淑女達との婚約と少女との約束
本日は第170話を投稿します!
久々のオーリーフ島でジータが到着するのを待つウィル達! そしてジータの到着と共に、いよいよウィルが……?! それでは本編をどうぞ!
-170-
コーゼストが作製した魔道具──転移魔導機のテストを兼ねて魚人族の住まう島オーリーフをアンとヤト、そして自動人形の身体を手に入れて絶好調のコーゼストを伴い訪れた俺。只今メロウ族の女王であるマデレイネ──マディとその娘のマーユから絶賛歓待されている最中である。
とりあえず当たり障りの無い話をマディ達と話していると、物凄い勢いで誰かが廊下を駆けて来る足音が響いたかと思うと、不意に宮殿の応接間の扉が勢い良く開け放たれ、同時に
「ウィルッ!!!」
そう叫びつつ駆け込んで来たのは、烏の様な黒く長い髪の女性──言わずと知れた元海賊の頭領だったジータ・ルモワール、その人であった。そしてそのまま俺に駆け寄ると思いっきり抱き着いて来るジータ!
「うぉっと!? ははっ、久しぶりだなジータ!」
親しい友人に久しぶりに再会したかの様に軽く挨拶をする俺に黒瑪瑙の様な黒い瞳に涙を浮かべながら
「もうッ! 「久しぶり」じゃないよ! あたしはアンタに忘れられちまったかと気が気じゃなかったんだからッ!」
キッ! と睨んでくるジータ。今のは何処かで聞いた事がある台詞だな?! そう思いマディに視線を向けると、満面の笑みをニッコリと返される──それはもう物凄く清々しい満面の笑みでである。逆に物凄く怖い笑みに感じたのは俺だけだろうか?!
片や思う存分俺に抱き着いて、漸く身体を離したジータはアン達にも「ひ、久しぶり」と躊躇いがちに言葉を交わす。ヤトは兎も角、本妻の地位が確定しているアンには多少なりとも苦手意識があるのかも知れん。
何にせよコレばかりは慣れてもらうしかないんだが……今後の事もあるし 。
兎にも角にもジータも揃ったので漸く話が進められるな、と思う俺。先ずはまぁ、近況報告かな…… 。
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「──と言う訳で何とか俺は女王蛾亜人を倒したんだ」
話すべき主要なメンバーも揃い、改めて迷宮『黄昏の城』での冒険譚から話して聞かせている俺。
さっきは本当にざっくりと説明しただけだからな。マディとジータとマーユ、そして何故か摂政のヨエルさんも俺の話に聞き入っている──マーユはともかくヨエルさん、アンタ仕事はどうした?
そんな状況に苦笑しつつマディを見やると紫水晶の瞳を潤ませて俺の方を心配げに見詰めてくる──何だ? 気が付くとジータも黒瑪瑙の瞳を潤ませて俺を見詰めているし、マーユも同様に泣きそうな顔で俺を見ている。何なんだ、本当に──と思っていたら
「「ウィルッ!!」」
「お兄ちゃんッ!!」
マディとジータ、マーユ3人に同時に抱き着かれた──うぉい?!
「「「貴方 (あんた)(お兄ちゃん)がそんな危険な目に会っていたなんて……!」」」
3人がそう口を揃え、俺の身体のあちこちをぺたぺた触ってくる。どうやら今話した女王蛾亜人──セレネとの激戦の様子を聞いていて、俺の身体の事が心配になったらしい。
「それは心配にもなるわよ。私だってあの時は貴方が本当にどうにかなってしまうかと思ったもの……心配する身にもなって欲しいわ」
そんなマディ達の様子を見てアンも俺を咎める様な視線を向けてくる。どうやらアンさんも、未だあの時の無茶を引き摺っているみたいである
そんな思いを共有する女性陣に苦く笑うしかない俺。
「まあそれだけマスターは愛されているのですよ。これはいよいよもって情弱な事は出来ませんね」
俺達の様子を傍で見ていて、そう一言偉そうに宣うコーゼスト。いや、何でお前がそんなに偉そうにドヤ顔で宣う?!
「私もッ! 私もッ! もう美味しいステーキが食べれないかと思ったわッ!」
コーゼストの物言いを半ば呆れて聞いていたら、ヤトがアン達に負けじとそんな事を口走る。
うん! ヤト、お前は本当に何時もブレないな!
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途中にあれやこれやと悶着も有ったが、何とか迷宮『黄昏の城』で経験した出来事全てをマディ達に話す事が出来た。無論コーゼストの事、ルアンジェの事、そしてグラマスの事も全てを話した。これから話す事を考えれば、このメンバーには知っておいて貰いたかったと言うのが正直な話である。
話を聞き終えたマディ達は驚きを通り越して半ば呆れた表情を見せていたが
「はァ……こりゃまた、何とも凄い経験をして来たんだねぇ……今の話だけで何年分驚いたか……」
先ずジータが率直な感想を漏らす──と言うかその台詞も何処かで聞いた気がするんだが……?
「でもお兄ちゃんもコーゼストさんもルアンジェお姉ちゃんもグラマスさんも、みんなすごーい経験をしたんだねッ!」
ジータに続いて素直な感想を興奮気味に口にするマーユに、今日何度目かの苦笑いを浮かべる俺。実に素直なマーユらしい感想である。そして
「まぁまぁマーユったら。それではウィル、ジータも来た事ですしそろそろ本題を聞かせてくださいな」
マーユの感想を笑顔で聞くマディからは話の催促をされたりする。そんなマディは何か勘づいているのでは無いかと思う俺。でもまあ、あの時の約束から2ヶ月経っている訳だし、色々と考えるのには丁度良かった気もする──尤も決断したのはつい最近なんだが!
だがとりあえずこの場は素知らぬ顔でマディの言葉にひとつ頷く俺。
「ああ、それじゃあ……」
そう言って俺が軽く咳払いをすると、マディ達も居住まいを正して聞く姿勢を取る。その雰囲気に急に緊張を覚え、一瞬たじろぐが意を決して口を開く俺。
「実は今日ここに来た目的はもうひとつ有ってな……マディ、そしてジータ、俺は西方大陸に帰ったらアン達とオルガさんと結婚する事に決めた。ついては2人にも結婚式に参加して欲しいんだ──俺の嫁さんとしてッ!」
そう一気呵成に言い放つと俺は深く頭を下げるのだった。
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緊張で喉がカラカラに乾いた感覚に囚われながらも、2人に自身の思いの丈を告げる俺。だが2人からは何の返答も無い──あれっ?! 俺なりに伸るか反るかの告白だったんだが伝わらなかったか?! マディやジータの様子を見ようと恐る恐る頭を上げようとすると
「「きゃーーッ、ウィルーーーッ!!!」」
「おわっ?!」
歓声をあげる2人にいきなり抱き着かれた! なんだなんだ?!?
「ようやく……漸く、「幸せにする自信も幸せになる自信」も付いたのですね……ウィル♡」
俺の右半身に抱き着いたままそう囁くマディ。
「あんたがそう言ってくれるのをどれだけ待ってた事か……でも嬉しいよウィル♡」
片や左半身を占拠しているジータはウットリした表情でそう呟く。どうやら二人共に喜んで貰えているみたいだ。
「本当に2人とも済まなかったな、散々待たせてしまって──それで答えを──」
──聞かせて欲しいと言おうとする前に「はいっ、喜んで♡」と快諾してくれるマディとジータの2人。俺は2人の気持ちを確認出来るとアンの方を向き直り
「アン、すまん。結局俺にはこうした選択しか出来ないんだ」
と完全事後承諾となってしまったが詫び言を述べる。するとアンは柔らかい笑みを浮かべながら
「そんなに謝らないで。貴方がそう決めたのなら私はその意志を尊重するだけ」
と俺の意志を重んじて理解を示してくれた。
「でも──私が本妻であるのは誰にも譲るつもりは無いから♡」
続けて口にした台詞にはアンの強い意志が込められていたが。チョット、メガコワイデス。
そんなアンにマディとジータは「これから宜しく御願いします」と頭を下げる。どうやら俺の嫁さんになってくれる女性達の家庭内序列はアンさんが頂点らしい。
因みに俺は底辺だが!
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「えっ? えっ?」
俺やアン、マディやジータがやんややんやとしている間、あまりの急展開について来れなかったマーユが1人でワタワタしている。
「マーユ、お母さんはウィルお兄ちゃんと結婚する事になったの。ウィル「お兄ちゃん」が「お父さん」になるのよ♡」
そんなマーユに満面の笑みで優しく教えて聞かせるマディ。それを聞いたマーユは「えっ?! ほんとに?!」と大声をあげると俺の方を向き直り
「お兄ちゃんッ! ほんとにお母さんと結婚してくれるの?! マーユのお父さんになってくれるの?!」
と物凄く真剣な面持ちで尋ねて来た。俺が「もちろん本当だよ」と頷きながら答えると、パァッと花の蕾が綻ぶ様な笑みを浮かべ
「わぁーーーッ! ほんとなんだぁ! わぁーーーい! わぁーーーいッ! お兄ちゃんがお父さんだぁーーーッ!」
と此方に一目散に駆け寄って来る──おぉっと?! 俺は駆け寄って来たマーユをしっかり受け止めて抱き上げると、マーユは俺の首に手を回し
「お父さぁーーんッ!」
ぎゅっと抱き着くとそう一言。ちょっと早過ぎませんか、マーユさんや?! 思わず声が出そうになるが、俺に抱き着きながら鼻をすんすん鳴らしているマーユに気付き、そのままマーユが落ち着くまでしたい様にさせてやる事にした。マーユは盛んに「お父さぁん……お父さぁん……」と繰り返しうわ言のように呟いている。
「前の夫はマーユがまだ赤子の時に亡くなり、マーユは父親と言うのを知らずに育ちました……だから余計にウィルが自分の父親になってくれるのが嬉しいんでしょう……」
そんな愛娘の様子を見るマディもまた目を潤ませていたのだった。
俺がそうした類の話に弱いの、実は知っていて話してないか──マディさんや?!
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マーユが落ち着くのを待って、改めてマディとジータ、そして何故かヨエルさんにこれからの予定を話す俺。あと2日したら今居るフェンチェンの町を発って帰路に着く事、途中このオーリーフ島に立ち寄る事、ルォシー大陸に戻ったら直ぐに結婚式の準備に入る事、等等それこそ事細かに。
其れを黙って聞いていたマディとジータも「それで良い」と言ってくれた。ヨエルさんは言わずもがなである。その間もマーユは俺にベッタリであったが、ひと通り話し終えると
「お父さんッ! たまにはマーユやお母さんやジータさんにも会いに来てね!」
とこれまた極上の笑みを浮かべながら強請って来る。と言うかもう「お父さん」呼ばわりは確定なのか?!
俺が言い渋っていると今度はアンに向かって
「ねぇ! アンお母さんからも、そうするようにお父さんに言ってッ!」
とまたもや爆裂魔法級の発言をするマーユ。マーユから「お母さん」と呼ばれたアンさんは
「貴方の子供を授かる前に、こんな可愛い娘が出来るだなんて♡」
と此方も満更でも無い御様子で頬を緩める。それまあ俺だって結婚式を挙げる前に「娘」と言う存在が出来るとは──もう呼び方が「お父さん」に固定されたみたいだし、覚悟はしていたが意外と胸にグッと響くモノがある。
「──お取り込み中すいませんが、この宮殿の何処か一室に転移魔導機を設置させて頂きたいのですが? そうすればマディさんやジータ、それにマーユちゃんが自由にマスターと会える事になりますよ?」
俺とアンが感慨に耽っていると、ご存知周りの空気を読まないコーゼストが俺らの感慨などお構い無しにそんな事を宣う──そういやソレも目的のひとつだったのをしっかり忘れていた!
「お、おう、済まんコーゼスト」
「えっ?! そ、そんな事が出来る様になるのですか、コーゼストさんッ!」
今回は流石にコーゼストの方に分がある事もあり、言葉が継げない俺。アンさんも「そうだった」と思い出した顔をしている。君も忘れていたのね。
一方のマディはコーゼストの言葉に驚きと喜びを同時に顔に表していた。君はサボる気満々だな?!
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兎にも角にも転移魔導機の設置と言う事になり、マディから玉座の間に繋がる控えの間のひとつを使っていいと承諾を得て、予め作製しておいた転移魔導機を設置し、安全対策としてマディ、ジータ、マーユ3人の魔力波の波形を登録した。これで彼女らも転移魔導機での行来が自由に出来る様になったのであった。
将来的には転移魔導機を複数作製して、主要な場所同士を繋ぐ連絡網を構築する予定だ、とはコーゼストの談である。
そして俺達はマディ達に一旦別れを告げると、設置した転移魔導機のテストを兼ねて東方大陸のフェンチェンの町へと帰還するのだった。
マディ達に「このまま付いて行く」と言われなくて、ホッとしたのは秘密である。
遂にマディとジータ2人に結婚を申し込んだウィル! 紆余曲折はありましたが、最後にオトコを見せたウィル。
それに何よりウィルとマディの結婚を一番喜んでいたのはマーユちゃんでしたね。もう既にウィルの事を「お父さん」と呼ぶのは決定事項となっております!
これでルォシーに帰ってからルピィに説明するのに苦労するウィルの姿が目に浮かびます(笑)
☆manakayuinoさんに描いていただいたモスクイーンのセレネのイラストを第169部百五十七話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




