人造と人形 〜創られしモノ達の進化〜
本日は第160話を投稿します!
カプセルに寝かされていたのは果たして──?! 今回はコーゼスト、そしてルアンジェ中心の話になります。
一部グロいシーンがあるのでご注意ください。
-160-
まるで繭の様な密閉容器の中は薄青色の何かで満たされており、その中に浮かぶ様に横たわる人影が見て取れる。良く目を凝らして見ると、大体身長は160メルトぐらいか? 髪の色は良くわからないが、女性特有の起伏ある身体の輪郭が朧気に見える──って! ちょっと待てーーーっ!
目を凝らし過ぎてはっきり見てしまった──中に横たわるのは全裸の女性なのを!! 思わずワタワタする俺にコーゼスト先生が更なる追撃を仕掛けた──!
『これは──自動人形ではありませんね。恐らくこれは──魔法生命体です』
「なっ!?!」
コーゼストの台詞に驚きのあまり一瞬思考停止に陥る俺。それはそうだろう、このカプセルに寝かされているのが魔法生命体──ヒトが生み出したヒトならざるモノなのだから!
「うん、これはホムンクルスみたいだけどそれだけじゃないんだ。ほら、その奥を見てみたまえ」
傍に居るオルガ女史は俺の動揺などお構いなく、ホムンクルスのカプセルの奥を更に指差す。その指差す先には同じ様なカプセルがもう1つ置かれていて、やはり内部は何かで満たされており、そこには全裸の女性が横たわっていた。身長は160メルトあるか無いかで、髪の色はやはりわからないが──それでこれを俺にどうしろと?!
またもや動揺する俺を放っておいてコーゼストがカプセルに近付き中を確認すると
『此方の方は……自動人形ですね。構造的にはルアンジェとほぼ同じかと思われます』
解析結果を報告してくれたので少しホッとする俺。流石に2人ともホムンクルスだったらそれこそ大騒ぎである。俺は数回深呼吸をして心を落ち着けると
「はぁ……んで、グラマス。この2体をどうするんだ?」
そう端的に尋ねる。するとオルガ女史は唇に人差し指を当てながら「んー」と少し考えて込んで
「そうだねぇ……本来ならこのホムンクルスも自動人形も回収して国に提供すべきなんだろうけど……多分、いや間違い無く、研究の為に解体されるだろうね。だけどそれはあまりにも忍びない。それならばより有効に活用させたいと思うんだけど……どうかな?」
とよりにもよって俺に意見を求めて来る! いやいやいや、何故に俺を巻き込もうとする?!
思わずジト目で顔を見ると爽やかな笑顔を返された──ちくしょうめ!
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「まぁひとつの可能性の話──なんだけど、聞くかい?」
考えが纏まったらしく徐ろに話し掛けて来るオルガ女史。その満面の笑みを見て、こちらとしては何だか嫌な予感しかしないんだが?
「……とりあえず聞かせてくれ」
嫌な予感はするのだが、この状況では聞かざるを得ない──どうか頼むから予感が外れて欲しい!
「うん、このホムンクルスと自動人形をルアンジェさんとコーゼスト殿に使ってもらえないかな、と言う事なんだけど」
はい──予感的中! 自身の予感と寸分違わずの台詞を投げ掛けられる俺。
しかしまぁ、そうなるよなぁ〜。このホムンクルスと自動人形を有効に使えるのは、現状では元々自動人形のルアンジェとコーゼストぐらいしか居ないのは確かだし、仕方ない……のか?
『私としては願ったり叶ったりですね。否定する要素はありません』
コーゼスト先生もオルガ女史の話を聞いて俄然乗り気である。俺はハァと大きく溜め息をつくと、離れた場所で調査をしているルアンジェを念話で呼び寄せる。程なくして
「ん、ウィル、何か用?」
ルアンジェがやって来て何事かと尋ねて来る。
「ああ、実はな……」
俺はかくかくしかじかと状況をルアンジェに伝えると
「ん。もし新しい身体が貰えるなら貰いたい」
瞳を輝かせてそう宣って来る。まぁオルガ女史の言質は取ってあるし反対する理由も無いしな。俺が「わかった」と一言告げると
『そう言う事でしたら私とルアンジェで協議をして何方がどの身体を得るか決めたいのですが──宜しいですか?』
とコーゼストがわざわざ再確認を取ってきた。コーゼストも一応は気を使っているみたいである。全く……そうした所は本当にヒトくさい奴である。
俺は苦笑を浮かべた顔でそれに同意するのだった。
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コーゼストとルアンジェの相談と言う名のやり取りはものの数秒で完結し、コーゼストが代表して結果を話す。
『話が纏まりました。協議の結果、ルアンジェはホムンクルスの身体を、私は自動人形の身体を貰いたいと思います。ただその際にホムンクルスの身体に今のルアンジェの一部を移植したいのですが……』
「それって機械融合をするって事かい?!」
コーゼストの台詞に今度驚きの声を上げたのはオルガ女史。何だ、そのさいばーなんちゃらとやらは?
「サイバネティックス──ヒトの身体の一部分を機械に置き換える手術の事さ。昔は事故とかで手や脚、場合によっては眼球や耳を自動人形の技術で作った部分を取り付けて代用していたんだよ」
それを聞いてまたもや魂消た! つまり昔は義手や義足として自動人形の腕や脚を使っていたって事か?! 凄いな古代魔導文明は!
「つまりそれをお前がするって言うのか?!」
あまりの事に思わず大声を上げてしまう俺。正直言ってもう俺の頭の容量を超えまくっている話である。
『まあ両腕と制御頭脳のみ、ですけどね。それに手術と言ってもそもそもホムンクルスは外見はヒトですが体内の構造は全くの別物ですから、この場合は寧ろ換装と表現するべきかと』
話の中心人物であるコーゼストはしれっと宣っているが、もうさっぱり訳がわからん!
「どうしたの、ウィル?」
気が付くといつの間にかアン達が此方に集まって来ていた──どうやら先程出た大声に何事かと集まって来たらしい。
『マスターが大声を上げるからですよ? 責任を取ってくださいね』
肩の上のコーゼストがジト目で見てくるが──そもそもお前が原因だと言うのを忘れていないか?! だがアン達を結果として呼び寄せたのは俺なのは間違い無い。
俺は溜め息をひとつ吐くと、アン達に事情を説明するのだった。
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改めてアン達にホムンクルスと自動人形の事、それ等をルアンジェとコーゼストに与える事、それに伴いコーゼストがルアンジェの新しい身体であるホムンクルスに手を加える事、諸々すべて話した。
案の定と言うか何と言うか、皆んなやはり絶句していたが。それでも事情が飲み込めたらしく、ひと通り納得するとそれぞれが調べていた所へと散っていった──1人を除いて。
「アン?」
「私も一緒に見ていて良いかしら──いえ見させて欲しい。だってルアンジェに最初に会ったのはウィルと私よ? だから生まれ変わるルアンジェを見ていたい。それに勿論──コーゼスト、貴方もね」
そう言って微笑むアン。そのアンの言葉にオルガ女史は勿論、ルアンジェもコーゼストも異を唱える者は誰も居なかった。
それはそうだろう、ルアンジェの封印を解いた時に俺と共に彼女の目覚めを見届け、ラーナルー市に戻るまでの間に俺と共に彼女に常識と言葉を教えたのは他ならぬアンなのだから。それにアンはコーゼストの事を知った一番最初の冒険者でもあるしな。
「それじゃあ一緒に見届けようか? アン」
「ええ♡」
俺の台詞に一言答えるとそっと傍らに寄り添うアン。
そんな彼女の存在が、俺に何とか心の安静を取り戻させてくれたのである。
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『さて……マスター達も落ち着いたみたいですし、そろそろ宜しいでしょうか?』
俺とアンの様子を黙って見ていたコーゼストがそう確認して来る。
「お、おう」
「え、ええ、ごめんなさいコーゼスト」
それに声を揃えて返事を返す俺とアン。先程よりは幾分落ち着いていられる。
『では改めて──グラマス、この2体の封印解除をお願い致します』
「いいともさ」
コーゼストの指示を受けそれまで空気だったオルガ女史が、それぞれのカプセルの横に設置されている水晶地図板の様な操作盤を操作する。
するとカプセルの内部に満たされていた薄青色のが見る間に減って行き、やがて全て無くなるとカプセルが内部の空気が抜ける音と共に片開きに開く。姿を現したホムンクルスも自動人形も身体が濡れているのがわかる──するとあの薄青色のは何かの液体だったのか。
『では先ずルアンジェから始めましょう。ルアンジェ、貴女の停止実行命令と再起動コマンドをマスターに伝えて下さい。マスターはルアンジェから聞いたコマンドを実行して下さい』
そんな事を思っているとコーゼストから指示が飛ぶ。全くなんつー人使いの荒い奴だ。俺がそう思っているとは露とも知らずルアンジェは
「ん、停止コマンドは【停止せよ】、再起動は【目覚めよ】」
コーゼストに言われた通りに俺に必要な言葉を告げる。
「わかった。それじゃあ【停止せよ】」
俺の言葉を聞くと同時にトスンとその場に力無くしゃがみ込むルアンジェ。どうやら本当に停まったみたいである。
『ルアンジェの停止を確認──では次の段階に移行します』
そう言うとコーゼストの身体が輝き出して見る間に大きくなり、妖精体から本来の姿へと変わる。
『では──ルアンジェの腕パーツのホムンクルス体への換装及び、制御頭脳の換装を行います』
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停止したルアンジェを使われていないカプセルに横たえると、先ずその両腕をテキパキと外すコーゼスト──と言うかルアンジェの自動人形の身体ってそう言う構造をしていたのかと改めて知った。
皮膚には目には見えない繋ぎ目があり、その繋ぎ目から何の迷いも無く外して行く。その外した両腕を何故か自身の無限収納へと仕舞い込むコーゼスト。
「おいコーゼスト、ルアンジェの両腕を無限収納に仕舞い込んでどうするんだ?」
『はい、制御頭脳を換装している間にインベントリ内でホムンクルスの体に合わせた調整をしようと思いまして』
俺の質問にもキチンと答えながらも手を止めないコーゼスト。そう言っている間にもホムンクルスの頭部の皮膚を魔法で切り開いてから頭蓋を開き、中ならヒトの脳に良く似たモノを取り外す。切り開いた箇所からは白い血の様なモノが流れ出ている。
取り出されたモノは脳に特有の襞がある灰色の塊で脊髄に相当する部位が付いており、頭頂部に魔水晶が埋め込まれているモノだ。どうやらコレがホムンクルスの制御頭脳みたいである。と言うか、魔法生命体を見るのは生まれて初めてなのだが意外と自動人形に近い部分もあるんだなと、改めて感心したりする。
そうこうしている内にコーゼストはその塊をインベントリに仕舞い込み、今度はルアンジェの頭部を同様に開くとその制御頭脳を取り外す。ルアンジェの制御頭脳も同じく灰色であり所々に魔水晶が嵌め込まれているが魔法生命体のよりのっぺりとしており、室内の魔導照明の灯りか反射して輝いていた。
『では──最終段階に移行します』
コーゼストはそう宣言すると、先ずルアンジェから取り外した制御頭脳をホムンクルスの頭部に脊髄から順に入れて行き接続する。
次いでインベントリから調整していたルアンジェの両腕を出して、ホムンクルスの両腕を頭部同様に手早く身体から分離し、取り出した両腕を新たに接続する。そして頭蓋や皮膚を全て元通りに戻すと俺に声を掛けて来る。
『──これで全て完了しました。ではマスター、ルアンジェを起こしてあげてください』
「いやいや、その前に服を着させろよな!?」
あまりのコーゼストの繊細さの無さに思わず突っ込む俺。そらまあホムンクルスだしヒトじゃないのはわかっているが、俺が目のやり場に困るわ!
『本当に変な所で純情ですよね、我がマスターは』
そう言うとインベントリから嘗てルアンジェが『混沌の庭園』で着用していた服を手早く着させるコーゼスト。些かサイズ感が違うが──まぁ着てないよりはマシである。
「さてと、【目覚めよ】」
気を取り直した俺が再起動の合言葉を紡ぐと、ホムンクルス──ルアンジェはゆっくりと閉じていた瞼を開けるのだった。
施設の奥に寝ていたモノは古代魔導文明の遺産である魔法生命体と自動人形でした!
それにしてもルアンジェは兎も角、コーゼストにこんなにホイホイ身体(肉体?)を与えて良いのか? と言うか、王国への報告は良いのでしょうか?
まぁその辺は侯爵であるオルガさんの判断なので、あとは丸投げするしかない! (笑)
*機械融合…………いわゆるサイボーグの事。
☆manakayuinoさんに描いていただいたウィルのヤンデレブラコン妹のアドルフィーネのイラストを第107部本編百一話に掲載しました! manakayuinoさん、素敵なイラストをありがとうございました!
いつもお読みいただきありがとうございます。




