少女の天賦の才 〜最も白熱する遊戯〜
本日は第177話を投稿します!
すったもんだの末(笑)、無事オーリーフを出発したウィル達と『大海の剣』! 今回はそんな帰路の船上から話が始まります!
-177-
穏やかな青い海を只管西へと突き進む白い巨船『大海の剣』。
結局魚人族のオーリーフ島で3日ほど掛けて必要な物資の積み込みを行い、オーリーフを後に俺達は西方大陸への帰路についたのである。
そして航海中の『大海の剣』の甲板では──
「──ッ! お父さぁん!」
甲板に展開された魔法陣から溢れ出ていた光が薄れ始めると、そこから小さな影が俺目掛けて飛び付いて来る。御存知メロウ族のお姫様で俺の娘(仮)のマーユである。飛び付いて来たマーユをしっかり抱きとめながら
「おっとっと?! はははっ、良く来たなマーユ!」
そう笑顔で声を掛ける俺。じつはオーリーフ島に滞在している間に、うちの歩く理不尽ことコーゼスト先生が「移動する目標への転移魔導機での転移を可能」にしたのだ。但しコーゼストの補助が必要だが、と注釈が付くが。
「「「いらっしゃい、マーユッ!」」」
「良く来たね、マーユ♡」
俺に続いてアン、エリナ、レオナ、そしてオルガさんの4人が、そう言ってマーユを出迎え
「ようこそマーユッ!」
「「「いらっしゃ〜いッ!」」」
それに続いてルアンジェ、フェリピナ、マルヴィナ、スサナも出迎えの挨拶を口にし
「マーユちゃん、いらっしゃい!」
ルストラ師匠が笑顔で迎えの言葉を口にし
「マーユッ! こんにちはッ!」
「ようこそ、マーユちゃん♡」
ヤトとセレネも出迎えの言葉を口にし
「ようこそいらっしゃいました、マーユちゃん──ふむ、転移の誤差は無い様で何よりです」
最後にコーゼストがそう言葉を発して、今居るメンバー全員の出迎えを締め括る──但し最後の文言が物凄く不穏だったが。
お前は「安全性は確認されていますから安心して下さい」とか言ってなかったか?!
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兎に角色々とバタバタとしていたが無事にマーユを出迎える事が出来、ホッと胸を撫で下ろす俺とアン達。そもそもこうなったのはオーリーフ島に滞在している間に、マーユが「お父さん達も、もうお家に帰るだけなら遊びに行きたいッ!」とゴネた事に端を発する。
それを宥める為にとコーゼストが今回の事を提案したのだ。無論マーユの母親である女王マデレイネ──マディから許可を得て、である。つくづくマーユには甘いマディである、まぁ俺やアン達も含めてだけどな!
兎にも角にもコーゼストは、今後の事も考えてマディともう1人の嫁さんであるジータの2人にそれぞれ専用の遠方対話機をいつもの如くちゃっちゃと作製し、直ぐに俺と連絡を取れる様にしたのは言うまでもない。そんでソレ等を使って連絡を取り合って、今回はマーユ1人でこちらに来た、と言う次第だ。まあそのうちマディやジータも来るんだろうがなぁ…… 。
「お父さん、どうかしたの?」
そんな諸々を考えていると、いつの間にかアン達と挨拶を終えたマーユが俺の顔を覗き込んで来た。コルチカムの様な淡い紫の瞳が不思議そうに俺を見詰める。
「いや──何でもないよ」
俺はそう言うと覗き込んで来たマーユの空青色の髪を優しく撫でる。マーユはそれを少し擽ったそうな、それでいて気持ち良さそうに目を細めて、俺にされるがままである。それにしても何時触っても本当にマーユの髪は柔らかくてサラサラだな──はっきり言って触り心地抜群である。
そんな事を思いつつ、つい長々とマーユの頭を撫で繰り回していて、ふと気が付くとアン達が物凄く生暖かい目で此方を見ているのに気が付いた。しまった! あまりにも気持ち良いもんでつい…… 。
「あーっと、皆んなスマンッ!」
慌ててメンバー達に頭を下げる俺。正直言って小っ恥ずかしい!
「うんうん、ウィルはかなりの子煩悩になるのは間違い無いわね! アンさん、エリナさん、レオナさん、オルガさん、今から覚悟しておかないと、ねっ!」
俺の様子に1人納得した様に何度も頷いてそう宣うルストラ師匠。
すいません師匠、そこでアン達の不安を煽らないで貰えませんか?!
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そんな事も有りつつも、改めてマーユを囲んで賑々しくしているアン達から少し離れて、ひとつ大きく息を吐く俺。いつも思うのだがウチの女性陣の精強さには、たまぁに気後れしがちになるのだ。
「本当に今更ですね。もういい加減観念して后宮をお造りになられれば良いかと」
俺の様子を見てそう進言して来るのはコーゼスト。いや、そらまあ、王国の法では何人もの女性を面倒見れる精力と経済力があるなら、嫁さんを2人3人娶るのも認められてはいるが、それとこれとは話が違う。
「そう言う事じゃなくてだな……周りに女性が多いと何かと気を使うんだよっ」
思わずコーゼストに語気を強めて、はっきりと断言する俺。それで無くてもウチのクランの他の女性メンバーからの無言の圧が結構重圧だったりする。
「それこそフェリピナ達も娶れば万事解決では? 何をそんなに悩む必要があるのですか? 今のマスターなら充分に経済力があるのですから」
何をそんなに悩むのだ、と言わんばかりのコーゼストの物言いに
「その前に俺の身体が持たんわッ!」
思わず声を荒らげる俺。経済力だけならともかく、本気で身体が3つぐらい無いと俺の身が持たん! リアルに肉体的に!!
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それから何日か経って──ルォシー大陸まであと6日ほどの距離にまで『大海の剣』は進んでいた。その頃俺達は何をしていたかと言うと──
「やったぁ! 8本倒れた! 8点よ!」
「あーっ、こちらは6本……6点ですぅ」
『大海の剣』の船内の遊戯場で「十柱戯」に興じていたりする。
これはアミューズメントの床が線で仕切られ、長さ10メルトの競技路が並んで2つ置かれており、そのコースの床面は磨き抜かれている。コースの一方の端にも太いラインが引かれていて、そこにヒトが立つ様になっており、その先には木製の柱が三角形に10本並べられている。競技者は太いラインに2人、それぞれにコースの前に立って、これまた木製の球をピン目掛けて転がし、倒したピンの数を点数にして10回競技し合計得点が一番多い者が勝ち、と言う遊戯だ。
因みに今プレイしているのはスサナとマルヴィナの2人である。更に因みに今ので最後の10回目のプレイだったりする。
「えーっと、スサナは合計71本で71点でマルヴィナは89本で89点だから、この勝負はマルヴィナの勝ちね」
更にさらに、手の空いてるヒトが紙にゲームの結果を書き記す記録役や倒れたピンを並べる役をしていたりする。今回はエリナが記録役でルアンジェが並べ役である。
「すると今はマルヴィナが暫定2位と言う事だな」
エリナの言葉を聞いてそう呟く俺。俺は既にレオナと1回戦を済ませており、暫定で1位である。因みに組み合わせはくじ引きで公平に決めてある。とりあえず暫定4位まで出揃ったら、またくじ引きで組み合わせを決めて決勝戦となっている。
「えっと──この後の組み合わせは──」
「次はアンとフェリピナ、その次はエリナとルストラさんで、最後はオルガさんとマーユちゃんですね」
俺の声にこの後の対戦順を教えてくれるコーゼスト。因みにこのゲーム、魔法生命体であるルアンジェと自動人形のコーゼストは除外されている。この2人に試しにやらせたら10回が10回とも10本のピン全てを倒したので、普通のヒトでは勝負にならないからである。
お前らは少し「自重」と言うのを覚えた方が良いぞ?!
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そんなツッコミをしている間にも、次のアン対フェリピナの勝負はアンが僅差で勝ち、その次のエリナ対ルストラ師匠の勝負は師匠の圧勝となった。そしてこの時点で得点数では師匠が暫定1位となり、それに続いてアン、俺、マルヴィナの順となった。流石は師匠、どんな事もそつ無く熟すな。まぁ少し大人げない気もしないでも無いのだが。
「師匠、少しは加減してやれよなぁ……」
「あらっ? どんな事でも勝負と名が付くなら手を抜く訳には行かないわ。それは相手に失礼でしょ?」
俺のボヤキにそう返してくるルストラ師匠。そういやこのヒトはそう言うヒトだったな!
等と俺が1人納得しているうちに、オルガさんとマーユの1回戦が始まろうとしていた。
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「やれやれ、僕はこうしたゲームは苦手なんだけどねぇ」
そう言いながらピン目掛けボールを転がすオルガさん。ボールはピンの列右側に当たり、7本のピンが倒れた。苦手と言っている割には中々の精度である。
「よぉしっ! がんばるぞーッ!」
オルガさんの横のコースではマーユが可愛く気合いを入れてから、小さな身体全身を使って思い切りボールを転がす。勢い良く転がったボールは10本のピン全てを倒した──なかなか上手いじゃないか。
「上手じゃないか、マーユ」
「えへへへへぇ〜」
「むう、僕には何も言ってくれないのかい?」
「あーっと、勿論オルガさんもなかなか上手いぞ」
感じたままに俺が上手いと褒めると面映ゆい表情を見せるマーユ。それに対して頬を膨らませて抗議して来るオルガさん。実に対照的であるが──オルガさん、アンタは実年齢1300歳超えのイイオトナだよな?! まぁ可愛いから許すけど!
俺はとりあえず頭の中でそうツッコミを入れながら、改めて2人のプレイに集中し直すのだった。
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そして2回目──オルガさんは今度は左へと曲がりさっきと同じ7本、一方のマーユはまたもや10本全部倒した。まぐれにしても大した物である。
次の3回目──オルガさんの転がしたボールは三角形の列の先頭に当たったが6本止まり、対するマーユは同じ様に列の先頭に当てたのだが、此方はまたもや10本全部。まさか、な…… 。
だがその次も、そのまた次も、そしてそのまた次の次もマーユはピンを10本全部倒したのである。おいおい…… 。これは流石に冗談抜きで本物なのか?! ここまで来ると俺だけで無くアン達も割と真剣な面持ちでマーユを応援し始めていたりする。
そしてその後もマーユの快進撃は続き──最後の10回目。マーユが転がしたボールは勢い良く10本のピン全部を倒した。
「これでマーユちゃんは10回中10回とも全てのピンを倒したので100点満点ですね。完全試合達成です」
記録を付けていたコーゼストがそう結果を告げると、「マーユちゃん、凄ぉいッ!」と皆んなが一斉に沸き立つ。
いや、俺もまさかマーユがパーフェクトゲームをするとは思いもしなんだ!
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当の本人であるマーユは一瞬キョトンとしていたが直ぐに
「わぁーいッ! わぁーいッ! やったぁ! やったぁ! 勝ったァ!」
と全身で喜びを爆発させる。一方のオルガさんは「あーあ、負けちゃったよ……」と少し不貞腐れ気味である──これは後でちゃんと慰めておかないとな。
因みに2人の得点はマーユが全員の中でも断トツで、オルガさんは……まぁ察して欲しい。
兎に角これで1位から4位が出揃ったので、再びくじ引きをして対戦相手を決め直す。くじ引きの結果、アンとマーユ、俺と師匠と言う組み合わせになり、この勝負で一番得点が高かったヒトの勝ちとなる。
そして4人での競技の結果──マーユがまたもや100点満点を出して優勝となった。因みに2位はアンが、3位は僅差で師匠が、俺は順当に4位となったのである。
「マーユちゃんのは、もはや才能ね」
師匠はマーユの抜群の感性を褒め称え
「マーユちゃんは全身のバネの使い方が秀でているのと、下半身がかなり強い結果かと思います」
コーゼストは独自の視点からマーユの勝因を分析し
「私もうかうかしていられないわ。娘に負けていられない!」
アンはアンで、義理の娘であるマーユに密かな対抗心を燃やしていたりする。
まぁどんな武術でも下半身が重要なのは周知の事実だし、特に弓などの射撃術にはブレない下半身が最重要だと聞いた事があるから、アンやコーゼストが言う事は一々もっともだ。
そんなこんなでやたら盛り上がったゲームだったが、折角なので優勝したマーユに何かご褒美をあげようと思い、欲しいモノを聞いてみたら「お父さんと一緒にお昼寝したい」との要望が出され、勿論叶えてやったのは言うまでもない。
言っておくが本当に昼寝しただけだからな! 本当だからな!
大切な事なので2回言わせてもらった!
今回は『大海の剣』船内でのボーリング大会の様子でした! それにしてもマーユちゃんの意外な才能が明らかになりましたね! この話は後日、別の話に繋がるフラグ……になる予定です! お楽しみに!
☆manakayuinoさんに描いていただいた海賊団「黒百合団」の頭領ジータのイラストを第141部百三十三話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




