みたび、とある日常 〜女性らはかくも姦しい〜
本日は第179話を投稿します!
朝、自分の屋敷の自分の部屋で目覚めるウィル。久しぶりの日常が戻って来ました。そして相変わらずのドタバタです(笑)
-179-
朝の陽は静かに音もなく昇り、部屋の窓ガラスを眩しく輝かせてベッドの上にまで差し込んでくる。
その陽の光を瞼越しに感じて目を覚ます俺。一瞬船の中か宿屋の部屋の中かと錯覚するが、ここが自分の屋敷の自室の中だと言う事に改めて気が付く。
「……そっかァ、帰って来たんだっけな」
ベッドの上で横になりながら独り言ちる俺。ふと足に重みを感じて、頭を少し持ち上げて見てみると、膝の上にはヤト、セレネ、ファウスト、デュークの短身サイズ達が仲良く並んで占拠しているのが見える。やはり全員チビサイズで顕現すると膝上の攻防戦は発生しないみたいである。
「これからはなるべくこの姿で顕現させておくとするか……」
そうすれば不公平感は無くなるだろうしな。俺がそんな事をぼんやり考えていると
「マスター、おはようございます」
ベッドの脇に置かれた椅子に座るコーゼストから朝の挨拶の言葉を掛けられる。お前はまたそうして一晩中見ていたのか?
「──ああ、おはようコーゼスト」
俺は心の中で苦笑しながらそう返事を返して、ベッドから身体を起こす。
さて、と、今日はまた色々と片付ける事が多いな!
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先ず最初にすべき説明については昨夜ルピィと共にベルタ、ユーニス、ルネリート、そしてアリストフと我が家の完璧家令のシモンに、オルガさん、マディ、ジータの3人との顛末を混じえながら話して聞かせた。それとコーゼストとルアンジェが、それぞれ自動人形と魔法生命体の身体になった事も。
因みにルピィは嫁さんの数が増えた事を怒っていた訳では無く、事前に話が無かった事に怒っていたのであった。そんな事言われても、旅先での出来事を遠方から逐一報告しろと?
「全く……行く先々で助けた女性を一々お嫁さんにしていたらキリが無いですよッ!?」
「ゼンショシマス……」
違うと言っていた割に数増やした事で怒られたのは理不尽な気がしないでもない。ベルタ以下のメンバー達は苦笑いを浮かべ、シモンは「旦那様の御心のままに」と全く動じる気配すらない。
ある意味一番ヒトが出来ているはシモンなのかも知れん。
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兎にも角にもその話は一応区切りをつけ、次にギルマスと新しく従魔になった女王蛾亜人のセレネとの顔合わせをする事にした。
従魔達をチビサイズで顕現し、セレネにラーナルー市の街中を案内しつつ冒険者ギルドへと向かう俺。付き添いはアン、エリナ、ルピィ、レオナ、コーゼストの5人である。
「へぇーっ、ここが御主人様の暮らしているヒトの町なのねぇ。結構大きいのねぇ」
俺の傍を歩いているセレネが辺りを見渡しながら感嘆の声を上げる。街の人達はチビサイズとは言え、Sランクと言う高ランクの魔物の出現に遠巻きに様子を眺めている。そういやヤトの時もこんな感じだったな。
「セレネ、言っとくが暴れたりするなよ?」
一応釘を刺しておく俺。それに対し
「そんな事はしないわァ。御主人様が命令すれば別だけど♡」
そう言ってコロコロ笑うセレネ。幾ら俺でも流石にそんな物騒な事は言わんぞ?!
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「こ、コイツがモスクイーンか……」
ギルドの執務室で現実体で再顕現したセレネを見たギルマスの第一声がコレである。どうでも良いが目と顎が落ちそうだぞ、ギルマス?
「初めましてギルマスさん。御主人様の忠実なる下僕のセレネと申しますわ」
一方のセレネは飽くまで優雅な振る舞いで、ギルマスに頭を下げている。これでは何方の立場が上なのかわからないな。
「あーっと、セレネはもう向こうのギルドで従魔登録は済ませてあるから問題無いだろ?」
俺はオレでそんなギルマスの様子にツッコミを入れたくなるのを我慢しつつ、セレネの左腕の腕輪を指し示しながら端的に尋ねる。するとギルマスは
「お、おう、そ、それなら問題無い……かな?」
そう首を縦に振る、が何で最後が疑問形なんだ?
「何故に疑問形?」
変な回答に思わずツッコミを入れる俺。
「い、いや、その、セレネは曲がりなりにもSランクの魔物だろう? 町の住人の反応が、な……」
「ああ、でもそれなら以前ヤトで経験したから問題無いんじゃないか?」
主に町の住人達が、な! 実際ヤトの時も最初は遠巻きに見ていたが、2日目には普通に接していたからな。慣れって怖い。
「そ、そうか? それなら良いんだが……」
「ギルマス、あまり心配していると頭が禿げるぞ?」
「それはお前達が面倒事を持ち込むからだろがァァーーーッ!」
俺の的を得たツッコミに軽くキレるギルマス。
何か色々とスマン。
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そんな風にギルマスと久しぶりのやり取りをした後、屋敷に戻り昼食を挟んで次にすべき事に着手する。其れはマディ、マーユ、ジータの3人をこちらに招く事である。既に昨日の夕方にはマディ達には連絡、承諾を得ていたりする。
ただマディ達を招くに当たってコーゼストから注意を受けたのだが、今俺達が居るルォシー大陸のラーナルー市とマディ達が居るオーリーフ島では、こうしている間も時間が異なっているのだそうだ。
俺達はこの大地が丸い球形なのは見聞としては知っていたが、コーゼスト先生によるとこの丸い球形の大地で距離が離れていると「時差」と言うのが生まれるらしい。詳しくはわからなかったのだが、マディと遠方対話機で話した時にその「時差」とやらを実感出来た。実質こことあちらでは7時間程のずれがあったのだ。より具体的に言うとラーナルー市で朝の7時だとオーリーフ島では前の日の真夜中24時となっていた。
「因みにここラーナルー市と東方大陸のフェンチェン辺りだと約13時間程の時差があります」
とはコーゼストの談である。そんなに差があるとはなぁ…… 。まあそれはどうでも良いが。
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兎に角そんな訳でいまは昼を過ぎて午下の1時ぐらいだから、マディ達のオーリーフ島では朝の6時ぐらいと言う訳である。此方に来るには丁度良い時間である。
コーゼストの補助と誘導で、屋敷の玄関ホールの床に魔法陣が輝きと共に現れ、次の瞬間にはマディ達3人がサークルの中心に姿を現す。すると
「「ウィルッ!」」
「お父さぁーんッ!」
マディとジータ、そしてマーユが見事に声を唱和させて、俺に抱き着いて来る。
「うぉっと?! ははっ、良く来たなマディ、ジータ、マーユッ!」
3人の圧に気圧されつつも、出迎えの言葉を口にする俺。ひと通り抱き着いて満足した3人が俺から漸く離れてくれた。そして
「「皆さん、お久しぶりですっ!」」
「アンお母さん達に、ルストラ師匠さんにルアンジェお姉ちゃん達にヤトお姉ちゃん達も! お久しぶりですっ!」
アン達にもキチンと挨拶をする3人。
『『『『『いらっしゃい! マディさん、ジータさん、マーユちゃん! ようこそラーナルー市へ!』』』』』
「皆様、ようこそ遠路はるばるラーナルー市までおいで下さりました。ハーヴィー家使用人を代表して御挨拶申し上げます」
それを笑顔で出迎えるアン達、あの旅のメンバーとヤト達、そして家令のシモン。
と言うか、アン達とヤト達も見事な唱和だな?!
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「「「皆さん、初めましてッ!」」」
場所をエントランスホールから、マディ達と初対面のメンバーが待つ大広間へと移した。大広間に入って早々に3人共にこれまた見事な唱和で頭を下げながら、ルピィとベルタ達に挨拶をする。そして
「私がマデレイネ・ジョゼ・ファンテーヌです。魚人族の女王を務めております。皆さん、宜しく御願い致しますわ」
「娘のマーユ・ジョゼ・ファンテーヌと言いますッ! みなさんよろしくお願いしますッ!」
「わ、私はジータ・ルモワールですッ! メロウ族の島オーリーフで守護者をしていますッ! よろしくお願いしますッ!」
改めて銘々に自己紹介をする3人。特にマーユが自己紹介しながら頭をペコッと下げるとルピィやベルタ達から「きゃーっ! カワイイッ!」と声が上がる──ここでもマーユの可愛さは不動の人気があるな。それとジータよ、そんなにガチガチに緊張しなくても誰も取って食ったりしないから安心しなさい。
俺がそんな事を思っていると
「ご丁寧にありがとうございますっ! ワ・タ・シ・がウィルの第三夫人のルピタ・リットンですっ! 3人とも宜しくお願いしますねッ!」
「初めましてマデレイネ女王陛下、マーユ姫、ジータさん、私はベルタ・シトリンと申します。宜しくお願い致します」
「私はユーニス・モリッシー。マデレイネ女王陛下、マーユ姫、ジータさん、宜しくお願いします」
「あっ、えと、マデレイネ女王陛下様、マーユ姫様、ジータ様、初めましてッ! 私はルネリート・ノーフェンと言いますっ。よろしくお願いしますッ!」
「は、初めましてッ! ぼ、僕はアリストフ・ジュリヴァと申します! マデレイネ女王陛下様、マーユ姫様、ジータ様、よ、よろしくお願いしますっ!」
ルピィ以下5人が自己紹介を兼ねた挨拶を交わす。どうでも良いがルピィよ、何故に第三夫人をそんなに強調した?!
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暴走気味のルピィは一先ず置いておいて、何とか双方の紹介を終える事が出来てほっと息を吐く俺。次に3人に屋敷の中を案内する事にした。これには彼女らの住む部屋を選んでもらう意味もある。その後は1泊してから、ギルドに連れて行きがてらラーナルー市内を案内するつもりだ。
「へぇー、ここがウィルの屋敷かぁ……あたしの住んでるトコより大きいねぇ……」
屋敷の中を見回しながら先ずジータが感想を漏らす。
「でも中々に良い造りをしていますね。宮殿とはまた違った趣きが有って暮らし良さそうです」
それを次ぐ形でマディが台詞を続ける。実に好対照である。
「ねぇお父さんっ! このお屋敷にはいくつお部屋があるの?」
「あーっとな、一階には大広間、晩餐室、応接室、居間、書斎、図書室、調理場、大浴場が、二階には俺の主寝室とアン達夫人の寝室とか化粧室とか主客房とかの私的空間だな。三階は客房が主でゲストルームは全部で30部屋あるぞ」
マーユはマーユでコルチカムの様な淡い紫の瞳を輝かせながら尋ねて来るので、それに丁寧に答える俺。
実は最初にルピィにマーユの事を話したら「そんな所に隠し子が居たの?!」と有らぬ誤解をされて、アン達が宥めて誤解を解いてくれるまで追求を受けたのである──理不尽だ。だがそんなルピィも今はマーユにベッタリである。
うんうん、わかるぞその気持ち、マーユの可愛さは破壊力抜群だからなァ。
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ひと通り屋敷の中を案内し終えると、再び全員で大広間に戻って来た。途中顔を合わせた侍女達にも挨拶を済ませたのは言うまでもない。
「どうだったマディ、ジータ、マーユ? ひと通り回って見て?」
和やかに会話をしつつ戻って来てから改めて3人に尋ねる俺。これは勿論どこの部屋が良いか、と言う確認である。
「そうですね……」
俺の問に3人とも少し考えると──マディ、ジータ共にレオナの左側に予備の客房として空けてあった部屋を、マーユはルアンジェの部屋の右並びの同じく客房として空けてあった部屋に決めたのである。配置で言うと俺の主寝室を中心に、向かって右側にアン、ルピィ、オルガさん、ルアンジェ、マーユ。向かって左側にエリナ、レオナ、マディ、ジータとなる訳だ。
オルガさんとルアンジェには申し訳ないが部屋割りは此方で勝手に決めさせてもらった。まぁマディ達も生活基盤は向こうだし、部屋は此方に来た時に滞在する為用だけどな。
「それでウィル、少しお話しがあるのですが宜しいかしら?」
賑々しい皆んなの様子を見ながら俺1人でそんな事を思っていると、マディがそう声を掛けてくる──なんだ?
「何だマディ、話って?」
マディの台詞にそう答える俺。アン達も何事かと俺とマディに注目する。マディは軽く咳払いをすると
「コホン、はい、あのですね、実は……マーユを此方に遊学させて欲しいのです。王族は成人すると自由が利かなくなりますし、マーユにはオーリーフ島ひとつに留まらず、より広い視野でこの世界を思う存分見聞させたいのです。なのでこれを機会にしようかと思いまして……あっ、勿論これはマーユ自身の望みでもありますわ。ねっ、マーユ?」
「うんっ! お父さん、お母さん達、よろしくお願いしまぁすッ!」
親子共々今日本日最大級の爆裂魔法を俺にお見舞いして来たのである!
うぉい?! ちょっと待てーーーーーッ!
セレネをギルマスに紹介したり、マディ達をラーナルー市に招いたりと、西方大陸に帰って来たら来たで何かと忙しいウィル! 今日の話のラストにはマディから真逆の爆弾投下?! 相変わらずこの男の周りは話題に事欠かない!
☆manakayuinoさんに描いていただいた海賊団「黒百合団」の頭領ジータのイラストを第141部百三十三話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




