セレネ 〜やはり女王にも懐かれました〜
本日は第164話を投稿します!
従魔にした女王蛾亜人の名前も「セレネ」と決まりましたが、まだ混沌は続いています(笑)
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「セレネ……私の名前…………うぅんッ! とってもステキな名前! ありがとう御主人様ッ!」
俺の言葉を反復していた女王蛾亜人──『セレネ』は嬉しさを体全身で表す。より正確には俺の顔をまたもや豊満な双丘に掻き抱く! それ、苦しいからヤメレ!?
俺が藻掻いていると、何とヤトがまたもやその蛇身を俺に絡めセレネから奪う様に引き離すと
「ダメよ、セレネッ! 今度は私の番なんだからッ!」
と此方も見事な双丘に俺の顔を埋没させつつ抱き締める──お前のはもはや凶器なんだからヤメテクレ!
「2人とも大概になさってくださいね? マスターが息も絶え絶えなんですが?」
流石にアン達でもSランクの魔物2人(?)を止めるのは骨みたいでどうしようかと右往左往していたが、俺の様子を見かねたコーゼストがセレネとヤトの間に割って入り2匹を宥めてくれ、ヤトは慌てて俺を解放してくれた──やれやれ。
「助かったよ、コーゼスト……」
俺は「はぁーっ」と大きく息を吐き出すとゆっくり呼吸を整える。
「……ったく、お前達からそんなに積極的に来られても俺の身が持たんわ!」
呼吸が整うと早速2匹に文句を言う俺。2匹は共に「ごめんなさい……」としおらしい態度で謝ってくるが、本当に反省してるのかは微妙な感じである。だがまぁ、あまり責めるのも何だし、お小言は程々にしておくとするか。俺は気を取り直して
「あーっと、兎に角だ。これからもよろしくなセレネ」
改めてセレネに右手を差し出す。セレネは嬉しそうに差し出した手を握ると「ええっ、よろしくね御主人様♡」と満更でもないみたいである。
最初からこうすれば良かったのか?
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兎にも角にも新たにモスクイーンのセレネが従魔になった。戦っていた時にも感じていたがヤト並に知能が高く、しかもヤト以上に知性的にも見える──ヤトには言えないが。
「そういやセレネの格やら技能やら能力ってのはどうなっているんだ、コーゼスト?」
「はい。セレネのレベルですがマスターと共生化により74から79へと上昇しています。スキルは「魅了」が「魅惑」へ変化。アビリティは「女王の支配」が「女王の威厳」へと変化しました。なお無詠唱は勿論の事、『螺旋風繭』を始めとした風系統の魔法は全て使える様になっていますね」
俺の質問にスラスラと答えるコーゼスト。しかしまあ随分強化されているな! 聞けば「魅惑」は「魅了」の強化版のスキルで、ヒトだけでは無く他の魔物も文字通り「魅惑」する事が出来るとの事らしい。
また「女王の威厳」は「女王の支配」の上位互換のアビリティで、セレネが自身の仲間と認識した者の基礎能力を向上させるアビリティらしい。つまりはコーゼストの共生化に近いスキルとアビリティだと言う事か。そして無詠唱と来たもんだ。
「そいつは……色々と凄いな」
俺は思ったままを口にするとセレネは嬉しそうに「もっとほめて!」と胸を張る。そして何故かヤトも張り合う様に胸を張る──お前は一体何をやっている?
『どうやらヤトはセレネに対抗心を持ったみたいですね』
そんな2匹の様子を見て、コーゼスト先生がそう念話で宣う。
偶然だな、俺もそう思ったんだ! アン達も苦笑いしているし…… 。
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「それと──」
コーゼストからの報告はまだ続きがある様で聞く姿勢を取る。
「──マスター達のレベルですが、マスターはレベル80に、アンとエリナはレベル76、レオナはレベル75、フェリピナはレベル72、マルヴィナは73、スサナはレベル54まで上昇、ルアンジェはレベル77相当に、オルガさんはレベル52になりましたね。ゾラ殿は75と変わらずです。従魔達はファウストとデュークがレベル78、ヤトはレベル79になっています」
そう一気に言い切るコーゼスト──お疲れさん。しかし俺も随分レベルが上がったな……遂に80の大台になったのか。アン達も「私達も結構上がったわね」等とキャイキャイと姦しく話し合っている。
「マスターもレベル80になられましたが、ここからレベルの上がり方が鈍くなって上げるのに苦労すると思います。参考までに古代魔族を率いていた ” 魔王 ” のレベルが97、魔王を討った ” 勇者 ” のレベルが96でした」
コーゼストから更に追加の情報が寄せられる。と言うか思っていたより低かったんだな、魔王と勇者のレベルって。
「へぇ、400年前の魔王と勇者とは結構高レベルだったんだね……僕は伝承としてしか聞いていなかったからね」
一方、話を聞いていたオルガさんの見方は違うらしい。
「確かに当時としても2人とも高レベルの部類に入りますね。参考までに言うと現役Sクラス冒険者のオルティース・トリスタン殿は拝見したところレベル75でした。マスターウィルは現状私が知りうる冒険者の人達の中でも頭ひとつ突出しています」
オルガさんの台詞に受け答えするコーゼスト。しかしまぁ何だ、何だかあっという間にレベルが上がった気がするんだが? これもやはりコーゼストの共生化の恩恵を受けての事だな、きっと。
などと俺は1人で納得しているのだった──周りの視線に気付く事無く。
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「すると──今のウィルは過去の勇者に一番近しい存在と言う事よね?! それって凄い事じゃない?!」
エリナが思い付いたみたいに急に声を上げる──いきなりだな、おい!
「うん、エリナ君──エリナの言う通りだね! より正確言うと今のウィル君──ウィルのレベルは過去何人か居た ” 英雄 ” に匹敵するレベルなんだよ! これは帰ったら早速英雄の認識札を新調しないといけないね!」
そしてエリナの言葉に同調してオルガさんまで飛んでもない事を口走る──どうでも良いがエリナや俺の呼び方に戸惑っているな? そこは早く慣れてもらわにゃいかんのだが。
「……ったく、大した手柄も無いのに英雄も何もあったもんじゃないのに……」
俺が苦笑いを浮かべながらそう言うと「そんな事は無いっ!」とアン以下メンバー全員とオルガさんに力説されてしまった。
「Sランクのラミアを打倒し従わせただけでなく、今回はSランクのモスクイーンも打ち倒しそれさえも従わせたと言う純然たる事実があるんだよ?! 他の最高位冒険者でもそうそう出来る事じゃないんだ! だからウィルく──ウィルはもっと自信を持つべきだよ!」
オルガさんが拳を握ってそう言い切り
「はぁ……ウィルって本当に無自覚よね……」
アンは何故か溜め息混じりに呆れ
「そうよね……これってかなりの偉業なのにね」
エリナがアンに同調し
「本当だよ! もっと自分に自信持ちなよ、ウィル!」
レオナからは叱咤激励を受け
「「「そうですよ! ウィルさん!」」」
フェリピナ達はアン達の言葉に首を縦に振って同調を示す。いつの間にか俺が悪い事になっている気がするんだが?!
「ん、でもそれがウィルの良い所でもあるわ。私はそんなウィルが好きよ♡アン達もそうなんでしょう?」
そんな時ルアンジェが俺を擁護する発言をしてくれ
「ああっ?! ルアンジェ、抜けがけしないでよ?! 私だって御主人様の事、大好きなんだからッ!」
それを聞いたヤトがルアンジェに食って掛かり
「ではここは間をとって私が御主人様と♡」
「「「「「「「「「おいッ!?」」」」」」」」」
セレネが漁夫の利と言わんばかりにピトッと俺に抱き着いて、アン達一同がツッコミを入れて来る。
もう何がなんだか……はァ…… 。
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「はぁ……皆んな少しは落ち着いたか?」
「「「「「「「「はい……」」」」」」」」
またもやの混沌のあと、皆んなにそう声を掛ける俺。流石にこう何度も同じ型を繰り返されると、それに対するパターンも決まって来ると言うものである。特にやり取りに関しては。
「はぁい、御主人様。ごめんねっ♡」
「ちょっと悪ふざけが過ぎました。ごめんなさいね、御主人様♡」
ヤトとセレネも謝って来るが……お前達はそもそも反省していないだろ?!
「と、とりあえずだ! 俺の職業をどうするかと言う話は、此処を出て向こうに帰ってからで良いだろ? 先ずは此処の仕事を片付ける事に集中しよう! な?!」
兎にも角にもこのままでは埒が明かないので、もう一度皆んなにしっかり言い聞かせる──言い聞かせると言うより懇願する俺。
「え、ええ、そ、そうね。そうしましょう」
アンが代表して答え、皆んなも首をコクコク縦に振る。どうやら俺の願いは聞き届けられたみたいで、俺とオルガさん以外のメンバー達はそそくさと散っていく。残ったのはコーゼストとヤトとセレネのみ。
「ヤト……何でお前は自分の持ち場に戻らない?」
「それはッ! もちろんセレネの毒牙から御主人様を守る為にッ!」
俺のジト目の問い掛けに拳をグッと握って力説するヤト。何だよ、毒牙って?! そらまあセレネは蛾だけど! 女王蛾亜人だけに!
「そんな心配は良いから! ヤトもほら、な?!」
俺がそう言うと「う〜っ」と唸っていたが観念したらしく
「コーゼストッ! 御主人様に何かあったらよろしくねッ! 頼んだわよッ!」
そう言いながら先程まで自分が見ていた場所に滑るように戻って行くヤト。
どうでも良いが、お前は俺の母親か?!
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兎にも角にも色々と振り出しに戻る事にして、オルガさんとコーゼスト、そしてセレネと共に置かれている魔道具を調べる俺。
「しかし……お前は本当にヒトの言葉が上手いよな……」
色々と見つつも傍らで俺の作業を興味津々な眼差しで見ているセレネに声を掛ける俺。
「うん? あぁ、それはね……」
俺の質問に眼をぱちくりさせながら答えるセレネ。元々はこの『黄昏の城』に住み着いていたのでは無く、外から好物である奈落蝉を追って迷宮の奥深くに入り込んだらしい。その辺はコーゼストの推理が正しかった訳である。
そして言葉は外で今まで戦ってきた冒険者達が話す言葉を聞いているうちに自然と覚えたらしい。
「それにしても最初に会った時より言葉の発音が明確だし、それに流暢だよな?」
「それはね、こう言う風に──『触角を震わせて音を出していたの。その方が強そうでしょう?』 こっちの声はこんな声だから弱そうに思われそうだし」
俺の更なる質問にもちゃんと真面目に答えるセレネ。舌を出して戯ける様や今発している声はヒトなら愛らしく思えるが、セレネはれっきとした魔物なんだよなァ。
俺はそんな事を考えながらも作業を進めて行く。その間にも見つけた魔道具や武具の類を持って来てはコーゼストの無限収納へと仕舞って行く皆んな。思いのほか置かれていた魔道具等は保存状態が良く、殆どのモノを回収する事ができた。
やろうと思えばコーゼストの無限収納に纏めて一気に回収出来るのだが、それをやると宝探しの醍醐味が無くなってしまうのでやらないのである。
そしてコーゼストが最初に見つけたゴーレム6体も楽々と収納したのを確認すると
「良し……皆んな、忘れ物は無いな? それじゃあ……外に帰るとするか!」
はっきりと撤収の声を上げる俺。
「ええ、帰りましょうア・ナ・タ♡」
「そうね! 帰ったら結婚式の日取り決めないと♡」
「あたしはウエディングドレス見たいなァ♡」
「ウィル君、帰ったら正式に婚約を発表するからね♡」
「「「良いなぁ……」」」
「ん、私は新しい服が欲しい。ウィルに買ってもらう」
俺の言葉にアン、エリナ、レオナ、オルガさん、フェリピナ達、そしてルアンジェがそれぞれの反応を表す。
「御主人様ァ、私帰ったらうんと厚いステーキ食べたいわァ♡」
「私は御主人様にヒトの住む街を案内して欲しいわぁ♡」
ヤトとセレネもそれぞれの想い、と言うか要望を俺に伝えてくる。
「私もルアンジェと同じく服を新調したいです。とりあえずマスター、ここは甲斐性が有る所を見せる好機ですよ?」
最後にコーゼストまでもがそんな事を宣って来る。正直言いたい放題である。
痛む頭を押さえつつ部屋の扉へと向かう俺。この後は上の部屋の帰還用転移陣で戻るだけである
こうして波乱に富んだ俺達の『黄昏の城』での冒険は終わったのだった。
そういやセレネの従魔登録、やっておかないとな!
今回でようやく『黄昏の城 (ムー・グォン・ズィー・チャヴ)』での冒険は終わりとなります! 何だか色々とあり過ぎた今回の冒険でしたね!
女王蛾亜人改めてセレネもこれからウィルに色々と絡みまくりそうな予感が……(笑)
さて迷宮の冒険は終わりですが東方大陸編はまだ続きますので、この後も引き続き宜しく御願いします!
☆manakayuinoさんに描いていただいた成長したオルガさんのイラストを第175部本編百六十三話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




