淑女達の案内と紹介と 〜やはりドタバタでした〜
本日は第180話を投稿します!
本拠地に帰還していよいよ活動再開……の前にマディ達を呼び寄せてラーナルー市を案内するウィル! 当然、このままで済む筈も無く?!
-180-
「ここがウィル達が暮らすラーナルー市……」
ラーナルー市の第三層区画北街区にある屋敷から、領兵の駐在する第二層区画を回り込んで、第一層区画の東に位置する市場を西区に有る冒険者ギルドへと、魚人族の女王マデレイネ──マディとその娘のマーユ、そしてジータを案内する俺。因みに今の台詞は俺の右横を歩くマディである。
「ここは地方都市の中でも一二を争う大きな都市だからね。マディさん達が知っている港町レーヌやドンチュワンとは違って見応えがあるでしょう?」
マディの台詞に答えるのは俺の左横を歩くオルガさん──オルガ。彼女は今日の朝イチにコーゼストが転移魔導機を使い、王都から連れてきたのである。呼び方が変わっている件については、彼女からの達ての願いで呼び捨てにした。曰く「同じ長寿種族のアンは呼び捨てなら私もして欲しい」のだそうだ。多分そこは拘りとか言うやつだろう。
そんな事を思いつつ市場を案内して行く。今回俺とマディ達以外の随伴はアン、エリナ、ルピィ、レオナ、コーゼスト、ヤト、セレネの面々で、他のメンバーとルストラ師匠には留守番をして貰っている。これでもかなりの大所帯なのだが、うちの嫁さん(仮)達とコーゼストは当然としてヤトとセレネは「どうしても一緒に行きたい」と頑として譲らなかったからである。
セレネは兎も角、ヤトはセレネに無駄に張り合っているみたいだが…… 。
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そんなこんなしつつもマディ達を案内をしていると、町のヒト達が此方に注目している事に気が付いた。うーん、やはり豪奢な衣装を身に纏った母娘と黒い軍服コートを羽織った女が歩いているのは目立つ……のか?
そんな事を考えていた俺の視野に馴染みにしている食糧店のおっちゃんが見えた。
「やぁ、おっちゃん久しぶり」
俺はいつも通りの口調で話し掛けると
「おぅ、ウィルじゃねぇか?! って伯爵にこう言う口の利き方は良くねぇか?!」
そう言って呵呵と笑うおっちゃん。このおっちゃんに限らず馴染みにしている店全部には、叙爵してからキチンと挨拶に行き俺が伯爵になった事は話済みである。最初は皆んな畏まったり、中には平伏するヒトも居たが、俺が今まで通りに接して欲しいと頼み込んだのでこの様な大らかな言葉遣いなのである──まぁそんな事はどうでもよろしい。
おっちゃんは俺に顔を寄せると
「そんでウィルよ。今連れてる女の人は何処ぞのお妃様か何かで、女の子はお姫様か何かか?」
そう声を潜めて話し掛けて来た。中々の慧眼である。俺もおっちゃんに合わせて声を潜めながら
「おっちゃん、良くぞ気付いたな。お察しの通り彼女らはメロウ族の女王陛下と王女様なんだよ」
と何隠す事無く答える。と言うか別に俺が声を潜める必要は無いんだが。
「おおっ、やんごとなきヒトってぇのはやっぱり生まれ持った雰囲気が違うねぇ……」
それを聞いたおっちゃんは一人ウンウンと納得している。そしてニカッと笑顔になると
「にしてもまた4人も美人を連れてるじゃないか! ウィルのコレかい?!」
今度は一転大きな声で冷やかしてくる。4人って言うのはコーゼストも込みだな?
「ああ、この中の3人は俺の嫁さんになるヒトだ。因みに王女様は娘な」
「えっ?!?!?」
俺が冷やかしに真顔で答えると固まるおっちゃん。そんなに意外か?!
そのあともう1人はコーゼストだと言う事を話して聞かせたのは言うまでもないが、俺の話に顔を引き攣らせているおっちゃんが印象的だった。
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期せずして注目されているのはマディ達の豪奢な衣装とかでは無く、マディとジータ、そしてオルガとコーゼスト4人が美人過ぎて注目されていた事が図らずも判明したりしたが、それ以外は特に問題も無く冒険者ギルドに到着した俺達。
ギルドの庁舎の大きな扉を開けて中に入ると、中に居た冒険者やギルド職員から一斉に視線を向けられる──これもアレだな、マディ達の容姿と衣装が人目を引くからだな。
だが良く耳を澄ませると何人かは「あの小さな女の子は可愛らしい」と、マーユの愛くるしさに魅せられたヒトが居るみたいである。どうやらマディ達の容姿と衣装だけでなく、マーユの愛愛しさも注目の的らしい。
此方に対する何とも言えない視線を背中に感じながら、執務室がある二階へとそそくさと上がっていく俺達。
そんなに注目するんじゃありませんッ!
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「よ、ようこそお越し下さいましたッ!」
執務室に入るなり執務机の椅子から勢い良く立ち上がり、机に頭を擦り付けるかの如く平身低頭のギルマス。
そらまあ冒険者ギルドの最高統括責任者だけでなくメロウ族の女王様も居るんだから、その反応も当然と言えば当然か…… 。
『寧ろ権力に媚びないマスターの方が変わっていますが。ギルマスは勿論の事、グラマスのオルガさん然り、ジュリアス王太子殿下然り、国王陛下然り』
ここで俺の思考を読んだコーゼストから念話で真っ当なツッコミが入った。
『うぐっ!』
あまりにも的確なツッコミに二の句が告げないが──まぁそれはソレとして、コーゼストとルアンジェがそれぞれ自動人形と魔法生命体の身体を手に入れた事は、既に昨日報告済なので今日の話題にはならないので安心して欲しい。
「これはご丁寧に。私は──」
先ずはマディとマーユ、そしてジータの3人が自己紹介を兼ねた挨拶をすると
「やぁヒギンズ君、去年の叙爵式以来だね。元気そうで何よりだ。私は正真正銘セルギウス・フォン・ライナルトだよ。今は名を改めオルガ・ロラ・セルギウスと名乗っているがね」
最後にオルガがそう言って、冒険者ギルド最高統括責任者の証である星銀の認識札を示しながら挨拶を締める。
その間ギルマスはずっと低い姿勢のままで居て、一度だけ顔をあげてオルガのタグをチラリと見ると、再び頭を机にぶつけそうな勢いで頭を下げた──そんなに緊張しなくても…… 。
そう言えばオルガは「男」と偽るのを止めて、これからは「女」のオルガ・ロラ・セルギウスとして侯爵の貴族としての仕事と、グラマスの仕事を今まで通りにする旨を国王陛下、そして王国のお歴々に話したそうな。勿論俺との結婚も含めて。その結果、現在只今王城内は混乱の真っ最中らしい。
何かエリンクス国王陛下には申し訳無いとは思うが、どうか頑張って欲しいものである。
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出だしにちょっとした悶着はあったが、何とかギルマスとマディ達との紹介を無事(?)終えられた。
「はぁ……それにしてもお前はまた飛んでもない方々と結婚するんだな……」
執務机の椅子にどっかりと腰を下ろして大きな溜め息と共にギルマスの口を衝いて出た台詞がコレである。
「それについては俺が一番驚いているんだが……後悔はしてない」
ギルマスの台詞にそう答える俺。俺だってまさか直属の上役であるグラマスの侯爵様や亜人の女王様と結婚するとか思いもしなんだ。同行して来たアン達は後ろでウンウン頷いているかもしれん。それはそれとして話を続ける俺。
「それにさっきの台詞には嘘偽りなんかない。仮にオルガがグラマスでも侯爵でも無くても、マディがメロウ族の女王で無くても、俺は間違い無く2人と結婚していたと思えるからな。それはアンにもエリナにもルピィにもレオナにもジータにも言える事で、何か切っ掛けが少し違っていたら出会わなかった彼女らとの出会いは、陳腐な言い方だが「運命」だと思えるんだ。そして俺は彼女達を選んだ事も決して後悔はしていない」
改めて思うんだが──コレ、自分で言うと凄まじく小っ恥ずかしいな!
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「まぁお前がそう言うのなら、俺からとやかく言う事は無いな」
俺の長台詞に大きく頷いて笑みを見せるギルマス。と言うか今日執務室に来てようやく笑顔を見た気がするんだが?
「だがな、ウィルよ」
俺が珍しいギルマスの笑顔に変な感心をしていると、当のギルマス本人は一転、真顔になってそう話し掛けて来た。
「ん? 何だギルマス?」
「お前──これからが大変だぞ? 亜人の女王陛下に侯爵閣下と結婚となりゃあ、お前が良くても周りが放っておかないぞ? それも覚悟の上か?」
いつか見た父親の様な眼差しで俺にそう問うギルマス。だがまぁそう言う事なのだ。
曲がりなりにも権力を持つヒト2人と結婚するとなると、様々な利権とやらが生まれる事になり、その利権を求める者達からの接近が激増する事は容易に想像できるのだ。でもそれも覚悟の上である。
「──俺はそう言うのも引っ括めて彼女達と結婚すると決めた。俺がわからない事は詳しい彼女らに聞くし、貴族になった時からその「責務」と向き合う覚悟は決めてきたつもりだ」
俺はギルマスに向かい真っ直ぐに答える。其れは嘗てジュリアス王太子に言った『高貴なる者に伴う義務』と言う事に他ならない。まさか自分自身がこの『貴族の義務』を負う事になろうとは……だが繰り返すが後悔はしていない。
最初は半ば成り行きで爵位を賜ったりしたが、何人かの貴族や王族とも付き合って見て、幼い頃には感じていた嫌悪感がすっかり無くなったのだ。
まぁ中には本当にくだらない腐った貴族にも会ったが。
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「御主人様ァ、話は終わったの?」
ギルマスとのやり取りもひと通り終えたのを見計らった様に、ヤトが気怠そうに声を上げる。どうやら俺達の話を聞いていて飽きたみたいである。
「ああ、終わったぞヤト──」
そう返事を返しながら後ろを振り向くと、やたら目をキラキラと輝かせたマディとオルガ、そして同様に目を輝かせているアンさん達と目が合った。何だか皆んな瞳孔が目一杯拡がっていて、ギラギラしていて、ナンダカチョットコワイデス。
『これはアレですね。皆さんマスターとギルマスとの会話を聞いていて、色々と感極まったみたいですね』
不意に頭に響くのはコーゼスト先生の声。この状況を見て念話で話し掛けて来たらしい。そんなのは皆んなの様子を見ればわかりますッ!
俺は態とらしく咳払いをすると、これでギルド庁舎を辞する旨をギルマスに告げる。ギルマスもアン以下女性陣のただならぬ気配に気圧されて「お、おお、わ、わかった」と返事を返すのみである。
「よ、良しッ! それじゃあ次、行ってみようか?!」
そう言って無理矢理話題を変える事を試みる俺。皆んなも「えっ、あっ、そ、そうね」と答えてくれ、俺に向けられた熱い視線は何とか収まった。
いや、本当に本気で怖いから、その視線は!!
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何とかアン達とマディ達合わせて7人を落ち着かせると、今度はセレネに着させる服を見繕う為に再び東区へと向かう事にした。
セレネの全身は白い柔毛に覆われていて、且つ魔物と言う事もあり本来なら服を着させると言う事は考えないのだが、それはつまり俺の近くで美女が常に全裸でいると言う事になるのであり、俺が落ち着かないのだ──主に精神的に!
「私は別に気にしていませんが、御主人様がそうして欲しいと言うのなら従いますわ」
セレネは素直に従ってくれるみたいなのでそこは安心なのだが──いざ市場で一番大きな服飾店に着くと、うちの嫁さん(仮)達とヤトから「自分達にも服(水着)を買って欲しい」とせがまれてしまった。特にオルガとジータからの圧が半端ない。
まぁ以前にアンやエリナ、ルピィやレオナ、そしてヤトには買ってあげたのだが、彼女らは彼女らで新しい服が欲しいらしく、全員での俺への接触が激しい。更にマーユまでもが俺にお強請りして来た段階で皆んなの服を買ってあげる事にした。
皆んな嬉々として店内のあちこちに散っていく中、俺は店員を捕まえてセレネが着れそうな服が無いか尋ねてみるが──ヤトの時と同じくまたもや水着を勧められた。それはまあそうだろう。
結局俺の支払いでセレネとヤトには水着を、アン達にはそれぞれ選んだ服を買ってあげて、今日はこれで屋敷に戻る事となった。
そして言うまでもなく屋敷に戻ったら戻ったで、留守番をしていた師匠以外の女性メンバーから軒並み文句をつけられ、結局もう一度ブティックに連れて行く羽目となったのである。
なまじ女性が多いとお洒落に出費が嵩むのを実感した瞬間である。
だって皆んな、目が真剣過ぎてマジで怖い!
マディ達を何とか無事に(?)ギルマスに紹介し終えました! だけど女性陣はむしろその後の買い物がメインになった御様子。立場上は上でもヒエラルキーが底辺なウィルなのでした!(笑笑)でも女性のお洒落には兎角お金が掛かりますよね!(経験則)
☆manakayuinoさんに描いていただいたメロウ族のマーユちゃんのイラストを第137部百二十九話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




