再びのオーリーフ、そして挨拶は踊る
本日は第176話を投稿します!
いよいよ海路の中継地であるメロウ族のオーリーフ島に到着したウィル達! そしてここでもまたドタバタがッ?!
-176-
魚人族の住まう島オーリーフ島のルルン湾、その岸壁に停められた『大海の剣』の接岸している舷側が開いて舷梯が降ろされ、俺達は久しぶりの陸地に上陸したのだった。
但しタラップの下には槍を携えたメロウ族の兵士がズラリと整列していたりするのだが──何、この既視感?!
「これはまた、随分仰々しいわねぇ?」
一緒にタラップを降りてきたルストラ師匠がその一団に目をやりながらそんな感想を口にする。アン達やヤト達も何事かと目を白黒させている。
「あーっ、コレはアレだね。マデレイネ陛下が手配したんだろうねぇ……」
ただ1人、冷静にこの状況をそう分析しているのはオルガさん。うん、まあ、俺もそう思っていた所なんだけどな!
そんな事を考えていると、列の奥から一際見栄えのする衣装を身に纏った初老の男性──摂政のヨエルさんが姿を現して、俺の前で傅く。チョットマテ。
「お待ちしておりました、ウィルフレド様」
深く頭を垂れたままそう口上を述べるヨエル摂政。
「いやいやいやいやいやッ! そんなに畏まらなくても良いんだが、ヨエルさん?!」
この状況に思わずそう叫んでしまう俺。この際声が上擦るのは勘弁して欲しい!
「しかし貴方様はマデレイネ陛下の王婿となられるお方、それ相応の対応をせねばマデレイネ陛下の沽券に関わりまする」
俺の声に顔を上げるとそう真顔で宣うヨエルさん。
「ウィル、仮にも一国の女王様を結婚相手に選んだんだから……これぐらいは覚悟しなくちゃ、ねぇ?」
俺の慌てぶりに苦笑とも失笑ともつかない微妙な笑みを浮かべながら、そう諭してくるのはうちのルストラ師匠。
いや、覚悟はしていたがこんな風に出迎えられると尻がむず痒いんだが?!
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そんななんだかんだがあった後、迎えに来ていた輿車5台に分乗して宮殿へと向かう事にした俺達。因みにヨエル摂政には「ウィルフレド様」では無く「ウィル殿」と呼んでもらう事で何とか話が落ち着いた──やれやれ。
兎にも角にもマデレイネ陛下──マディやマーユが待つ宮殿に到着すると
「ウィルいらっしゃいッ! ようこそオーリーフ島へ!」
「いらっしゃい、ウィルお父さぁんッ!」
玉座の間で待ち構えていた2人から抱き着かれ熱烈歓迎を受ける俺。正直アン達や師匠は置き去りである。そしてその様子を満足気な顔で見ているヨエル摂政──臣下としてそれで本当に良いのか?!
「いやいやいや、マディにマーユもッ?! 俺だけじゃなくてアン達にもちゃんと挨拶をしないと駄目だろが!」
「「あっ、はぁい、ごめんなさぁい♡」」
そう諭す俺に声を揃えて笑顔で返事を返してくるマディとマーユ。母娘だけに息はピッタリである。
「ウィル、こないだ振りだね──皆んなも久しぶり」
もう1人、ジータはジータで玉座の近くに立っており、俺達に笑顔を向けて挨拶してくる。そんなジータに軽く笑みを浮かべて答えると、改めて師匠にマディとその娘のマーユ、そしてジータの事をちゃんと紹介し直す事にした。この前はだいぶ説明を端折ったからな。
「あーっと師匠。彼女がマデレイネ・ジョゼ・ファンテーヌ、ここに住むメロウ族の女王様で、それでこの前会った彼女がジータ・ルモワール、こないだ話した通り元海賊団の頭領で、今はメロウ族の守護者をしている。それとこの子はマーユ、マデレイネの娘でメロウ族のお姫様さ──マディ、マーユ、このヒトが前に話した俺の師匠のルストラ・フォン・モーゼンハイムさんだ」
俺の台詞にマディとマーユの2人はお辞儀を執り、ジータは深々と頭を下げて
「初めましてルストラ様、マデレイネ・ジョゼ・ファンテーヌです。お目にかかれて嬉しく思います」
「あ、ジ、ジータ・ルモワールですッ!ルストラ様、改めてよろしくですッ!」
「あっ、初めましてルストラ師匠さん! マーユ・ジョゼ・ファンテーヌと言いますッ! よろしくお願いしますッ!」
それぞれに自己紹介を交えながら挨拶をする3人。特にマーユが可愛らしくカーテシーを執ると俺の後ろにいるアン達から「キャーッ、可愛い♡」と声が上がる。
それについては俺も激しく同意させて頂きます!
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「あらっ、これはまたご丁寧にありがとうっ! マデレイネさんやジータさんも本当に美人さんねぇ。2人とも、アンさん達と一緒にウィルを支えてあげてちょうだいね?」
丁寧に挨拶をして来るマディとジータ2人に向かってそう答えを返すと、その次には目線をマーユに揃えて
「マーユちゃん、でしたっけ? 貴女は本当に良い子ね。これからもウィルの事を宜しくね?」
とこれまた優しげな眼差しで、マーユにもそう声を掛ける師匠。
「はいっ! 師匠さんっ!」
師匠の言葉を受けコルチカムの様な淡い紫の瞳をキラキラと輝かせて、真っ直ぐな視線でそう返事を返すマーユ。その返事に満足気に頷く師匠の顔も嬉しそうである。
そんな会話をしてからマーユは、改めてアン達の方に向き直ると
「お母さん達っ! それにルアンジェお姉ちゃんにフェリピナお姉ちゃんにマルヴィナお姉ちゃんにスサナお姉ちゃんにコーゼストお姉ちゃんにヤトお姉ちゃんと新しいお姉ちゃんも! いらっしゃいッ!」
と声を上げながら駆け寄って行く。「キャーッ! マーユちゃん、可愛いッ!」と弾んだ声を上げるアン達──その気持ちはわかるが、キミタチ騒ぎ過ぎじゃね?
思わず苦笑いをする俺の耳に
「わ、私がお母さんだなんて……恥ずかしいけど嬉しいわ……ポッ♡」
「ホントだよ、あたしがお母さんだなんて……何だかこそばゆい気がするね。嬉しいけどさ♡」
「本当だよね。ウィルと結婚する前に、先に娘が出来るとは思いもしなかったよ。これだから人生って何があるかわからないんだよね」
エリナ、レオナ、オルガさんの3人のマーユにデレる声が聞こえ
「ん、ちゃんと私達1人ひとりを覚えていたマーユはとても良い子ね」
「「「そうですよね〜♡」」」
ルアンジェとフェリピナ達の喜ぶ声も続けて聞こえて来た。
「うんっ! マーユ、久しぶりッ! また遊びましょうねッ!」
「あらあら、初めましてマーユちゃん、私はセレネと言いますわ。それにしても本当に可愛らしいオンナの子ねぇ、食べちゃいたいくらい♡」
ヤトは兎も角、セレネはこれがマーユとは初対面だが、マーユの可愛さに目を細めている──但し最後の台詞が不穏だったが。
「私もお姉ちゃんですか、これはコレで中々味わえない感覚ですね」
コーゼストはコーゼストで何やら満更でもない様子で笑みを浮かべている。
コイツも現実の身体を手に入れてから更にヒトっぽさに拍車が掛かって来たな!
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「それにしても──本当に貴女がセルギウスさんなのですか?」
とりあえず師匠との対面を終えて、改めて全員に挨拶を済ませたマディが、オルガさんをまじまじと見ながらそう声を漏らす。
「うん、まぁ信じられないのはわかるけど、間違いなく僕はセルギウス・フォン・ライナルトだよ」
一方のオルガさんはマディの台詞に苦笑いを浮かべながら答えていたりする。
「それについては、この前話した通り彼女はグラマス本人だぞ? 俺だけじゃない、アン達やコーゼストも証人だ」
訝しむマディに向かい、オルガさんを擁護すべくそう声を掛ける俺。
そらまあ、前に会った時は少年だったのに、次に会ったら大人の女性になっているとか、普通なら信じられないよな…… 。
まぁオルガさんがオンナだとわかったのは俺がオルガさんの胸に触ったからなんだが! だがアレは不可抗力ですっ! オンナだと知っていたら触らなかったぞ、本気でッ!
『今更ですが──成長する前のオルガ様は最初から女性でしたから、俗に言う「男の娘」だった事になりますね』
思わず1人でツッコミを入れていると、コーゼスト先生がいきなりそんな事を念話で宣って来る。
『本当に今更だな!?』
透かさずコーゼストに念話でツッコミを入れる俺。ソレ、イマ、カンケイナイデス。
「いえ……私はただ単にウィルが迷宮に行くまでの間に、また新しい女性を囲ったのかと勘繰ってしまって……その、ごめんなさい」
俺がコーゼストとそんな念話のやり取りをしている傍らで、いきなり爆裂魔法級の問題発言を口にするマディ。
「うぉい?! 人聞きの悪い事を言うなや!?」
「だって……私やジータの例もありますし……それにオンナの魔物さんも増えてますし……つい」
俺の抗議の声にジト目で答えるマディ。傍ではジータも「そうだそうだ」と頷いているし、アン達も苦笑を浮かべながら此方も頷いている。
君達! 俺は断じてそんな漁色家ではありません!!
俺はかなり本気で叫びたくなった──ちくしょうめ!
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「コホン、話がだいぶ逸れてしまいましたね」
玉座に腰掛け直したマディがわざとらしい咳払いをしながら場を仕切り直す。いや、まあ、俺にも多少なりとも責任があるんだろうが、ここは支援はしないからな!
「あーっ、うん、そう……ですね。こちらも舞い上がってしまって申し訳無いです。それでは──改めて我々の船への食糧等の物資の補給をお願いしたいのですが……」
此方も気を取り直したオルガさんが、マディに対し物資の補給の要請をする。
「はい、それに関しては前回同様ヨエルが窓口になりますので──」
オルガさんの要請を受け、マディとオルガさん、そしてヨエル摂政を交えた3人の間で『大海の剣』への補給の事が話し合われた。そして
「──では、これで宜しいのですね?」
「はい、それで結構です。宜しく御願い致します陛下」
お互い話が纏まったらしく、聞き返すマディと返事と共に頭を下げるオルガさん。ここはまぁ、マディにもオルガさんにもそれぞれの立場があるからな、やり取りが些か他人行儀なのは仕方ない事である。
因みにここで決まった事を敢えて書面にしないのは、オルガさんとマディ2人の間にある信用関係に他ならない。
「ではこの話はここまでと言う事で──オルガ様、そして皆さん。今回もこの宮殿にある迎賓館を是非お使い下さい。その方が娘マーユも喜びますので」
すべき話を全て終えてそれまでの生真面目様式から一転、少し格好を崩しながら笑みを浮かべてそう声を掛けて来るマディ。
「うん、それでは御厄介になりますねマディさん」
マディの言葉を受け、此方も肩の力を抜いた自然体な様子で返事を返すオルガさん。それを聞いたマディがひとつ満足気に頷いてパンッと手を鳴らすと、玉座の間の扉のひとつが開いて10何人かの侍女が姿を現した。
「それでは──皆さん、お客様を迎賓館に案内して差し上げて」
侍女達にそう指示を出すと、俺を手招きするマディ──なんだ何だ? 何事かと俺が近くに寄ると
「今夜、寝室の鍵は掛けないで待ってますわねウィル♡」
と耳打ちしてニコリと微笑むマディ。
いやいやいやいやいやマディさん、それは流石に大胆なのでは無いかい?!
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そんなやり取りののち、宮殿の迎賓館に漸く腰を落ち着ける事が出来た俺達は、その夜宮殿で行われたマディ主催の歓迎パーティーに出席していた。今回は前回の時とは違い、メロウ族の公家や貴人──いわゆる有力貴族達との交流も兼ねていた。勿論マディが自分と婚約そして結婚する俺を彼等に紹介する為に開かれたパーティーも兼ねている。
初めて彼等貴族達と言葉を交わしたが、俺の事は概ね好意的に受け止められている様だったので安心した。
そして夜が更けるとマディの寝室には俺じゃなくアン、エリナ、レオナ、オルガさん、ジータが一堂に会していた。話の内容はズバリ「誰が俺の第一夫人なのか」と言う事だった、らしい。
当初はそれなりに揉めたらしいが、俺との付き合いの長さでアンが第一夫人、エリナが第二夫人、ルピィが第三夫人、レオナが第四夫人、オルガさんが第五夫人、マディが第六夫人、ジータが第七夫人となる事が決まったとは、翌朝アンから物凄く爽やかな笑顔で聞かされる事になった。
やはり俺の嫁さん達の中でアンの家庭内序列が、序列第一位なのを改めて痛感した瞬間だった。
何とか無事(?)にルストラ師匠にマディとマーユを紹介する事が出来たウィル! にしても出迎えが仰々しい……(笑)
そして嫁さん達だけの夜の集まりはまるでワルプルギスの夜(笑)本当はマディが女王様なので第一夫人なのですが、ヒエラルキーの順序でアンさんが第一夫人に!アンさん強し(笑)
☆manakayuinoさんに描いていただいた海賊団「黒百合団」の頭領ジータのイラストを第141部百三十三話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




