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なぜか俺のヒザに毎朝ラスボスが(日替わりで)乗るんだが?  作者: 逢坂 蒼
思えば東方に来たもんだ編!
179/330

仰げば尊し我が師の恩 〜自由人ルストラ〜

本日は第167話を投稿します!

 -167-


「──そして俺は伯爵家と決別し、冒険者になったんです」


 俺はルストラ師匠とエリナ達にヴィルジール伯爵家で起きた事の顛末(てんまつ)を語って聞かせた。勿論場所を料理店(レストラン)に変えて、である。席に着いて早々に師匠に(うなが)されて話し始めたのだが、あまりの内容にエリナ達は言葉を失って半ば茫然自失(ぼうぜんじしつ)としていた。以前話を聞いていたアンとルアンジェですら苦々しい顔をしている。


「はぁ……なるほど、あの馬鹿兄2人はそんな事をやらかしていたのね……」


 ルストラ師匠は大きな溜め息と共に言葉を漏らす──その言葉に(わず)かな後悔をのせて。


「私の元で修業していた時から、あの2人はウィルに何度かちょっかいを出して来てたけど、そこまでするなんて……」


 そう言うと再び大きく深い溜め息をつく師匠。エリナ達も何ともやるせない顔をしている。


「それで──結局、今のヴィルジール伯爵家は()()馬鹿兄達が継いだのね?」


「いえ、そうはなりませんでした。実は……」


 (いきどお)る師匠に俺は、あの2人の兄──ランベリクとダニエリクのその後の結末を、かつての父サンドモン伯爵の今際(いまわ)と共に話して聞かせる。


「──そう、あの馬鹿兄2人は廃嫡(はいちゃく)されて、アドルフィーネが家督(かとく)を継いだのね」


「そうです。しかもその継嗣(けいし)に関する疑義(ぎぎ)はアドルからの密告だと俺は思っています」


 師匠の言葉を継ぐ形でひとつの推測を口にする俺。()()()アドルはその件への関与については何も言わなかったが、十中八九(じゅっちゅうはっく)アドルが関与していると俺は考えているのである。まあアドルは何も言ってないし単なる俺の推測なんだが。


 (もっと)も師匠は俺の台詞を聞いて「ああ……()()アドルフィーネならやりそうねぇ……」と納得していたが。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「だけど、ウィルが伯爵家を首途(しゅと)したのにそんな訳があったとは思わなかったわ」


 ここまで聞き終えてエリナがぽつり(つぶや)く。


「そうだね。僕もアドルフィーネ嬢から詳しい話は聞かされてなかったからね、これが初耳だよ」


 エリナの台詞を継ぐ様にオルガさんも言葉を()らす。そういや2人は俺がヴィルジール伯爵家を出た事は知っていたが理由までは話した事が無かったな。つまりはレオナやフェリピナ達と同じって訳だな。そう思いが(いた)


「──それについては悪かったと思っているよ。でもあまり良い思い出でも無いし、人に話すのは(はばか)られて……な。すまん」


 俺はエリナやオルガさん、レオナやフェリピナ達に軽く頭を下げる。エリナらは「ウィルはむしろ被害者なんだから頭を下げることなんか無い」と慌てていたが、ここでちゃんと誠意を見せないと俺の気が済まない。


「私も前に御主人様(マスター)がそう話していたの聞いたけど、そんなに貴族とかっていいモノなのかしら? 前に会った王様やジュリアスは別よ? あの2人は御主人様(マスター)みたいにいいヒトだから!」


 ヤトもヤトなりに思う所があるみたいであるし


「そんな兄達が居たのが御主人様(ダーリン)にとっては不幸だったけれど、今は私がいるから誰か御主人様(ダーリン)を苦しめたら私が殺してあげるから、ねっ♡」


 セレネに至っては物騒な事を口走る。そんな2人に俺は苦く笑いながら「ありがとうな」と声を掛ける。ヤトもセレネもその思考(考え)はえらく物騒だが、それも俺の事を思っての発言だと不謹慎だが嬉しく感じる。


 本当に俺は素晴らしい婚約者と仲間と従魔に恵まれたものだ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「でもまぁ、今のウィルが幸せならそれで良いわ」


 諸々(もろもろ)を聞き終え、そう話を締めるルストラ師匠──その碧玉(サファイアブルー)の瞳に優しさを(たた)えながら。その辺は本当に昔から変わってない。この人は平穏を愛し、自由を(たっと)び、そして温厚な人柄の人物なのだ。


「それで──アンさん、エリナさん、レオナさん、オルガさん、そしてもう1人──ルピィさんだったかしら? その5人とはいつ式を挙げるのかしら?」


 しみじみとそんな事を思っていたら、いきなり悪戯っ子みたいな顔をしてそんな事を(たず)ねて来る師匠。本当に自由なヒトだな?!


「いや、西方(ルォシー)大陸に戻ってから挙式する予定ですが……その辺はこれから話して決めようかと」


 思わず突っ込みたいのをグッと(こら)え、何とか答えを返す俺。あまり余計な事を言うと後が色々と面倒になりかねない。


「そう、なら良いわ。でも良く決断したわね、本当に昔のウィルからは想像がつかないわ」


 俺の返答に満足気に頷く師匠。正直()()()決断していて良かった、と俺は思わずついこの前の自分を褒めたくなった。


「それで師匠、まだ話す事があるんですが……」


 つい歓声を上げたくなるが、まだ話すべき事があるので気持ちを引き締め直してそう切り出す俺。そこで師匠から「待って」と声が掛かる。


「ウィル、確かに私と貴方は師匠と弟子の関係だけど、もう良い大人なんだからそんなに(かしこ)まらなくてもいいのよ? もっと普段から皆んなと接する様に話してくれないかしら?」


 そう言うとニコリと笑みを浮かべる師匠。俺としてもそう言ってもらえれば有難いが……まあ師匠がそう言うんだから良いか。


「──わかったよ、師匠。なるべく普段通りに話させてもらうよ」


 師匠の希望通りに言葉遣いを()()()()口調に戻す俺。あの話し方には慣れてないので、正直気疲れしていたりする。


「マスターがあの様な話し方が出来るヒトだとは思ってもみませんでしたが、やはり此方(こちら)の方がしっくり来ますね」


 元に戻った俺の言葉遣いを聞いてそんな事を(のたま)うコーゼスト。


 よし、後でじっくりと話し合おう(お説教)な!


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「えっと、それで話の続きなんだが……」


「あっ、ああ、ごめんなさいね。途中で(さえぎ)ってしまって……それで何かしら?」


 話の腰を折った事を()びてから先を(うなが)すルストラ師匠。


「えーっと、実は……」


 と俺は軽く咳払いをして切り出してから声を(ひそ)めて、ルアンジェが元々自動人形(オートマトン)であり、コーゼストに(いた)っては俺の左腕に着いている有知性魔道具(インテリジェンスアイテム)である事、今の身体は『黄昏(ムー・グォン・)の城(ズィー・チャヴ)』で発見した魔法生命体(ホムンクルス)自動人形(オートマトン)である事を話して聞かせる。無論『黄昏(ムー・グォン・)の城(ズィー・チャヴ)』を攻略した事も含めて。


 最初は(いぶか)しみながらも聞いていたが、話が進むに従ってだんだん顔に驚きの表情を浮かべるルストラ師匠。


「はぁ……それはまた……確かに大きな声では言えないわね……それにしても」


 大きな溜め息と共に言葉を吐き出し、しげしげとルアンジェとコーゼストを見やる師匠。そして


「……本当に魔法生命体(ホムンクルス)自動人形(オートマトン)なの? 見た目はヒトそっくりじゃない……」


 と率直な感想を口にする。その台詞にルアンジェが「これを見て」と右腕を師匠に向けて差し出すと、目の前で魔導火砲(マギア・イグナイター)へと変化させ、コーゼストも「では私はこれで」と自分の左手首をカチャリと言う音と共に外して見せる。

 いきなり変化したルアンジェの右腕と、コーゼストの外された手首から覗く複雑な機械仕掛け。目の前で起きた2つの信じられない出来事に目を()く師匠──って?!


「いや、お前の手首ってそんなに簡単に外れるのかよ?!」


 思わずコーゼストにツッコミを入れる俺。


「ええ、そうですが──何か?」


 ツッコまれたコーゼストは何故かドヤ顔で答えてくる。


「ッ! ちゃ、ちゃんと固定しとけよな!!」


 俺は割と本気(マジ)で叫んでしまった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「落ち着きましたか? マスター」


「あ、ああ、すまん……ってお前が悪いんだろが……」


 しれっとしたコーゼストの物言いにまた突っ込んでしまう俺。そう言えばコイツはこう言う奴だった!


 ふと視線を向けると、ルストラ師匠は俺とコーゼストのやり取りに驚きを通り越して(あき)れた顔をしており、アン達に至っては苦笑していたりする。


「……今のを見ていたらコーゼストさんが本当に有知性魔道具(インテリジェンスアイテム)だと言う事が信じられないんだけど……ねぇアンさん、ウィルとコーゼストさんっていつもこんな感じなのかしら?」


「ええ、そうですね。これはウィルとコーゼストのいつも通りのやり取りですね」


 師匠はアンに確認を求め、アンも苦笑を浮かべたまま肯定する──と言うか少しは支援(フォロー)して欲しいんだが? そして師匠、これが日常なんです、慣れてください。


「……はぁ……ますますヒトと変わりないわね……」


 アンの答えに再び大きな溜め息と共にそう呟く師匠。そんな師匠に苦く笑うしかない俺とアン達。


「ま、まあ、なんだ! この話はここまでと言う事で! まだ俺から師匠に報告したい事があるんだッ!」


 兎にも角にも無理矢理話題を変える事にする俺。このままでは永遠に堂々巡りになりかねない。


「あらっ、他にもあるの?」


「ええ、実は……」


 俺の言葉に反応し聞いてきた師匠に、話が前後したが俺はSクラス冒険者になった事、エリナのパーティーと合流したのを機に氏族(クラン)を創った事を改めて話した。そしてもちろん国王陛下から伯爵位を(たまわ)った事も。


 黙って聞いていた師匠は最後まで聞き終えると


「はぁ……これはまた……随分と濃い体験をしたわね」


 本日5度目の大きな溜め息をつくと、(テーブル)に置かれていた木杯(カップ)薄荷(ハッカ)水で喉を(うるお)す。そして


「でも大出世ね! 私も今まで何人かのヒトに教えを()われてきたけど、その中でもSクラスまでに上り詰めたのはウィルが初めてだわ! 本当に師匠としては嬉しい限りよ!」


 そう言って手放しで自分の事のかの様に喜んでくれる。


 基本、自由奔放なヒトではあるが、こうした所が多くのヒトを()きつけるのだと改めて思う俺だった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「ん、まあ、それはそれとして──」


 そう言葉を発すると再び薄荷水に口を付けるルストラ師匠。それから俺の方に向き直り


「──アナタが西方(向こう)の国王陛下から伯爵位を賜ったのはわかったわ。それは同時に大きな「責任」を(ともな)うのはわかっているわよね?」


 そう言って俺に鋭い視線を向ける。


「『爵位と言うのは責任を負った事である。それ以上でもそれ以下でも無い』……師匠から教えられたこの事は決して忘れる事はないよ。それが例え与えられた爵位が男爵であろうと伯爵であろうと」


 向けられた視線を真っ直ぐに受けながら、(かつ)て師匠から叩き込まれたその「教え」をはっきりと口にする俺。元々()()でのいざこざに嫌気が差していた俺としては、師匠が説いてくれたこの「教え」は深く心に根差し、何物にも代えがたいモノとなっている。


 今の師匠の台詞は俺が「階級や権威と言った物でヒトに理不尽を()いていないか」と言う、言わば確認儀礼なのだ。当然の事ながら俺は今まで自身の階級をひけらかして無理理不尽を強いた事など1度も無い。だからこそ堂々と胸を張って言い切れるのである。


 そんな俺の様子を見た師匠はフッ、と表情を(ゆる)


「うん、それでこそ私の教え子だわ!」


 と口にし、隣りに座る俺の頭をガシガシと撫でくり回して


「本当に立派になったわね、アナタは私が今まで教えて来た誰よりも自慢出来る弟子だわ!」


 と嬉しそうに目を細める。相変わらず痛い愛情表現であるが子供扱いしないで欲しいんだが?


「イテッ、イテテッ! そ、それで師匠はどうして此処(ドゥンダウ)に?」


 とりあえず話の矛先を変えると言う(ささ)やかな抵抗をしてみると


「うん? ああ、ウィルには話した事が無かったわね。この東方(ドゥンダウ)大陸には私の親友が眠っていてね、その墓参りに来ていたのよ」


 師匠は俺を解放しながらそう笑いながら教えてくれた。


「でも此方でやる事はやったし、これを機に向こう(西方)に帰ろうかしらね──ウィルの結婚式も気になるし……」


 そう呟くと顎に手を当て熟考する師匠。そして考えが(まと)まったらしく「うん、そうしましょう」と声にすると


「それじゃあ私も貴方達に同道させてもらって一緒に帰る事にします! よろしくねウィル、皆んな!」


 今まででイチバンの満面の笑みを浮かべた顔で、そう爽やかな口調で宣言するのだった。


 師匠は本当に自由過ぎる────ッ!



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