巡行旅行の終わり、そしていつも通りの?
本日は第213話を投稿します!
諸事情により、しばらく前書き後書きをしていませんでしたが、今回から復活します! さてさて、諸々あったリータグ市からウィル達が出立する場面から話が始まります!
-213-
リータグ市にあるクザーツ商会での実りある話から2日後。
「ハーヴィー閣下、セルギウス閣下、並びにお連れの皆様方、今回は誠に、誠に有難うございましたッ!」
「本当に……主人共々何度御礼を言っても言い尽くせません。重ね重ね有難うございました」
このリータグ市を治めるクリフォード・ギムソン子爵の屋敷玄関前、俺達はギムソン子爵夫妻と家人からの見送りを受けていた。
「此方こそこの4日間、色々と世話になったなギムソン卿。直臣の件もひとつ宜しく頼む」
「ギムソン卿もジョアンナ夫人も色々と有難う。2人ともまだ完全じゃないんだ、この後暫くはゆっくり養生してくれたまえ」
ギムソン子爵夫妻の台詞にそう言葉を返す俺とオルガ。
「ははぁーーッ!」
深々とした臣下の礼とお辞儀で俺らの台詞に答える2人。
「それでは名残りは尽きないが……そろそろ行くとしよう」
そう言って右手を差し出す俺。礼を解くと差し出した俺の手をしっかりと握り握手を交わすギムソン子爵。俺とオルガは待たせていた竜車に乗り込むと客車の窓を開け
「ではな、ギムソン子爵。ジョアンナ夫人。元気で居てくれ」
最後にまたそう声を掛ける。
「ハーヴィー閣下もセルギウス閣下もいつまでもお元気で! 道中の無事をお祈り致しております」
「有難う──ユーニス、出してくれ」
俺の言葉にそろそろと動き出すドラゴンキャリー。いつまでも手を振るギムソン子爵夫妻と家人達。
こうして俺達はリータグ市から本拠地であるラーナルー市への帰路についたのであった。
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リータグ市を発ってから2日後、俺達を乗せた竜車は途中厄介事にも見舞われず順調に街道を南東へ、ラーナルー市へと旅程を消化して行った。
因みに今御者台に座って地竜の手網を握っているのはヤトだったりする。途中すれ違う他の馬車や旅人達からは凄まじく奇異な目で見られるが、当然の事ながら華麗に無視している。
「巡行の旅に出てから1ヶ月余りか……」
俺は客車の窓から流れ行く景色を眺めながら独り言ちる。
「まぁ何回か王都やラーナルー市には戻っているんだけどね」
俺の独り言を混ぜっ返すのは隣りの座席に座るオルガ。他の座席に座るアン達も盛んに頷いていたりする。
「そりゃまぁそうだが……」
あまりにも的確なツッコミに苦く笑う事しか出来ない俺。それを言われたらもう何も言えないんだが。
「しかしそんな事が出来たのも私が製作した転移魔導機のお陰ですけどね」
そんな会話に割って入って来るのはご存知コーゼスト。正直言ってそのドヤ顔がうざったいが、本当に転移魔導機様々であったのは間違いなかったのも事実である。
「まぁ確かにお前が作った転移魔導機には色々と助けられたのは間違いないが……」
「そうでしょう、そうでしょう。もっと褒めてくださっても結構なのですよ?」
俺が事実を素直に認めると更なるドヤ顔を決め込むコーゼスト。正直言ってその顔、モノスゴクウザッタイデス。
とても大切な事だから2回言わせてもらいました。
本当に自動人形の身体を手に入れてから絶好調なコーゼスト先生であった。
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それから更に2日後。ドラゴンキャリーが進む道の先には、王都と見紛うばかりの城郭が見えて来た。
「帰って来たんだな……」
その光景に思わず感慨深げに呟く俺。そうである、俺達は遂にラーナルー市へと帰って来たのだ。俺の生まれは王都だが、このラーナルー市の城郭を目にすると、生まれ故郷に帰って来た様な気になる。それだけこの地に愛着があると言う事なのだろう。
そう思いつつキャリッジの中を見渡せばオルガやマーユ、アンやエリナ、ルピィやレオナ、ルアンジェやベルタ達が窓から交互に顔を出して「帰って来たわね」と、なかなかに姦しい。こんなのは東方大陸から帰って来た時以来である。やはり皆んなも俺と同じ気持ちであるらしい。
「皆さん、嬉しそうですね」
俺が沁々とそんな事を思っていると、後ろの座席から立って俺の傍に来たコーゼストがそんな風に宣う。
「お前は嬉しくないのかよ?」
「いいえ? 嬉しいですよ? これでも充分に感動しているんですけどね」
俺のツッコミにそう返して来るコーゼスト。無表情に見えて良く見ると、頬が微かに紅潮していたりする。微か過ぎて逆にわからんぞ、コーゼストさんや?
「帰って来たね、お父さん!」
俺が頭の中でコーゼストにツッコミを入れていると、花が咲いた様な華やかな笑顔を向けながら抱き着いて来るのは我が愛娘のマーユ。
「ああ、そうだな」
俺はそんなマーユの髪を優しく撫でながら、やはり笑みを返すのだった。
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「お帰りなさいッ!」
巨大な城郭の西にある正門を護る顔馴染みの門番の衛兵からそう声を掛けられながら、俺達を乗せたドラゴンキャリーはラーナルー市へと入る。しかし「お帰りなさい」か…… 。その台詞にやはりここが今は自分の故郷なのだと改めて実感する俺。アン達も俺と同じらしく顔を少し上気させてご機嫌である。
「ウィルさん、このまま屋敷に向かいますか?」
その時コーチマンシートに座るルネリートが、行き先に関して尋ねて来る。俺も早く帰りたいが……
「……いや、このまま冒険者ギルドに向かってくれ」
ルネリートにそう指示を出す俺。流石に今日戻って来た事をうちのギルマスに一言報告しとかないといけないだろう。実際の所、俺がこのラーナルー市に居ない間はヒギンズのおっさんが代官だからな。
「そう言えばまだギルマスは直臣にしていませんね? あとマイヤーズ子爵殿も」
そこで唐突にそんな事を口にするコーゼスト。そう言われればそうだったな。まぁこの巡行に出始めの時はそこまで頭が回らなかった、と言うのが真実なんだが…… 。
「……前後が逆になっちまったが、2人にもキチンと打診しとくか……」
コーゼストの台詞にそう返事を返す俺。本当にどんだけ一杯一杯だったんだ、俺?
「私もすっかり忘れていたよ、あの時気付けば良かったね……」
俺とコーゼストの会話を聞いてバツが悪そうに口を挟んでくるのはオルガ。そういや一番最初の会合の時はオルガも一緒に居たっけな。
いや本当にどんだけ一杯一杯だっただよ、あの時の俺?!
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やがてドラゴンキャリーは高級住宅街である第三層区画と領兵の居住区である第二層区画を通って第一層区画西区にあるラーナルー市冒険者ギルド前に到着した。此処に来るまで何人かからは相変わらず奇異な目で見られたが、無論華麗に無視である。
ドラゴンキャリーをギルド脇の馬車置き場に停めると、皆んなでぞろぞろとギルドの建物の中に入り、そのまま2階にある執務室へと向かう。昨日のうちに遠方対話機で今日帰って来る事は伝えておいたから、まぁ何ら問題は無いだろう……無いよな?
「ギルマス、帰って来たぞ」
いつもの調子で執務室の扉を開けると同時に言葉を発する俺。室内ではギルマスが俺の声に吃驚して執務机で固まっていたが、ひとつ偉くでかい溜め息と吐くと
「はァァァーー、相変わらずだなお前は! 辺境伯様になってもちっとも変わらん!」
褒められているんだか貶されているんだか、どっちとも取れる言葉を投げ掛けて来る。そしてニカリと音が聞こえる様な笑みを浮かべると
「良くぞ無事に帰って来たなウィル! どうだった巡行の旅は? 色々と聞かせてもらおうか?!」
そう言って次はオルガやアン達に向かって
「ははっ、グラマス殿もアン達もご苦労様、大変だっただろ? コイツの御守りは?!」
と呵々と笑って言葉を投げ掛ける。
「随分酷い言われようだな?!」
それに思わず反論を返す俺。それを聞いていたオルガやアン達がどっと笑いに包まれる。
なんつー言い草だ、全く!
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「──と言う事があったんだ」
とりあえず腰を落ち着けて、改めてこの巡行で起きた事を掻い摘んでギルマスに話す俺。俺の話を途中まで聞くとまたもや盛大な溜め息を吐いて
「全く、お前は行く先々で厄介事に頭を突っ込みやがって……しかも国王陛下まで巻き込んで何をしているんだよ?!」
頭を抱えながらツッコミを入れて来る。
「それに関しては陛下には悪いとは思うが後悔はしていない」
「はァ……全く。お前も「辺境伯」様なんだから、少しは自覚して行動しろよ……」
俺の返事に更に頭を抱えるギルマス。なんだ? また禿げそうなのか?
「グラマス殿も一緒に居て、何でコイツを止めなかったんです?!」
俺に言っても埒が明かない事を悟ったギルマスは今度はオルガに一言文句を言う。
「うーん、あの時はこれが最良の策だと思ったんだよねぇ」
だがオルガも心得たもの、ギルマスのお小言を軽く受け流す。それを見てまた盛大に溜め息を吐くギルマス。そして深く溜め息を吐きながら執務机の引き出しから薬の小瓶を取り出してグイッと呷る。胃薬の在庫はまだあったのか。
「そりゃまぁそうでしょうが……グラマス殿なら何か他に手があったのではないんですか?」
かなりのジト目でオルガに今一度抗議するギルマス。とりあえずこの場を収めようと言葉を掛ける俺。
「まぁまぁ、そんなにカリカリするなよギルマス」
「ッッ! お前が一番悪いんだろがァァァーーーッ!」
あ、ギルマスがキレた。
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兎にも角にもギルマスを宥めて落ち着かせてから、本来すべき直臣の話を話して聞かせる俺。ギルマスは黙って聞いていたが「本当に今更だな」と言いつつも、快く直臣の話を受けてくれた。
「まぁ今でさえお前が居ない間はマイヤーズ子爵殿と2人で代官しているんだ。お前の直臣になっても大して変わらんだろ」
そう言ってまた呵々と笑うギルマス。傍から見るとやけを起こしている、様にも見えなくも無い。何か色々とすまん、ギルマス。
「と、とにかくだ。これからもどうか宜しく頼む、ギルマス」
「おう、任せておけ」
何となく申し訳なくなって頭を軽く下げる俺と、それに笑みを浮かべながら答えるギルマス。そして一言「本当にお前は損な性格だよな……」と、父親みたいな視線を向けて来た。だが前も言った通り、そんなのお互い様である。
こんなひねくれた(自分で言うのも可笑しいが)性格の俺の事を、なんのかんの言っても根っこの部分では信頼してくれているギルマスには、感謝してもし尽くせないと、常日頃思っているのだ──口には出さないが。
『なんのかんの言ってもマスターもギルマス殿もお互いを信頼しているのですね』
俺の考えを読んだコーゼストが念話でそんな事を宣う。
信頼か……陳腐だが嫌いな言葉じゃない。
そのあと俺の巡行の旅の話以外に、俺の留守中のラーナルー市の様子や「魔王の庭」の様子等、他愛もない話や情報交換をお互いにして、俺達は冒険者ギルドを辞する事にしたのである。
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冒険者ギルドを辞した俺達は大通りを通って城塞都市ラーナルー市の第三層区画北街区へとドラゴンキャリーを進める。つまりは俺達の屋敷がある高級住宅地である。
「それにしても今回の巡行では数多くの直臣が出来たね」
キャリッジの中、感慨深げにそう口にするのは隣りの座席に座るオルガ。
「エリック・ローズ男爵にロバート・ナッシュ子爵にダン・セルウィン男爵にネヴァヤ・ファーザム子爵に……」
「エトムント・ツァーベル男爵にクリフォード・ギムソン子爵に、今はディオへネス・ヒギンズ子爵もだね」
俺がこの巡行で直臣にした貴族の名前を口にし、その後を引き継ぐ形で名を連ねるオルガ。ここまでで7人か…… 。屋敷に帰ったら又隣のエヴァン・フォン・マイヤーズ子爵にも声を掛けるので合計8人になるんだな。
「折角皆んな快く直臣になってくれたんだから、ウィルの責任は重大だよ? 頑張りたまえよ? 勿論私もしっかり支援させてもらうけどね」
「宜しく頼むよ、オルガ。本当に頼りにしているからな」
肩に伸し掛る重圧をひしひしと感じながら、敢えて軽口を叩く俺。そう言っている間にもドラゴンキャリーは懐かしの我が屋敷へと通りをひた走る。
こうして俺の巡行の旅は皆んなの協力の元、何とか無事に終える事が出来たのである。
とりあえず屋敷に帰ったら暫くはのんびりしたいモノである──まぁ難しいだろうが。
ラーナルー市を発って1ヶ月余り、あちこちを巡った巡行旅行も無事終わりと相成りました! 本当に色々とあった旅でしたが、ウィルにしてはまだ大人しめかと(笑)
さて、これでこの章も終わりとなり、次回からは新章の開始です! そちらも是非お楽しみに!
いつもお読みいただきありがとうございます!




