーゼストが詳しいので、場所を屋敷の応接間に移してラファエルとコーゼストが『黄昏の城』で見つけて来た魔道具についてあれやこれやと話し込んでいる。
それもこれもコーゼストが自動人形の身体を手に入れたから出来る事である。お陰で俺は2人が話し込んでいる横で、ノーリーンが淹れてくれる香茶を優雅に飲んでいられる。勿論マーユは果実水を飲みながらノーリーンとお喋りに花を咲かせていたりする。
そうしてコーゼストと散々話し込んでいたラファエルだったが、一通り話し終えると意気揚々と俺らが座るソファーの所まで来て
「うむうむ、流石はコーゼスト殿であるな! 我々が知らない点は言うに及ばす、我々の理解が及ばない超古代の技術にとても精通している! 話しているだけで本当に勉強になるのであるよ!」
実に楽しげに熱く語るのである。
「そいつは良かったな。それじゃあ最初に話した通り、完動品の魔道具の幾つかはお前に暫く預けるから、お前の研究に存分に活用してくれ」
俺は笑いながらラファエルにそう言葉を掛ける。因みにそれ等の魔道具はコーゼストが既に解析済であったりするが、言わぬが花である。
「うむ! 任せておきたまえッ!」
俺の台詞に胸を叩くラファエル。そして続けて
「そうだウィル! コーゼスト殿も今しばらく貸してはもらえないだろうか?」
突然そんな事を偉そうに宣う。
うちのコーゼストは品物とかペットとかじゃないんだが?
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「はァ……旦那様、その様な瑣末な事よりもマーユちゃんへの挨拶が疎かになっておりますが?」
ここまで絶好調だったラファエルだが、ノーリーンから至極真っ当なツッコミを入れられてしまい、「そ、そうであるな」と身を縮こませて改めてマーユに向かって自己紹介をする。
「お初にお目に掛かるマーユ嬢、私はラファエル・アディソン。ウィルの数少ない友人の1人なのであるよ。これからもどうかひとつ宜しく頼む」
「私はウィルお父さんの娘になったマーユです! こちらこそよろしくお願いしますね、ラファエルお兄ちゃん!」
ラファエルの自己紹介に可愛いお辞儀で答えるマーユ。それにしてもラファエルよ、数少ない友人とか余計な事を言うんじゃありませんって。それとマーユ、コイツはかなりのオジサンだぞ?
「改めまして、私はこの屋敷で侍女をしておりますノーリーンと申します。そこの駄目な主人共々これからも宜しくお願い致しますね、マーユちゃん」
「はいっ! ノーリーンお姉ちゃん、こちらこそよろしくお願いします!」
片やいつも通りに……いや、いつも以上に笑顔でマーユに会釈をするノーリーンと、それにもこれまた笑顔でカーテシーをして答えるマーユ。その様子にラファエルが俺に話し掛けて来た。
「うむ、中々に可愛らしい娘御であるな。ノーリーンがすっかり気に入ったみたいである」
「そうだろ? 自慢の娘さ」
そう言って胸を張る俺。やっぱり可愛いは「正義」である事が実証された瞬間である。
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そんなこんなで漸くラファエルの屋敷を辞した俺達。
「にぎやかなお兄ちゃん達だったね!」
俺と手を繋いで歩くマーユは御機嫌そうにラファエルとノーリーンの2人の事をそう評する。アレを賑やかの一言で片付けてしまう我が娘は大物かな?
「また親バカな事を……それで次は何処に行かれるのですか?」
呆れた物言いのコーゼストが次の行き先について尋ねて来る──と言うか、親バカ言うな。
「ん? 次はコイツを見せに行こうと思ってな」
そうした事はおくびにも出さず、コーゼストの質問に腰に下げた刀に手をやる俺。そう言っている間にもラファエルの屋敷がある北区から通りを南区へと向かう俺達。
「成程、彼の所ですか。確かに訪れないと怒られますね」
コーゼストも何かに気付いたらしく頻りに納得している。一方でマーユは何の事だか分からずキョトンとしていたりする。
やがて南区の西端にある目的地の前まで来た俺達。目の前には外観がボロボロの店屋が。
「えっと……「ガドフリー武具店」って言うの?」
傾いた看板の掠れた文字を読み上げるマーユ。
「ああ、そうだ。ここはな、お父さんやお母さん達が世話になっているヒトのお店なんだ」
俺はマーユにそう言うと軋む扉を開けて、扉の内側に備え付けられているノッカーを叩きながら声を掛ける。
「ドゥイリオ、居るか?! 俺だ、ウィルだ!」
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程なくして店の奥から「何っ?! ウィルだと?!」と言う大声と共に髭面の小柄な男性が姿を現す。ご存知「ガドフリー武具店」の店主ドゥイリオである。
「おおっ! ウィルじゃねえか?! 何だお前、暫く顔を見せなかったから心配していたんだぞ!?」
俺の顔を見るなり破顔一笑、嬉しそうにそう言うドゥイリオ。
「ああ、すまんすまん。色々とあってな……」
俺は苦笑いを浮かべながら今までの経緯を掻い摘んで話す。思えばドゥイリオの所に来たのは東方大陸に渡る前だったな。
黙って俺の話を聞いていたドゥイリオだが、話が進むにつれ段々と目が見開かれ、話が終わる頃には口をあんぐり開けて
「はぁーーっ、これはまたとんでもない話だな……お前が辺境伯様だってか? おっと、こう言う口の利き方じゃあ不味いんだよな?!」
盛大な溜め息と共にそんな事を口にするドゥイリオ。
「はははっ、そんなに畏まらなくても良いさ。今まで通りに話してくれればいいよ。その方がお互い気が楽だろ?」
そんなドゥイリオにやはり笑顔で言葉を返す俺。それを聞いてドゥイリオは口元を緩めると
「ははっ! 良いね、流石はウィルだ! 下手な奴は直ぐに威張り散らすってぇのに、お前さんはそんな事はしないってか? 流石は俺が認めた男だけあるな!」
心底嬉しそうな声でそう言って、俺の背中をバシバシ叩いてくる。
この手荒さも久しぶりだが、本気で叩くのは止めて欲しい。
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「はじめましてドゥイリオさん! 私マーユって言います!」
「おう、こっちこそ宜しくなマーユちゃん!」
手荒い歓迎を受けた後、改めてマーユの事をドゥイリオに紹介した。元気一杯に自己紹介をするマーユに厳つい顔を綻ばせて返事を返すドゥイリオ。そして徐ろに
「なんでぇ、お前がいきなり子持ちになったって言ったから心配してたんだが、なかなかどうして良い子じゃねえか! ええ?!」
そう言ってまた俺の背中をバシバシ叩く。どうでも良いがドゥイリオの馬鹿力で叩かれると、背中が破壊されそうになるから止めて欲しい。
「んで、別にこの子らの紹介の為にうちに来た訳じゃねえよな? 本来の目的はその腰に佩いている奴か?」
続けて自動人形のコーゼストとも挨拶を交わし、そう尋ねて来るドゥイリオ。その辺は流石である。
「流石だな。コイツをアンタに見せようと思ってな」
そう言うと腰のベルトに剣帯で吊るしてあった刀を、鞘ごと外してドゥイリオに差し出す。それを受け取ったドゥイリオは一目見るなり
「コイツは……カタナか?!」
そう言って柄に手を掛け、スラリと刀を鞘から抜き放つ。
「こいつは驚いたッ! 刀身が神鉄拵えかよ?!」
手にした刀を矯めつ眇めつ眺めるドゥイリオが大声を出して、うちのマーユがその声の大きさに吃驚している。
「ああ、そいつはドゥンダウ大陸で手に入れたモノさ。アンタがずっと前に言っていたのは、こうした刀の事なんだろ?」
興奮しきりのドゥイリオに俺は、改めて訪問の理由を話して聞かせるのであった。
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「……成程な、それでわざわざ持ってきてくれたって訳かい」
幾分落ち着きを取り戻したドゥイリオが、俺の話を聞いて頻りに納得している。
「ああ、コレなんだろ? あんたが作りたい剣って言うのは?」
そうである。嘗てドゥイリオは俺に刀剣を寄越す時に「俺の作りたい剣の試作」と言っていたのだ。それに以前、東方の鍛治技術を研究しているとも言っていたしな。すると「その通りだ」と素直に認めるドゥイリオ。
「かなり昔の話だが、とある剣士が持っていた刀を何度か見させてもらった事があってな。その機能を追求し一切の無駄を省いた姿に美しさを感じ、俺は思わず心を奪われちまったんだ。無論その時に見た刀はダマスカス鋼で出来た奴だったがな」
そう言いながら手にある俺の刀を黙って見て、大きな溜め息を吐くドゥイリオ。そして
「この刀、少しバラしても良いか? 勿論ちゃんと元通りに組み立てるからよ」
今度はそう懇願して来る。まぁドゥイリオはこの手の専門家だし、下手な事はしないだろう。なので
「ああ、勿論構わないさ。ちゃんと元通りにしてくれるならな」
俺もドゥイリオの事を信頼して快諾する。すると「それじゃあ……」と一旦奥に引っ込むドゥイリオ。そして再び戻って来るとその手には細い釘の様なピンと小さなハンマーが握られていた。
「ここでバラすのか?」
「おう、まぁ見てろ」
そう言うが早い、帳場に横にして置いた刀の柄に有るピンに、持ってきた細いピンを当ててハンマーで小刻みに叩き始めたのだ。
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「コイツは目釘と言ってな、柄に刀身を固定する為のもんだ」
そう言いながらも手を休ませないドゥイリオ。目釘をピンとハンマーで外すと、柄を片手で握って刀を真っ直ぐに立て、握っている手の手首をもう片方の手で叩く。すると柄から刀身の握りの部分が浮いて出てくる。
「随分と手慣れているな」
「そりゃお前、教えてもらったからな」
俺の言葉にそう答えるドゥイリオ。何でも前に刀を見せてもらった剣士から、刀の整備手順を教えてもらったらしい。俺と喋りながらも柄から浮いた刀身を外し、付属する金具や鍔も外され、素の刀身だけになる俺の刀。
「それで? 何でここまでバラしたんだ?」
ここまで流れる様な作業を感心して見ていたが、至極真っ当な疑問をドゥイリオにぶつける俺。
「いや何、この刀の握りの部分──茎って言うんだが、ここに刀を打った鍛冶師が ” 銘 ” を刻んでいる筈なんだが……ああ、ほれ、此処だ」
俺の質問にその箇所を指し示しながら答えるドゥイリオ。そこには確かに何か文字らしき物が彫り込まれていた。
「……何て書いてあるんだ?」
「なになに……こりゃあまた随分と旧い東方大陸語で刻まれてるな! ええっと……郝 宇航作、 号は ” 天照 ” か……」
全く読めない俺に代わってドゥイリオが読んでくれた。号と言うのがこの刀の名前らしい。アマテラスと言うのは東方の太陽をはじめ光や慈愛、真実などを象徴する、最も尊い神様の名だそうな。
随分御大層な名前があったんだな、この刀は!?
本当に久々のラファエルとドゥイリオでした! ラファエルは魔具製作者ですしドゥイリオは言わずもがなですね! とりあえず魔道具類はラファエルに任せて(と言ってもコーゼストが既に解析済ですけど)、ドゥイリオには東方でウィルが買ってきたオリハルコン製の刀を見てもらう事に! その中で判明したウィルの刀の名前が「アマテラス」! 何て仰々しい名前の刀なんでしょう! さて次回はウィルが「アマテラス」をドゥイリオに見せた真意がわかります! そちらも是非お楽しみに!
いつもお読みいただきありがとうございます!




